業界独り言 VOL128 携帯電話チップビジネスモデルの難しさ

QUAD社は、CDMA携帯電話のライセンスならびにチップセットの開発提供をビジネスと していて、チップセットと対になるソフトウェアで実際の電話機として必要な基本的 な機能までをカバーする一式のソフトウェアをチップの種類毎にライセンス提供して 開発費用の集約化を果たしている。色々なニーズに応えるべくチップ種類が急激に増 えてきたさまは、QUAD社にとっても正念場であろう。フラットな組織で柔軟に問題に 対処しつつ組織自身も変態しつつ対応している。基本的にソフトウェア技術者が全員 社員であるということが国内メーカーとの大きな違いであろうか。ソフト開発費用 は、ソフトライセンス料として各利用メーカーから戴くわけである。
 
携帯電話の端末開発にとってのソフトライセンス料は高いのだろうか。一機種で100万 台以上売るとすれば、ライセンス費用はコインを下回ることになるだろう。むろんこ れとは別に更にチップ組み込みでの端末毎のCDMAライセンスも有るが、これは本社部 門が受領する仕組みになっている。将来に向けた開発費用などはそうした原資に基づ いて本社が運用している。我々の事業であるチップ事業としてはチップ価格とチップ シリーズ毎のソフトウェアライセンスが収入の源流である。現在、QUAD社のDSPの命令 セットは非公開なのである。
 
非公開であるがゆえに、CDMAの処理方式のノウハウが隠せると考えたりもしたのかも 知れない。数年前のQUAD社の展示会ブースで見た記憶(転職前なので曖昧だが・・・) では一時期DSPを公開するという方針もあったりしたようだ。しかし、同様な商品を展 開してくるメーカーの登場などからか、そうしたビジネスモデルはなくなってしまっ たようだ。QUAD社のライセンスを受けて開発してきたメーカーが自社チップの開発を したりした例もあるかも知れない。実際問題IS95のチップを作っていたメーカーは幾 つか存在する(存在していたと書くべきか)。しかし、そうしたCDMAチップセットメー カーは、そのビジネスモデルを実現できなかったのも事実である。
 
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業界独り言 VOL127 日雇い生活の狭間で

一週間のペースというものが有るわけだが、月曜日は落ち着いて戦略を考えたい日である。米国がまだ、日曜であるからだ。土日までも出勤して色々な質問がメールで溜まっていたりもするのだが、そのまま返事が出来るもの有れば、こんなサポートまでもしなければならないのかという物もある。担当外だからといって内容も見ずに翻訳してサンディエゴに依頼をしていても身につかないので出来る限り把握をしつつ質問内容を確認して精度の高い情報に仕上げたりする落ち着いた時間でもある。

火曜日は、各国のサポートチームが電話を通しての会議で始まる。アジアとアメリカを結んで会議通話をするわけだが昨年から始まったアジア地区での事務所の電話環境は、まだ悪くて会議通話のなかでのノイズが予測できないようなパターンになるらしく除去されずに増幅されてしまうありさまだ。こうした音の加工も携帯端末であれば自分達のDSPなどの範疇であるのだが、交換機屋に文句をいっても仕方がないことなのだろう。こうしたノイズを越えてそれぞれの国の訛りのある英語で報告される内容を確実にサンディエゴチームが聞き取るのには恐れ入る。

やはり、日本人には聞こえにくい音があるというのは事実なのかも知れない。トレーニングCDを利用した成果は自分としての認識は無いのだが、同僚に比べて発音を聞き取る能力は高まったようには感じる時でもある。聞き取れるから判るのではないのだが、聞き取れなければ始まらないのも事実である。無論、聞き取れなかった事に留意しすぎて次のフレーズを聞き落とすことよりは次のフレーズから補完して話し全体を理解するようにしたほうがより良いように感じてきた。単語力は但し、自分でつけて行くことが必要だ。

お客様からの呼び出しを受けて、リリース間際の開発の渦中のお客様を訪ねて羽田に向かう。現地の空港で仲間や開発ベンダーである関連メーカーのチームと合流する。作法も判らぬ地方空港で昼食を挟んで互いの状況確認を行いつつ打ち合わせに入った。おかずを適当に選び、冷め切った肉じゃがなどを前にどうしようかと思っているとコーナーには電子レンジが置いてある。暖めて食べるのが作法なのだろうか。醤油とソースが同じ色の容器に入っているのも不気味なものである。勝手が判らない、なれない環境で仕事をするのと同じで大変だ。

山奥の秘密基地のような空港からタクシーで急行する。30分近くも高速を飛ばして、酒作りの町まで到着する。近隣で携帯技術の:研究に従事している知己もいる。普段は、こうした郊外への出張などなさそうなソフトベンダーであるらしく旅行のような感覚らしい。ようやく目的地である顧客先の工場に到着して、第三者であるソフトベンダーを交えての会議は始まった。雰囲気は、どこかぎこちない。無論端末を開発していただく上で、魅力あるソフトを開発してもらうことも必要なことである。全てのソフトを提供しているわけではないので、お客様の手を煩わせずに手伝いするような細かいケアも必要となる。ゲーム開発に必要となることと確実な動作という概念で設計される電話機としての物作りには相反する部分が存在している。

既に多くの携帯電話に移植されているというゲームソフトを実際にCDMA電話にも移植が開始された。CDMA処理に割かれるCPUパワーの成約とJavaなどの成約から開放されたさまには可能性を感じる出来だった。今後の展開が面白くなりそうな印象を新たにした。無論、日本の端末ではないために幾つかのスペックは見劣りする点もあるのだが実のある価格で実現するというコンセプトを提供していくという姿には、お客様からの共感を得られるだろうと考える。

ゲームベンダーとの打ち合わせは早くに結論を導き出せたのだが、いくつかの変更要望事項の盛り込みについては現在進行しているキャリアさまとのフィールドテストの進行の妨げにもなるためにリリース凍結といった目的からは次回のリリースに回されるという判断がお客さまは持ったようだった。ともあれ電話機としての完成度を高めるためのお手伝いが本来の私自身の仕事でもあるので、アルバイト的な改造よりもお客様の疑問や問題解決のために頭脳を貸し出すことに専念した。

ゲームやプラットホーム開発のチームとは現地で分かれて、そのまま関西のお客様のトレーニングのために大阪に新幹線で向かうため、近くのJRの駅までタクシーで急行する。着いた駅はひなびた感じのする駅舎であった。山陽本線に乗り込み、新幹線の最寄駅まで何故か先に進む形になっていた。手配してもらっていた券面を確認すると見慣れない駅名までのチケットとそのさきののぞみのチケットとなっていた。某市内から大阪までのチケットらしくひなびた駅が某市の市外であるための部分へのチケットとの構成らしかった。

最近は、どこの駅でもPHSはエリアになっているらしく、メールの送受信には困らないので駅のベンチがそのまま私の事務所に変身し、続いて山陽本線の座席が事務所になった。30分ほどで到着するはずの電車が途中で停車してしまった。何かと思うと信号機の故障だという。車掌が降りていって、信号機の修復をしているらしい。のんびりとしているものだ。こうなると優秀な鉄道ダイヤから検索された乗り継ぎ案内も形無しだ。無論、欧州のように鉄道ダイヤ通りに走行したら正面衝突したという事例もあるのだが・・・。

700系のぞみに乗り込み、大阪に急行する。先に東京から向かっている同僚に連絡をとると既に大阪いりしているようだ。夕刻に関西空港に入国する予定の米国チームはもう少しでホテルに入る予定らしいので、待って先に食事を始める予定だといっていた。私自身は、あと一時間ほどはかかるので先に始めていてくれるようお願いした。暗くなるのは早い、初芝時代に良く通った山陽地域ではあるが複数のお客様のサポートのために出張が重なっているような生活は無かったものだ。ある意味ベンチャーとしての忙しさでもある。

二日間を大阪のホテルとお客様との往復で費やす。端末にはPHSのアダプターが刺さっているので、どこでもオフィスである。20GBのディスクに蓄えられたドキュメントとソースならびにネットの先にある会社のデータベースが仕事の支えである。文化の違いは、あれサンディエゴのエキスパート達の技術を日本のお客様に繋ぐコネクターの仕事は、かつて要素技術を開発していた時代の仕事に良く似ている。共通語である英語に集約して資料やソースコードが出来ている点は異なるのだが・・・。

こうして予測できた週末の夕方の時間は、京都駅のミスドで珈琲をのみながら端末に向かっている。トレーニングに来ていたメンバー達を週末観光にするためのホテル予約などの手続きの最終確認などをメールやウェブで検索して処理をしている。狭いテーブルが作業机になっている・・・。当初は、この行楽シーズンのさなかに急に京都などの宿が取れるのだろうかと思うような状況であったが幾つかの候補が見つかり最終的にベッドのサイズから新都ホテルに土曜日泊まって貰い一日半の京都観光をしてもらうことになった。

実は、金曜の夕刻まで京都に残っていたのは、知人と久しぶりに話しをすることになったためでもある。マイコンの開発を四半世紀続けてこられた「マイコン老師」と私が勝手に呼んでいる尊敬する同期の方である。オイルショック後の不況期に入社した同期の人数は少なくベビーブーマーと高度成長期の多くの先輩達で構成される社内でも特異な世代ではあるのだが、なかなか凄い人物が多い。マイコン事業の渦中からみるとユーザーである私の仕事が異様に映ったときもあったようで彼のところまで「呼び出し」を食った記憶も新しい。

約束の時間に、京都駅で待ち合わせていた。実に7年振りくらいの再会である。一緒に来ていたのはやはり知己である現在は彼の番頭さんをしているコアエンジニアである。厳しい時代であるが、夢を追いかけつつ新たな分野としての実績を踏んできた彼らの業績は初芝の中でも誇れるものだろう。そろそろ50に差し掛かるという年代であるが、相変わらず実に若々しい感じである。奇遇であるが、新都ホテルで食事をしながら歓談することになった。

先だって日経に掲載されていた人事通達から彼のマイコン開発分野での職制が開発センターの所長であることが、わかったのでお祝いの茶菓を送付していたのだ。初芝をやめるときに「あんたはようやるわ」と京都弁で頂いた彼からの手向けメールが懐かしく思い出される。私がベンチャーに身を寄せて何をしているのかというのが彼の知りたいことであったし。私も携帯ビジネスと半導体ビジネスの間を飛び回るものとして、もっと色々な半導体メーカーと付き合うべきであるという感触を持ち始めていることもあり、彼の最近のことを知りたかった。

かつて少し時代から浮いて、日経に三菱のマイコン応用記事を掲載したりしていた怖いもの知らずの時期を過ごしながら、同期である彼との接点が再開したのは初芝の事業の連鎖反応的なことの一環であったのかもしれない。良い意味で総合電器メーカーとしてアプリケーションとデバイスが繋がっていた時代である。彼の暖めてきたコア技術を使うことで携帯電話への応用や未来が予測できたのは幸いであった。これがきっかけとなって初芝の携帯電話のマイコンは三菱から初芝オリジナルにハンドオーバーしたのである。開発投資とビジネスの連鎖が続いている時は安泰だ。

現在の携帯電話の溢れ返った時代を6年前にその萌芽として始めていたことと、現在のQUAD社での仕事への流れは自分自身でも予測できないものであった。しかし、人と人との連鎖反応的な結果として今は捉えている。技術者は殻に閉じこもるべきではないし管理志向に全員が進んでいった場合には空洞化してしまう。情報共有していくために必要なコピー代を案ずることもなくなり、ウェブやメールで実現できる時代となった。そうした事が適わなかった時代において始めた、情報誌のようなミニコミ活動などが今のこの独り言の原点でもある。

若手に伝えたい、あるいは同僚に伝えたい、先輩に伝えたいといったことを広がってしまった輪の中で実践していくことへの限界と挑戦してきた。最後に前線から離れて閑職と呼ばれるような状態に陥ったのはある意味で敗北であったかも知れないが、どんなときでも前向きに仕事をしていきたいという思いに変わりは無い。そうした結果、また新たな人との出逢いが生まれてストーリーは展開していこうとしている。

しかし、実際の私の生活はお客様の開発スケジュールと変遷する日常のイベントにより駆動され、今日の予定は判るものの明日の予定は今日確定するといったことが最近続いている。日雇いのようなものだ。火曜日の朝、お客さまのトップが来訪して、密接なサポートを要求されると、その結果米国駐在サポートのストーリーが出来たり、あるいは同日提供した解決策が功を奏するとこのまま日本でサポートをしてほしいといわれる。ギアチェンジが入ると行き先も変わる。急遽また週末を大阪のホテルで過ごしたりしている。

毎日パスポートとのぞみの回数券を持ちながら流浪の旅をしている・・といった感じではなくて。毎日のオフィスが変化に富んでいると観るべきであろう。こうしたメールを大阪城を目の前にしたホテルから書いていたりするのも何だか不思議なものである。お客様がもう少しプライドを捨てて仕事をしてくれたら進むのになと思うことは多く実質的な進展に繋がらない障害の多くはお客様のなかにあったりもする。フラットスリーではないが、フラットな中で開発・支援の両輪を回している私達の会社をもっと利用してくれたらよいのに・・・。

今日は、ボスとの国際電話でのパフォーマンスレビューである。いわゆる査定だ。予め査定関連の情報は周囲に質問として投げかけられていてこれらについて皆メールで返事をしている。したがった査定されているのは周囲からという見方も出来る。上司は、それらの情報を収集して公平な裁定を下すわけだ。予め、上司の書いた査定結果のレビューレポートがメールで届いていた。時間になり上司に電話すると、繋がらない。セクレタリーに電話をしてどうも何か急用でいないらしい。セクレタリもVPである彼の居所は不明らしい。明日の朝に持ち越しとなった。

日雇い生活の改善のために出来ることは想定されることの事前回避の為の情宣活動や執筆活動らしい。こうした私への改善項目の要望もパフォーマンスレビューには記載されている。さあ、今日金曜日の京橋から始まる週末はどんな一日になるのか。果たして明日の朝は自宅にいるのだろうか・・・。

業界独り言 VOL126 最初は小粒で・・・

山椒は小粒で・・・が正しいのだが、最近の携帯電話では最初から巨大なのだ。日本 のハイテク機器全体がそうなのだろうが、新製品で新分野に出るものは機能が唸るほ ど入っていて良くわからないものが多い。次の段階の製品でコストダウンを考えつつ 機能シュリンクをしていくという流れは何時の頃からか定着しているようだ。最初の 製品でピリっと効く所があれば、広がっていくのではないかと思うのだが・・・。
 
実際の端末価格が、顧客から見えないように補填されて提供される通信キャリアで扱 われるハイテク製品・・・それが携帯電話である。ユーザーの価値は当初の購入価格 と以降のランニングコストである。幸いにして現時点での激しい通信キャリア同士の 競走の渦中ではユーザーがメリットを享受しているのだろう。通信トラヒックが溢れ て新機軸を打ち出さざるを得ないキャリアと、先行されたキャリアを追走して差別化 した新機能で追い打ちを掛けているのが現状だ。
 
開発技術者同様に、通信キャリアも疲弊している。開発依頼する内容が高度化してく る中で新製品開発での仕様検討なども、標準化作業などとあわせた形での通信キャリ ア間の調整活動なども含めて目白押しだからだ。彼らの評価は、新規契約数の追求で あり、結果が出ない端末の開発依頼は尻すぼみだ。各キャリアともに新しい未来に向 けて見えない方向を模索している。ドッチーモと同様な戦略で複合電話機がまた開発 されている。
 
デュアルモード機が、登場するとは思っていたのだが何故かWCDMAとの両用機ではな く、シティホンとの両用のようだ。確かに米国などではアナログ携帯との併用が当た り前なところもあるので不思議ではないのだが、全米をカバーした利用形態にあわせ るための策でもあった。日本では、そうした必要性は無いはずなのに、あえて狭い範 囲でしかサポートの無いシティホンとの両用機を出すのか。都市部での周波数不足問 題を解決するというのが目的なのだ。言い換えると、これが達成できると当分WCDMAの 必要性がなくなるのである。
 
二つの電話機の機能を足し合わせて倍のハードのコストにはならないのだろうがテス ト項目は倍以上になるのだろう。最近では、PHSもデータの目的として十分な存在 価値が出てきているのは、FOMAなどでのコストが明確になってきたからでもあろ う。収容能力を高めて収益力を高めるという目的で開発されてきたFOMAではある が、PHSや無線LANという範囲での応用が広まってくるなかで期待していた収益 力という背景は変容してきているといえる。
 
テストの効率化を図る為に自動試験装置の開発を行っている知人もいる。キーボード を物理的に押したり、液晶画面をカメラで捉えるというまさしく鉄腕アトムに仕事を 手伝ってもらうような機能ではどうかと思っていたら、液晶コントローラへのバスを キャプチャしたり、若干のソフトウェアの介入を行いシリアルでキーボードのイベン トを挿入するといった工夫で対応されたりしている。これならば、不確実な大規模な ソフトウェアのテストを確実に進められるのではと納得させられるものであったりも する。とはいえ全てのテストが解決するわけではなく繰り返し性の高いテストには向 くものの感性に訴えるようなテストについては人手が必要なのである。
 
当たり前と思ってきている機能にも、疑問をさしはさむ余地があるのではないかと感 じることも多い。携帯電話のソフトウェアの複雑さを考えると触りたくない部分もお おいようだが。DVDレコーダを購入してビデオ代わりに最近では活躍してもらっている のだが、最近のAV機器はパソコン以上に未完成交響曲を演奏しているようだ。確かに 色々な機能があるのだろうが余りにも増えすぎたソース(入力)に対応出来なくなって いるようだ。
 
さて、マリリンマンソンの出演していた今年の夏のイベントの再放送がデジタルBS で行われていたので恐らくとりを勤めている時間帯を狙って高画質で録画しようとし たのだ。むろん流し撮りもしたいのでアナログのビデオで三倍にして全体も取ろうか と考えた。しかし、実際にはデジタルBSの再生出力は、デジタルレコーダであるD VDレコーダにのみ結線していたので、AVアンプでビデオ同士のダビングモードに してアナログ側でも録画が可能になった。
 
落とし穴は次にあった。高画質モードで録画しようと考えた最後の時間帯を狙っての タイマーが仕掛けられないのだ。タイマー録画をセットするとビデオのダビング回路 までもシャットダウンしてしまうのだ。従来のビデオの概念で言えばタイマー録画と いうものは、そうしたものであったのかも知れないのだが色々な世代の機器が共存す る中で果たす役割というのは、新しい機器の機能がその橋渡し役だったりもするので こうした矛盾に遭遇する。ソフトウェアの制御でいえば、ダビング機能を利用してい るクライアントがいる場合には、電源切断をしないようにするためには、オブジェク ト指向的な考えで設計しておくことが大切だったりする。
 
他方、そうした設計手法で開発されたモジュールを従来の概念でしか設計できない人 から見ると理解しにくいというクレームに繋がったりもする。まだまだDOS的な考 え方での設計が組み込みでは主流をしめていて、Windowsのようなイベントやコールバ ックといった概念での設計にはなり得ていないようだ。デジタルAV機器ということ で需要を喚起しようとしている電機業界なのだが沢山存在している各ユーザーの資産 との共有を図りつつ使いやすいものを提供していくためには、まだまだプレークス ルーが必要だと感じる。
 
「そんなことも出来ないの・・・」と冷たくあしらわれてしまう最新型のデジタルB Sテレビやレコーダ達を見ていると開発の裏側も見え隠れするために「しようがない な」と一人思ってしまうのは間違いなのかも知れない。何かまだ革新が足らないのだ ろう。次世代携帯という契機に、こうした革新を確実に進めていきたいと思うのだが 山ほどもある機能リストに埋没されている現状も見えてきて、支援するポイントを模 索している。
 
体制の刷新やらプロセスの改善やらというのが、各メーカーでは前にも増して表に出 てきた。知人の名前がマイコン開発センターの所長という人事通達として新聞に載っ ていた。四半世紀オリジナルマイコンの開発に費やしてきたことを知っているものと して、彼がこの時代のなかでどのようなコンセプトのマイコンやソフトを繰り出して くるのか楽しみでもある。お祝いに茶菓を送る事にした。所長さまならば部署は明確 なので届くだろう。

業界独り言 VOL125 ゆるやかな時間の流れ

今日は、遠地のお客様への訪問出張である。携帯電話業界は、全国各地の開発メーカーが参入している。本日伺うメーカーもその一つである。我々が支援していくメーカーの中でも、コツコツと地道に開発されているという印象のメーカーである。寄せられる質問内容などを通じて、そのチームの実力やメーカーとしての開発スタイルなどが良く伝わってくる。ここは、決して派手ではないが、堅実な物作りのメーカーである。通信機器の専業ではないが、組み込み機器でのRFの経験はコードレスやPHSなどを始めとして取り組んでこられた系譜である。

打ち合わせの中で、私達が製品にこめるメッセージに対して、お客様からの開発に対するメッセージが返ってくる。頻繁訪問できる距離ではないが、一回の訪問で得るところは大きい有用なお客様である。地方でじっくりと開発を進めておられる会社なので自分達の身の丈にあったペースで携帯電話を開発している。この為、私達の提供するチップ全てを次々と取組むわけではない。私達がチップやソフトに対して次々と機能を追加していく流れのなかて差分をベースにした資料などで対応していると不十分であったりもする。

ゆったりとした時間の中で午後からの打ち合わせは三時間あまりを経過していた。真摯なお客様との意見交換で次の製品や展開に向けたテーマも明確になってくる。気がつくと色々なテーマについて話をしいて訪問回数の少なさをカバーするだけの打ち合わせになっていた。辺りはとっぷりと暮れてきて鈴虫の音が響く中で、タクシー待ちをしている。この地方都市の中では大きな電機メーカーでありタクシーなどもお得意さまとしているのだろうが駅構内でのタクシー待ちという地方都市特有の運用形態から時間がかかるのは致し方なかった。
 
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業界独り言 VOL124 オープンソースの使いこなし 発行2001/9/17

携帯開発競争は、現在二極化していると言える。一つは原資を稼ぎ出す現行システムの端末開発の競走である。二つ目は次世代に向けた端末システムの開発である。後者は来月からの商用サービスインという状況なのだが、全国規模でないことも手伝ってテレビやメディアからは全く見えてこないのが実情だ。システム開発が難しいという事だろう。端末価格が一桁高くなるようなシステムを今までの延長線上で開発を進めていくことは並大抵のことではない。

儲け頭である現行携帯での開発完成度を向上させて、回収などの不具合を起させないためには買い入れのソフトであったとしても自社で吟味してテストを十分に行って検証していくことが肝要なのだろう。レディメードのソフトは、ソースで販売されていたりオブジェクトで販売されていたりするのだが開発件名に比例して完成度が上がっていくものだろうから実績ライセンス数量が多いからといって完成度が高いとはいえない。

また個別のメーカー毎のカスタマイズが必要な携帯の従来の状況では例えOSがITRONで共通だったとしても、その上に構築された各社のプラットホームがバラバラである為にソフトベンダーとして、その対応に追われてしまうことが問題になったりもしている。その対応力を高めようとして技術者を増員していくためには端末メーカーが経験したように開発プロセスの改善が大前提となっていることは間違いなくそうしたことが出来ていないベンダーであれば今後品質問題を引き起こしてしまうことになるだろう。

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業界独り言 VOL123 順序だてた開発の中で 発行2001/9/5

求人最前線は、最近の閉塞感を反映してか感覚的に感じ取った技術者が動き出してきた。グローバル化を達成しているアジアの隣人技術者がスキル・語学などに強みを発揮して目立ってきた。国内の技術者の多くは、上位層を志向する技術者が多く買い入れソフトやチップベースでの開発がベースとなっている事情が反映されているようだ。支援技術者としては語学や幅広い視野と常識レベルでのソフトウェア技術を持つ人材が欲しい。

しかし、国内からは輩出してこないようで、国内で動き始めた技術者にテンプレートを当てはめても中々複合条件をクリアする人材は出てこなかった。開発母体である米国サイドとの技術議論をユーザーの声も含めて反映してコミュニケーションして解決していける能力とは、厳しいハードルらしい。日常の開発を通じて達成していると思われるレベルだと思うのだが難しいと引っ込んでしまうのが実情だろうか。

そうした暮しを続けてくる中で少しづつ結果に繋がる人材にヒットしはじめた。掲載された就職情報誌を見て応募してきた中国人技術者や、ヘッドハンターが探し出してきた国内の技術者などである。国内の彼の会話能力は、TOEICで500を少し越える程度らしく自分自身の進めてきた仕事の説明がおぼつかない様子であった。中国人の彼は三年ぶりに使いましたという流暢な英語で内心は緊張していたらしい。

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業界独り言 VOL122 涼しい新学期の開始? 発行2001/9/1

とにもかくにも、第三世代携帯の商用サービスが宣言された。まるで、WINDOWSリリースのマイクロソフトのビルゲイツの如きだ。懸案のデータ通信料金は格安ということで8000円で準固定料金ということだ。賢者の多いキャリアということであるが、今年度中に15万台を狙うというのだが、目算としては少なく設定してあるように思うのは少し酔いが醒めた状況なのだろうか。
 
知人が利用している、試験サービス対象のデータカードによると通信速度は64kbpsまでにしてくださいというご指導が出ているようで彼はもっぱらH゛を使っている。こちらの方が安定にアクセスポイントとして利用できる。瞬間的に384kbpsに達していた時期もあったのだがあっというまに切れるという状況では試験サービスともいえないのが実情だった。本当の意味の試験サービスが晴れて始まると理解すべきか。
 
通信料金の大幅値下げ(?)でも月額の通信料金は5000円以下でデータ使い放題にしてほしいという思いと相容れないのが実情だ。なにをそんなに高速通信に拘るのかいまだにもって判らない。高速通信を利用するのは一部のビジネス用であって全員が利用した場合には成立しないことは、プリ試験サービスを通じて認識されているはずた。ユーザーからの「アンテナ三本なのにデータ速度が出ないんですけれど」というFAQにも禁止技ともいえる、電界強度を下げるという荒業で対抗しているようだ。
 
新学期から始まる商用というサービスの完成度については、今時点では何もわからない。審判が下るという意味においては大変厳しい試験シーズンともいえる。この成果如何で、今後の就職活動にも影響するのだから、キャリアとしては落とせない試験である。少なくとも前期試験の成果は惨憺たるものであった。一ヶ月前にアナウンスをし直すという方策が、通例となるのは情けないことでもある。
 
まあ現在の端末の性能は、方式により決まってしまっているのでiMODEになれたユーザーにとって使えないという「レッテル」を貼られないようにするのには何か秘策が出来たのであろうか。動機が不純なままでの後期試験への取り組みとしてはEnergyStarの対象にもなりえない方策を推進しているとして世界からの糾弾を受けなければよいのだが、実はこの辺りがGPRSに固執している背景でもあるのではないだろうか。
 
通常の使い方、あるべき端末の価格といった面で考えてみると商用サービスという名前の後期試験サービスにおいての端末実勢価格は、どうも通信キャリアが半額持ちますというのが実情のようだ。さすが、太っ腹だ。何はともかく江戸紫ではなくて、「食べてくれい第三世代」という広告の意味であれば、後期試験サービスまでの台数を15万台に制限した意味は、予定している端末助成金は75億円ほどだということになる。
 
怖いのは、やはり端末品質であろう。商用に向けて開発プロセスの改善などの成果が活用できる会社が勝者になるのだ。商用サービスという宣言という新聞報道には「Mコマース」というイメージは見えてこない。一般ユーザーへの展開は諦めて企業向けサービスとして位置付けるという方針を自分自身で納得できていないというのが、後期試験サービスの状況であろうか。
 
後期試験サービスの先には卒業試験があり、今後の進路を決めていく重要な位置付けでもある。動機をしっかり固めて低価格・高品質・多様なサービスという求められている姿、華美な絵空事の世界を追及している現在の携帯業界の方向はいまの自分達の状況と将来を認識していない中での間違った結末への誘導灯のように見えるのだがいかがなものか。
 
今時点で端末価格は10万円を越しますといった瞬間に、まさに瞬間凍結乾燥状態になってしまうだろうし大手町に砂漠が出来てしまうだろう。逆にそれを認識した上で一年間でキャリアが半分の費用を毎年分担していくという構図と通信費用の値下げという図式では、大富豪と大貧民といった業界バランスすら揺るがしかねない。あまりに性急な展開を急いでは平民ですら生き残れないという厳しいありさまだ。
 
すでに他の通信キャリアでのWCDMAの話はどこにいったのかわからないというのも実情だし、ますますわが国でぶち上げた高邁な構想が薄いものであったことになってしまう。このままでは、わが国は単なる超小型の部品立国を目指すしかなくなってしまう。誤りは早期に是正することが必要である。新たな歴史教科書のなかに身勝手な技術戦争といった章が出来てしまうような時代になりはしないか。
 
狭い日本という国の中で消費電力をわざわざ高くする方式を選択して、ますます過熱する技術暴走の中で政治も熱暴走しているようだ。普及が一巡したら買い換えないという堅実の欧米諸国の人たちの個人主義の暮し振りと、流行廃りを追いかけて毎年機械を買い換えていく全国一律中流主義の日本との間の文化ギャップとが生み出したのが理由なのだろうか。
 
大富豪として財を成すなかで投資として取り組んできた次の一手は、出しなおしたほうが良いのではないかと思うのだが賢者のキャリアとして間違ったメンツを捨てられるのかどうかが課題だ。熱暴走しているのでまともに命令のフェッチが出来なくなってしまっている。
 
昔、京都のベンチャーソフトハウスで一日留守番をしたことがあるのだが、ベランダの室外機と手すりの間に何かの看板が飛んできて挟まってしまったのだ。京都の夏でエアコンが壊れたら最悪なのだ。この状況の把握には、当時個人でスーパーミニコンを所有するという事が更に室温をあげていき、ソフト開発に没頭する中でスクリーン上に現れた温度異常の例外処理メッセージでようやく気がついたのである。室外機は死んだ。
 
今年は夏が暑かった。このことが前期試験の結果に出ているのだとすれば、後期試験の時期で冷却が図られれば次の段階に進めると思うのだが。後期試験で進学していく仲間達や前期試験で退学していった者達など色々な局面を迎えている現在である。グローバルな中での後期試験なので世界連鎖不安などとの相互影響も取りざたされている。既に公社ではない会社が進めていることへの責任は国には無いのだから政治は介在しない。しかし、小泉さんの範疇ではないのか?
 
後期開始は、来月だ。今回の新聞報道は、前半戦の終わりを宣言する。短いハーフタイムの中で後半戦への布陣や選手交代が勝利への選手交代枠は三人までだし、外人枠もある。サッカーでは帰化してまで日本で仕事をしようという優れた選手はいるのだが。この試合は、国際Aマッチだったのかも判然としない。故障者続出というこえには、グラウンドの不良も一因と言われているのだが・・・・。

業界独り言 VOL121 HugeModelからSmallModelへ 発行2001/8/30

携帯電話は、この冬モデルには10MBを越す事態に突入しそうだ。私のVisorよりも大きなフラッシュサイズである。無論VisorのCPUよりも携帯電話のそれは高速であり、綺麗なカラー液晶がついていたりするし、当然無線部もついている。イヤホンも繋がらないPDAと比べると比較のしようがないほどの格差である。しかし、私がちょっと欲しいと思うソフトを捜してダウンロードするというところで考えるとPDAは良いかも。

さて、携帯用のプラットホームを開発しているメーカーは積極的か受身かで大きな差を生んできた。積極的なメーカーは通信キャリアと組んで共同開発を進めてきた上で、その仕様書の中に彼らのエッセンスをちりばめているのである。4MB足らずのサイズに高機能電話機が出来上がるのには理由があるのだ。受身で開発しているメーカーは当然8MBを越すサイズになっても致し方ないと判断するのだ。

サイズ重視で、compactサイズのフットプリントを考えてシステマティックに考えられる人材というのは稀有なほどCDMAというキーワードのつく携帯電話機は巨大なシステムと化しているようだ。確かに8ビットを越えるような技術者を集めてテストや開発をしているのであればコミュニケーションのボリュームだけで大変なものになってしまう。マスコミを通じてアピールしてきた3Gの方向性としてはEPOCなどに代表されるものを目標にしているようだ。

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業界独り言 VOL120 Y君への手紙 発行2001/8/23

Y君は、自分自身で会社を興してソフトハウスをやっている優秀な技術屋である。色々な通信システムも手掛けたし最近流行りの2.4Gも手掛けてきていた。英語に臆することも無く海外にデバッグに赴いたりもしていた。携帯電話のシステムがコンピュータ化して肥大化する流れの中でインドの象の寓話ではないにしても全体が見えない技術屋を数百人集めて開発から試験までを実践しているのとでは隔世の感を彼の仕事ぶりには感じる。

元々は大手通信機メーカーの直営ソフト会社に就職した彼とは、一緒に仕事をした事も彼の黎明期にはあった。だがソフト会社特有の二次外注への発注や見積もりといった運用を突きつけられる中でソフトウエアの開発に仕事を見出してきた彼には、US向けの自動車電話の開発などを進めてきた過程などからも自分の所属している会社と自身がミスマッチしていると判断した結果会社を興して一匹狼として生きる路を選択したのだった。

アセンブラで開発してもバグもなく安定なシステム設計とモジュール開発が行えるのは、彼いわくインタフェースをきっちり設計しているから当然ですよといわんがばかりなのだが。そうした当たり前のことをシステム開発の経験値として学ぶ機会を与えあるいは共有することよりも日常の溢れる開発件名の消化のために見積もり発注といった事由に忙殺されてしまう事態を選択させてしまうのは正しいフィードバックループとはいえない。

日本の会社では、優秀な奴ほど忙しくなってしまうような気がしていた。わからない奴には見積もりが任せられないということなのかも知れないのだが・・・。判っている奴が、判っている外注を前提として見積もりを行い開発を任せて達成していくというビジネススタイルがうまく回ることを祈念してしまうのは神道の国だからだろうか。相手を信用せずに疑い、出来上がりの影響がないようにアイソレートする仕方は米欧の方法だったりもする。

Y君は、若手の学生を使ってソフト開発を進めていく内に、出来る学生やら、途中で放り出してしまう学生などの見極めもしつつのビジネススタイルで欧米風の感覚に近いものを自身のノウハウとして身に付けていき、そうした担当者同士のモジュール開発を円滑に進めるためのインタフェース設計に、より注力をしていったらしい。開発効率という観点で最高の成果が得られた事もあるだろうし、苦労した場合もあっただろう。

インタフェースを追っかけていくことでシステム全体の動作を掌握してシステムコンサルティング能力も自身として高めていくことが出来たのは彼の大きな成果であり評価点でもある。QUAD社でサポートエンジニアとして仕事をしつつ感じることは、実際のお客様のサポートをしている実態としての作業は直接設計に携わっている技術者と全体を見渡して的確な回答を与えられるコンサルティング能力が求められる職責である。設計経験の無いものは役に立たない。

技術者のエイジングという観点からみても、様々な開発設計に取組んできた総括としてコンサルティングをベースにして更に最先端の技術をシステマティックに追求していくという仕事なのだが、一般的なサポート窓口と呼ばれる非生産的な印象から受けるネガティブな印象が中々払拭出来ないのがヘッドハンティングなども含めた実情なのかも知れない。開発に携わりたいというのならばメーカーだろう。ただしCDMAなどの根幹技術に携われるメーカーは益々少なくなってしまっている。上位層に国内の戦場は移ってしまっているのだ。

システム同期を取らずに実現を図ろうとしてきたあるシステムが、アプリケーションの観点から同期をすべきかどうか模索を始めたらしい。動機は不純なのだが・・・。最近では社会貢献を打ち出して環境に優しい会社という企業広告をうっているキャリアなのだが、システム同期が取れていない端末に要求される処理の難しさと消費電力の量は矛盾に満ちている。自己矛盾に陥り始めた結果、上位のアプリケーションから見直しが始まろうとしいるのであれば世紀末の決断は何だったのだろうか。

技術開発が政治的な思惑の中で偏向されてしまうのはいたし方ない事態であり、ただしそうした流れを理解できる技術者が育成できているのかどうかという点が企業としての次の戦略の中で重要なポイントだと思う。戦略の是正をする段階になって支える技術者がOJTというキーワードで括られるメーカーとしての地力の蓄積になっていれば良いのだ。こうしたビジネスサイクルが回っていたのではないか思い返すのはY君らと仕事をしていた時代だったのだろうか。

「当たり前のことが判る技術屋がいないこの事態で日本はどうなるの?」と咆える私の尊敬する大先生の域までに達しては居ないのだが、実際問題として普通のこととしてCが判り、システムが判り、コンサルティングが出来るような技術者を探し出せない実態はなんなのだろうか。悪評高いユトリ教育のせいなのかどうかは知れないが、わかる技術屋を求めていくと昭和の卒業を境に難しくなっているような気がする。スタックとヒープの説明がスムーズに出来る人とクラスの利用しか出来ない人に分かれてしまう。

業界独り言 VOL119 夏休みの終わりに 発行2001/8/20

携帯電話にJavaやC++で書かれたソフトウェアが提供される時代になろうとしている。初期のパソコンと違うのは機種の相違を出来るだけなくそうとしているとしていることである。もともとプロセッサが多岐にわたっている通信キャリアと、プロセッサが特定メーカーに極端に偏っている通信キャリアでの取り組みではあるが、プラットホームとしての考え方でJavaに向かうものや、偏っていることを応用してC++に向かうものに分かれている。

ソフトウェアを移植していく側とプラットホームを構築する側との双方がメジャーを目指そうとすることが、そこには現れてくる。特定CPUに偏っていることをベースにしているとPCで言うところのx86アーキテクチャのように捉えることもできる。溢れ返った様々なソフトウェアを組み込むことが必要とされる機器メーカーにとって似て非なるライブラリを各々が抱え込んだ形のアプリケーションを集約すると儲かるのはFlashベンダーになってしまう。

機器メーカーと通信キャリアの歪んだ未来の見せ方により尻すぼんでしまった形の現在では、フラッシュベンダーも当てが外れてコスト的には更に買い叩かれてしまうのかも知れない。APIを整備していないプラットホームあるいは既に完成されたソフトウェアの集約のみを目指した成果としてはコスト高を生み出してしまう。APIを企画した人たちは、そのAPIで実際にアプリケーション構築をしてみるのが効率的な姿だと思うのだが・・・。

Linuxなどの世界で魅力的なアプリケーションを少し纏めてみた結果集積されたAPIをベースにしてデスクトップのAPIを纏めていったGNOMEのような進め方は実質的に良いものになっていくのかも知れない。まあAPIを企画している人たちが自分達の仕事を最小限の作業に抑えようと考えるのか、ユーザーにとって最大限の効果を得るように考えるのかという観点の違いで大きく内容が異なってしまうのだろう。

いま、プラットホームを整備していく人たちにとってはアプリケーションベンダーと再構築をして次世代商品としての魅力の中にコストダウンというものも織り込んでいこうとしている。通信時間と端末コストと色々な制限下で行われている携帯電話の上のソフトウェア競走というものは、大変ロジカルな世界で挑戦のしがいがある分野だと思うのだが機器メーカーで感じる時間は少ないのかも知れない。

機器メーカーは、競合メーカーとの共同戦線に入り拡大してきた路線からの変更を余儀なくされている。様々な端末やサービスを期待しているユーザーとの格差は広がるばかりだ。離陸しない次世代電話と新製品の閉塞感のある現状の携帯のながれをブレークする新たな風が欲しいところだ。通信キャリアと組む限りにおいては、中々強い戦略が打ち出せないのが閉塞感の源流ともいえる。通信キャリアの買取すら辞さない外圧を求めているのは顧客自身なのかも知れない。

絵空事よりも、日常に使えるサービスをコスト安でサービスして欲しいのはブロードバンドだけではない。携帯の通信キャリア自身が、機器メーカー以上に大企業病に蝕まれているのが挑戦できない体質なのかもしれない。日の丸通信キャリアから迎え入れた経営トップの方が、競争相手として日の丸弁当からランチボックスに切り替えられないのは自明の理なのかもしれない。

政治的な戦略兵器と技術的な戦略兵器とをあわせて持ち出していかなければ、携帯デフレの夏休みから新学期に向けて溌剌とした仕事に入れない技術屋が増えてしまうのかも知れない。キビキビと動作するライブラリやアーキテクチャを抑えた上で様々なサービスを提供していけるように新たなチップやアーキテクチャ整備の流れに香辛料としてのバランスをつけて低消費電力でサクサクというフレーズを目指している。

モデム屋なのかシステムアーキテクトなのかという観点でいえば、QUAD社が目指しているのはアーキテクトであり必要なインテグレーションを果たしたチップセットの提供を志向している。ワイヤレスPDAというような世界で言えばイネーブルカンパニーとしてのスタンスであり開発してきたプロトコルスタックもパッケージとするビジネスなども進めている。偏ったチップの世界ではあるがソースコード共有をしつつアーキテクチャの壁を越えようと挑戦するメーカーも現れるかも知れない。

プラットホームを整備する・・・ということの重みをどれだけ理解しているのかは実際に開発に従事したメーカーでなければ理解しえないのかも知れない。そうした開発に投じてきたリソース費用を理解したうえでパッケージの価格に思いをはせるメーカーと、無理解な中で土木工事に殉じようとしているメーカーとの間には隔世の感がある。そのツケは最近の携帯回収の不具合で露見してしまった。機器メーカー同士が共同戦線を張る時代なのだろうか。

日の丸キャリア向けに、iMODEのプラットホームの開発整備をすすめてきたリーダーが、チャレンジしているのは新たなプラットホーム整備を全く異なるスタンスで始めている。チップやプロトコルのノウハウとパテントによる大きな意味でのプラットホームの中での上位層のプラットホーム整備が彼の戦場であり、アプリベンダーの自立という大きな取り組みでもある。

提供できるチップで少しでも性能を改善向上するアイデアを模索するのもそうしたプラットホーム整備の立場の中の低位層での取り組みである。システム的な捉え方をローカライズした上で為しうるオプションを考えていくのは日本オフィスの仕事でもある。DSPとの分担やスクラッチパッド領域の設定などもあるだろう。液晶ベンダーと組んでカラー液晶での画面スループットを模索している仲間もいる。中々楽しい職場だ。