師走を目前にしてサンクスギビングやクリスマスカード、年賀状の手配といった行事への対応が要請されはじめる時期となった。日程を押して徹夜をしてまでのサポートに嵌ったりしているのだが、どうにも簡単なはずのことが中々出来ていないということばかりである。確かに様々なお客様が取り組んできたバラエティに富んだ端末やソフトウェアを見ていることから、隣の芝生が青く見えてしまうキャリアや参加してくるお客様が増えてきていることも事実なのだ。誤解ではないにしても、理解不足な点は否めないのは事実だろう。全てをQuad社が実現している訳ではないし提供している部品群の上に立脚して今までもミドルウェアを移植実装してきたOEMメーカーでの地道な実績やノウハウがあってのことである。そうしたノウハウの全てをQuad社が知りうる筈もないのである。差別化の部分というか、お客様のカスタマイズの範疇としてきた部分には、お客様の範疇の仕事があり、プライスレスな今までの成果というノウハウの部分となっている。
Quad社が提唱してきたバイナリー環境の認知度も高まりを見せてきていて、お客様のアプリケーション設計を全て賄えるところに届こうとしている。チップ事業部が提供しているソフトウェアパッケージも呼応する形に変化してきているし、最近の新しいお客様の求めている姿は新聞紙上を賑わすような、自社開発路線からの切替などを機軸に出来る限りアウトソーシングの上で製品開発が達成できるようにという彼らの姿からも窺えるのである。とはいえ、日本の携帯端末の奥深さをQuad社だけで達成しうると考えるのは早計でありミドルウェアメーカーとの連携などの上に拠って実現されるものとなるのは明らかである。お客様自らの社内の経験値やノウハウを利用して自社開発していたのではコストが合わないということであれば、アウトソーシングしていくなかで如何に活用できるのかという点が鍵となるはずなのである。日本の携帯端末開発地業界では、既に自社仕事という内容事態が衛星会社を通じての実務となっていて事業推進母体となっている親会社の指導だけでは活用が難しいということになるのだろうか。
なんでも出来る限りのサポートをして欲しいという要請が出てきたのは、中国向けの端末開発を検討しているお客様からだった。まあ世の中に残された大きな市場というもの自体が中国にしかないというのも事実なので、新しい市場に向けて新しい仕事の仕方で臨みたいというのは自然な姿だといえるのだろう。理想を掲げて、管理のみで新たなビジネスを立ち上げられるのかどうかはお客様のお手並み拝見という所でもあるものの、サポートする立場でいえば通常のお客様以上のサポートをどこまで提供するのかという点については戦々恐々としているところでもあった。新規な戦略提携としてのお客様開拓という目的に提示した内容は限られた内容であり、ドライバーのサンプル提供などで済むはずだった。自分達の分を超える作業については、拡大してゆく市場を見据えての適応策をとりつつの取り組みもQuad社が考えるサバイバルゲームへの対応だった。サポートしていく範囲がお客様以外にも広がってきたのは戦略的な取り組みといえるので前向きなりソース投入であり、けっして後ろ向きな取り組みではない。
実績のあるミドルウェアを提供してほしいという要請に対しては、Quad社で保証するものではないながら実際にOEM先や自社内評価で実績のあるミドルウェアベンダーとパッケージを紹介してお客様が選択をしてという流れだった。ミドルウェア自体は、名の通ったものであり既に多くのOEMメーカーが採用して搭載活用してきたのは紛れも無い事実である、しかしメーカーが行なうべきカスタマイズに対応していくためのAPIセットに対応したコードをQuad社が提供しているわけではなかった。拡大してゆくユーザーと共に広がり行くサポート要望範囲に対応していくという柔軟な変身ぶりについては、Quad社の文化とも言えるようだ。かつて端末メーカーとしてCDMAの技術を自ら売り込んできた歴史と共に、チップと技術提供というビジネススタイルに変身しつつ端末メーカーとしてのノウハウについてはプラットホーム技術としてバイナリー環境としてのOSのような取り組みとして転身を図ってきた歴史からみると繰り返しをしているようにも映るが明らかに変容してきている。
傍目からみると大変そうな部分が実は簡単なことであったり、簡単そうなことが大変なことであったりするのは大変そうなことにこそリソースを割いて試験確認のリソースが投入され評価されてきたことが要因であったりもする。細かい実装を実際に進めていく中でそうしたことが判ってくる。簡単そうなことでも確認が事前に充分に出来ていなかったりすることに遭遇すると、動作している部分としての現実の状況と、自分が進めている実装確認との差異に費やされる不思議なパズル解きの作業などに嵌ったりするのも致し方ないことかも知れない。とはいえ、実は端末メーカーにとっては、彼ら自身が培ってきたノウハウが大きな先達の成果であるはずなので、そうした環境の開発に従事してきた、いわゆるソフトウェアハウスなどと協力体制をとることも有用な方法だと思われる。まあ、プラットホーム開発提供という事業を見ていると、限られたリソースの範囲でアカデミックな内容に拘った大学の雰囲気にも似たなかでの進め方になり、無償提供という枠での仕事の限界が近づいてきているのも感じたりもしている。変容が迫られる中で模索しつつ現実のビジネス推進の中での仕事にあってはなかなか楽しめる時でもある。
昔であれば、UNIXマシンで取り組んできた道具作りをしつつの仕事を、現在ではVC++で道具作りをしながらWindowsで確認を行い、実機でJTAGで確認をしていくという姿をしていると自分が目指して追求してきた仕事のスタイルと符号するのである。お客様が必要な仕事をお客様の目線で自らが提供しているプラットホームを検証しつつサポートをしていくという目的に照らすと、わがままを言っている様に見える新たなお客様の声の中からテーマを選んで、自分達のテーマとして確認をしていくことも有用なことと感じる今日この頃でもある。ビジネスとして納期が迫られる中で提供していくメソッドの開発に徹夜したりしている現実には、実は確認したことが無かった簡単そうな出来るはずのことが動かないということに遭遇している自分がいたりする。動かないAPIの追求をしていくとバグに遭遇したりするものの、ソースから原因が特定できてもプラットホームとしてのリリース周期という観点から、別のワークアラウンドが必要になってしまうのもチップ開発提供に似た世界である。道具が進化して色々なツールが提供されているからといってハードウェアでいうところの評価回路作成といったワークそのものを自らの手でやらないと本当の意味での理解が進まないことに繋がると確信するのだが・・・。
動作している現在の組合せが、たまたま動作している現状と理想郷を目指すアカデミックな仲間たちに聞いた方法論とのギャップに遭遇して彼らの理想論に基づくバグ情報の提供と共に現実問題としての解決策の両方を提示して確認をもらい、お客様に提供していくということになる。プラットホームと実稼動までのギャップを埋めていく匠たちの技を垣間見ることになり、敬意を表するのだが、そうした成果が評価されずに葬り去られようとしている現在の状況にも大きなギャップを感じる。むしろそうしたノウハウをプラットホーム開発に活かして欲しいと思うのだが無いものねだりなの・・・。端末メーカーの状況に詳しい知人によれば、すでにそうした作業主体は既にソフトハウスに委ねられていて、昨今のプラットホームアプリケーション流通に期待する過程などから、端末メーカーとしては自前としての作業注力を止めることになり仕事がなくなっていくのだという。プラットホーム共通化による国内最前線の人たちの成果が携帯開発で出せるようになっていく中で、空洞化した日本の組み込み開発の現状が軋んでいるようだ。
プラットホームの上にアプリケーションを開発して流通していくというビジネスモデルは中々絵に描いた餅のようなところがあり、具体的な開発事例に基づいて肉付けをしていくということに他ならないようだ。ネイティブベースとプラットホームベースと使い分けるチップメーカーもあるようだが国内OEMメーカーが得意としてきた自前環境からプラットホームに移れない理由には、ミドルウェアなどを繋ぎこんできた歴史やノウハウと、さらに踏み込んだ領域を要求してくる国内キャリアの仕様に対応していく上では躊躇しつつもプラットホームへのシフトに取り組むハイブリッドな取り組みなどが現在の姿を映しているのだといえよう。OEMメーカー自身が蓄積してきたアプリケーションを全てプラットホーム移行するのではなくて、ハイブリッドな状況でも活用して移行していこうという点についてはメーカー自身の効率化への期待があるからに違いない。ラッピングしたりしつつ出来る限り使いこなそうというOEMメーカーの気持ちをアカデミック一辺倒な流れで批判するのは間違っている。
来年には多くのメーカーの取り組みが移行に転じていくことになるようだ、呼応する形で見えてきた動きとしてはOEMメーカー相手にしてきたカスタマイズ作業をプラットホーム相手に切り替えた先行開発に注力するミドルウェアメーカーの動きがある。OEMメーカーで主に彼らの対応窓口として働いていた彼らの経験を買い、そうしたソフトハウスと協業を計ることで彼ら自身の効率化を図ろうとしているようだ。プラットホーム化で仕事の流れにも変化の萌芽がみられる、既に台湾や中国のデザインハウスと呼ばれるソフトハウスたちがチップメーカーと契約してチップメーカーのシステムデザインの内にアプリケーション寄り(無線はブラックボックスとして)についての下回りの作業を全て自分達の技術成果としてOEMメーカーに提供してものづくりの効率化の流れが始まっている。無論高度な国内メーカーで培ってきた国内ソフトハウスのノウハウに届くには時間がかかるだろうが、リードタイムを活かせるかどうかは国内ソフトハウスにも危機感を募らせているように見える。
国内ソフトハウスでも、台湾などの事例に学び取り組もうという考えも出てきたようだがチャンスはあるのだろうか。チップメーカーとのライセンス契約として安価といわれるODMライセンスと呼ばれるような形態でライセンスを取得して今までは下請けとしてみてきたソースや資料を堂々と自分達のノウハウと合わせてパッケージ製品としてシステム化した状況での成果をOEMメーカーに提供していくことが出来るのである。無線に拘るOEMメーカーがケアする無線系統に、システムアップに拘る高度な製品構成としてのソフトウェア構造やシステム化能力の集大成として提供する日本版のデザインハウスが登場する可能性に賭けてみたい気持ちもある。各メーカーが個別に同様な仕事を投げてきた過去の事例から見れば、ソフトハウス自身も変革を迫られているのだし、そうした流れの中で自らの舵取りで効率改善をした開発形態となりうるだろう。今までののんびりとしたある意味で無駄だった仕事の効率を上げていくことでコストダウンが計れて水平展開が出来ていくのであればソース共有などの夢を追いかけるよりもよいのではないかと思う。まあ一つのうがった見方でもある。
こういった見方をしてしまうと、端末OEMメーカーで果たすべき事由は端末の企画作りだけということになってしまうのだろうか。ソフトハウスが自らの手でインテグレーションを果たしたノウハウパッケージを商品化して生産ラインのサポートまでを実施するような時代になっていくとするのだろうか。ミドルウェアメーカー・ソフトハウスが戦略的に前向きな仕事として効率よく開発が出来て、意味の無い不夜城のような状況での苦しみが少しでも軽減されていくのなら頭に描いてきた世界といえるかもしれない。しかし、そんな時代に変容していくなかでエンジニアとして端末メーカーにいる働き甲斐というものはどうなるのだろうか。全て丸投げしてきた時代から、そうしたソフトハウスとの対等な付き合いという流れになった場合に、端末メーカーのエンジニア自身が内容を把握して試作評価が簡単に出来るようになるというサイクルが回るのであればよいのだが・・・。開発という仕事を追及していくことが、どこの場所で楽しめることなのかも変わってきているようである。