業界独り言 VOL310 アーキテクチャの進展

昨年末に国内メーカーから迎えたエンジニアM君は、日系ハーフの米国籍で、特徴のある流暢な日本語とネイティブな米語を扱うバイリンガルである。昨年の前半は、お客様として何度か米国にも来訪していただき当時のQuad社が考える次世代UIという名前の技術を適用したUI作りを試行していただくプロジェクトの中心でもあった。とはいえ、当時の状況で考えれば、UI技術への踏み込みが十分でない状況のQuad社での助走期間の技術提供だったともいえる。国内メーカーの中で一般通念として普及してきたUI開発の流れはWidgetベースのUI部品を駆使したものに推移しておりそうした流れにいた国内メーカーがQuad社の呼びかけに応じたのは、自社技術とQuad社技術の双方の視点にたち先を見越して研究を進めていくためのものであったかも知れない。Quad社が提唱するバイナリ実行環境がゲームアプリだけでなく一般のUIを含めたベース環境に移っていくであろうことを察知した先進メーカーに違いはなかった。並行して開発が進められていた国内キャリア主導のキャリア仕様を満たすプラットホームエンジンの開発というテーマなどと合わせて、当時はQuad社の中では将来技術の協奏曲となっていた。

M君が、端末UIの開発エンジニアとしてバイナリー環境を詳しく理解していく流れにのり商品開発を達成していく中で、国内メーカーでの仕事よりもQuad社でのビジネスに魅力を感じたのは、理解した技術を幅広く実践して伝えていくことにあったようだ。開発していくベースを広げたいということが背景にはあったのだろう、年末にジョイントしてからQuad社が暖めていたUI技術の進展にはベースとしてのWidgetを自社昇華した上でUIプレイヤーという新しいレイヤーを提唱しているベンチャーを吸収することでもあった。2.5Gの肥大化するUI開発の流れにあった欧州地区の事情に応じて3GUI技術としてXMLベースのUIを開発してきたベンチャーにとっては各キャリア毎のUI差異を吸収しうることを当初の目的としつつも、Quad社が提唱するアプリケーション全体に向けたアプローチに繋がる流れに共感を覚えたのでもあろう。もう一歩踏み込んだ形でのアプローチとしてバイナリ環境の上にUI開発環境として構築していくことになったのは大きな流れとなった。M君は、さっそくこの新XMLベースのUIプレイヤー実用化の先鋒となるユーザーサポートの渦中でエバンジェリスト兼サポーターとなり実用化を達成することになった。昨年来の流れであるところの各通信キャリアに対応するアプリケーション制御といった切り口にも繋がる形になっていくことは次の進展となるのだろう。

端末開発費用という観点で見た場合に、なかなかやりたいテーマを続けていくことが出来ないというジレンマもM君にはあったのかも知れない。事実、端末メーカーでの開発内容自体はかなり変わってきているのも実情だ。大規模化する開発規模の流れの中で端末一社でそうした負担をしていくことが出来ないというのは、高機能イケイケ路線で進んできた国内メーカーや国内キャリア事情の曲がり角というべきかも知れない。3G端末の離陸は、国内第二位のキャリアとそれ以外のキャリアとの競争に基づいてドライブされてきた。そうした中で、ビジネスモデルの異なる通信キャリアに向けた端末作りの条件をクリアするための模索が各メーカーで続けられてきた。第一位のキャリアのみに物づくりしているメーカーもあれば、一様に提供しようとしているメーカーもある。実際に現時点で同時に既存の三つのキャリアに端末提供が果たせているメーカーは居ない。それだけ3Gに推移してからの要求されるアプリケーションやキャリアスペックを満たすためのアーキテクチャ条件が難しいということでもある。無論、通信キャリア自身もそうしたことを理解した上でプラットホーム整備と銘打った開発や開発費用提供あるいは仕様開発といったことを進めてきていたのである。

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業界独り言 VOL309 マイクロカーネルはマルチOSの夢をみるか

仮想OSといえば、VMwareのようなPC環境で複数OSをインストールして同時にLinuxやXPあるいはBTRONを動作させるといったものが思い浮かぶだろうか。仮想マシン環境の提供が出来れば、さまざまなOSをインストールすることが出来るようになる。複数のOSをインストールしなければならないのは事務用のアプリケーション環境としてのWindowsが蔓延る中で致し方ない状況の技術者の方たちの状況や、デザイナーの方たちのマッキントッシュ環境でのWindowsアプリの必要性などが背景だった。ちょっと似て非なるケースとして携帯電話で最近起こり始めた状況には、通信キャリアが提唱するプラットホーム環境に向けてチップセットベンダーが工夫提供するなかで、高機能OSと呼ばれるLinuxやらSymbian、WindowsCEとチップメーカーが保有するプロトコルスタックとの融合で派生してきている。組み込み端末の中で更にオーバーヘッドを生じさせるような仕組みの投入が必要なのかという意見もあるだろうし、アプリとサービスは分離された実装をすべきであり当然の帰結と結ぶ方もいるだろう。いままで議論にも上がらなかった背景には、チップセット実装としてワンチップに実装することが常識として想定されてこなかったからでもある。

チップとしてワンパッケージかどうかという問題であれば、現在のMCP技術などを駆使してパッケージにスタックして実装することも可能である。個々のチップセットの開発事情を無視してインテグレートして製品として仕上げていく困難さは益々難しくなっていき多額の投資をその過程で必要としてきている。GSMのコアとWCDMAのコアをとりあえず繋ぐというような実装でIPの再利用という形のみでワイヤリングしてチップにすれば完成するというようなものであれば、苦労はないのであるが、システムインテグレータとしての責任を負える技術を持てるのかどうかは課題だろう。最近ではリコンフィギュアブルなハードウェアの登場だとかソフトウェア無線だとか色々な騒音の中で個々の技術を押さえて本当の意味で実装できるメーカーがどれほど居るのかは甚だ疑問である。個々の技術のアイデアをメーカーに提案して端末メーカーの責任でそれらの技術を昇華させていくといったストーリーは現実問題として機能しなくなり、そうした仮定に基づいて進めていく仕事の過程で気づく問題点の中でプロジェクトが頓挫破綻に流されているようだ。落ち着いて基礎研究などするゆとりはないということだろうか。

周囲のこうした状況を反面教師としているのか、まったく気にもしていないのかは別にしてマイクロカーネルをベースにしたシステムコンフィギュアラブルなベースシステムに切り替える取り組みもワンチップ大関の次の流れとして業界に大きなインパクトを与えている。無論、先に述べたような業界事情の中で本質を正しく認識されているのかどうかは甚だ疑問であり、実際に商用化した実績を通じてそれはまた徐々に広がりを見せていくに違いない。ARM9ワンチップでLinuxとシステムとしての無線プロトコルが端末として実用化出来るのだろうか・・・という問いかけでもある。Linuxのみでシステム構築されてきた方々ならぱご存知のようにアプリプロセッサに実装して専用化していく流れでようやく一世代前の端末レベルに追いつこうかというもっさりとした状況でもある。当然、通信キャリアの方々やOEMメーカーの技術トップの方々に対して行うプレゼンテーションに対しても冷ややかな反応であることも否めない。とはいえ、そうした実装成果を商用化していこうというOEMユーザーが居るということであり、実際の彼らの端末が世の中に登場することで、ようやく認知されるということかも知れない。

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業界独り言 VOL308 気がつけば仲間が

「月一連載ですか?」と仲間にチャカされた。確かに月一になってしまうこともままあるのだが、一ヶ月以上あけると心配メールやら飲み会しましょうメールやらが届き始めるのである。どうも私の独り言は、そうした人たちのガス抜きになっているようで、月一以上に間をあけると耐え切れなくなってしまう人がいるらしい。Quadジャパンという組織にジョイントしてはや六年余りとなりいまや80名を超える組織となってきた。当初のこじんまりしたビルでは収まりがつかないくらいの仕事を抱えている状況を見れば必然といえるのだろう。なかよくCDMA陣営のことだけしている時代は終わりを告げて3G開発を掲げる全てのキャリアやお客様にソリューションを提供することになっている。昔では考えられなかったような状況で、近在の三つのキャリアやそれ以外のキャリア候補生などにも顔をだすようになっている。一つの御題が出来てコンセプトが固まると、そのテーマを一様に説明に出向き噛んで含んで説明するのが最近の忙しさの主因でもある。伝道者という言い方が正しいかも知れない、またお客様のフィードバックを感度よく拾い出すというミッションでもある。

いろいろなメーカーや経験を持つ仲間たちで構成されるQUADジャパンの組織にひときわ、熱き想いを語る仲間として前職場での卒業生がいる。いまではその数は会社の構成の二割に達する勢いを見せている。IEEEのフェローの称号を冠する大先輩がいたり、気がつけば知己が社長を務めている現在は六年前からの計画通りであり、昨年暮れに北京で久しぶりに再会した先輩もまた加わることになった。大きな流れを感じたり不思議に思い返したりしながらまだ転職前のコンサルタントとして中国に訪問していた、その先輩と食事を北京で共にしたりしていた。その時の夕食のメンバーはといえばソフトウェア業界の重鎮ともいえる開発会社の気鋭のリーダーや計測器メーカーの方たちだったりもする。3G市場を活性化させんとする同士達の集いだったりもする。先輩自身も長らく欧米での開発拠点を率いて現地開発拠点としての取りまとめを推進してきたものの3Gに推移して以来の開発の重圧をこなしていく流れの中で現地と本国である日本との間の乖離に苦労を重ねてきた経験があった。そういった乖離の理由の一つに現地で起こっている事情や今までの開発スタイルが3G移行に伴いミスマッチしてきたことが挙げられるのだろう。

結局、開発計画の矛先が二転三転する中でなかなか着陸することに繋がる前に開発が中断するということが多発してしまうのは、過去のその会社としての成功経験が尾を引いているからだろうか。現地に任しきれずに開発計画を次々と変えていくことを続けて業界一開発プラットホームの多さを記録したりしていた。長く一つのことを続けていくということを達成できないのには何か別の本質的なDNAが欠けているからなのかも知れない。新たなことにアグレッシブに取り組んでいくということと完成にまで漕ぎ着けるために頑張っていくということの両輪を回していくことがなかなか出来ない事情がある。また開発がスムーズに達成したとして、その商品がヒットするのかどうかは別の課題でもある。苦労をして開発を続けてきた技術者のチームにとって経営方針の篩いにかけられて方針変更での中退などを余儀なくされることでモチベーションの維持が出来なくなってしまうのは残念なことでもある。国内市場にのみ頼っての商品化しか出来ないのであれば、海外市場についての体制維持が覚束なくなるのはいたし方ないことでもある。3G開発という業界を飲み込んでしまった開発のバブルの後始末に突入しはじめる状況になった業界としては、未だ慣性モーメントとして旧来のビジネススタイルで開発費用の拠出を通信キャリアからの提供を受ける形での寄生生活が染み付いてしまっている。

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業界独り言 VOL307 ワンチップ大関

世の中のメーカーには嫌われるQuad社でのアプリケーションエンジニアという説明の難しい仕事をしている。パテントとテクノロジーのバランスを取りながら経済を回していくというQuad社独自のビジネスモデルは裏返せば第三世代携帯という流れの底流であり、奔流でもあるのだろう。この流れに抗うように、欧州や国内のメーカーがGSMに拘ってきたのにはGSMとして構築してきたビジネスモデルを崩したくないというのが本音なのだろう。GPRSやEDGEという形で少しでもGSM陣営のままでビジネスを運営したいというのはライセンス優位性などを欧州に位置づけてきたGSM戦略のしたたかな理由だからでもある。3Gの本格的な胎動に期待しているのは、誰あろうQuad社自身であることは、ライセンスビジネスからも明白である。3Gの普及によりデータ通信速度の水道哲学が達成できるほどの効率よいシステムが構築出来るのかという期待も含めて自身に課しているというところでもある。

まともにメールもままならないようなGPRS環境でなく安定なデータ通信環境に移行する目的でも3Gに期待するのは、サポート渦中のアプリケーションエンジニアならではのことなのだろうか。六年前の自分を思い起こして見れば64kbpsのPHSカードを適用していた。そうしたカードをフルに稼動しながら、1XやUMTSのサポートをしてきた。都内中をタクシーや借り上げたレンタカーによる試験車に乗り込みテストエンジニアと運転手との通訳支援をしつつ、実際の自分の通常の支援作業であるところの問い合わせ応対やらソースコードの解析などを移動する車両から行っていたりもした。そうした結果としてUMTSの赤い通信カードが開発完了してPHSからの卒業を迎えることが出来た。いまや新幹線での移動も含めて開発サポートのインフラとしてはUMTSカードは必需品であるといえる、とはいえ仲間たちの中では1Xチームの1xEVDOカードの方がメジャーでもある。たまたまUMTS開発を支援をしてきた故の状況はレアーこの上ないということなのかもしれない。

PHSからUMTSに変わったからといってスムーズにどこでも通信できるわけでもない。ある意味で真のUMTSといえる通信キャリアのネットワークゆえに根幹のネットワークの問題もあるし、三つの異なるインフラベンダーでの仕様相違なども複雑に絡まっている。リライアブルなネットワーク構築に関してはモバイル故に完璧とはいかないので、移動先からの運用方法の一つにはVNCやらリモートデスクトップやらが必要となる。ビルドやJavaベースのデスクトップをネットワーク利用していく上では回線が確保されている端末からのアクセスをするしかないというのも実情である。手元で行うのはメール操作やファイル編集といった類となる。とはいえ振動する状況で思考をしつつ、問い合わせに対して電話をかけたり、メールで回答をしていくというのは修行僧のような感覚になってきてしまう。場所を選ばずどこでも仕事をしているという状況の中でも最悪の環境は、ある意味で終焉を迎えたといえる。こうしたプロジェクトを通して国内各地区でのテスト走行の結果はプロトコルスタックに蓄積反映されたからでもある。

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業界独り言 VOL306 呼びかけが届く日

3Gの本格的な離陸を前に、携帯電話業界の様相は当初の期待とは裏腹にがらっと変わってしまっているようだ。国際的に通用する価格帯で実用的な機能に絞った形での端末作りをしたメーカーの端末の登場などは、従来のキャリア競争の果てに陥った華美な高機能端末の開発といった今までの流れとは本質的に違う動きといえる。高い通信料金に裏打ちされたビジネスモデルが破綻しはじめていることの象徴といえるのかも知れない。それでも高機能商品が無くなることはないだろう、ただし開発費用の負担や端末価格としての期待値については厳しいハードルが課せられる状況になってきている。そういった状況から、発展期にあったイケイケドンドンといった風潮が薄まり、着実な物づくりとして保守的な志向に変わったりする傾向があるのかもしれない。とはいえ、取り巻く状況と開発の流れがマッチしているのかどうかは別問題である。

あまたある機能を網羅しようとして書き起こす仕様書の完成度追求と、その機能をハードウェア・ソフトウェアの上に実装実現していくということの難しさを少しでも軽くしようという動きが昨今の端末プラットホームの流行になるのだろう。旧来のRTOSに積み上げてきた流れや、オープンソース思想を拠りどころにしたLinuxや、PDAの先にある形態としての携帯を目指した専用のOSなどが、そうしたプラットホームの主役となってきている。そうしてかつて各OEMメーカーが腐心して来た、細かい端末プロトコルとモデム機能の微細な仕上げとしての改修を進めてきていた部分は薄まり大味な仕上げの端末が今後の実態となってくるのだろう。導入したプラットホームという物自体も通信プロトコルと端末機能のAPIを一貫して開発出来ているメーカーはなく、通信キャリア自身が大盤振る舞いをしてチップベンダーに委託しつつ自らがAPIセットをさらに定義しようという意気込みが出るくらいなのである。

そうなると通信端末メーカーのエンジニアとして求められる部分も大きく変わりつつあるというのが実情として映ってくる。知り合いのダウンロード機能を売りにするベンチャーなども、高機能路線の中でのある意味でターミネーターとして期待されているオンライン書き換え機能を訴えて、新規リーグの創設を提起している。そうした新たな息吹と自身の閉塞感を感じた技術者の素直な流動が始まっているのは象徴的なことといえる。ただ此処でオンライン書き換え機能自体はomaなどで規定されてきている動きがあり基本的な機能はどのベンダーのオンライン書き換え技術を採用しても利用が出来る。一つのベンダーで占有されたくないという欧州の感性と、日本の通信キャリアの思いには開きがある。オンライン書き換え機能は、メジャーな技術となってきたものの新たな取り組みもあったそうだ。実際、今年は世界初の挑戦も実現したそうで、いわゆるプッシュサービスによる書き換えが実際になされたそうだ。お客様にとっても驚きの書き換えサービスとなったのだろう。

OEMメーカーとしての端末開発を仕上げビジネスに繋げるという仕事をしてきた流れは、揃ってきた技術群やプラットホームあるいは通信キャリアの決断というもの契機にして端末メーカーとしての妙味は大分技術的には志向が変わってきている状況である。Quad社などが進めているオールインワン構想などもある意味で、似た取り組みとはいえるものの一モデルで複数の機種展開が出来るような視点を技術の機軸に持ち込んだ上での実装が商用化の中で進められている。CPU高速化の中でXMLベースUI構築技術が開花したのは、かつてスクリプトベースで端末開発を進めていた過去のデジャブとも感じられる。時代が許容するだけ進化したというべきだろうか、あるいは足踏みをしていたからだろうか。スクリプトはWAPやJavaに変容していきインターネットの進化結果を引き入れてXMLで表現可能な時代になった。目的であるソフトウェア開発の簡易化に因んだカテゴリーを分けた書き分けの時代になろうとしている。

プラットホームとしての開発の流れに変わり行く中で、まだモデムプロトコルの影を引きずる部分もあるだろう、欧州展開では相変わらず根強いGSM/GPRSの世界があり、UMTSとして3GPPが追加されてきた流れだ。GCFの仕事のながれの経験を踏んできた経験者は貴重であり、それがWCDMAとしても同様に適用されていくのが始まっている。プロトコルをシステムとして捉えて切り分けを進める仕事から、アプリケーションに踏み込んでいく時代である。Release99から新たに換わり行く流れで多くの技術を吸収するチャンスでもある。ギブ&テイクとしてのスキルや経験を持ったエンジニアにとってはキャッチアップも含めて絶好の機会である。私など広範な経験こそあれ、深くプロトコルに傾注することもなく生きてきたソフトウェア技術者の人生であったが、最初のQuad社での手厚いお客様へのサポートを仲間と進める中でサポートしていく上に必要な知識や自己としての技術を確立していくことが出来たのである。もとより通信最前線で働いているエンジニアの方に臆する点などなかろうものだと私は思うのである。

Quad社で展開が始まった、新たなRTOSの入れ替えを契機とするアーキテクチャの大変更ともいえる動きを如何に巧みに解決しつつ発展に移行しようとしている。この新しい流れの意味についても今ならOJTとして切り込み伝道者として広めていくというストーリーとなる。携帯電話専用に設計されたはずのOS環境で解決がなされていない問題にまで踏み込みワンコアアーキテクチャでシステム的に環境的にも優れたソリューションを提供しようという時期において、幅広い範囲で夢を描ける確かな眼を持ったエンジニアを集めようとしている。ある人たちにとっては高い税金を払わされているという印象が強いQuad社かもしれないが、先進の技術をパテントとして提供しつ得られた対価としての費用を技術投資に真摯に投入しているのも事実である。自分たちの税金で払ったというマイナスの想いでとらえるよりも、対価を要求するスタンスこそ求められる時代なのではと問い返したい。

そんなQuad社を含めたプラットホームベンダーに転進する動きが出てきたのか、Quad社の株価動向などもプラス志向となってきているようだ。国内通信キャリア全てに適用端末が登場してくるなかで、バイナリー開発自身も特定キャリア向けということだけではなくなってきている。とはいえダウンロードまで駆使するような、運用になるのかどうかは別問題である。アプリケーションとしてXMLアプリを技術採用された通信キャリアなどではダウンロードは別系統で実施したりしているので、多様なオプションが生まれるということでもあろう。XMLアプリケーション技術が実用化されたことを正しく理解されるかどうかはOEMメーカーの感性しだいとも言えるのだが、国内OEMメーカーに対しての技術伝道セミナーも開催される運びとなった。日経エレのインタビューで答えた内容に比べればスケジュールは早まっているとも言える。ここでも伝道者としての新たな展開が始まろうとしている。

伝道者としての責任は重いのは事実であり、「24時間体制で残業時間の規定もなく働くのですか・・」という問いかけもあったりする。確かに年俸制の、この会社にあって残業時間という定義はない。お客様の製品開発を支えていく上で、ASAPに対応してくださいという悲痛なサポート要請は確かにあります。ただし、われわれが提供する24時間サポートとは世界中の仲間と一緒に果たすという意味でのサポートです。個人が24時間意味も無く働くということではありません。メールで詳細を説明しお客様に必要な発生データの取得をお願いしてサンディエゴや欧州で再現できるようにするということが求められ、そのことを達成するために必要なワークにあっては自分の判断で積極的に顧客訪問したり現場に飛んでいくということになります。権限を任された範囲でベストを尽くしていくということでもあります。同様にマイペースで仕事をするということも必要なことで、場所を問わずに自宅や出先からでも仕事は出来る環境です。そんな中で私も、大阪から北京に飛んだり、成田で仕事をしたりというのが日常でもあります。心地よい疲れはマイペースで仕事に取り組んでいるからでしょう。こんな呼びかけがようやく届きそうな今日この頃です。

業界独り言 VOL305 新時代の到来

米国同時テロのあの日から、四年が経過した。そんな非日常の中で暮らしているという認識もないままに過ごしていた当時は暮らしていた。翌日からの米国での仕事を前に、準備として追い込みの作業を進めていた矢先での、あの事件との遭遇であった。戦争開戦といった疑問符が頭の中で駆け回ったのは徹夜体制でしていた仕事の次の展開として徹夜明けで向かうはずの成田空港への必要性が失われたことを自己再確認して深夜帰宅のタクシーの中だったように思い返す。あれから四年が経過して国際情勢としては更に混沌とした状況の中にいる。そんな中でも経済活動としてのアクティビティは秩序の枠の中で進められていて国策同士のぶつかり合いの中で中国にまで出張して日本メーカーのサポートをする時代を迎えている。

国民に聞いてみようという掛け声一つで解散となった選挙が行われ想定以上の結果となったのは新時代の到来といえるのかも知れない。多数決で決めるという論理が組めないほどに破綻した国会で明確な政策を打ち出せないできた与党からの転進にはふさわしい幕開けかも知れない。無論、この政局が安定していると考えるのは早計で、毎回サイコロの目のように結果が変わる時代になったのかも知れない。戦争の反対は平和ではなくて、秩序ある状況だという。戦争が手段だと考えれば、対抗する手段は外交交渉であろう。外交交渉にいたるまでの民意作りというよりも国民世論形成までも国策として刷り込みを徹底的に果たしている隣国などは、その行為も含めて積極的な外交交渉を戦時下のような面持ちで進めているといえる。

日本の平和ボケした状況で自らの国の歴史もまともに学ぶことも出来ない状況を正すことすら、出来ないのは歪曲した歴史のみを教えている隣国からの横槍に同調するようにすでに刷り込まれてしまった人たちで国が左右されるように構成されているからのようだ。ある意味で今回の選挙結果が新たな秩序を求めたのだとすれば、平和ボケした政党を選択できない状況になったのは致し方ないかも知れない。日々の経済を活動させていくために政治が動いていくが故に、隣国との経済関係と歴史問題を打ち出す政治としての建前との矛盾に遭遇してしまうのだ。まあ経済の関係がないにも関わらず拉致などの政治的な関係でのみ修復が図られる側面においては戦闘能力を含めた自立できない自国の現状の中で何の解決策も打ち出せない事情でもある。

米国の政治の影ふみのみをしていても仕方がない。3Gの開発戦争が終結して3.5Gや4Gに戦いの場は移っているというのが携帯業界の実情だろう、すでに国内の状況は戦いの矢尽き刀折れといった状況がメーカーには見え隠れしている。4Gこそ規格を自国の利益にまわせる様に実践実装を行い先陣を切り進んでいるというのが国内の先進キャリアの状況でもある。しかし、世界のバランスの中で果たして3Gすらまともに確立させないままに2Gを引っ張ろうとしている欧州の実情には、ユーロ圏での国情の改善が図られないままに、コスト高となる新方式に移行することをまだ国民レベルで認識していない状況が本来の遅れの理由なのだろう。3Gとしてのアプリケーションの面白さを使いこなそうとするのはむしろ東アジア圏なのかも知れない。

少なくとも従来の日本にはそうした勢いがあったし、バブルとはいえ文化的な先進性はアジア諸国に対して羨まれるものであったのは間違いない。憧れの日本の情けない実情は、国際競争力を失い自分たちの今までの状況を維持することすらままならない事態に遭遇してコスト見合いまで合理化を迫られる中でイケイケドンドンの状況からのギアチェンジに戸惑っている。国内メーカーや国内キャリアに元気になってもらうのは、Quad社のビジネスにおいても一蓮托生の必要かくべからざることである。あまねく技術を提供していくことこそが、Quad社の目指しているものであるからだ。技術の受け取り手であるメーカーのビジネスモデルに矛盾や採算性が問われている状況に対してもソリューションを提供しなければならないのは最近の一番の課題でもある。

ある意味で今までは防御を張っているようなライセンスビジネスからの発想だったところから踏み出してOEMメーカー自身の生産性を高めていくために力を注いでいくことが求められ始めているという時代の変革を一昨年辺りから真剣に考え取り組んできた成果がそろそろQuad社にも出てくる状況になってきた。これから、OEMメーカーに福音をもたらすことが出来るかどうかが問われている最大の期待であり課題であるだろう。メーカーの開発の痛みをよく理解するためには、メーカーと同じだけの端末を仕上げるということの取り組みをするという方向性もあるだろうし、そうしたアクティビティを共有技術としてのビジネスモデルを描く3rdパーティと協調路線を結ぶということもあるだろう。有識者である元気をなくした会社から元気な気持ちを活かせない技術者を受け入れるという方策もある。

開発という課題が段々なくなってしまうというのは、製品あるいは分野が成熟した証拠でもあるだろう。たとえば無線LANの技術などはコスト力も含めて日本が手がける部分などなくなってしまい企画することぐらいしかなくなってしまっているようだ。おかげで大変安価なユニットやアクセスポイントが手に入るようになっているのはありがたいことでもある。携帯電話の開発現場においても同様で標準化されたベースバンドLSIやアプリケーション環境を使い始めるとことのほか開発する項目がなくなってしまっているという現実に直面し始めているというのが最近のメーカーでの状況でもある。無論メーカーとして取り組むべきテーマが無くなったわけではなく、共有技術として解決されてしまった分野を手がけていた技術者の仕事が失われているという見方も出来るのかも知れない。

エンジニアの将来はいかようにでも会社としての経営の方向性の中で活用していくことは出来るのだが、明確な将来の方向性を示すことなく経営活動としての設計開発のサイクルが無為に過ごされたり開発成果を出せないままに破棄してしまったりということが続くと、技術者としての仕事への興味も意欲も失せてしまうということになる。そんな状況も相まって閉塞感が漂っているのが最近の携帯電話業界には多いようである。仲良く他社と協業しているという姿がギコチナイのは、当然だともいえるだろう。共同開発をしてきたメーカー同士ということでも現場の技術者にとっては辛い仕事になっているようだ。技術提携という流れで、独自の部分をどうやって作りこんでいくかという点が、特に頭を悩ませるのだろう。

プラットフォームとしての枠組みを各通信キャリアごとに提供することが求められている。そして各OEMメーカーが従来培ってきたそうしたノウハウをOEMメーカー自身が組み込み拡張していくことはコストが許さなくなっている。OEMメーカーは、完成度の高いプラットホームを求めてより矛盾が広がっていく状況にある。ノウハウを持つエンジニアこそチップメーカーサイドでの仕事に移動すべきだといえるのである。無論プラットホームベンダーも自社製品のみでそうした要求に応えられる物づくりをしようと画策しているのだから、好機といえるのである。こうした技術をキャッチアップしてしまった場合には、また別の技術を開発していくことになり、そうした前向きに幅を広げていくことも求められるのは技術者としての仕事として当然だろう。

あまり自分自身の仕事の枠組みを殻に閉じこもるようにすべきではない。人生一生勉強が続くものであり、特に技術者のライフワークはとくにそうだろう。プロトコルエンジニアからマルチメディアのエンジニアに転進したりするのもごく普通のことである。リアルタイム処理や、コンパイラの開発や、RTOSの開発、ICEの開発、端末設計から、システム商品の開発あるいはSDKの開発や講習会でのカスタマー教育など多面に亘るソフトウェアエンジニアの仕事を次々と変わって実践していくということなどは、各自の技術者人生の中で必ず遭遇することだと思うのである。それぞれの課題やテーマの中で自身が必要とするスキルを身につけ、それを用いて解決をしていくといういことが回せるのがソフトウェアのエンジニアというものだと言えるのである。

マクロやミクロの両方の視点をもち、現在の答えと将来の取り組みへの手がかりを考えながら日々の仕事をしていくということになる。アプリケーションを開発していくという上では、必ずしも同一の方法論で統一すべきではないという点に到達するのは、VBなどで開発している最近のシステムアプリケーション事情からも導出されるべき事由である。携帯電話のアプリケーションをJavaで書くべきなのかどうかという点なども興味深いテーマではあるものの、幾つかの背景から、そうはならずにWebで進められているXMLアプリケーションに注目が集まっている実情でもある。ようやくこうした成果が登場してくる時代になり、来年の端末開発では必須の機能やメソッドとなってしまうようだ。これが、携帯電話開発競争の新たな武器といえるのかも知れない。

白物電話機を開発することで、異なったUIを持つ違ったターゲットの電話機を構築していくことが出来れば、開発力の向上に向けた大きなステップになるはずだ。そうした状況で考えれば、メーカーとして拡張すべきサービス部分の開発を手がけたり、多様なユーザーに向けたユースケースでの実装評価を始めたりそうした研究実践を始めるのは、もう明日のテーマとなっている。そうした状況をキャッチアップしてもらうこともQuad社の伝道者としての仕事といえる。アプリケーションそのものの開発のあり方を問い直すような状況を提案するのは、画期的な効率改善を必要とする国内メーカーに向けた、テーマとして捉えて来月にはそうした技術説明会などが始まる予定だ。

今年のUI構築技術としてのXML応用技術は、昨年などはOEMメーカーが実践してきたWidget化を追いかけてきた状況からいえば、追い抜いてしまった印象がある。停滞している国内OEMメーカーの状況などからいえば、致し方ないことも知れないが、Quad社としてはOEMメーカーが成果を出してもらうことでビジネスモデルが回るのである。OEMメーカーの成果に繋がることを研究率先推進していくのは、社是ともいえる。そうした目的に、研究投資を積極的に進めていくという健全なサイクルを進めているので、ライセンス費用を有効に活用しているとも言えるのである。システム化技術としてのマイクロカーネル化も、ワンチップ化での3rdパーティOSの実装などを真面目に取り組んでいる結果ともいえる。地道に開発研究してきた成果を伝道していくことの喜びを分かち合いたいものである。

業界独り言 VOL304 新たなる挑戦

今日は、防災の日のはずである。新聞の紙面では祭礼でパニックを起こさせた無手勝流の新しいテロ手法が報じられていた。防災とは異なるかもしれないが、最近の天災続きの状況で猛威を振るったハリケーン・カトリーナやら日本での地震など身近に起こっていると感じている。米国籍の会社仲間が東京から、週に三日は大阪に移動して顧客サポートをしている。先端技術を選択されているお客様の支援のためである。年末商戦をターゲットにした厳しい条件ではあったが、技術的にも商品的にも問題を解決し、最後の詰めをしているようだ。そんな彼は月末には夏休みを取得して実家であるノースキャロライナに帰国するのだという。ちょうど米国での研修が指示されている状況でもあり実家帰国がロハで達成できるという状況は、彼の最近の成果も含めて当然だとも感じている。そんな彼の実家は実はハリケーン・カトリーナの猛威の影響を受けたようだ。何事もないと良いのだが・・・。

仙台で最近起こった地震なども、Quad社では特に仙台地区での展開もないのでと思っていたら、最近のQuad社が買収発表を行ったブロードバンドワイヤレスネットワークベンチャーの日本代表が米国からのドラスティックな動きの中で「まさかQuad社で技術説明会をすることになるとは考えてもいませんでした」という前説をしつつの説明会が急遽企画され昨日ホットな中で行われた。技術的な感性からいえば、かなり感覚も近い技術として同類だなという思いを持った。無論Quad社でも同種の技術開発を競合として進めていた経緯もあったらしくそうした社内コンペティターとの技術融合を通して一体化した中でよりよい技術として仕上げていくという流れに繋がるのだろう。仙台では、既にワイヤレスブロードバンドサービス実証実験が行われているのでもあった。説明会のプレゼンをみつつ地震のことを思い出していた。

説明会を受講して新たなQuad社としてのビジネス展開などに思いを巡らしつつ一路新幹線で関西入りをした。あいにくと新大阪止まりの「700系のぞみ」ではあったものの、先頭座席のコンセントがないタイプだった。このところ確率では九戦三敗といった感じである。まあ最近切り替えた軽量パソコンは駆動時間が長いということもあり気にならないかなということでもあったが、コンセントが無いタイプの先頭座席はテーブルが短く最悪なのである。明確にビジネスのぞみといった名称で車両を分けて欲しいものである。お客様が増えてくる状況に対応していく為にはサポート力の強化も大きなテーマであり来年度の取り組みの一つには大阪事務所のエンジニア増員や事務所拡張なども取り上げている。長年取り組みをしてきた採用のアクティビティではあるものの目だった成果も最近では続かなくなってきた。幾つか自信を持って紹介した人材の採用プロセスが最終段階で失敗したりもしているので、少し慎重になっている自分がいる。

プロジェクトXよろしくの熱血ストーリーなどは、最近の携帯電話開発の世界では中々聞こえてこないようだ。そんな熱い血潮を支えるほどのリソースも滾る情熱をもつ若者たちもいないのだろうか。前者はともかく、後者はいてほしいと思うのだが、モチベーションを高く保ちつつ生き続けるような仕組みもないままにカツカツのリソースで忙殺され疲弊しながらともかく仕事をしているらしい。採算が合わないからと、一方的に開発リソースを一極集中して始めた開発すらも制御しきれずに頓挫したりしている状況が聞こえてくるのは決まって3GPPの人たちからである。大規模な市場が待っていると期待されて、ようやく普遍的な位置づけに切り替わってきた時代のはずなのに・・・。税金として取り立てるようなQuad社のライセンス料金が立ちはだかっているからだという人もいるのだが果たしてそうなのだろうか。いろいろな工夫をして開発コストを抑制して鎬を削っているメーカーもいるのだが、やはりグローバル開発に立ちはだかっているのは日本の鎖国事情が手伝っているようだ。

開発費用を浮かそうとして適用するのは、最近では次のような手法であるようだ。出来合いのレファレンスデザインを導入する。選択のキーワードはハードウェアコストであるらしく、開発費用の観点でのコストについては二の次であるらしい。開発に関しての関心事項は、ブラックボックスを避けたいという心でありオープンでないものについては導入したがらないのである。そんな風潮を受けてLinuxが流行っているような気もするのだが、もともとTRONは無料の上で公開もしてきたはずなのに何かおかしいと思うのだが・・・。坂村先生も納得はされていないのが最近の端末開発事情ではないだろうか。レファレンスデザインで提供されるソフトウェアを更に自らの会社流に修正を指示して懸命にカスタマイズさせていく風景もよく見かける。そうしないと国内のキャリアの仕様やら、自社の歴史に裏打ちされたUIが作りこめないとか、過去との互換性が取れないからとかいろいろな意見が出ているからのようだ。短期日に要領よく作り上げるというゴールや達成するためのストーリーを決めている割には、レファレンスデザインを叩き壊して作り直させている感じさえ受けるのである。

安く作り上げるということは、言い換えれば、国際標準であるノキア端末の仕様と同等に仕上げることだという説もある。国内のキャリアに向けて今まで各メーカーが鎬を削ってきた状況の製品グレードと比較すれば折り合わないという事実もあるのかもしれない。そうした国内での経験値をグローバルなスタンスでの開発に生かせるようなメーカーとしてのアクションをとり始めているところもあるようで、これは新たなる挑戦ということになるだろう。ドコモ向け端末やら、KDDIの端末にも韓国製や中国開発の端末が登場してくる時代を迎えようとしている。グローバルな規格の中で国際的に通じる企画の商品として端末が登場してくるのであれば、欧州市場にも切り崩していけるのだろうがuiの感性をカバーするのは大変そうだ。UIをXML化して対応力を強化する技術についても年内には商品としての登場が期待できそうであり、次の展開としてのプリセット利用やらビジネスアプリなどに向けた展開なども興味深い状況が待ち受けている。

ワイヤレスブロードバンド技術を適用した携帯との共用チップセットなども、視野に入ってくるしQuad社のカバー範囲の広がりとともにサポートする人材の更なる拡大が求められているのも事実だろう。自立したエンジニアで、自己の世界を確立したうえで好奇心旺盛に新技術などの裾野の広がりをケアしつつ伸びていきたいという前向きなエンジニアが必要である。ある意味でメーカーで行うべきテーマが絞り込まれてしまうゆえにメーカーとしての仕事と技術リーダーとしてのQuad社側でのサポートの仕事という範囲を考えると魅力的だと思うのである。しかし、外資というハードルが高いと見られるのか、あるいは不安だと思われるのかが鍵となるのか、求人活動の成果には繋がらないのはメンタリティが前向きなエンジニアで会社の状況が閉塞的な中に留まっているような人はいないということなのだろう。国内だけで開発が終わる時代は終焉を告げていて、自社開発するにしてもアジアな協力会社を得なければ採算も技術者も取り合わない状況である。

携帯電話のみならず、ビジネス端末の開発に向けてもQuad社のソリューションを使いこなしてバイナリー環境やLinuxなどを使いこなしてXMLでUIを作りこなしていく時代に入るのだとすればエンジニアの数も取り組みも刷新していく必要があるだろう。受動型のサポートではなくて積極的な前向きなサポートをしていくために十月からの新しい年度の流れでは新たなる挑戦が求められているのだとおもう。前向きでいろいろなことに取り組んで生きたいというエンジニアこそQuad社のようなアクティビティの中で実質を伴った提案志向のコンサルティングをしていくのが楽しいやりがいある仕事だと思うのだが。そうした楽しさを伝道していくことが当面の私の課題でもあり、前向きなアクティビティに賛同していただく周囲のサードパーティの方たちへの仲間作りなどの作業が重要なテーマである。新幹線で関西に移動しつつ、有望な印象があったかつてのお客様のエンジニアと面談をしてそうした楽しさを伝えていくことや、実務としてアジアな渦中で開発を推進されているお客様のミーティングに向かって翌朝から関西空港がフライトしたりしている。

熱い思いが感じられない流れの中で淡々と開発が進められている印象のあるレファレンスデザインを用いたグローバルな開発スタイルなども、実はレファレンスデザインの強力な力の結果を表していることなのかも知れない。レファレンスデザインを使いつぶして全精力をかけて取り組んでいける余裕のあるメーカーなどは数えるほどしかない。そこまで行けないメーカーでは国内先進メーカーのプラットホームを受け入れて妙味もない自社仕様へのカスタマイズのみに忙殺されているのは矛盾を感じていることだろう。また全精力をかけてプラットホームを使いつぶしていくような仕事の仕方をしているメーカーがなぜか成功しないのも不思議なものである。ある意味で少し引いた印象のレファレンスデザインの使い方のほうが効率よく開発が進むというような印象もある。レファレンスデザインの完成度を上げる仕事をレファレンスデザインメーカーにジョイントして進めることも、閉塞感のある国内の状況を改善する手立てだと私は認識している。

大阪地区の下町である南森町にあった関西地区のサポート拠点も、ベンチャーとしてのQuad社の仕事の広がりを支えていくには手狭になり、来年までには大阪駅前までに移転拡張する計画である。そんな状況の中で期待されるサポート体制のイメージはハッキリと私の頭には浮かんでいるし、実際にそうした形になるだろうと思う。そんな状況を思い浮かべつつ北京の街で仲間と中華料理に舌鼓を打っている自分がいる。六年前にQuad社にジョイントしようと決めたときにイメージした将来の絵と、出来上がったことにギャップは多少はあるものの概ねの方向性に間違いはなかったと理解している。そして、今あらたなイメージの中で自分が取り組んでいくべき方向性やお客様への貢献度や対象となる範囲の広がりなどを考えるとおそらく日本事務所の体制は、もっともっと拡張していくべきだろう。顧客への貢献実績を着実に上げていくために意識高い仲間を募って生きたいと思っている。

業界独り言 VOL303 サマーバケーションはいつ? (サンディエゴにて)

西に東に奔走している。梅雨のさなかには、奈良の大仏を見に行くついでに、京都の竹林を訪ねて侘び寂びの技術の世界に生きる導師に教えを請う。ひと時の時間を共有したということで得られる安心感は、孤独な組み込み世界のエッジを生きていく者にとって変えがたいものである。俗世の流れに思いを馳せて道頓堀の川端の居酒屋で仲間と取り組んできた技術と今後の方向について昼間の顧客訪問を振り返る。スカッと晴れたような答えにならないのは日本の気候に依存するのだろうか、ウェットな気候で暮らしてきた日本人の”粋な”感性には、情に縛られることを善しとするようだ。梅雨が明けて、新たな技術の詳細を伝えに伝道の旅に出た、朝から新幹線オフィスに身を置き、第三世代のモデム環境の恩恵を享受しながらそんな暮らしを許容するコンセントも含めたインフラに感謝する。二時間あまりで大阪に至るような暮らしに不自由を感じることはなく、この狭い国土に見合ったインフラであることを再認識するのだが、どうもこの国に実際の暮らしぶりよりもインフラ整備によるフーバーダム的な政治思想が席巻しているように思われる。

第三世代という議論には辟易してしまうものの、結局のところ的確なサービスを提供することもなく目的の不明確なままに3G論議は終わり、政治的な道具立てとして魅力を失ったテーマは4G論議に移行している。輝かしい未来に描いているテーマと現時点での状況からのマッピングが見えないのは、3Gサービスの不毛な開発に費やした疲れや民生化した筈の通信事業者間の競争が結局のところ利権を巡る抗争にあるからだろうか。国民から多額の収益を巻き取る携帯電話事業の仕組みによって世の中の若者たちは、お金の使い道などの価値観を異なるものにしてしまったようだ。新たな市場創造をしたという意味において偉業と讃えるべきなのか、世の中をギクシャクとさせる状況にしてしまった確信犯として戦犯訴追をすべきなのか。夢のある仕事として始まったパーソナル通信環境を構築というテーマは、実りある時代を迎えて輝いているべきなのだが、従事している技術者達の顔が晴れないのは異常である。

世の中の麻痺しきった生活に渇をいれて指導してくれる先輩である祖父母といった家族の輪は切れている。勝手気ままに暮らす子供たちが過ごすようになった現代の日本。そこには効率という名の下に失った大切な何かが数多くあるようだ。そうした状況を加速してしまったのは、場所を選ばず自在にコミュニケーションする道具を開発してしまったことかも知れない。今電話をするときに手で、周りを気にして電話口を覆うようなしぐさをとるような人は数少なくなってしまった。高性能な電話機の開発がそうした仕草を必要としなくなったことが原因ならば、確かに技術者が戦犯ともいえるだろう。技術開発の発展とは別に文化継承という流れでの道徳教育を支えるインフラの破壊は進んでしまったようだ。自分の欲望のままに、同様な仲間とのコンタクトが自在に出来る時代を許容せざるを得ないような状況を想定していたのかどうかは、技術開発という流れとは別の課題だといえるのだろう。パーソナルコミュニケーションという技術は、それまでにあった交換台・呼び出し・交換機・電子交換機という技術から離れて、ついにP2PでSkypeを実行するにいたっている。

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業界独り言 VOL302 夕焼けの水平線に サンディエゴにて

忙しさの変容からか、また独り言のペースが高まっている。あるいは、独り言を通じて誰かとメッセージ交換をしていると考えている人もいるかも知れない。確かに、あても無く独り言を書き連ねていくのは寂しいものだが、かつての同僚らと会社を超えて業界同士の範疇で互いに叱咤激励しているという部分もあるだろう。「これからも元気をください」というメールが届いたりするのは、まだ善しとすべきだろう。自分自身の得心を得たいが故に、異論反論をいただきたいという思いも独り言の源泉でもある。複数の通信キャリアとの付き合いやら、異なったOEMとしての視点あるいは競合他社の視点いろいろな問題が、携帯電話という膨れ上がった爆発寸前の業界には山積しているのである。キャリアからキャリアに移る人もいれば、3rdパーティからOEMに移る人もいる。それぞれの部分での課題の壁を打ち破りたいという想いなどがそこにはあるようだ。

携帯業界は、そうした状況を反映してどんどん狭くなってきているように感じている。しかし狭いとはいえ、変わらないのはそれぞれの会社としての歴史や集うリーダー達の意識などによってたつことなのだろうか。最近では八方美人の如くさまざまなキャリアや端末ベンダーに対して、垂直統合戦略に基づいた展開をしているQuad社なのだが、どんな気持ちで付き合っているのかは、みな様々な違いを見せている。太平洋にしずんでゆく夕日を見ながら帰途につく人たちとシャニムニ働いている反対側の人達の意識の差は立場の違いからか肩にちからが。自分たちの文化と異なる人達とのコミュニケーションで障害を起こしているのは、東アジア地区の中でも日本に多いように見えます。最近ではすっかり国際企業として自社ブランドを確立しはじめた隣国の会社などを見ていると何か日本のみが失ってしまった時間があるように思えてなりません。

まあ少しでも未来に期待をつないでいくというのが、仕事の支えになりますので自身のモチベーション改善ということも含めて新技術などの伝道のようなアクティビティを仕事の中でも意識して取り組んでいるところです。ベンチャーの知人も自身のビジネスモデルの刷新の必要性ということを感じ取っての取り組みとして同様なことをなされているようです。広がり行く変容しつつある状況の中で、端末ビジネスも変わっていかざるを得ないのでしょう。単にMNPが始まり、パイの取り合いが始まるというような狭い観点だけでなく携帯電話のインフラを使ってどのようなサービスに利用していくのかということを考えていくことが必要です。無論コスト削減が必要だということも事実でしょうし、海外メーカーなどを使って国内インフラが何処も端末購入をすることになりました。日本人の感性に合うものが作れるのかどうかということもあるでしょうが、少なくともキャリアからの仕様に差異は無いはずです。華美な余計な機能を取り外し、魅力的な端末が構成しうるのかどうかという点も興味深いです。

最近ではリファレンス実装として、3GPPに合致するあるいはGCFに適合するといったことは当たり前のことになりつつあり、さらに踏み込んでキャリア仕様までもパッケージングしようという動きすら見られます。そうなるとメーカーが取り組むことは何があるのでしょうかと悩む人がいるようです。言い換えると今までは、どうもその事を実装できるかどうかということでメーカーの方達が自社の存在理由の一部としているような節がありました。チップセットとソフトウェアをそろえてインテグレーションしていく流れの中でキャリア対応の完成パッケージが存在するようになれば開発コストは一段と下がることでしょう。そのインテグレーションが大変で今までPCの世界ほどにまではプラットホームが完成していなかったと評されているわけでもあります。端末実装の世界で通信プロトコルの世界とアプリケーションUIの世界とを切り分けてきた背景には、それぞれの主体が異なるということもありました。

究極の世界として、最適なOSの上で通信プロトコルもアプリケーションも一体となって自在に実装出来るような環境が出来ればそれに越したことは無いわけですが・・・。製品レベルとしては意外なことですが、組み込みという世界で大規模なシステム構築をしていくために必要な機能分割単位での独立動作が保証されるようなOSの仕組みまでは提供されていなかったようです。モデムとアプリを分けることが前提となったビジネスモデルが、そうした姿を生まなかったともいえます。最高性能を実現しようとするならば、MMUもつかわずに全てモノリシックな状態で実行するというものが、ある意味で究極の組み込みだという意見もあるかも知れません。しかしそうした姿では大規模なシステムを構築していくことが困難になるということも一方ではあり、仮想的な環境としてJavaを動作させるといったこともひとつの解決策だったかも知れません。そんな世界から整理された権限を個別に与えられたOSに移行しようすれば、良いはずなのですが・・・・。

理想的な姿をまず描いて、その実現の機能検証を実装して評価しようというある意味で前向きな研究開発が進められました。昨今の状況でそうした研究を実際に行えるようなメーカーがいないと思われるのですが、垂直統合を標榜する故のことでもありました。理想系として研究開発された結果実現が確認されたのは、現状のスーパーバイザモードで動作する超組み込み状態で開発されてきたシステムとLinuxのシステムをひとつのカーネルの上で独立して動作させることがひとつの成果でした。これによりスーパーバイザモードで開発されてきたコードをUserモードで動作検証することや、そうしたカーネルによるオーバーヘッドの評価などが出来ました。Linuxが動作することにより3rdパーティのOSが動作することを許容する枠組みが確認できたことになりました。理想系として開発したもうひとつの成果はモノリシックな構造を書き換えてモジュラー化された構造の上で全てDLLで動作するような枠組みとしての実験でした。自在に必要なモジュールをローディングして動作させることが確認できました。

ある意味で壮大な研究を実証実験を通じて行った成果、大規模な携帯電話の枠組み(Platform)を刷新していくロードマップが規定提案できるようになりました。大きなメリットとして挙げられるのはカーネルを除く全てのシステムをユーザーモードにおく事でセキュアな環境が構築できることや独立して動作するまったく別のシステムを稼動させうること、あるいはつまらないメモリリークなどに繋がるエラーなどが容易に検知しうることなどが挙げられます、ドライバーにしてもアプリにしても許可されたメモリやIO空間に対してのアクセスしか出来ない状況が作り出されるので安心することが出来ます。またドライバー自身を別のプロセスとして動作させることも可能となり、3rdパーティによるドライバー開発といった仕組みも提供することが出来るようになりそうです。当然いいこと尽くめとはいかずに管理することのオーバーヘッドから性能劣化が数%ついてしまうのはいたし方ないことでもあります。しかし、最近のマイコン性能向上の枠組みを利用すればそうしたことも問題がありません。なにしろソフトウェア開発効率向上のためにチップを分けようという原点を正すことなのですから。

さて、そんなすばらしい環境に飛びこんでいけるのかという新たな障壁が生まれました。やはりユーザーにとっては大規模なシステム開発の根底となる部分の差し替えには賛辞もありますが、不安もありました。前向きな不安という意味で面白いと感じたのは現在使い込んでいる自社あるいは3rdパーティ製ソフトウェアが内包しているだろうバグの問題です。(無いのかも知れませんが・・・)今までは見過ごしてきた問題が、新たなOS環境のもとでは白日の下に晒されてしまいソースを自社部分は直すための工程を組めば済むことですが、3rdパーティとの協業作業については想定外だというのです。多くのメーカーが新機能についての差分開発をする形で蓄積してきた今までの環境を再検証するということが必要になるということなのです。無論新しい枠組みは検証も容易になりますので良いことなのですが工数見積もりも含めて想定外のこととなるのです。この程度のバグは許容してほしいという思いは差分開発をしている現状のユーザーの素直な悲鳴でもありました。

こうしたユーザーの前向きな不安を払拭する意味での対応策は、垂直統合を標榜するソリューション提供者としては新OS環境で検証するリファレンスを提供しつつそして枯らした機能を旧OSの枠組みでもしばらく提供を続けることがマイグレーションの道筋のようです。超組み込みの世界からの脱却という、新世紀突入という章に迎えるにあたっては今後のOEMや通信キャリアが考えるサービスの根幹を替えて加速させる意味を持つものの今まで以上に啓蒙活動をしていくことが重要となっています。しかし、こうした枠組み提案も含めて全方位戦略をとっているQuad社としての取り組みには別の批判もあがっています。全ての通信キャリアに技術提供している立場から言えば、こうした新しい技術を前向きに早くに使いこなしたほうがメリットがあると思いとは裏腹に、先人の苦労は積みたくないというのです。逆にいえば新たな技術提供を別の通信キャリア向けに提供してもよいのかという問いかけには別の答えも返ってきそうです。

インテグレーションされたパッケージに魅力的なサードパーティのコンポーネントが勝手に乗り込みだしていくとすると、通信キャリアが考える端末戦略自体とは別次元で顧客の心をつかみ出してしまうかも知れません。通信キャリアの競争ではなくて、本来の端末メーカー自身の競争になっていく時代なのかも知れません。こうした動きのベースにあった背景自体は、護送船団のように開発費用までも通信キャリアから補填を受けなければ端末開発がままならない状況に危機感を感じたこの業界を支える端末メーカー以外からの動きでした。しかし、そうした展開の行く先に待ち受けているものが、シンプルな通信キャリアとしてのサービス競争であり、端末メーカー毎の魅力という本来の姿に移るのではないかと感じます。通信キャリアがそうした業界自体の有り様に協力こそすれ、反発していくようではまだまだ携帯電話ビジネスの将来については面白い展開が待ち受けているのかも知れません。

新たな端末プラットホームを垂直統合で構築しようという野心的な取り組みがなされているメーカーがあるのは、同様な大規模化したIT化した家電機器のソフトウェア開発もまた大きな課題なのでしょう。機能が膨らみすぎて、その機能をUIとしても表現しきれていないような商品も出始めているようです。もっさりとした使い勝手なども含めて、PC化されていく端末機器に毎日のようにパッチ適用やアップデートを掛けていかなければならないような時代になってしまうのであれば、本来の製品購入をした目的を果たせないで無為な時間を過ごしてしまうパソコンユーザーのような気持ちを全員にしいてしまうのがIT化が描く未来なのでしょうか。セキュアなソフトウェア設計を果たしていくために組み込み端末機器の設計にも、OSからアーキテクチャーに至る変革の時期に直面しているのでしょう。メーカー自身で全てが捌けない事態を理解したうえで、正しくオープン化されてきた流れを受けて自らが手を動かして考えて本来のシステムエンジニアとしての役目を果たす時代になってきているようです。

サンディエゴ湾から、みえる綺麗な夕焼けの向こうに広がるのはアジアの端末機器メーカーの未来なのでしょう。リーダーとなるメーカーがぜひ東方の国から出てきてもらいたいものです。

業界独り言 VOL301 とっておきの仕事?

楽しくて仕方がないと思っている仕事も、人手がなければ始まらないということにもなる。どれだけ楽しいのか伝えられなければ、伝道者としての仕事も落第である。伝道者としてユーザーを掴む、仲間を増やすいずれにしても結果は・・・と問われて成果が出ないのであれば努力不足ということなのでしょう。たとえば、究極の実装として、ワンチップでプロトコルからUIまでが複合的な構成でリアルタイムとアプリケーションが共存しうるといったテーマを面白いでしょうと説明してみても、意図が伝わらない現状もあるでしょう。モデムとアプリとして個別ありきの常識に固まった人たちにしてしまった戦犯は、どこかに潜んでいるのかもしれません。最近ではマルチコアでクロックを下げて実装するのが低消費電力と高性能を両立する要だという意見もありますから、その意味でモデムとアプリを分けるのだという人もいます。ちょっと意味が違うと思うのだけれども、そんなことの本質まで議論するような閑のある人も理解している人もいないようです。突き詰めていくとCellのような構成になってしまうのかも知れませんね。

CPUの構成としてハードウェアアーキテクチャーとシステム実現のためのソフトウェアとしてのアーキテクチャーの視点を持つことが必要ですね、という話の延長線上にマイクロカーネルベースの環境の上に複数のOSを搭載してリアルタイム性能とアプリケーション管理の視点の両方に対応するといったことも検討の遡上には挙がってはマルチチップなどの影に消えていったようです。モデムチップとアプリチップの双方に乗り込んで設計を推進していくといったアクティビティに繋がらないのは、現実的な仕事の中で検討する余地などが日本メーカーに見られなくなったからだろうか。アーキテクチャーを新たに起こしてプラットホーム整備をするなんていう仕事を現実に興せる環境が限られているのは、そのことに必要な開発リソースや将来に向かった展開までが描けないからでしょう。よしんば描けたとして様々に変化していく状況の中で開発のテーマあるいは事業として維持していくことが出来るのかどうか・・・課題は山積している。

エンジニアにとって楽しい仕事も、使っているキャリアにとってみての視点はまだ別のものがあるようだ。高止まりでウインウインと重機がうなるような状況が続くはずもない状況を理解したうえで、得られた資金をチップメーカーに投資して解決をプラットホーム整備を行い解決を図ろうとしている状況もあるようですが・・・。結局トータルで幾らになるのという現実的な目的を果たすことが出来ないままに描いた食えない餅では成り立たないのはお察しの通りです。隣の芝生が青く見えるのはメーカーに限らず、通信キャリアでも同様らしく他のキャリアのやっていることをとっておきの仕事と捉えて同様なことにチャレンジしたがるのものです(実は相手がその逆に思っているのかも知れないのですが・・・。)。互いに環境が異なることを認識しないままに評価しているために、自分たちの開発チームの足を引っ張っているような状況もままあるようです。ソリューションベンダーとしての仕事では、実現した製品を作ってもらって何ぼの世界ですから、秘蔵っ子の楽しい技術も、実際にメーカーやキャリアの状況の中に写像してみると綺麗な画像にならないこともあるのですが、割り切りと考えていくのは世の常です。

携帯電話という消費電力重視の世界で特殊化されてきたものも、プラットホーム化が果たせるほどに潤沢なリソースが使えるようになってきたのはシリコン技術の進歩があるのでしょうね。本来の端末構築の目的を忘れて、目先の競争に走ると相手よりも強いミサイルや兵器を欲しがるようになるものです。具体的なテーマも考えずにリソース拡大を図っていくような進め方は自然の摂理からみても、間違っているのですが何故か携帯電話のグリーンプログラムを課したりすることは考えていないようです。リサイクルマークが付けられたりして困るのはチップベンダーとしてのQuad社もビジネスに影響があるでしょう。リサイクルしても製品として出荷することに対して課徴金を掛けるというわけにも行かなくなってくるでしょうから、iPODよろしくダウンロードしたくなるようなコンテンツの開発やら枠組みを提供していくことにもっと軸足を置くべきかもしれません。一年置きに買い換える人ばかりではないですし機能追加があとから出来るような仕組みなども含めて使いやすくするといったことも視野にいれるべきでしょう。

組み込みの仕事という観点では、実際の現場仕事が出来るのは日本ではなくなっていくのではという危機感も手伝い、ベンダーの方々やソフトハウスの方々などが梃入れをしてOEMに対して渇を入れたりしようとするようになってきました。腰が引け気味の業界の中で前向きな仕事を推進していくべきチップベンダーであるべきというお声も頂戴します。確かにリファレンスを作って仕上げはOEMさまにお願いしますというビジネスモデルも引き合わなくなっている時代のようです。一式使えるようになっているものを持ってこないと話にならないとまでいわれるとOEMさまの存在理由はと問い返したくなりもしますが、お客様の声には違いありません。ワンチップでマイクロカーネルを動作させながら、ソースデバッグを実現させたりすることにほくそえむような感性を持てる職場は、どうもお客様の場にはなさそうです。ロケット開発の現場にいる人たちと製品としてのミサイルとして購入して戦争をしている人たちの差なのでしょうか。組み込みという仕事を楽しいものとして味わえる感じられる職場であることをもっと訴えれば求人活動にも繋がるのでしょうが、どうもこうした感性を持ち合わせている人がいないということなのでしょうか。

XMLを組み込みで活用することで日本のコスト高情勢であっても、機敏に対応していくことで商機を導くことが出来るのではと考えたりもします。日本のOEMメーカーの方が元気になるような技術を提案してビジネスモデルの刷新などを提案していくということも最近の私の楽しい仕事のひとつです。こうした意気を感じ取ってくれる先輩達も周囲に増えてきているのも事実なのですが、もう少し追い込み有無を言わさぬところまでの充実整備を図ることが必要なことのようです。優れた技術を匠の感性で仕上げを加えていくというのはグローバルな会社でいろいろな感性の人たちが集まっている会社ゆえの楽しさでもあります。荒削りに物事を仕上げていく段階も必要ですし、細やかに完成に向けて感性を高めつつ確認を進めていくという人も必要です。合理的にテストを導くための方法論を論理的に考えてツール立てを作っていくひとも必要ですし、ソリューションベンダーと呼ばれる姿に求められる範囲は考えれば考えるほど深くなっていくものです。

先日、知人の方の紹介で若手の技術者の方を紹介していただきました。未だに人が集まらないで悲鳴を上げていることを知ってのことのようです。ご自身の会社の人材が活用されていないと嘆き、さらに紹介されるというアクティビティにまでとられているなんて、大きな信頼を寄せていただいているのはありがたいことです。実際に会ってみると、若いなりにはよく物事を理解しているという感じのする好人物でした。日本のメーカーが行うインプリンティングというシステムにより技術者の多くの方たちがカルガモ状態になっているのは確かです。彼自身も自分の境遇を客観的に見るということまでは出来ていないようでしたし、彼自身が作りこんでいる現在の仕事の意義についての理解や将来性についてはというところには視点を持っていないようでした。インプリンティングも含めて社員教育がなされていることのメリットは、そうした人材が何らかの事象で切れてスピンアウトした際に有効に活用できるということを私たちは上げています。最初から外資系の会社に入った人たちにはそうしたピンとした部分が足らないように思えます。

落ち着いてて仕事が出来るような環境でないということがあるのでしょうか。どうなるかわからないという状況であたふたと仕事をしているという風景が透けて見えてきます。外資系という枠組みでありがちなストックオプションが効率的に活用できることを期待してきっちり五年間仕事をする人もいるのかも知れません。外資に移ってしまうと尻軽と見られるのか、半年もたたないうちに引き抜きの電話やメールが入ってくるようになるのはなぜでしょうか。名刺がどこでどのように活用されているのかは知りませんが・・・。自分に納得の出来る仕事がじっくりと出来るそんな職場にいるという自負がありヘッドハンターの電話やメールには逆に切り返してこちらで募集していることを伝えたりしているのですが、その返事が返ってくるというような見返りがないのは、何かフェイクな話だということでしょうか。自身が楽しく仕事を前向きにしていることを伝えているつもりなのですが、よほどライバルメーカーなどの求人に掛ける意気込みで年俸の30%といったヘッドハンターの取り分が魅力的なのでしょう。なかなか減りません。

技術者もある意味で旬があると思われます、素直に育つ時期と悪い癖を掴んでしまうようになる時期とです。素直に育っている天然なエンジニアが良いのか、酸いも甘い知った癖が強くなったエンジニアが良いのか意見が分かれるようです。最近人事の方からは前者で優秀な若者を探し出すようにと明示されるようになりました。インターン制度まで活用してはどうかという意見も出るような状況なのでQuad社を目指す若者が輩出することも期待しているのですが、いつもそうやって学校を訪問しようとすると既に夏休みに入っているのですね。今後に向けてという価値観で夏休み明けにでも学校を訪問するというオプションも考慮に値するようです。ぴっかぴかの技術屋の卵を学校からインターンで探し出すべきか、ヘッドハンターに懸賞金を付けて探し出すか、面白いテーマや仕事の話に反応してくるような人材を地道に探し出したいという思いに舞い戻りつつ気持ちのせめぎあいが続くようです。日本人をあきらめて日本に住むエンジニアを選択してみてはという声もあるのですが、まだまだ日本人に期待は持てるはず・・・。