業界独り言 VOL245 自分のペースを作ろう

展示会の季節が終わったのだが、例年よりも長い梅雨となっているようだ。七夕から始まった新居での生活に合わせて、温めてきたハム再開活動も少しづつ進展を見せてきた。3Gのバンドとは異なる短波帯でのアマチュア無線で目指すは雑音にかき消される中の不安定な通信である。セルラーの電話でのレーキ受信による通信の安定化など及ぶべくも無いのがナローバンドでのアマチュア無線である。むしろ不安定な通信のなかで耳を澄ます自分自身の感性や聴力を試されるというのも楽しみなのである。少年の頃とは打って変わり、世のなかからはキングオブホビーなどと呼ばれていたゆとりの時代は、どこかに置き忘れてしまったようである。かつては原田知世に恋焦がれたピークのアマチュア無線の時代を過ごした若者たちも中年予備軍にシフトしかかっているのが現在である。ゲーム世代の子供たちが育ってきた時代には、すでにPHSや携帯が普通となっていて、科学するような子供たちの刺激をするのはパソコンになってしまった。

読み書きの英語には、インターネットが効果を発揮するようになっているのかも知れない。インターネットで飛び込んでくる情報の洪水の中にコミュニケーションツールとしての英語は必要不可欠となっている。藤村有広さんが見せてくれたような、時間を越えた無線での無線通信会話などの時代に届かないのは、却って時代に逆行しているような気もしている。懸命に会話をしようとしていた時代から、書面や資料を読み漁り疑心暗鬼になる時代になっているような気がするのは気のせいだろうか。アマチュア無線と聞いて、スキー場での出逢いを思い浮かべる世代ではなくて、バーニアダイヤルを回しながら竹ざおアンテナでモールスを聞くというイメージの小学校時代やSSB短波の時代で迎えた中学を振り返るのが私のハム観なのである。最初に手に入れたAMのトランシーバーは夏に楽しい50MHzだった。ハイキングに持ち出して山頂での爽快感を更に増すのが遠くの知らぬ人たちとの会話だった。

高専に進み、無線に昂じるようになったのは悪い先輩の影響だけとはいえないだろう。実家の書店前に置いたガシャポンの利益を、小遣いとしてもらっていたのでアルバイトをするでもなく傾倒できたのも背景にあるだろう。丘の上に立つ絶好のロケーションに恵まれた学校生活で無線をするのは心地よいことでもある。オタクな趣味と分類されてしまうのは、致し方ない。しかし山歩きと合わせての無線という趣味は健全に趣味といえたと思うのだが。今でこそ話をしながら歩いているのは普通になったのだが、当時を考えると精神的に可笑しくなった人が独り言をのべつ話しているか、無線機を抱えておしゃべりをしている無線屋だったろう。といっても肩に食い込むベルトに耐えて話に夢中になっているのだからそうとう変だ。長時間の通話というものを実施するとなくなってしまう山ほどのアルカリ乾電池の費用も頭の痛いことだった。

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業界独り言 VOL244 不死鳥の如く・・・

知己が課長に昇格したという報をきいた、ただしメールの文面からは元気が感じられなかった。当人曰くは「降格」であるということなのだが、果たして実態はいかがなものか心配になった。他の若手達も課長登用されたらしく、まずは合わせて彼らの昇格祝いを行おうとメールを送り、元気付けの夕食をご馳走しつつ話を水曜に聞くことにした。電機業界では一般に水曜日はノー残業デーという設定のはずなので、快諾の返事がきていた。当日は、ビッグサイトで展示会の説明員で駆り出されていたので、余裕で待合場所に向えそうだった。最近のりんかい線の開通に伴い、横浜からは湘南新宿ラインによりビッグサイトは、近くなったし。また大井町や品川シーサイドから京浜東北あるいは大井町線、京浜急行への乗り換えも容易となった。横浜地区の知己に向かうには、とても便利である。逆にゆりかもめの利用は、縮退するような気がしてならないのだが・・・。

知己の仕事分野は、無線機の開発であり業務用と称せられる範囲のそれはシステム開発も合わせて行う特性がある。世の中のデジタル化の煽りをうけて、さまざまなFMで済んでいた無線機がデジタル化して多様な機能を組み込むことが望まれてきた。こうした業界は、一般に携帯バブルに踊らされた結果、他の通信技術に向けたリソースや蓄積された人材技術については散り散りになったりしているようだ。会社の利益を稼ぎ出す携帯の事業に邁進していくのは企業としての当然の姿と映るのだが、社会貢献というキーワードで見れば、社会を構成するさまざまなサービスに向けての無線技術を提供していくということについての責任もあるはずなのだが・・・。お客様毎に存在する周波数セットやアプリケーションを、業界として規格標準化を達成していくには、業界自体が疲弊しているようなのである。

ともあれ昇格した知己たち三人を祝い祝杯をあげつつ夏バテならぬ仕事バテ解消を図る美味しいウナギを食べながら話を聞くことにした。三人の若手技術者たちが、成果に基づきリーダー(課長)に選任されようとしているのは、一面喜ばしいことのようでもあるが、彼らが気にしているのは課長としての管理業務が増えることで、今渦中で抱えてきた仕事が増大することと次代の若手を育てていくに必要な事業としての将来像が彼ら自身が描けて居ないことが原因であるらしい。疲弊した業界事情で、当面の売り上げ達成といった目的のみで利益確保もままならない仕事の仕方を家庭を捨ててまで埋没している状況で暮らしていることについては麻痺しきっているような様子だった。

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業界独り言 VOL243 ユーザーインタフェースは文化

携帯電話の開発支援をしている中で、ユーザーインターフェースも、それなりのものを提供しなければ、昨今のマルチメディア機能の実装などの確認評価すら出来ないというのが実情でもある。既に5×7のドットマトリックスキャラクター表示からグラフィックスベースに移行はしているものの、とりあえずのサンプルという程度にお客様も思っているのだろう。ユーザーインタフェースは文化の表れであり、お客さま自身の製品特徴でもあるからだ。プラットホームを開発提供していく上で、昔のワークステーションでのMotifやSunviewなどのスタイル提供などの領域にまで持ち込んだとしても細かい使い勝手は中々決めかねるのだろうか。

最近M社の端末からT社の端末に携帯電話を切り替えたのであるが、使うことの多いメールでの操作性などの使いにくいと感じている点などには、端末操作の慣れ以上に端末設計へのポリシーベースでの相違を感じてしまう。マッキントッシュのような使いやすさを追求していくことが、端末開発にこそ求められているのだと思うのだが、こだわりを持つUI設計の追及をしているメーカーが結果としての端末を効率よく開発していくことは難しく永遠のテーマのようにも映る。端末開発をプラットホーム化して、PCの如くにまで分離した開発を可能にしようというテーマにも取り組んではいるものの、まだその域にはお客様の文化改革も含めて時間が掛かりそうだ。差別化と共通化の矛盾するなかで、まだ未成熟な分野といえるかもしれない。

通信プロトコルをカバーする機能として、通信キャリアからの仕様提示を受けて推奨ミドルウェアの提供を受けて実装されている通信機メーカーもあれば、自社実装している会社もある。自社実装しているからといってユーザーインターフェースにまで力が入っているかというとそうでもなかったりする。こだわりの使い勝手を追求しつづけていくにはテストや仕様化などの作業に手間取ってしまいリーズナブルな開発コストにならないからなのかもしれない。とはいえ、アプリケーションを支えるプラットホームとの独立性が保たれていれば移植は容易なはずなのだが、全てをこなせる会社は中々見当たらないようだ。ここのアプリケーションの評価というものと製品が叩き出した利益などからみた評価などが独立して行われないからなのだろうか。

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業界独り言 VOL242 自宅建設を終えて判ったこと

計画に基づき11月に着工して、古家の取り壊しやら整地をへて地鎮祭はいちおう執り行った。土地の神様としてのお願いをサルタヒコ大神にお願いするわけである。お祓いの後には、家の形をした陶器のいれものにヒトガタなどをいれたものを地面に埋め込むというものである。鍬入れなどの儀式を経て、神に奉げた野菜や果物、乾物などは、そのまま自宅の食膳を飾ることになった。本来であれば、上棟式なども行うものらしいがRCと木造の混構造という住宅において、いつが上棟なのかということの定義が曖昧な気がしたのと忙しくて対応しきれないということで、こちらは除外することにしてもらった。無論最近では、地鎮祭そのものも執り行わない事例が普通だというのであるから、無神論とはいわれないですみそうである。

旗ざお状の土地の竿に相当する部分には、実は隣のアパートの階段や物置が越境していることは予め契約の段階で知らされていた。近々立て替える際に大家がきちんと直すという一文の取り交わしが土地売買の段階でも再確認されていた。しかし、実際に越境した場所を借家として住んでいる住民とは、私たちにとっての隣人なのである。問題が単純ではなかった。購入当初、空き家となっていた古家の竿の土地には我が家の如くにしつらえた鉢植えが並んでいたのであり、これについての撤去のお願いなどを筋は通るというものの購入を取り扱う不動産業者を介して進めてもらったのはいうまでも無いことではある。越境のほどは図面では2メートル幅あるはずの土地に30cm以上もせり出しているのである。自宅を段差の無い構造にすることなどから、1階のフロアが階段で三段ほどの高さにせり上がってしまいアプローチをスロープで構築しようということが隣地の物置などを塞いでしまうことになってしまった。まだ工事は始まらないものの、気まずい雰囲気ではある。

隣地との問題は、工事でも起こっていた整地した土地に降り注いだ雨は従来であれば古家の屋根が受けて雨水として下水に流し込んでいたわけであるが、整地して外溝などを一旦リセットしてしまったために露出した土地のみになってしまっていた。これがもたらしたものは昨年末に起こった大雨の際に工事で仮設に掘り返していたガスや水道配管工事の土地を流れ出した水の流れで管路を露出させるような事態になってしまった。工法の想定や環境への配慮などが必要なのが個別の注文住宅を特定の土地で作ることの難しさであろう。いってみれば立ち上がってしまえば安定なソフトやハードが立ち上がり時点のみで不安定さをかもし出すようなことに似ている。ブートストラップを安定に立ち上げる技術や心配りというものが建築においても必要なのだ思い知らされた。そしてそれを解決するには工事日常での周囲とのコミュニケーションに他ならない。ケアできないほど多重に仕事をこなしているような業者では、中々現場で起こっている問題に対応できないのはソフトウェアと一緒で問題が起こる段階で優先度が上がるのも同じである。

RC工事が始まり、鉄筋の溶接くみ上げが出来て型枠が準備できておそらくコンクリートミキサーが大量の生コンを投下して振動をかけつつ充填していくという流れが終わるとしばらくは養生させて固まるのが終わるのを待つ以外にする仕事はない。しかし、ここでまた問題が発生した工事用トイレの施錠が不十分でかつ未処理のままで放置され、臭害を周囲に引き起こしたのである。工事からは待つ以外にすることがないとはいえ日常の確認を怠ってはいけないのである。そんな問題を引き起こしているとは知らずにコンクリートが立ち上がる頃に現場を訪れた我々を待っていたのは周辺住民のクレームの嵐であった。建設業者である監督が中々現場確認に来ないのでクレームをいえずにいたというとんでもない事態だったというのてある。問題を現場で覆い隠そうというのは、どの業界も一緒であるがボロはすぐ出てしまうのである。やるべき作業やプロセスが普段行われていた、開発主体のまとまった分譲建築ばかりをしていたというのが原因でもあるだろう。要は開発プロセスが期待するものと合っているのかどうかということである。

RC作りの壁の無い打ちっ放しの工法ということの難しさは、表面仕上げではなくて実は必要な要件を網羅した設計を完遂できるのかということに尽きるようだ。こちらから要請した要件は、段差をなくした床と、床暖房、細かく指定した配線工事などであり、インターホンや照明スイッチ、通常の住宅では電気工事のみで100万円ほどが、この業者で見込んでいる額だそうなのだが、LAN配線やBS/CS配線工事を依頼していたことなどから倍近い額となってしまった。壁がある構造ならばつぶしが利くのだが、打ちっ放しでは確実な配管の処理と穴あけが必要なのである。工事進捗の話の中で、床暖房のリモコンの配線を忘れておりましたという報告が設計士の方からあり、配管が露出するということを聞かされていたのだが、実際に出来てみると配管は無かった。他の立ち上がり配管が集中している壁に穴を開けて解決したのだそうだ。失敗と思ってみても解決策は色々あるかも知れないということなのかもしれない。

さて我が家ではアナログWOWOWとデジタルBSとPerfecTVを視聴しているという事情があった。今回の地域は共聴システムとしてのCATVが配置されているみなとみらいビル群による難視聴地域ということらしかった。さらに細君の希望もあり110度CSでやっているコンテンツにまで手を伸ばすことになっていたことも合わせてとりあえず有料CATVにも加入することにした。配線系統については、ISDNによる二回線処理で電話とFAXを処理することにしていたので、機能コンセントには、賑やかな端子が配置されている。複雑化するシステムを単純化する一つの解決策として四衛星対応のアンテナというものが見つかった。CSとBSの二つのLNAが搭載されている二焦点型のパラボラである。見た目には、一つのアンテナなのだがLNAの数だけケーブルは二系統引き出されている。CATVの帯域に対応したブースターとCSと110度BSにまで対応するのは難しいらしいのだが、CATVの業者が接続に来たときには「配線が間違っているので修正しました」という説明をして確かに地上波とCATVは受信可能となっていた。

翌日ようやく、秘蔵のアンテナを設置して接続して方位を探ろうとしたものの信号が受からない。説明で聞いていた、屋根裏のアンテナ配線ボックスを覗き込むとBSパラボラと書いてあるケーブルが未接続になっていた。多分対応するCATV業者が指定したブースターがBSを更に受け入れる仕様にはなっていなかったのかもしれないのだが・・・。説明を受けた図面では、BSとの混合ユニットを設置することになっていたので工事仕様誤りである。生憎と今日は建築業者が休みなので、クレームのメールを入れて修正させることにした。ネットで対応するユニットを探すとCATVに適用可能でBS110にまで対応可能なブースターはあるので混合ユニットと合わせて変更してもらうことが必要なのだと思う。まあ、工事業者も工事の段階でアンテナは客持ちということで確認が取れないという事情があったのもか知れないが接続確認程度はしてほしいものである。現場に行かないと試験が出来ないというのでは、ソフト開発の現場と同じではないか。

BSとCATVのチャネルをカバーするという仕様が最近では、BS110度をカバーするという意味も含まれてきていて額面の理解と現場の対応などが混乱しているのはいたし方ないようである。結局仕切っているはずの監督も、建築設計士の方も専門的な内容には介入せずに、そのまま私が提出した仕様を工事業者に流していたようで互いの理解のレベルを合わせることの難しさを痛感するのである。結果として私が知りたいのは工事業者が理解したはずの工事図面の提示を求めることでしかないのだが、弱電工事一切を任される業者は、インターホンの工事も電話線の工事も照明器具の配線もLAN工事やアンテナ工事までもがカバー範囲となっているのが実情で彼ら自身も理解が充分であるとはいえないようだった。機能コンセントとしては、BS、CATV地上波、LAN、電話、FAX、AC二系統が配備された。将来のテレビが薄型化して配置変更した場合なども想定した場所に配線を予備としてしておいたし、テーブルの両端には互いのパソコンがテレビ機能が追加された場合や、和室に篭って仕事を夜する場合なども想定して五箇所に配備した。一箇所には、CS放送用の端子を追加していた。すべての機能確認が終わるのは少し先になりそうである。

電話工事屋が来て、気が付いたのは二台もっていたTAの一台はルーター機能があったのだがFTTHの時代になり、シンプルなもう一台のみにしていたのだが、これには実はDSUが付いていなかった。引越し元の家には、買取の旧型の大型DSUが着いているのだが、まあ予備品として回収済みのDSUを特別に無償でつけてくれることになった。この八年間の間に技術進歩は著しく最新型ではないにしてもDSUが非常にコンパクトになっていた。まあ、最近ではISDNは人気がないので進歩は止まっているのかもしれないのだが、我が家のシステムはNTTから表彰されるくらいの仕様になっているのではないかとおもっている。i-numberにせずにダイヤルインで、そのままISDNをオリジナル仕様どおり使っているしグローバル着信機能の裏技なども使わずに正々堂々と料金を払っているのは今時化石のような存在かも知れない。まあ、FTTHの設置に際しては、移転ではなくて、廃棄と新規という手続きを進められた。新規加入であれば費用が安く済むのだが移設だと費用が高いのである。ベーシック契約という高い費用を払い続けているユーザーが他社FTTHに乗り換えしないための施策なのかもしれない。相変わらず一年経ってもFTTHのONUのダイナミックループは逆立ちを続けていてNTTがこの事業を大変な費用を賭して行っていることのスタンス表示を続けていた。FTTHの引越しは実は一番簡単でルーターが設定を記憶しているので何の問題もなく立ち上がってしまった。

RC作りにする中で、工事途上問題となったのはステンレス一体型シンクにも起こった。長さが4メートルにも近づく長いシンクを一体くみ上げした状態で搬入するという業者からの通達に対して、RC作りの1階に搬入するにはドアから入らないのである。高さ85cmと細君が指定した高さの直方体構造のものをドアからキッチンに持ち込むことは出来ないというのである。隣接の段差の上にある家の横を通してもらい、庭側からおろして搬入するということでなんとかなりそうだということで監督が問題を起こしてきた隣の家に話を通して、一応許可を得てもらっていた。搬入が終わってみると実は、シンク業者が分離して物を納入してきたらしく、なんの問題もなく工事が終わったというのである。コミュニケーション不足あるいは突然の仕様変更はよかれと思って行われても現場には徒労感や混乱が生じるものである。なにしろ立ち上がっているコンクリートの壁に合わせてカスタム仕様に作ってもらったステンレスシンクには予備がないので工事するほうも疵をつけたりしないように最新の留意を払って工事をしようとしているのである。

さて、他のキッチン周りはどうなったかというと、今年の三月に購入手配するつもりで見積もりをとっていた無印良品のリサイクルウッドのキッチン収納は、出荷停止処分になっていた。理由は、最新素材であったリサイクルウッドの強度不足による顧客クレームが出たことによるものらしい。強度不足といってもおそらくはユーザー側の仕様を越えた使い方であろうが、ソフトウェアと違ってこうした場合には製品としての機能不足あるいは商品生命の命としての風評などが立つことを恐れての製品改良を余儀なくされるのが業界の慣わしでもあるようだ。もともとシンプルな造りが気に入っていて選択していただけのものだったので、どうような造りで何とかして欲しいと頼んでいたところ結局建具業者で作ってくれることになり、無印良品以上のできばえで安価にカスタム仕様のキッチン収納が出来上がった。軽いアクリルの嵌った扉の仕上げも同様なコンセプトである。最初からこれでも良かったのにというのはユーザーの立場であるのかも知れないのだが、要望の曖昧さというものを事例として参考に提示したものが必達の仕様として受け取られてしまうのではないのかというのは他山の石になるやも知れない。

同様な話で購入できなくなったのは、気に入っていたクックトップのマジックシェフのものが丁度製品切り替えの時期となり在庫がなくなってしまったので今は、お売りできないということが間際になってから判明した。なにしろステンレスシンクにカスタム仕様の穴をあけるのでクックトップとセットで購入手配が決まっていないと始まらないのである。焼き魚機能のないクックトップという選択肢から結局当初には除外していたフランス製のロジェールにすることになった。五徳がないので中華なべの使いにくさについては細君も気になっているものの他の点では使いやすさに気に入っているようで、今では中華なべをこのクックトップで使えるようにするために燃えているようである。何か金属の輪のようなものがきっとありそうな感じがしている。ユーザーが当初から、これだけは譲れないといっている仕様だったはずのものを実は取り下げてしまうのも身近にみて不思議に感じている。

夫婦二人での気楽な暮らしも、下町暮らしですっかり細君も車の運転からは遠ざかってしまい、いまではどちらも自転車を使っているのだが(ちなみに私は運転免許も持っていない)、自転車の収納についてはコンクリート構造が決まったときから一台は天井から吊りたいといって、当初の担当SEだった建築設計士でもある設計事務所の社長とのやりとりでは話をして互いに納得していたはずだったのだが、実務が始まり、担当の設計士の方との実務の詰めが始まる中で当初の社長とのやり取りが色々とこぼれていて自転車の話はすっかり落ちていた。話を再提起して出てきた案は、壁からの突き出したパイプという案だったのだが金属が出っ張っていることについては危険なこと当初提案したのは吊るためのベースだけをつけてくれればSカンをつけて済むのにという話を再度つめてようやく実現した。SEが切り替わるときのやり取りは仕様の取りこぼしなどが多発するのは納得するものであった。

きめ細かい仕様を確実に仕上げていくには、一年余りもかけても中々到達せずに、最後には引越し準備に追われてしまい、それが終わっても積み込めなかったものがかなりあるのは仕様以外に物理的な機材を置き忘れてきたりしている。小さな引越し便で二度目の仕上げの引越しを敢行してようやく集約を迎えることになりそうである。ともあれ、基本線からいえば、コンクリートと木造という混構造の住宅を依頼してようやく期待以上の家が出来上がったのは事実である。木のにおいが豊富なRC打ちっ放しの壁を見ていると不思議な気になってくる。仕様や要求が無体な夢想のようなものに映るかもしれないものが、熱い思いに支えられて追求をしていくことにより求める答えに近づいていくのが、家作りなのかもしれない。既成の住宅プランに合わせて作られる人もいるだろうし、あまり関心もなく人と同様に家を求める人もいるのかも知れないのだが。少し世のなかのギアから外れてしまった私と連れ添っている細君も含めてユニークな家族なのかもしれない。この箱(ハードウェア)をどのように使いこなしていくのかというのが私たち夫婦の暮らしぶり(ソフトウェア)としての追求がこれから始まることになる。これがスタートラインなのである。いま、私たちはペーパーマシンではなく実機を手にしたのである。

業界独り言 VOL241 自宅建設に想っていたこと

昨年の六月に土地を購入して以来、一年余りをかけてようやく自宅が完成にこぎつけた。昨日は完成確認に現場を訪ねて建設を請け負った不動産会社と設計を担ってもらった設計士の方、現場の電装設計工事を行ってもらった業者の方などを交えて現場で最終確認ということになった。最終顧客であり発注側である注文住宅建築という形態は、ソフトウェア開発のそれとは似て非なるものであるように思われる。今回の発端となった土地を見つけ出して斡旋してくれた不動産会社自身がミニデベロッパーとして建売住宅などの開発をしていることなどから、その応用として注文住宅建設という事業にも手を出していたのである。ほどよいサイズの土地が手近なところに見つかったことで設計士の方を探し出したりするといった取り組みなどは素人の自分たちからすれば大変なことのようにみえた。立派なSEならぬ建築設計士にめぐり合えるのか。

事実、最近のインターネットで公開される建築設計士さんの綺麗なうらやましい仕事や、うまくいかなかった事例なども含めて様々な情報が提供される現代としては考えればきりが無いほど悩ましい。ソフトウェア開発なども、こうした失敗の事例なども公開されると良いのかもしれないのだが・・・。ある程度の妥協やおもいきりで始めるしかないと考えて、責任や契約規模をまとめることでのメリットなどを考えて土地購入をした不動産会社の建築部門を使うことにして、条件としては建築設計士の方とは直接契約をして双方の関係を独立するような形にしたのは結果として正解だといえる。当初は建売や注文住宅の範囲として仕事をお願いしている建築設計士の方の紹介を受けたのだが、ともすれば建売の方にはめようとする考え方が不動産会社に見られたために建築確認申請図面以降に仕事の仕方を変えていただいた。当初からこの姿にすれば、もう少し開発コストが抑えられたように思われる。

ソフトウェア開発と同様に顧客である私達の要望は曖昧であり、建築設計士や建築会社の方とのコミュニケーションは難しいものである。当初に行く手を阻んだのは、購入した土地の条件であった。横浜の丘や谷戸を構成するような地勢にあり、隣接する土地との高低差は最大箇所で4mほどにもなる。こうした土地の場合には、隣接する土地が崩落した場合を想定してある角度の範囲で影となる部分に保護の工事を行うか、あるいは自宅の1階部分の影となる範囲を基礎を立ち上げるような壁にするといった工法が必要となるらしかった。私たち夫婦からの提案要望は1階をRC構造にしてしまうということであった。いってみれば基礎の中に住み着いて、一階建ての木造屋が、その上に乗るといった構成である。細君の要望でもあるコンクリート打ちっ放しの家に住めるということも相まって私達の希望は一気に熟成したものの設計や建築される側の方々は、とっぴな工法や打ちっ放しの仕上がりやらデメリットについて説明を始めて懐柔しつつ、私たちの本気さ加減に納得する形で、木造兼RC造りという不思議な家が出来ることになった。

工法上のデメリットなども含めて真摯に議論しつつ自宅を建設するという事業を営めたのは、細君の希望であるシンプルな家作りを将来の老後に備えた人に優しい造りにしたいという互いの思いを最後まで通せたのが勝因であると思っている。シンプルな家作りとして、雛形となる案を作成すべく互いのコミュニケーションを良化する目的で導入したのは3DマイホームデザイナーというPCソフトであり、これを使って立体の建築プランのたたき台を作成して、建築設計士の方とのコミュニケーションを早期に達成することは出来て概観や間取りについてはうまく進めることが出来たように思う。しかし住宅を構成するコストは、実はシンプルなものを選択すればするほど高くつくようだ。この辺りはソフトウェア開発とは異なるようで大量仕入れやいわゆる一億中流意識といった日本の流れが導き出すコストは、その中間値で最大の効果を発揮するようになっていて、それ以上の豪華さ、あるいはシンプルさを追求していくとコスト高になっていくのである。

シンプルさを追求するなかで、まず細君のめがねにかなったのはステンレス無垢で出来たシンプルなキッチンセットであり、無印良品といったメーカー名がそのまま体に現しているようなものであった。自宅の間取りに合わせたカスタム設計が可能なのであるが、RC造りという条件の1階のリビング兼キッチンを構成している躯体が2階の木造屋を支えるために壁が必要な範囲で立ち上げる必要があり長方形がオリジナルのステンレスシンクも一部を切り欠いたような形にする必要があった。たまたまステンレス無垢のシンプルなキッチンと同様に再生材とプラスチックとを混入して強化したという素材をベースにした軽そうな風合いのシンプルな食器棚などもあったのでエコロジーなども考え合わせてこれらを選定していた。実際にものを見に有楽町のショップに足を伸ばしたりして確認したうえでの選択であった。ユーザーが勝手に選定したモジュールでソフトウェアが開発できるような時代にしていきたいものである。まだ独立性が不足しているということであろう。

料理好きな細君には譲れないものとして中華なべの利用があり、これには最近のお洒落な電磁加熱などは適わないのである。シンプルなステンレスキッチンの適用例として採用されていたのはロジェールという会社のフランス製のコンロであり、中華料理などの炎の料理をするとは思えない暮らしぶりにはあうのだろうけれどもゴトクのようなしっかりと中華なべをホールドすることなど考えられてはいなかった。こんなやり取りを建築設計士の方に相談すると料理屋のように普通のゴトクを置きますかという提案なども出てきて迷走状態となってしまった。細君の大嫌いな魚焼きグリルの無いクックトップで、中華ゴトクがのるようなものという条件でインターネットから探し出した答えは、二つあった。一つはドイツ製のゲオルグという会社のものでかなり高価なもの。もう一つは米国製のマジックシェフという会社のものでこれが四つ口で価格も手ごろということで実際に湯島天神そばの代理店までものを確認して決めていた。

段差をなくした設計をお願いしたのは、将来を考えた配慮であり、実際問題、数年前に椎間板ヘルニアを患った細君の経験からでもある。ヘルニア発症で鍼灸などでしのいでいたのが悪化したのはユズのコンサートやイエローモンキーの解散コンサートだったかも知れないのだが・・・。緊急入院して手術して一段落しているとはいえ、狭い敷地での急峻な階段で構成される三階建てという暮らし方が自分たちの老後にまで続くとは思えなかったからでもある。サザエさんのような平屋の家を構築するには手に入る土地が狭すぎるのであり、ようやく見つかった土地が提供できる範囲からも二階建てはやむをえなかった。吹き抜けのリビングダイニングと寝室兼作業スペースそして掘りごたつのある四畳半の和室と納戸という構成プランをたたき台として希望していた。懸案事項である階段は出来る限り緩やかなステップということをお願いした。開発に必要なのはテーマであり明確な要求事項である。シンプルな設計で老後を配慮というのがテーマの住宅となった。

吹き抜けを見下ろせる寝室兼作業スペースは、リビングダイニングの吹き抜けから見下ろす形で大きく開放したわくに繋がる長い一枚の厚い集成材で構成してもらう作業机が造りつけてある。緩やかな階段で繋がった部屋には寝室と長い作業机を機能的に配置してもらい無駄なく使えるような工夫をしていた。普通の家と異なる点には電気配線の特殊性もあるかも知れない。FTTHが似合う家ではないが、ワイヤレスで賄えないスピードを確保する意味も含めて五箇所ある機能コンセントには、CS/BS/電話/FAX/LAN/電源がセットとなった特製コンセントにしてもらった。ある意味で事務所になりえる構成も想定していたし、ネットカフェの雰囲気にもなるかも知れない。長い机の左右にも機能コンセントは抜かりなく配線してもらった。老人二人の電脳住宅といえるかも知れないし、近い将来のコンサルタントライフなどを視野に入れた設計ともいえる。

エコロジーの時代でもあり二十年近く使ってきた冷蔵庫や洗濯機もリニューアルの時を迎えていて、ノンフロンの冷蔵庫やらを想定して探し始めていたのだが、細君の眼を射抜いたのはヨーロピアンイエローともいえる黄色の洗濯機が始めに決まってしまった。ドラム式全自動というコンセプトの三洋の洗濯機ルネッサンスというような製品には、二槽式命と語っていた細君の気持ちを地動説の如く裏返してしまった魅力があるようだ。完成以前から買い込んでいて半年以上も我が家の廊下を梱包のまま占拠しているのである。冷蔵庫についても三洋電機から同様なビビッドなイエローのものが出ればよいのだが、あいにく色はあるもののアメリカンなサイズの冷蔵庫であり新築の我が家にも置く余地が無かった。なかなかニーズを満たすだけの商品群とまでは行かないようだった。ユーザーの価値観が、これほどまでに覆るのを間近に見ると恐ろしいものだなとつくづく思うのである。

業界独り言 VOL240 相互誤解のコミュニケーション

中断してしまった最後のミニコミ誌の最後のナンバーが24号だから、今回の240号というのは10倍にあたり期間としてもほぼ同質の四年余りを綴ってきたように思うのである。この新世紀としてのバックナンバーが続いてきたのは、独り言とはいえ何人かの知己たちからの檄があったからだと思い返している。忙しいのはいつの時代も一緒であるのだが、何か忙しさの質が変わってきたのは仲間の広がりや仕事の広がりを感じるからだろうか。マイペースでありながら忙しさを維持できるのはサポートしてくれている家族や、今の会社のインフラや風土にマッチしているからなのだろうか。

四年前に出していた私小説めいた説明文が、ある知己にようやく届いたらしかった。私は既に届いていたはずの積もりで付き合ってきたので互いの誤解の上でも、それなりにコミュニケーションが成立していたのだろうかと思ったのだが彼からの短い感想は、確かに四年近く経ってから届いたという実感のものだった。「あーそういうことだったのか!(新たな発見の喜び)。あーそうだったなあ(温故知新の懐かしさ)。あーそうだよなあ(・・・)。等など、思わず、時間を忘れてしまいました」。こういった形で心情を吐露されると、いままでのコミュニケーションがどれほどの精度だったのかと思い悩むことにもなってしまいそうであった。

自分としては、説明文をレンタルサーバーや自宅のサイトに制限なしのFTPで公開する設定にしていたので、誰しもアクセス可能だと思っていたのだが、確認したのは自分自身の会社からアクセス出来ていたので気が付かなかった。FTPのクライアントとのネゴシエーション条件によってはPASVモードでのアクセスになれそうした際に自宅のファイアーウォールでもあるルータが正しく設定されていなかったためにFTPの実際の適用する通信ポートがオープン出来ていなかったり、また外向けDNSと内向きDNSとの設定なども相関していたので実際にはあまり会社などの中からアクセスすることは出来ていなかったようだった。自身のサイトの立ち上げ当初はレンタルサーバーであったのだが最近では自宅ドメインにアクセスが増えてきていることや、当初確認されていた方はみな個人のダイヤルアップな時代だったからなのでもあろう。

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業界独り言 VOL239 納得のいかない仕事を納得づくで

納得のいかない仕事をしていることくらい、技術者として辛いことは無いだろう。仕方なしにやっていますというのではモチベーションが揚がらないし仕事の精度も下がってしまうわけである。自分達の取り組んでいる仕事の意義や技術的なテーマについて自身で納得がいけば、ある意味どんなことにでも立ち向かっていけるのだと思う。納得のいかない仕事をしなければならない板ばさみで悲鳴や咆哮をあげている知己がいる。彼らは、それでも立ち向かっていっているようなので幾ばくかの意義を見出して仕事にまい進しているようだ。そんな意義も見つからないような仕事に自我を忘れて家族との生活を犠牲にしてまで出来るはずはないからだ。同じ仕事をするのでも視点を変えて取り組むだけで如何様にでも変えられるのではないかというのが私の経験には幾つかある。

技術屋というものの中には、仕事に対して取り組む算段や方法から先に考えてしまい、割と固定観念に固まった考え方をする人が多いように思う。幾つもの仕事の可能性を欠片からでも取り組んでみようというのも、会社としては容認されるべき姿なのではないか。まあ、そこまでの余裕がないのだといってしまえばお終いなのだが・・・。遊び心を糧に仕事をすることばかりではないにしても、四角四面に自分のテリトリーを固めてしまう必要はないと思うのである。開発などの過程で呆然とするような事態に遭遇したりすると自身がプラス思考で取り組めるのかどうかが鍵となってしまうのだろう。あまりにも仕様が未確定で次々と変わりながら、納期と性能との双方に課題があるという中で担当しているソフトウェア屋が蒸発してしまったという事件が起こった。

蒸発してしまったというのは、大袈裟なのだが要するに会社に来なくなってしまったのである。当時の組み込みソフトウェア開発業者の規模からいえば、開発依頼しているほうも受託するほうもスペアや予備の人材などが居ようはずもなかった。そして担当していたソフトウェア屋の二人とも連絡がつかなくなってしまったのである。この端末開発には、実は会社の威信が掛かっていたような実情があり、それでも外人部隊の二人のソフト技術者と仕様をまとめていた私の上司さらにハード担当のロジック技術者一名であり、私自身は外人部隊の二人の技術者が会社の開発環境の中で仕事が出来るように世話をしていたというのが実情であった。問題の仕事というのは、フルターンキーで無線電話機と電子交換機ならびに基地局装置などを開発納入するという一大プロジェクトなのであったのだが100人ものソフトウェア技術者が担当して開発没頭している電子交換機と比較するのに無理はあるにしても温度差の激しい仕事であった。

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業界独り言 VOL238 M君のこと、N君のこと

ソフトウェア開発ということで携帯電話業界を見たときに、やりがいのある仕事なのかは各人各様の意見があるだろうし、実際取り巻く環境も実はバラバラである。同じ仕事を示してみても、個人のそれまでの環境により反応は大きく異なるようだ。M君とN君は似たような境遇にある、それぞれが私たちのお客様の会社で働く技術者であったことが共通項であり、更にその会社が端末開発事業から撤退していったということも共通項である。お客様が事業から撤退するということは残念なことであるが、ビジネスモデルなどの不一致など撤退する理由は様々であるようだ。撤退の報を聞きつけると、営業マンはビジネスバランスの次の段階を考えるし、サポートしている我々は開発リソースのバランスを考える。

開発リソースとしての人材はかなり流動化してきているのが実情で、同様の仕事をしているのにお客様の間を渡り歩いて移り変わっていく人があるのは、プロジェクト運営の違いや社風の違いなどが多様なことをあらわしているようだ。ある人にとっては働きにくい環境が、ほかの人にとっては魅力的に映ったりもするからだ。M君の事例はといえば、会社の開発撤退の報を聞きつけて指示を出したのは他ならぬ弊社の経営トップだったりする。開発という仕事を支える経営バランスが崩れたことによりエンジニアが流出するのは必定であり、報を聞いてから訪ねたお客様のオフィスはもぬけの殻だった。プロパーのエンジニアは、失職するので転職していて残っているエンジニア達は元より借り物の外人部隊という実情だった。

携帯電話開発プロジェクトをまとめて受注したといえるシステムハウスというのが、かれの所属する会社の実態でありQuad社のソースに基づいて評価用セットを用いたり試作ユニットの開発までをこなしていた。そんなプロジェクトが終結せざるを得なかったのは、発注元であった外国メーカーの東京開発センターという組織運営と働いていたプロパー技術者達との感性の差がきっかけだったようだ。外国メーカーのサテライト開発センターとしてまとまり仕事にあたるなかで、実はその仕事自体が数ある社内開発プロジェクトの中の競争の産物だという考え方が、そのメーカーにはあったようだ。競争を勝ち得たデザインはラインに流れていくが、勝ち得ない開発プロジェクトもあるということである。

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業界独り言 VOL237 オープンな携帯ソフト開発には 発行2003/6/8

携帯電話をオープンな形で開発可能にしようというのには、まだまだ解決すべきテーマが山積しているようだ。このテーマを列挙するだけでもビジネスの芽や特許の萌芽があるかもしれない。何も感じないという人には戯言にしか映らないだろうけれど、まあ世の中そんなものである。ひらめきを大切にしないと世の中に自分とそっくりの人間が三人いると言われているのと同様に、同時期に同じアイデアにたどり着く人間は必ずいるのである。行動しないでいるのは、大きな損なのではあるが、地動説を説くような事態にあっては個人で申請する以外に会社側でも特許など受け付けてくれないかもしれない。それでも特許は出すべきであろう。

テーマの一つには実機で行うデバッグが挙げられる。当たり前のようにJTAGを使えば簡単な話だというなかれ。確かに現在のチップセットだけでみればJTAGでデバッグしてしまえば簡単であり、問題はそうした形態であっても機体番号などの情報の書き換えや読み出しを出来ないような形にしてほしいというのが通信キャリアの考える実機でのデバッグなのである。アプリケーション開発のみに終始するようなベンチャー達と業務を運用する世界とを分離したいというのがテーマの背景にあるからだ。そうして現在供給されている多くのアプリケーション開発環境自体はPCなどでエミュレーションするものであり中々実機での確認との間の差異を埋めるのに難しいからでもある。また、メーカーの多くが今までは開発してきたブレッドボードのような物をベースに供給するには環境構築の費用が折り合わないからでもある。

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業界独り言 VOL236 ベンチャーと大企業 発行2003/6/7

友人の無線屋からメールが届いた、相変わらず忙しいらしい。前向きな忙しさなら良いのだろうが、どうもそうでもないらしい。まあ忙しいとメールで打ってくる場合には、少し心亡くしている状況であることに違いは無いだろう。メールを打つ気持ちまでも失ってしまうような状況では無いのが救いともいえるのだろう。メールを打ってくるのはある意味で彼の心の防御弁でガス抜きがてらの様子だ。SMSで労苦を詠んだ狂歌を送付してきたりするのは、渦中からだったりもするようだが。休日には自分自身に戻りつつ始まる週にあたり気持ちの整理や対策を考えてのことで心情メールとでもいえるのかも知れない。日本自体の製造業での閉塞感にあって、さらに焦燥感を推し進めるのはそうしたなかでの無意味な競争やデフレに伴うコスト圧縮要請などにいままでの開発成果を含めたビジネスモデルが破綻していることなのかもしれない。

いまやお客様毎にメーカーがカスタマイズした仕様で無線通信システムを開発納入システムアップを出来るような状況には国情が達していないというように感じるのだがいかがなものだろうか。言い換えれば、今ある製品群のみで対応していくしかないので、今自社に無いものはOEMするしかないのである。新規開発投資していけないだろうということである。あるいは、未だにそうしたビジネスモデルで動いている部分があるとすればバブル後遺症のメスが届いていないセクションといえるのだろう。親方銀行あるいは親方日の丸といった感性で開発を続けて納品したりしてきたSE集団が、ビジネスモデルの変遷に向けてどのように対応をしていくのか悩みは尽きないのが現場のようでもある。地方で無線システムの構築などを進めている知己なども、そうした波及を受けているらしく現在取り得る選択肢の中で旧来のお客様の運用してきた姿をどのように取り入れていくことが出来るのか悩んでいるのが実情らしい。最初に落ちるのは従来のビジネス用無線システムであり、いまやPHSやPDCあるいは無線LANを駆使しつつどのような形で提案できるようなものをシステムアップ出来るかということになっているようだ。

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