最近では富山の薬売りではないのだが、あたかも千葉の行商のおばさんの如きプレゼンテーション興行の機会が増えきている。無論丁度お客様の開発が順調に行っていることの証でもあり、新たなお客様の広がりを期待しての活動なので、こうした動きはよいことでもある。最近の売り物は、ワンチップ戦略の成果として開花しつつあるプラットホームが小気味よく動作する試験端末やら、ARM7ベースで培ってきた世界中での実際の3G/2.5Gネットワークとの相互接続性試験をクリアしてきた成果でもあったりする。なにせ3G端末であるチップセットには不可欠と言われる2.5Gの機能実現についてはお客様からも懐疑的に見られるほど奥の深い陰湿な欧州規格でもあったりするからだ。確かにCDMAのお旗本であったとしても2.5Gの世界では新参者であり経験不足という色眼鏡で見られてしまうのは致し方ないところでもある。2Gの立ち上げで欧州に先制パンチを繰り出した日本メーカーも一時期ほどの元気はなくなっている。開発拠点として作り出した欧州の組織などの解体なども多く見られているのが実情でもある。
そうした背景を考えれば、開発リソースとしての人材などが実際にはダブついている図式が見えてもくる。実際問題、3G開発成果のパテント収入をベースとしてじっくりと2.5Gの開発を後ろ向きと捉えずに強力な3Gソリューションの一環として開発展開するというビジネスモデルを描いているQuad社にとっては願ってもない追い風でもある。世界各地での開発拠点が目的別に呼応しつつ一つのプラットホームの構成要素を仕上げていくという構図は成功を収めつつある。無論モデムチップセットとしての性能以外に最近では3Gハンドセットとしてのアプリケーション機能までも求められるご時世となり、ともすればマイクロソフトの如きバッシングを受けそうな状況にもあり留意が必要となってきている。国内メーカーの方達の取り組みとしては、モデム制御とアプリケーションの分離独立を旗印にしてモデムチップセットとアプリケーションチップを明確にハードウェアで分離し、RTOSとマルチタスクアプリケーションOSとをそれぞれ実装したデラックスなハイエンド仕様である。
そんな華やかな状況が誌面を賑わしたりしているのが、世論誘導あるいは広告成果としての実情なのだ。しかし陰りを見せてきた端末ユーザー数の微分値ならびに部分積分の結果で世の中としても変容を許容できなくなってきたらしい。とはいえ瞬時値で抜いたという通信キャリアが、このまま驀進するのがどうかは別のストーリーだろう。確かに開発に莫大な費用投入をした成果として素晴らしい性能の端末が提供されるようになったのは事実だろう、トップキャリアが2.5Gからの移行をお願いする形で世間を賑わしているパケ死なるものを駆逐できるようなサービスも含めて誘導策を打ち出すようになってきた。パケホーダイといったネーミングにしてはミニマムコストが高すぎるような気がするのだが、それでもパケット代で親子関係が破綻したりするよりは良いレベルになるのかも知れない。電力系キャリアのPHSサービスの撤退の背景には、コストだけでは語れない部分も多分に含まれているのだろう。PHSから3G端末への切り替えで良くなる点とは新幹線で使えるようになる事だけではないようだ。
ハイエンド仕様で築いてきたプラットホームのエントリーモデル仕様というのが、どうも業界としての課題でもあるようだ。最近の溜池などの通信キャリアがQuad社のシンプルな機能ともいえるFinderあるいはPALMのようなプラットホーに注目しはじめたのはそうしたことが背景にもあるらしい。とはいえ明日の商売のために開発奔走している現場サイドには、通信キャリア仕様に従った舵取りを指示していて今まで以上に大変な状況に陥っているのが端末機メーカーの現在でもある。そんなお客様のオフィスを訪ねてソリューションの全貌説明をハード・ソフト・アプリの三つの観点から行っていると、「端末に必要なアプリケーションを一式提供していただけないでしょうか」と耳を疑うような科白が、あるお客様から言われたりした。ハイエンド仕様に翻弄されている現場サイドの渦中にありQuad社のソリューションの検討をしているなどということが表ざたになると大変なのは良くわかるのだが、今は手を掛けられない輸出モデルのボリュームゾーンの話らしい。
無論、最もシンプルな実装というと通信カードだろう。UIとして存在するのはPCからのATコマンド位のものである。開発費用がUIの複雑さに起因しているとすれば通信カードの開発は期間もコストも最小になるはずなのかも知れない。とはいえ通信カードが簡単だということではない、通信カード固有の難しさは、実は私達もわからないのである。PCMCIAの仕様やWindowsの仕様などが課題となり、大家であるPC/Windowsから提供される電源事情と動作仕様として必要な3Gとしての処理時間にはギャップがある。突然電源を切られたりすることへの対応については、お客さまが持っているカードシステム構築でのノウハウをお客様自身にインプリメントすることになるようだ。まあ3GのUIの苦労とは違った意味での大変さであるのだろう。開発期間と、そのソフトウェアサイズが比例関係にはあるのは間違いない。またサイズをクリアするために投入される人数の事情に比例してコミュニケーションの複雑さゆえなのか。
UIの複雑さという観点でいえば通信事業者が提示する複雑多岐に亘る端末仕様の実装そのものがネックなのだともいう。その仕様をクリアした上でメーカー色を出す部分の花形ともいえる部分がUIであり、複雑さの影にはバグも潜みやすいのも事実であろう。職人芸のように使い勝手を仕様上から追求している事業者と端末機メーカーの双方が実は納得ずくで迷い込んでいる迷宮のようにも見える。事業者仕様が重いのでシンプルな実装にしたいという声とは裏腹に、自社のノウハウも含めて首肯して推進している部分も見え隠れしているようだ。とはいえ、一事業者に特化している端末メーカーと、多岐に亘る事業者に3Gも2Gも提供している端末メーカーとでは事情も違うようである。しかし、なかなか横断的に解決を図るべきと考えている人材が少ないのはいたし方ないともいえよう。共通プラットホームなる言葉がメーカートップや事業者からは出てくるものの真の横断的に活用できる姿にならないのは実は内なる敵を見過ごしているからのようだ。
そんな背景が現在の国内のお客様の開発現場の実情であり、広がりを見せる中国市場などに向けてまでリソースを割けないが故のフルターンキーソリューションとしての要望なのだろう。無論、チップベンダーとしてのQuad社が全てのUIソフトウェアまでを提供してしまうことは一時的なものあるいは、きっかけなどの動機付けといった趣きになるのだろうが、一時的なものにするのか新たな世界へのシフトの契機にするのかは何故か双肩に委ねられてしまっているのが不思議なものである。思い返せば、ソフトウェア開発のデスマーチとなっていった国内3G開発競争の渦中に辟易して理想を求めていった過去の自分に帰り着くのは自然な成り行きなのかも知れない。重たいといわれる3G開発競争の中でLightでrightな方向性を追求していくことを続けられるのは端末メーカーでは為しえないということに達観したのは正しかったのかも知れない。
レディメードの端末ソフトスイートを望まれるような時代に突入するとの予想はしていたものの、そうした契機になる理由がリソース不足からという事態とは予測できなかったのも事実である。ある意味でお金にならない効率化という取り組みがメーカーでは中々取り組めない事実があるのだが、ライセンス費用で得た資金を投入してまで無償で開発ツールまで提供しているQuad社の取り組みはお客様自身が疑問を抱くような状況にもなっている。バイナリーAPIの共通化というある意味でWindowsと同列のような取り組みは、Quad社のチップに限らず動作していてライバルとも言われる北欧メーカーのプラットホームにおいても動作している。しかし、これは北米CDMAキャリアで事例であり、そのキャリアでのダウンロードサービスがあるからだろうとも言われている。説明のつかないのはGSMの上のチップセットベンダーにも提供して移植稼動させているからだ。ダウンロードビジネスがある訳でもなく、無償での収益の無いビジネスに見えるかららしい。
現実の端末開発業界においてのメーカーの実情が重厚長大なプラットホームなどに振り回されているのだとすれば、理解していただけるかと思う。多様なプラットホームにあわせてアプリケーションの共有化をしていく仕組みを提供していくことは競争力のある端末開発をしてもらえることになり、Quad社のチップセットビジネスに追い風となるからである。無論、ダウンロードビジネスが欧州などでも健全に立ち上がれば、アプリケーション事業としても投資回収が図られるというものである。いずれにしても現在は無償での高邁な活動として効率の良い開発支援を実現していくことに無常の喜びを感じているチームでもあるようだ。健全な投資という視点に立てばこの事実は興味深いものである。無償の技術提供についてのプレゼンテーションをしている我々の姿が奇異に見えるのは致し方ないことなのだろう。お客様の開発効率を上げていただくことに向けて3Gパテント費用で頂いたロイヤリティを投入しているのだから、良いと賛同頂けるのであればどんどん活用していただきたいのである。
バイナリーな開発環境を標準化APIを設定したことによるメリットは、実は端末メーカーにのみあるわけではない。通信事業者自身が積極的にAPI拡張モジュールの開発などを進めようとしているのも一つの流れである。まあ鶏と卵の議論ともいえるのだが、アプリケーション開発の効率を究極まで高めれば既製アプリをダウンロードあるいはプリセットとして自在に扱うということがショップですらも出来る可能性もある。端末業界がPCと同様の状況にまでコストダウンが出来るかも知れないのであり、裏返すと端末メーカーとしての差別化を図ることへの取り組みにまい進出来るようになり効率化が生まれるのでもある。効率化を望まない人々が多数いるのも否めない、現在のソフトウェア開発というビジネスが非効率の上に成立している側面があるからだ。工数商売をしているソフトハウスにしてみれば売り上げ高が減少することにもつながりライフラインの危機でもある。通信業界という構図の変革に際して、自らのビジネスモデルを工数売り上げからノウハウプロダクツへの売り上げに移行したいというのが次代のソフトハウスの姿であるという意識ある人がいるのも事実だ。
携帯電話のための端末ソフトウェア一式をセット販売できる時代に入ろうとしていくのは必定だと考えている人たちも増えてきた。前述のQuad社に期待されるソフト一式提供という期待にどのように応えていくべきなのかが、実務として正に渦中となってきた。UIで突出してきた日本の端末メーカーを取り巻く状況と、議論百出でいまだにsmsの壁を破れないでいる欧州の人たちの意識の壁や、哈日族よろしく日本の若者文化に憧れを抱きつつ取り込もうとしているアジアの人たちの期待値などが錯綜している。そんな渦中での舵取りも含めて無償の教宣活動も含めて、次代に応えられる仲間作りを機会を交えて推進していくべきなのだろう。端末ビジネスの変革も含めて、端末メーカーも通信事業者もソフトハウスも現状からの打破に向けて深く潜行した開発が始まりつつある。バイナリーな開発環境を構築するための無償ソフトウェアツールが携帯端末だけにしか応用が利かないと考えているのは間違った考え方ともいえる。PDAのドメインを越えてしまった端末までも存在する時代に、携帯電話のようなものであれば無償で使えるLinux以上に容易かつリソースを食わない効率的な環境であるといえるだろう。
Windowsの上で動作するシミュレータ自身も同じコードで動作しており、拡張モジュール自身がDLLで追加できるという新たな機能は控えめな内容ではあるもののWindowsの上で全ての開発を為しえるというオプションを選択可能にしてくれている。こうした事実に気づき自らのテーマとして最優先のテーマとして開発に取り組んでいるお客様は、実は全くのニューカマーであったりもする。時代が変革しようとする際に見られる大きな胎動といったものの予兆なのかも知れない。開発ツールが無償であることを利用して業務用システム開発を視野においている人たちもいる、パケット代定額制といった流れもあり、また業務用の無線システムにすら導入することも容易なテーマといえるからだ。大学や高専の先生が学生の研究テーマとして取り組むことすら容易なのであり、一円起業の延長線上で端末業界に波紋を投げかけるのも期待しているところである。国中の人々が聖徳太子のように笏ならぬ携帯を手にしている日本でこそ次の携帯文化を健全な業界として仕事が出来るようにしたいと思うのだが、いかがなものか・・・。