業界独り言 VOL379 スーパーエンジニアの居場所

先日、前の会社で見知ったソフトハウスの方からメールが届き挨拶かたがた営業活動
に立ち寄りたいという話になった。とはいえ、直接の接点は少なく最近でも六年前位
に展示会で名詞交換をして面識更新をした程度だった。

そもそも、その会社との直接の接点は25年位前に無線機ソフトの刷新プロジェクトで
8ビットから4ビットへの移行をする中で付き合いをした程度だった。メールを呉れた
彼とは作業場所で顔見知りだったという事ぐらいであったことも思い出した。

かの会社には、俗に言う何でも自力で解決するスーパーエンジニアのTさんが居た。
私は、そのTさんとは33年前に一度別の会社でご一緒したことがある。大問題が、
あっても独力でコードと対峙して周りに罵倒するでもなく只管解決に向けてコード
を読み解いていく様はスーパーエンジニアという名前を想起させてくれた。

当時の私は新入社員で、当時の給与は2桁にも届かない状況だった。そんな頃に
出向先の会社では「この人が居ないとデータベースシステムが立ち上がらないんだ」
といわれる程大型コンピューターをそのメーカーSE以上に知り尽くしている風だった。
「いやぁ彼には月額100万円の契約なんだが安いもんだよ」と出向先の上司は言っていた。

年の頃は当時で20代後半と思しき記憶だったのだが、その後十数年を経て出会った
時もあまり印象に差は無かった。時間経過を忘れて仕事に没頭しすぎるからなのか
どうかは定かでない。今、初芝通信から迎えた仲間も伝説のTさんは一緒に仕事を
したことがある様で、何も周りを罵倒する様なこともなく只管コードと対峙して
解決をして行くさまに感銘を受けて居たという。彼は20年以上も恐らくスーパー
エンジニアとして働いて居たのだろう。

営業活動のミーティングでは、ほうぼうを伝手を頼って回っている状況だったらし
く。私の事を思いだして訪問だったのだろう。前の会社を突然さり、出入りのソフト
ハウスの方々までには説明の私小説も展開はしてない状況で、出くわした展示会では
展示員よろしく、ソフトウェア開発部長という名刺を渡されて要を得なかったので
あろう。

ソフトハウスが自立して業界全容を把握されて仕事をされているとは言えないので
クアルコムがなんであるのかを理解するすべは無いだろうし、メーカー自身も正しく
把握されているとは言えない状況でもある。さて、クアルコムが業界に果たしてきた
仕事あるいは貢献とは、実はこうした3G開発競争に対して平準化、標準化を提供し
ソフトハウスの突出して居た状況を奪うことだったのだろう。チップセット商売を
はたしたいということであり、ライセンスビジネスを進めたいという野望もある。

クアルコムが果たしてきたことは、目に見える形で国益というよりも国内メーカー
のビジネスを邪魔する物であったかも知れないし無論逆に言えばパテントを軽んじ
てきた国内メーカーへの踏み絵でもあっただろう。欧州を味方に付けたつもりで、
裏切られたと考えるのは間違いだし必要に迫られて居たのは日本自身なのだから、
圧倒的にアプリケーションを開発してきたはずの先進国家が、このようになるのは
ソフトウェアあるいは文化に対しての無策という以外の何者でもないだろう。

さて、様々な要求に応えて端末開発あるいはシステム開発に貢献してきたTさんには
現在ソフトウェアハウスというビジネスモデルでは受注する仕事がない。最近退職
されたという話を伺った。親会社あるいは、国家自身が仕事を創出しようとも、文化
を高めようとも考えていないのであり致し方ない状況だ。
とはいえ、今の仕事をしている人達から徐々にどのような未来に向かって行くという
方向性こそは示すべきだ、それこそが国の役割だろう。

つまら無い瑣末なことで、政党が脚の引っ張りあいをして、国家がギリシャの如く
破産に向けて迷走しているという事実に眼を背けてはならないはずである。突然の
銀行凍結というような事態にもなるのかもしれないが、若いエンジニアの卵たちが
夢をいだけるようなスーパーエンジニアならずともエンジニアの未来が描ければと
思い学校に意識ある授業を求めて寄付をしている。政治家に期待ができるような
世の中になってもらいたい物だ。

ゆずのコンサートの後で、銀座の宮崎地鶏の居酒屋に入った。店内の運用は、今時
の中国人店員や、板前だったりするのだが、堂々と名前や出身地を明示している。
日本の居酒屋文化を正確に伝承してくれて中国でも楽しめればと想いもすれ、子供
の頃味わった冷や汁を食すと祖母の想いが蘇り懐かしさとともにこうした食文化も
守れそうもない国を憂うのだった。

何も無かった頃に作り出していくのはある意味大変だが簡単なことだったのかも
知れない。今では、すべてに物が揃いすぎているなかに、不足しているピースを探し
出してビジネスを訴えるものや、デファクトとライセンスとオープンソースとの図式
で戦いをするものなど様々な対応を迫られている。日本という国が様々な文化を取り
入れて独特なものに昇華醸成してきたことを考えれば、もっと元気になるべきだと思う。

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