業界独り言 VOL231 勝負に出る技術者たちPart2

オブジェクト指向を極めたいと、FA宣言を行い自ら社内に新天地を見出して積極的な自己開発ステップの勝負への路に踏み出した知人がいる。前向きな技術者の仕事の成果は、管理者の視点からも有用な成果であり手放しには喜べないのかも知れないが、優秀な技術者の成果が発揮できずにモチベーションの下がった仕事しか出来ないのであれば会社にとっては、それこそデメリットであろう。人それぞれ重荷を背負って暮らしているので、生活を支える当主として安易なFA宣言ではなかったのだろうと思う。家庭があり、土地物価の高い国で身を粉にして働いているお父さんが閉塞した状況に細君からも見える状況での転身を図るにはそれ相応の責任が果たされる見込みが出来るということが必要なのである。

以前の会社で、モチベーションが維持できずに転身する状況に陥った知己がいた。無論会社組織としての仕事の進め方に問題があったのかも知れないし、先輩としてそうした知己と話す機会があれば、逆にもっと活用する方策は幾らでもあったのではないかと思い返すのである。有用な経験を積んだ優秀な技術者を、飼い殺し状態にしているのが、その頃の実情であったのなら血流を良くする意味で社内人事交流という形を使って活性化を図ることが出来るはずである。転身という契機に、いろいろと取り組みたい気持ちと新たな組織に入っていく不安などが錯綜しているのだろうと思っていた。その後、自身でも勝負に出るという事態に直面するときに知己と出会い少し話しを交わした折には幾らか彼の気持ちが判ったりしたものだった。

臨死体験ではないけれども、経験しない人に説明するのは難しいものだと思う。逆に、そうした臨死体験をして転身してきた技術者同士の意識交流は結びやすいのかもしれない。無論仕事を通じて、アグレッシブに色々な事業に手をつけて事業家としての経験を積んできた技術者などにしてみれば、臨死体験をした人の感覚などは当の昔に達観しているということもいえるのである。企業家としての経験を何らかの形で一度出来たのかどうかといのが一つの踏み絵になるのかも知れない。そうしたマインドあるいはポリシーを持つ会社風土に出逢えた技術者は幸せだろう。しかし、環境が素晴らしいとしても、その中に転身してきた人が自身を次のステージに押し上げられるかどうかは、その人の意識次第といえる。

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業界独り言 VOL230 勝負に出る技術者たち

前回の学籍番号合致タイトルに続く、今回のタイトル通番は能天気に再発行申請中のアマチュア無線従事者免許証の番号に合致している。現在でもアマチュア無線を楽しまれているN8さんや、流通端末開発のTさんらは、ちゃんとコールサインの維持を果たされて税金としての電波使用料までも支払われ続けていらっしゃるそうだ。銀行が破綻するようなご時世の中ではあるが、自宅の売却に関しての売買契約を結ぶことが出来たので自宅移転計画についての将来の資金繰りについては一段落しそうな感じとなった。この状況で進めば夏には、無線が新宅で再開できそうな見通しとなってきた。アマチュア無線の短波帯については、最近のデジタル設計された無線機キットの組み立てが暫しのチャレンジテーマになりそうだ。仮設のアンテナでとりあえずの再開をしていく上では、旧無線機の火入れ確認が必要のようすだ。初代のトランジスター設計の無線機も四半世紀昔のモデルとなっていそうだ。動くかどうかは保証の限りではない。

はるか昔の記事を思い返してみると、竹ざおで逆Lのアンテナを立ててマッチングしたりしていた事例だったのだが、その後のダイポールにバラン接続で同軸給電あるいは、屋根馬立ててトラップバーチカルを設置してカウンターポイズを張るといった形式からマンションなどのアパマンハムが隆盛を極める中で、最近では自動アンテナチューナーが当たり前となっているようだ。この辺りはよくよく考えてみるとかなり昔に逆行しているようにも思えるのだ。ようは基本は何時でも同じで実現するあるいは、実装するための技術が進歩してきたというべきだろう。掲示板にN8さんが書かれていたようなアナログ無線機にハイブリッド構成で制御の活を入れるといったチャレンジなども実にアマチュアらしくてよいと感じる。技術者の中には、納期を満たすための開発方法論に終始しがちな見識で仕事をする方もいるだろうけれども、なにかアマチュアほどでは無いにしてもチャレンジする意識はもっていて欲しいものだ。

世の中の報道に見えてくる携帯電話業界の動きは、会社や通信キャリアとしての計画や実績などに裏打ちされたものであり、前世紀の最後に計画されていた期待値に比べると大きくトーンダウンしているようにも映る。確かに99年にジョイントした頃にはCDMAの期待値が最大化していて、それをしめすQ社の株価などは四分割するほどの勢いとなっていた。第三世代のバブルとともに時代は、99年にバックトゥザフューチャーしているようで、入社当時に頂いたストックオプションの価格より割り込んでしまっている。そんな中に状況とは決別して自分の思いに走り、自己革新を目指して勝負に出ているエンジニア達がいる。ハードウェア技術屋としての仕事の流れがチップ化していく中で将来性としてソフトウェアに移りつつることを認識して社内でのポジションチェンジを目指そうしていたM君などもそうした取り組みをしていた。残念ながら、会社の人事育成方針と擦り合わなかったようで転職して実現を果たそうとしてきたようだ。確かに一つの方法論である、転職を華々しくコマーシャルしている会社の募集ポストとマッチすれば良いのだがミスマッチしている事例なども聞き及ぶのが実情だ。

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業界独り言 VOL229 記憶の中から

アマチュア無線の世界の再開を、自宅移転とともに再開しようかと考えていたのだが、なにせ30年近い昔の免許証に写っているのは中学生の自分であり、もう一枚あったはずの高専生の自分が写っている免許は紛失していた。現在の住所に越した折には存していた記憶があるのだが必要なときにはなくなっている。再開するためにも免許証の再発行が必要となる。世の中はブロードバンド時代になり、免許証の申請の仕方やら勉強の仕方など溢れる情報が繋がっている。呼び出し符号の再割り当てが起こるほど世の中に普及繁栄してきたアマチュア無線であるが、偏向したコマーシャリズムによるバブルだったのかモシモシハイハイの世界のみで遊んでいた人たちは携帯電話でお金を払うことに厭わなくなり、アマチュア無線から離れていったのは正しい限りだ。

無線通信という特権は、アマチュア無線が享受していたものではあるが、技術の進歩により一時的な優位にあったそれは現在は携帯電話により実現されて平和時には特権ではなくなっている。知らない人との通信という意味でいえば、最近ならばメーリングリストやニュースグループへの投稿購読などがそれに相当しているかもしれない。通信するという権利を駆使してアマチュア無線という範疇で興味好奇心を拡大していくという活動や行為がキングオブホビーという謂れだったのだと思うのだが・・・。誰もが気にせず無線機を購入して許可範囲を超えた出力を出したりする姿が日常化していた時代などを過ぎて気が付くと免許範囲や試験方法までも変わりを遂げているようだった。私が友人に貸与してあげていた無線機などは、貸与期間がはるかに20年近くを越えていて所有権などが及ばない世界で朽ち果てているようだ。

学校時代の後輩には、プロ用無線機メーカーで無線機開発などに取り組み昔の垂涎の的でも在ったコリンズのSラインを揃えたりしている人もいる。無線機やアンテナを総動員して短波の世界の不安定な通信環境をノイズとともに楽しんでいるという趣味の世界を長続きするのには強い好奇心が必要といえる。アマチュア無線技士という資格は、通信士という資格ではないのだから通信にのみ主眼を置いていては楽しみが薄いというものだ。さまざまなチャレンジが許容されているのがアマチュア無線の世界なのであり、真空管の無線機に愛着を持ちレトロな世界に没頭するような好奇心の持ち主の方などは現在の状況でいかに保守し稼動しつづけさせるかということで好奇心を満たしておられるに違いない。こうした好奇心旺盛な方たちが組み込み開発の創世記を担ってきた方たちと重複するのは必然といえるかもしれない。

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業界独り言 VOL228 新しきことの継続には

ゴールデンウィークが明けて、季節も動き始めたようだ。昨年に続き、新しいエンターテイメントを切り開いてくれたTBS主催の筋肉ミュージカルを見に行った。スポーツ界の勇士達が見せてくれる美技や体を張った演技には、見も心も軽くしてくれる効果があるようだ。色々なエンターテイメントがあるだろうけれど、この新たな分野を切り開いたのは日本のオリジナリティだと私は感じている。実際に、今年から参加している中国雑技団からの凄腕の方も昨年の演目をみて感動して今回は実際に演技者として参加しているようだ。私の拙い文章からでは、かれらの素晴らしい演目や雰囲気を伝えることは出来ないのであるが、実際に会場に訪れた方々たちが昨年からのリピータであるように思えるので感性が我が家の夫婦の特殊性に依存しているというわけではないように思うのである。また、そうした新しいことへの感動や演技者たちの新たな挑戦を他の人にも見せたいというメッセージが伝わって広がってきているのだと思う。公演終了後は、余勢をかって赤坂から新橋まで歩きとおして地下の居酒屋で細君と感動の余韻を暖めつつの食事に舌鼓を打った。朗報としては今年は夏休みにも特別公演が計画されているらしく、我が家でもチケットの手配には情報収集に余念がないのである。

継続することにより、つづく人たちが現れてくるというのは、この筋肉ミュージカルの今年のパンフレットなどを読んでいても感じ取ることが出来る。実は、昨年の筋肉ミュージカルの後に、公演の母体となっているテレビ番組での事故が発端となり、スポーツバラエティといった新たな芽を摘みそうな状況に陥っていたのである。我が家でもこの事件を契機に今年、こうして筋肉ミュージカルの再演が出来ないだろうと悲観していたくらいだ。新しいことにより、引き起こされるいろいろな事態にどのように対応していくのかという点を考えると、引き起こされた失敗や事故を起こさないための対策としては、そうした事に取り組まないといった対応をしてしまうことはありそうな話である。新しきことの挑戦の過程で生まれた失敗を鶏のように攻撃して仲間内から見殺しにしてしまうというような扱いにすることでは、なんの挑戦する風土も生まれるはずはない。無論、生身の演技者達が奏でる身体を張った演目の中には、失敗もあるのは事実であるがプロの技を更に見せようとするメッセージが伝わってくるのである。この心地よい波動が、この新たなエンターテイメントの観客の一人一人に届いているように思われる。

実は、この独り言も続けてきて双方向に切り替えるべく自宅サーバー化を契機に掲示板を作成したりしてきたのだが、これも設置から一年が経過していた。何かお祝いをしなければならないのかもしれない。続けてきたメッセージがアーカイブとしてアクセスできるようになってきた中でページ構成についても見直しが必要になってきている。途中から参加した人が過去のメッセージを読もうとしていも、その時代に起こっていたこととの相関などについては知る由もない。新しきことを継続していく上では、工夫を続けていくことが必要なのであり、多様な人たちと共生しつつ意識を共有した上で、なにか共同のテーマに向けた活動に辿りつければいのではないか・・・というのが最近の私の認識でもある。組込み開発の現場で直面してきた、色々な事態については、もうこれ以上繰り返しても意味が無いのではないかとも思えてきたのである。問題提起あるいは意識共有という点についての活動として掘り下げていくには掲示板でも不足だろう。私自身が、この活動に意味があるのだろうかと自身に問い掛ける際に心の支えになるのは、後半部分のアクセスを希望された方々に個別に付与したアクセスアカウントなのである。Webのシステムとして構成されているがゆえに、メーリングリストのワンウェイではなくてレスポンスとして読み取られたということが判るのである。

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業界独り言 VOL227 柱の疵は、一昨年の・・・

夢を追いかける人たちが創り上げた、世界初の第三世代携帯システムは、今年になって続く規格への切替対応を表明した。溢れる国内ニーズに支えられて順風満帆の旅立ちとなるはずだったのだが・・・、自身が提案するアプリケーションが携帯という枠を利用したビジネスモデルとして好調であることから、コンテンツ商売に切り替わってしまったような観すらある。もとより溢れるニーズを救ったのは、低速化パケットアプリケーション達だった。また、これにより通信システム自身の延命が続いたのでもある。地域的な塗り分け対応なども含めて見事なまでに現状の周波数枠に多くのニーズを収容したさまはたいしたものでもある。ニーズが技術を先導していくというのは確かなことで1.5Gと800MHzの双方に対応する国内特有の高周波部品なども速やかに開発されてきた。柱に記された一昨年の世界初のサービス開始という技術栄誉を讃えつつ実需に対応してきたビジネスモデルはたいしたものである。

続く規格への対応を表明したからといって、続く規格が標榜する2Gシステムとの異種間格闘技ともいえるコンプレスモードでのハンドオーバーを駆使してPDCシステムとハンドオーバーするということはなさそうである。議論好きの欧州人種が提案検討開発してきたコンプレスモードによるハンドオーバーをするよりも2Gのチップセットと3Gのチップセットを併設するほうが簡易な実装ですむからでもあろう。あるいは、GSMとUMTSとPDCの三つをカバーさせる端末を開発するやもしれない。3Gへの周波数移行をユーザーニーズへの新アプリケーションによる啓蒙を通じて必然のごとくビデオカメラやデジカメといった機能までも携帯電話の価格範囲で実現させてしまうという猛烈な姿は、携帯電話による五徳ナイフで他の業界を切り裂いているということかも知れない。五徳ナイフというよりは肥後の守に近いのでそれほど怪我人が出るとは思えないのも事実ではあるが・・・。

しかしこうした五徳ナイフのような端末を競って開発している現在のビジネスを斜に構えてみてみると、通信キャリアしか企画を暖められなくなってしまっているのではないかという気がしてならない。日本メーカーの懐深さといった研究開発といった落ち着いたスタンスで開発をしていくというスタイルは、現在では出来なくなってしまったらしい。器用に短期間に纏め上げる技術というか手際よさのみが評価されるような時代になってしまったらしい。手近にある様々な技術を料理できるという姿はたいしたものであるかも知れないが個々の味付けを一流品として使いこなしていくには経験が必要なはずであり、コンシューマ市場での味付けは使いやすさだろうし完成度としての安定性もそうだろう。研究所の人たちの基礎研究に価値を見出さず短期的な製品群のプロトタイプまでを仕上げることのみに注力している様は、やはり不自然である。研究する人たち同士が議論する土壌を確保しながらお互いの技術があいまって、結果として新たな技術の種が芽生えてくるものだろう。

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業界独り言 VOL226 メーデー メーデー

SARSが原因で戒厳令前夜とでもいうような事態が、隣国である中国や台湾で発生しているらしい。わが導師のKさんが花粉症を逃れてこの季節は台湾で仕事をされていたのだが、SARSの展開で急遽日本に緊急避難してきたのである。緊急事態での事の対処の仕方ということについて正しく認識されていないらしいのは、ソフト開発業界に限らない共通の話のようだ。マスクをしないアテンダントは日本の航空会社だけのようだった。中国・台湾では十日以上の様子を機長・アテンダントともに拘束されたりというのが、実情だと思うのだが正しい情報アナウンスが徹底しなかったりというのたが・・・。世界のそうした渦中でありながらも、成田から帰国するひとへの対応が遅れてしまう様が実情だ。

エレクトロニクスの事実上の供給基地である台湾や農作物供給基地である中国がこうした状況にあることは、日本ではもっと危機感をもって対処する必要があるはずだ。さて、風邪を治そうとラーメン屋にいっても中国ねぎが手に入らないのでねぎラーメンが手に入らないというような事態になるかも知れないが、それはそれでSARS対応としてはよいかも知れない・・・。台湾のセミコンダクター事業なども打撃を受けているはずなので、チップセット業界にも影響は必至かも知れない。ほかのメーカーと同様にQuad社の中国支社の仲間も自宅作業に切り替えられている。サポートという目的だけでいえば、大半はそれで済んでしまうのであるから、ここには問題はないが危機管理としていち早く米国からの指示が徹底しているのである。

「この人について知らない?」と問い合わせがくる。聞けば、第三世代の開発中心の技術者らしい人だ通信キャリアとの共著のパブリシティもあるような人材のレジメが人材情報会社から送付されてきたらしい。危機管理が出来ているかという視点に立つと、開発中心と思われるエンジニアが転職データベースに登録しているということなども注目すべき点であるといえる。危機管理の出来ていると思われる、こうした人材と、その人材が流出しようとした段階で会社がとるべき舵取りとしての危機管理体制もそうした事と同じようなことかも知れない。自分の会社の状況と自分自身のやりたい仕事の可能性を信じている人は動き出そうとしているのかも知れない。あるいは、それを担保に次の一手を会社に要求するという策なのかも知れない。

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業界独り言 VOL225 自律するソフトハウス

携帯ソフト開発のビジネスモデルの変革期に差し掛かっているという認識は、発注元以上に強く認識しているのがソフトハウスだ。知己のソフトハウスも違わず、発注元からの発注高の減少に迷走しているらしい。開発要請に応えて拡充してきた開発部隊であり、そうした従来のイケイケムードは無くなってしまったらしい。ある開発規模を契機に投下工数の関数が指数的に伸びるようになってしまったらしい。無論こうしたパラメータはソフトハウスと発注元の会社のビジネスモデルとの相互関係によって成り立っているのでソフトハウスに非がある訳ではない。あくまでも発注元の要請に応える黒子なのである。発注元での開発実績程度がソフトハウスが会社概要に掲げられる範囲であろう。同業他社に開発人員を提供した場合には業務機密保持という壁などが厚く立ちはだかるのがソフトハウスビジネスの難しいところである。

ソフトハウスの積極策というと、実績を武器に同業他社に展開していくということでもある。社内的にはノウハウを共有していくという姿がソフトハウスの開発効率を高めてひいては、発注元にとっても魅力的なものとなる・・・というのが日本的なモデルといえる。そうした事を狙って知己の会社を紹介したこともある。端末開発を闇雲に進めているお客様にとっては経験深いソフトハウスを紹介することは福音に聞こえるようだ。まあCMMのレベル5の会社への発注が功を奏しないという事実も確かにあり、発注元のビジネススタイルに成果が依存してしまう嫌いがあるのはしかたがない。ソフトハウスが受託開発をしても版権が納品先に残り、瑕疵対応といっても次のビジネスを受諾する中で対応していくというのが、実像として見えてくる。ソフトハウスが攻勢に回れないのは、そうしたことが背景にあるとおもえる。

開発効率の改善を目指して、さまざまな技法などが編み出されているにも関わらず、実際の開発に際しては抜本的な手が打てないでいるのは、ソフトウェア技術者の保守志向が挙げられるのではないか。確かに近年発生した携帯電話の回収騒ぎに端を発する問題で、「携帯電話の信頼性」についてはPCソフトと同列に扱えないほどの領域に行っていることがあげられるかもしれない。回収し対応する費用は数十億円にも達するといわれているのであっという間に利益も飛んでしまうのが実情でもある。開発費用が端末コストの大半になってきた昨今開発コストの削減のためにハードコストの増加には目を瞑ろうとしている動きがつい先日まであったほどだ。残念ながら、そうした過保護な状況が破綻してきたのが現在でありアプリケーションの効率的実装についてハードソフトの両面から軽量化戦略が生まれつつある。

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業界独り言 VOL224 好奇心は推進力 発行2003/4/28

B型の技術者だけではないだろうが、ソフトウェア技術者の方には好奇心を持ち続けてほしいものである。最近の雑誌SoftwarePeopleの二号で特集に組まれていた「ソフトウェア開発で伸びる人、伸びない人」という項でも書かれている。カスタマーから降りてくる仕様に基づいての仕事しかしないという選択しかないという状況もあるのかもしれないが、上司も含めた経験のない仕事を受注するということには、そうしたビジネスモデルでは到達しえないはずである。ソフトウェア開発に従事する人たちが頭が固くてどうするのか・・・という思いは最近では通用しないのだろうか。柔軟にいろいろな答えがあるのはハードもソフトも同様であるはずで、その中でカスタマーニーズに照らしたシステム設計開発を通じて実装していくということになっている。

我が家は、現在自宅を新築建築中である。ようやく手に入れた土地に合わせて建てるためには、注文住宅で、作るしかなくシンプルを目指した設計を設計士の方と進めてきたのであるが、プランニング段階では、3DプランナーといったPCソフトで内部の配置などを構造を無視してつくりあげた。これは、いわゆるカスタマーの仕様ということになる。設計士の方が、これの仕様に基づきいろいろな工法や部材の選択などをして設計図を仕上げていく。設計図面には、こうした設計士の方の思想がびっしりと書き込まれていくのである。こうした設計図面に基づいて、工事を実施施工する建築業者との現場の打ち合わせなどを通じて具現化していき最終的に建築物となっていく。リソースである建築費用や、現場の諸条件といったものをクリアしつつということになる。

住居の設計というものにおいては、土地の状況といったものに根ざした工法上の制限といったものや設置する家具なども大きく影響する。細君が選択したシンプルなシンクは、ステンレスの一枚もので溶接されての仕上がりは長手方向で3m弱といったものであり、組み立て済みの形での搬入とするということらしかった。土地から制限された条項はなにかというといわゆる旗のような形の土地で入り口のアプローチ部分の幅や長さ、またその道路との接合部までの上り坂などといったものが影響する。横浜の谷戸に位置する地形からは隣接する段差の住宅などとの条件から1階部分についてはRC造りあるいは擁壁の設置などが要求された。コンクリートの打ちっ放しが出来るということから二もなくRC造りの1階に木造の二階が載るという混構造という工法になった。しっかりとしたコンクリートの1階は細君の要望から旗竿部分のアプローチから玄関が直には見えないようにした。

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業界独り言 VOL223 ASMからCへ、そしてCから

最近の若い技術者の教育においては、機械語やアセンブラを教えずにC言語でそうした制御を行わせるらしい。まあ、メーカーの技術者にとってはソフトウェア仕様書が処理手続きの言語であって、C言語は機械語であるのかも知れない。メーカーによっては、ポインターの使用を禁じているところもあるらしい。ポインターを使わないという選択肢を選ぶ限りにおいては、C言語での利用は安全なものとなるのだろうか。ある意味でそれを狙っているのならば正しいのかもしれないが、配列とループで構成されるソフトウェアを見ても何も感じない感覚に陥ってしまう人たちを指導したいのならば機械語を正しく教えることは必要なことだろう。「最近はマイコンが速いから関係ありません」などと仰る人はパソコンアプリの開発に従事しているからだろうか。

組み込み開発という世界は、それぞれのターゲットアプリケーションを実現する上で必要なシステムを構築するということである。自動車電話というシステムを構築するために、当初はマイコンなど存在していなかった。マイコンの代わりに構築されていたプロトコルを処理実現するための制御コントローラを起こすことから始まっていた。RCAの4000シリーズなどで作られたコントローラはプログラム機能を持ち弁当箱程度の容積をそのためだけに必要としていた。後年にも画像処理の世界でも同様で、TV画像処理のエフェクターを開発していた先輩技術者は、高速なビットスライスプロセッサーを組み合わせて使って専用のマイクロプログラムを書き起こしシステムを開発していくという時代でもあった。ハードもソフトも開発していく・・・。組み込みソフトの起源は、こんな風景から始まったといえる。

アセンブラや機械語という世界から高級言語の世界が組み込み開発に登場してくるのには、高速なマイコンか高性能なコンパイラかの二つの切り口が必要だった。また、割り込み処理とメインといった組み合わせで実現していたシステムに高機能を持ち込んでいくためにはTRONなどのRTOSが必要となっていた。そうしてC言語とRTOSの両面が組み込みソフト開発を新たな開発に導いてきたのである。現在では4ビットマイコンなどで開発していた家電調理機器までも8ビットあるいは16ビットマイコンなどでC言語で開発しているらしい。開発効率や性能がバランスが取れてきたことが背景といえる。マイコンコードとC言語の期待する動作振る舞いの差異などをノウハウと考えていた時代から、最近ではC言語のコード効率が最良になるようなハード設計がなされるようになったりしている。

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業界独り言 VOL222 リセット以降main以前

昨日は、坂村先生がプロジェクトXで取り上げられていたのだが、相変わらず元気に取り組まれているプロジェクトリーダーの姿をみて安心できた。問題となる組み込み開発の歴史の中で、日本が活躍していける余地がどれほど残されているのだろうかという点でプロジェクトXの主題となっている部分が気になっている。プロジェクトXを見ている視聴者が、実務を経験してきたものたちとしてその事実を次代の若者に伝えられるのかということ。次代を担うべき若者たちは、こうした事実や歴史について関心を示すのだろうかということ。確かに番組作りとして、進められてきたTRONの締めくくりをPCから携帯で台数ベースで世界に伍するようになったと結ぶのも良いだろう。しかし、基礎技術が必要だと説いてきたOS開発の中核技術者たちのメッセージを会社として本当に理解しているのだろうか、そうしたことの裏返しが組み込みの現場での問題の源流になっているのではないのか・・・。

製品の核となるOSについてリアルタイムOSの一つとしてTRONがあることについて異を唱える人はいまは何処にもいないだろう。実際の海外のOSベンダー自体もオープンなAPIあるいはソース公開といった形でTRON仕様のOSを提供しているのも普通となっている。ではOSが公開されたことで、これを自分たちのアプリケーションに特化させるように取り組めるのかどうかという点については、各ユーザー側の課題である。アプリケーション設計者が考えずともOS技術者が対応しているので製品性能は保証されるといった形が求められているシナリオだったはずだ。たしかに番組でもそのようなコメントが為されていた。タコなアプリケーションがいたとしても性能に影響なくOSが介在してバッテリーの持ちが確保されるというはずだったのか。各メーカーが似たようなものを開発することなく共通基盤の上に立ち特化させれば良いというのがTRONの精神だったはずなのだが。

リアルタイム処理の設計が出来るのかどうかという点が組み込み開発の肝の一つであるといえるし、またそうした中にもうまく言語処理ベースでの機能などもうまく使いこなせるかという点も求められているのである。これらが互いを意識しないことなどから実際の製品開発としてその製品のための基盤を立ち上げる最初の過程こそが要素技術蓄積がものをいう場面といえる。言語処理とOSの話に入る前の話題としては、昔でいうところの「C言語のROM化」という話題であるといえる。言語処理系が提供するライブラリやブートストラップコードの振舞うmain関数以前の事などがそうした話題の中核といえる。出来上がったプラットホームで設計するアプリケーション系の設計しかしない技術者では注意を払わない縁の下の技術でもある。開発の主体がアプリケーションに移っていった昨今ブートストラップ的な要素のケアが薄いのはいたし方ないことなのか。共通要素は動いて当たり前といった扱いで評価が薄いのは、眼に見えた売り上げをお客様から上げられないからなのだろうか。

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