オブジェクト指向を極めたいと、FA宣言を行い自ら社内に新天地を見出して積極的な自己開発ステップの勝負への路に踏み出した知人がいる。前向きな技術者の仕事の成果は、管理者の視点からも有用な成果であり手放しには喜べないのかも知れないが、優秀な技術者の成果が発揮できずにモチベーションの下がった仕事しか出来ないのであれば会社にとっては、それこそデメリットであろう。人それぞれ重荷を背負って暮らしているので、生活を支える当主として安易なFA宣言ではなかったのだろうと思う。家庭があり、土地物価の高い国で身を粉にして働いているお父さんが閉塞した状況に細君からも見える状況での転身を図るにはそれ相応の責任が果たされる見込みが出来るということが必要なのである。
以前の会社で、モチベーションが維持できずに転身する状況に陥った知己がいた。無論会社組織としての仕事の進め方に問題があったのかも知れないし、先輩としてそうした知己と話す機会があれば、逆にもっと活用する方策は幾らでもあったのではないかと思い返すのである。有用な経験を積んだ優秀な技術者を、飼い殺し状態にしているのが、その頃の実情であったのなら血流を良くする意味で社内人事交流という形を使って活性化を図ることが出来るはずである。転身という契機に、いろいろと取り組みたい気持ちと新たな組織に入っていく不安などが錯綜しているのだろうと思っていた。その後、自身でも勝負に出るという事態に直面するときに知己と出会い少し話しを交わした折には幾らか彼の気持ちが判ったりしたものだった。
臨死体験ではないけれども、経験しない人に説明するのは難しいものだと思う。逆に、そうした臨死体験をして転身してきた技術者同士の意識交流は結びやすいのかもしれない。無論仕事を通じて、アグレッシブに色々な事業に手をつけて事業家としての経験を積んできた技術者などにしてみれば、臨死体験をした人の感覚などは当の昔に達観しているということもいえるのである。企業家としての経験を何らかの形で一度出来たのかどうかといのが一つの踏み絵になるのかも知れない。そうしたマインドあるいはポリシーを持つ会社風土に出逢えた技術者は幸せだろう。しかし、環境が素晴らしいとしても、その中に転身してきた人が自身を次のステージに押し上げられるかどうかは、その人の意識次第といえる。