業界独り言 VOL355 埋め込み技術2008

今日からET2008が始まった。今年は春のETWestにも参加したのだが、規模でいえばET2008は倍近くの出展があるのではないだろうか。関西でやっているET-Westでは動員数が少ないからという理由で、参加しない関西の先端ベンチャーメーカーなどもあるほどである。関東での開催は、近くのパシフィコ横浜なので会社に行きしなに立ち寄れるメリットがある。むろん、帰り道でも道理だが。

今朝は、社内の電話会議が少し遅めにあった関係で自宅で午前中処理をしていたことから、天気もよいことで運動不足解消も兼ねてウォーキングで3kmほどの道のりを行くことにした。米国出張以来、久し振りの弁当を作ってもらったので、これも会場で食べることにした。秋晴れの天気でもあり爽やかなウォーキングを堪能して昼過ぎには現地に到着した。さくっと見回ることにしたのだが、ここの技術よりも気になっているベンダーや手間がかかっているベンダーなどを立ち寄ること全体の展示の雰囲気を確認する程度である。

FPGA全盛で簡単にマイコンコア入りのLSIシステムを構築できる時代であり、さりとて大規模なソフトウェア開発としてOpenSourceで積み上げていくのには、ギャップがあるといういびつな状況でもある。何かシステムを組み上げるという観点でやっつけるのか、最近はやりのプラットホームを流用してUIや開発環境を有効利用して、少量のシステム開発に役立てたいという輩も多いようである。ETの世界では、Javaのフレーズは見かけなくなってしまったようだが、Androidがとってかわってしまったのかもしれない。

ツール展示会を回れば、困っている業界の方向性がはっきり見える。顧客がいるところのソリューションが中心となるのは自明である。ECUなのかナビなのか、最近のAndroidがはたして携帯のプラットホームなのかPDA的な端末のものなのかははっきりとしないが、台湾勢が着々と物づくりをしているのはCPUマザーやルーターなどのLinux経験などの蓄積があるからだろう。日本での対応は、むしろボード屋さん、システム屋さんが使いこなそうとしている雰囲気があり、携帯電話・・・という動きが見えてこない感じだった。

古巣の電器メーカーでも今ではすつかりプラットホーム戦略が主流となり、もうけ頭であるデジタル家電の底力としているということのようだ。携帯でもLinuxベースでのLIMOなどの氏子戦略が十分に根付かないのは互いの相互寄進をベースにしていて、オープンなビジネスの場としての魅力を実際のアプリベンダーなどが感じ取れないからかも知れない。そんな中に、SDKやコンセプト、あるいは推進母体へのリスペクトなどからAndroidが注目されるのは自然な流れだろう。そうした流れで、実機と開発の界面を埋める技術が期待されるのは当然といえる。

私の最もリスペクトする日本のグルといえば、京都のY氏だが、今回も怪気炎をあげて、そんな時代にマッチするコンセプトの技術を展開してくれていた。JTAGでの実力は随一であり、さらにRTOSにも踏み込んでの各層での開発にマッチしたデバッグ技術を展開してきていたのだ。今回のそれは、実機でのDalvikのデバッグであり、また実機でのクラッシュからのデータ採取と、双方向シミュレータでのバックステップデバッグである。etmのデータとRTOS条件下でのプロセスデータを採取して、PC上に構築した正逆双方向に動作するシミュレータを開発して抜群の組み合わせでシームレスにデバッグが出来る。

この技術は、むしろIPとして各デバッガベンダーに提供して日本の国力としての組み込み開発技術を底上げするものにしていくべきだろう。ICE業界にとってFullICEでおいしい仕事をしてきた時代をブレークスルーした張本人として営業マンや経営陣からは疎まれているY氏の率いるKMCだが、それは裏を返せば技術へのリスペクトでありソースデバッガの黎明期での善きパートナーとしての時代からの離反をするほどに強力なコンセプトがROMICEであり、JTAGベースでの優れたデバッグ機能の数々だった。

私にとっては、KMCは組み込み日本の研究所の位置づけの会社であり、無借金経営で堅実な納得のいく技術の追及を続けている企業である。社員数を増やすことなく、クレバーなお客様に導入していただくことを前提にしたビジネスモデルで技術開発にまい進していくというスタイルもどこかQuad社に似たところがある。この上は、こうした先端技術をコアにしてIP供与していくことで、昔の古傷を経営陣からも忘れさせるほどのインパクトが生まれるのではないかと思っているのだが、はたして。

Y氏と、エバンジェリストのK氏としばし技術論議と最近の状況を確認交換しあい、次の接点と戦略についてのいくつかの試案を提示したりしてひと時を過ごした。人とのつながりがビジネスや歴史を動かしていく原動力なので、このあたりはもっさりとした日本の実情にインパクトを与えるものとして、取り組んでいきたいテーマとなりそうだ。

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