五年勤続の記念ギフトの案内がメールで届き、記載されていたイントラネットのリンクを通じて記念品を選択するようにというメールが届いていたのは昨年の11月頃だった。実際に勤続年数が達したのは九月のことだったのだが、外資の会社での中途入社のメンバーばかりで構成されていると日本の会社のような創業記念日に祝いを受けたりするという構図にはならないのである。年末には選択した立派な木製ダーツボードがアメリカから届いていた。中国製とかかれていた立派な品物だったが、貿易は米国に輸入されてから、日本に発送されてきたようだ経済を回しているということには繋がり活性化の一助にはなっているのだろう。年が明けて、米国本社から五年勤続の表彰状が贈られてきた。日本ではたかが五年でと思うような期間であると思うのだが、転職などのオファー条件で提示されるストックオプションが全額処分出来る時期とも重なりある意味で大きなターニングポイントであるわしい。今までの数限りなく届いてきたメールの中には、五年の年季があけて次のステップに踏み出していった仲間もいたし、そうした話を寂しそうにしていた仲間もいた。
Quad社のような技術追求型の会社の中で仕事を続けていると、どんどん新しい技術が入ってくるし、またそれに呼応して組織も変遷していく。大切なことはビジネスを続けていくためにどのようにしていくことが必要なのかどうかということを徹底していると思う。1Xで立ち上がった会社ではあるものの、主要なリソースを3Gに向けて大きく広げていく舵取りをしている。アプリ拡大という要請の中でアプリプロセッサとしてのアーキテクチャ開発研究も実際のビジネスの渦中に実践して提言をしてはみたもののOEMの触れてはいけない領域に立ち入ったと映ったらしく、立ち上がらない技術となった。ビジネス範疇の中で在るべき姿を追究していくことから出てきた路はワンチップとしての追究ということでもあった。ワンチップとして出来上がるのがベストであり、その延長上に別の意味でのアプリプロセッサなどが必要になっていくという図式を描きなおして基礎追究成果をワンチップ環境の上に書き直していった。
異能の技術の系譜としてアプリケーションオリエンテッドの事業部で進めてきたアプリケーション構築の為の協調型バイナリー実行環境の技術と第三世代としての無線システム構築技術追求の姿が融合しあう時代がやってきたようだ。通信キャリアの違いなどを抜きにして共通の技術と思えるUI開発というジャンルの技術追求というワークは、仕様書の書き方から含めてのUML記述で機能モデルを書き表したいという要望などが一つの方向なのかもしれない。そうして生成された仕様からコードを生成すればツールチェーンは完成だといったのりが聞こえてきそうです。10年前に取り組んでいた当時の先進通信端末開発というキーワードでも、今考えると稚拙ながら挑戦はしていたように思い返す。機能仕様を実際に動作させようとMacintoshのHypercardで書き起こしてリアクションなどがビジュアルに見えるようにというようなことをしてみた。当時開発していたスクリプト言語は、エージェントとして動作するように設計されていて常駐型アプリと飛来型アプリというような構想の下にしていたことを思い起こさせた。
残念ながら神戸の震災やらと遭遇したりしつつ、この開発自体はフリーズドライ状態になってしまったものの携わってきたエンジニアの間では、期待値がそのままに記憶の片隅に残っているようだ。最新の携帯端末開発最新事情という見方をすると、当時はスクリプトを開発しつつもソフトウェア開発環境としての仕上げのワークや、実装の観点からのウィジェット部品などの追及やらと最近の仕事と符号する部分も多いように思い返す。当時の皆さんのご賢察を有りがたく思い返しています。私の中に残ったイナーシャでプロジェクト凍結後に出来たことは組み込みJavaでの機能仕様から実装までのツール連携ということでしたが、それも志なかばで止まってしまったように思えます。中々時間も掛かりつつ、実際の開発に展開できない場合にはこうした技術が表に出にくいというメーカーとしての事情が出てしまうからでしょう。それ以上にリーダーとしての私の資質が不足して周囲の説得などに当たることが出来なかったからということが、大きな理由だったのでしょう。
周囲の状況と乖離してしまうような中に現場を置いてしまい、周りとの理解がずれてしまうことでは決して仕事はうまく行かないものなのでしょう。最新技術の追求と共に伝道者のような語り部をおき、啓蒙活動を続けていく大きな意味でのチーム活動が必要なのだとも思います。大きな懐のリーダーの配下で蓄積されてきた開発資産という見方をすると、確かに開発者の意識や資質も充分に育っていったのではないかという確信がもてるチームも居ました。そうしたチームを目指してはいたものの、自身がリーダーたる資質に欠けていたのだなあと思わざるを得ません。技術革新の追求の目的を明確に訴えてロードマップと共に追求してきた成果は、最近のビジネスではベンチャーの自立から売却までという流れが一つのアクティビティともいえます。ベンチャーとして独り立ちを目指すような尖がったテーマを追求して、会社の売却に繋がったという流れは、まさにそうした切磋琢磨の結果だといえるのでしょう。こうしたリスクを日本の社内開発で中々取れないのは会社としての開発投資というものの考え方が変わってきたからでしょうか。
ベンチャー的な仕事、いわゆる楽しくなるような、熱くなるような気持ちが持てる仕事というのは、リーダー次第で進められるものだと思うのですが会社の屋台骨を支える端末開発事業の中での責任範囲をこなすので一杯になってしまうということも多いのでしょうか。開発環境などの追求をある意味で長年手がけてきた結果として、今ではQuad社としてのパッケージあるいはソリューション展開のお手伝いをしている訳ですが、内容としてはまだまだユーザーニーズに応えられていないかなという思いもあります。また最近では開発の効率向上という目的で新たな開発環境あるいはプラットホームへの移行が叫ばれて知己の多くがそうしたプロジェクトで忙殺されているようです。効率向上という目的と以前と同様な事までを達成するのが大変という事情は何かおかしな気がするのですが、誰かに聞いてみたい気がします。携帯電話を開発するために作られたOSの筈なのに、「今までの機能実現をするために必要な部品が不足して100億円以上の開発費を投入して整備が出来ました」という会社もあったようですし、ではそれ以降は順調に開発が拡張していけるということなのでしょうか。
CPUの処理性能が向上してきたのは事実で低消費電力と高速化の達成とが出来るように半導体の製法が進化しています。しかし、そうした性能向上をどのように生かすのかという視点での技術追求が果たして為されているのでしょうか。開発効率あるいは端末付加価値といった視点で、実際のプロジェクトが推進されたり中止されたりします。そうした中で何が鍵かと言えば、皆さんはソフトウェアの開発が鍵だと仰っています。確かに3Gプロトコルの開発は大変だったのでしょう、でも実際にQuad社も含めてそうしたワークは完成度があがり次のステージに移ろうしています。3GPPでスタンダードの改版があり将来を見据えてまだまだ仕事がありますという人もいるのでしょうが、果たしてモデムプロトコルが開発の難しさの中心にはいないはずです。懸命にそうしたワークを追求してきたQuad社のチップセットを利用した中国メーカーが半年ほどでニートな端末を作りえる時代になってしまうのですか。アプリケーションとしてのテレビ電話や国内キャリアの非標準的な仕様のネットワークでの接続性までも達成できた今、メーカーとしてやるべきテーマは違うはずだと思うのですが・・・。
かつて携帯端末で何をしたいのかという理由で、スクリプティングやエージェントで熱く楽しんでいる研究者達が居ました、そうした開発成果を生かしてビジネスとして活用できるような端末やインフラを構成したいという思いを持ちました。未だに、まだそうしたところまでは達成出来てるとはいえないようですが、勝手アプリの世界で少し似たようなことは出来るようになってきたかも知れません。今、端末開発の現場で起きていることを考えると1000台程度の企画台数の専用の携帯電話を起こすことなどはQuad社のバイナリー環境やキャリアの標準化構想の中でもミート出来る技術とはいえないようです。今年、各通信キャリアが目指しているのはそうした端末競争の次の段階としてもっとカスタマイズが可能なUIを実現するための技術だといいます。フラッシュのUIなどがフォーカスされてはいるようですが、果たしてメールやブラウザの開発などにもミートするのでしょうか。きめ細かなUI開発をサポートするWYSIWIGでDrag and DropなVisualStudioのような道具も登場してきましたが、果たして開発効率の向上という観点でそうした技術で達成できるのでしょうか。
面白い事例となるような事件がありました、国内の通信キャリアに新しいUI技術の説明にいったのですが、ある意味でCPUの高速化という流れも含めてその技術の目指していることが今までのUIソフトウェアの開発スタイルからいうと革新的であるという評価が為されたようです。残念ながらそうした技術が動作する環境がQuad社固有のバイナリー実行環境であるということから、彼らの顔色が無くなりました。今まで共通化として進めてきたプラットホーム路線とミートしないと考えたのでしょう。彼らから出てきた質問は、ライバルの技術を教えてくださいという内容でした。私たちは彼らが想定していたであろうものと同様なものを説明して、リアクションとしてはある意味でしょげてしまったようでした。大きな誤解があるようなので、Quad社のバイナリー環境自体がチップセット依存あるいはプラットホーム依存をしていないことをロードマップも含めて少し話をすると嬉々として顔色満面になられてミーティングの後は、エレベータホールまで挨拶に来られてしまう状況となりました。まだまだ技術としての展開にはビジネスモデルも含めて課題はあるものの、現在の携帯電話の開発での課題を解決することについて大きな手ごたえを感じることが出来ました。
技術革新が目指す過程で最後に、その技術の結果が実はUIの仕様追及などをしている国内トップの通信キャリアの方達の仕事も失いかねないようなことに繋がってしまう可能性もあります。この技術追求の結果は、人柱となっているような開発の蟻地獄に朗報をもたらすものかもしれませんし、意義の無い仕事を失ってしまうことにも繋がるでしょう。実際には今まで対応が出来ていないような端末開発にも対応が出来るようになり開発効率も上がり八方まるく収まるかもしれません。しかし、技術革新の歴史を紐解いていくと必ず技術革新による結果として度々繰り返されてきたシーンがあります。こうした動きのなかで、自分達の進めている内容がより高次な形で活躍できるのは確かなので、また新たな再生が始まるのだろうと思っています。こうした新しい技術革新はUIのみならずに今年色々な部分で出てくるものだと思いますし、Quad社自身そうした流れの変化を嗅ぎ取りシフトして対応して、また脱皮変容していこうとしています。楽しみな一年になりそうです。