いつも綺麗な葉書を呉れるK君という後輩がいる。年も明けて気がつくと賀状が来ていなかった。イラストの得意なK君であり来ていれば気がついていたはずだったのだがと年賀状の整理をしたのだが、やはり来ていないようだった。同様に毎年、明るい感じの性格のままな年賀状を戴いている先輩からは年賀状が届いていた。いつも直ぐに住所を見ないでも選択したデザインの印象から、その先輩だとわかるのだ。文面には、割とショッキングな一文が書かれていた。
先輩からの年賀状には、「新年から技術部から購買部へ異動となります」と書いてあった。永年の先輩を知るものとしてハードウェアシステム設計において多年に亘る基本部品の選定や先進技術の導入など確かな眼を持ちシステム件名などの長寿な商品設計を行ってきたのである。こうした電機業界の常として昨今の最新動向の無線通信システム開発に携わってきたのであるらしいが、もう開発を終えて量産体制に移行していく時期に入ることから主体が変ってきたのかもしれない。経験を買われての人事異動とお見受けした。
そんな先輩と新年会も兼ねて食事をしたのだが、いつも綺麗なカードを呉れるK君が気にかかり近くなので誘ったところ後半合流してくれた。週末は雪深い実家に帰っていたことも手伝い賀状の送付が年越しになってしまったというのが実情だった。心配はいらないかと思うと何だか会社のトップに直訴を申し込んでいるというただならぬ話だった。かつて無線業界の会社に気の短い技術屋がいたのを思い出し、同じ轍を踏むなと釘をさした。しかし、会社トップとの話し合いにまで持ち込めたのならば新しい歴史が始まる可能性もある。