業界独り言 VOL301 とっておきの仕事?

楽しくて仕方がないと思っている仕事も、人手がなければ始まらないということにもなる。どれだけ楽しいのか伝えられなければ、伝道者としての仕事も落第である。伝道者としてユーザーを掴む、仲間を増やすいずれにしても結果は・・・と問われて成果が出ないのであれば努力不足ということなのでしょう。たとえば、究極の実装として、ワンチップでプロトコルからUIまでが複合的な構成でリアルタイムとアプリケーションが共存しうるといったテーマを面白いでしょうと説明してみても、意図が伝わらない現状もあるでしょう。モデムとアプリとして個別ありきの常識に固まった人たちにしてしまった戦犯は、どこかに潜んでいるのかもしれません。最近ではマルチコアでクロックを下げて実装するのが低消費電力と高性能を両立する要だという意見もありますから、その意味でモデムとアプリを分けるのだという人もいます。ちょっと意味が違うと思うのだけれども、そんなことの本質まで議論するような閑のある人も理解している人もいないようです。突き詰めていくとCellのような構成になってしまうのかも知れませんね。

CPUの構成としてハードウェアアーキテクチャーとシステム実現のためのソフトウェアとしてのアーキテクチャーの視点を持つことが必要ですね、という話の延長線上にマイクロカーネルベースの環境の上に複数のOSを搭載してリアルタイム性能とアプリケーション管理の視点の両方に対応するといったことも検討の遡上には挙がってはマルチチップなどの影に消えていったようです。モデムチップとアプリチップの双方に乗り込んで設計を推進していくといったアクティビティに繋がらないのは、現実的な仕事の中で検討する余地などが日本メーカーに見られなくなったからだろうか。アーキテクチャーを新たに起こしてプラットホーム整備をするなんていう仕事を現実に興せる環境が限られているのは、そのことに必要な開発リソースや将来に向かった展開までが描けないからでしょう。よしんば描けたとして様々に変化していく状況の中で開発のテーマあるいは事業として維持していくことが出来るのかどうか・・・課題は山積している。

エンジニアにとって楽しい仕事も、使っているキャリアにとってみての視点はまだ別のものがあるようだ。高止まりでウインウインと重機がうなるような状況が続くはずもない状況を理解したうえで、得られた資金をチップメーカーに投資して解決をプラットホーム整備を行い解決を図ろうとしている状況もあるようですが・・・。結局トータルで幾らになるのという現実的な目的を果たすことが出来ないままに描いた食えない餅では成り立たないのはお察しの通りです。隣の芝生が青く見えるのはメーカーに限らず、通信キャリアでも同様らしく他のキャリアのやっていることをとっておきの仕事と捉えて同様なことにチャレンジしたがるのものです(実は相手がその逆に思っているのかも知れないのですが・・・。)。互いに環境が異なることを認識しないままに評価しているために、自分たちの開発チームの足を引っ張っているような状況もままあるようです。ソリューションベンダーとしての仕事では、実現した製品を作ってもらって何ぼの世界ですから、秘蔵っ子の楽しい技術も、実際にメーカーやキャリアの状況の中に写像してみると綺麗な画像にならないこともあるのですが、割り切りと考えていくのは世の常です。

携帯電話という消費電力重視の世界で特殊化されてきたものも、プラットホーム化が果たせるほどに潤沢なリソースが使えるようになってきたのはシリコン技術の進歩があるのでしょうね。本来の端末構築の目的を忘れて、目先の競争に走ると相手よりも強いミサイルや兵器を欲しがるようになるものです。具体的なテーマも考えずにリソース拡大を図っていくような進め方は自然の摂理からみても、間違っているのですが何故か携帯電話のグリーンプログラムを課したりすることは考えていないようです。リサイクルマークが付けられたりして困るのはチップベンダーとしてのQuad社もビジネスに影響があるでしょう。リサイクルしても製品として出荷することに対して課徴金を掛けるというわけにも行かなくなってくるでしょうから、iPODよろしくダウンロードしたくなるようなコンテンツの開発やら枠組みを提供していくことにもっと軸足を置くべきかもしれません。一年置きに買い換える人ばかりではないですし機能追加があとから出来るような仕組みなども含めて使いやすくするといったことも視野にいれるべきでしょう。

組み込みの仕事という観点では、実際の現場仕事が出来るのは日本ではなくなっていくのではという危機感も手伝い、ベンダーの方々やソフトハウスの方々などが梃入れをしてOEMに対して渇を入れたりしようとするようになってきました。腰が引け気味の業界の中で前向きな仕事を推進していくべきチップベンダーであるべきというお声も頂戴します。確かにリファレンスを作って仕上げはOEMさまにお願いしますというビジネスモデルも引き合わなくなっている時代のようです。一式使えるようになっているものを持ってこないと話にならないとまでいわれるとOEMさまの存在理由はと問い返したくなりもしますが、お客様の声には違いありません。ワンチップでマイクロカーネルを動作させながら、ソースデバッグを実現させたりすることにほくそえむような感性を持てる職場は、どうもお客様の場にはなさそうです。ロケット開発の現場にいる人たちと製品としてのミサイルとして購入して戦争をしている人たちの差なのでしょうか。組み込みという仕事を楽しいものとして味わえる感じられる職場であることをもっと訴えれば求人活動にも繋がるのでしょうが、どうもこうした感性を持ち合わせている人がいないということなのでしょうか。

XMLを組み込みで活用することで日本のコスト高情勢であっても、機敏に対応していくことで商機を導くことが出来るのではと考えたりもします。日本のOEMメーカーの方が元気になるような技術を提案してビジネスモデルの刷新などを提案していくということも最近の私の楽しい仕事のひとつです。こうした意気を感じ取ってくれる先輩達も周囲に増えてきているのも事実なのですが、もう少し追い込み有無を言わさぬところまでの充実整備を図ることが必要なことのようです。優れた技術を匠の感性で仕上げを加えていくというのはグローバルな会社でいろいろな感性の人たちが集まっている会社ゆえの楽しさでもあります。荒削りに物事を仕上げていく段階も必要ですし、細やかに完成に向けて感性を高めつつ確認を進めていくという人も必要です。合理的にテストを導くための方法論を論理的に考えてツール立てを作っていくひとも必要ですし、ソリューションベンダーと呼ばれる姿に求められる範囲は考えれば考えるほど深くなっていくものです。

先日、知人の方の紹介で若手の技術者の方を紹介していただきました。未だに人が集まらないで悲鳴を上げていることを知ってのことのようです。ご自身の会社の人材が活用されていないと嘆き、さらに紹介されるというアクティビティにまでとられているなんて、大きな信頼を寄せていただいているのはありがたいことです。実際に会ってみると、若いなりにはよく物事を理解しているという感じのする好人物でした。日本のメーカーが行うインプリンティングというシステムにより技術者の多くの方たちがカルガモ状態になっているのは確かです。彼自身も自分の境遇を客観的に見るということまでは出来ていないようでしたし、彼自身が作りこんでいる現在の仕事の意義についての理解や将来性についてはというところには視点を持っていないようでした。インプリンティングも含めて社員教育がなされていることのメリットは、そうした人材が何らかの事象で切れてスピンアウトした際に有効に活用できるということを私たちは上げています。最初から外資系の会社に入った人たちにはそうしたピンとした部分が足らないように思えます。

落ち着いてて仕事が出来るような環境でないということがあるのでしょうか。どうなるかわからないという状況であたふたと仕事をしているという風景が透けて見えてきます。外資系という枠組みでありがちなストックオプションが効率的に活用できることを期待してきっちり五年間仕事をする人もいるのかも知れません。外資に移ってしまうと尻軽と見られるのか、半年もたたないうちに引き抜きの電話やメールが入ってくるようになるのはなぜでしょうか。名刺がどこでどのように活用されているのかは知りませんが・・・。自分に納得の出来る仕事がじっくりと出来るそんな職場にいるという自負がありヘッドハンターの電話やメールには逆に切り返してこちらで募集していることを伝えたりしているのですが、その返事が返ってくるというような見返りがないのは、何かフェイクな話だということでしょうか。自身が楽しく仕事を前向きにしていることを伝えているつもりなのですが、よほどライバルメーカーなどの求人に掛ける意気込みで年俸の30%といったヘッドハンターの取り分が魅力的なのでしょう。なかなか減りません。

技術者もある意味で旬があると思われます、素直に育つ時期と悪い癖を掴んでしまうようになる時期とです。素直に育っている天然なエンジニアが良いのか、酸いも甘い知った癖が強くなったエンジニアが良いのか意見が分かれるようです。最近人事の方からは前者で優秀な若者を探し出すようにと明示されるようになりました。インターン制度まで活用してはどうかという意見も出るような状況なのでQuad社を目指す若者が輩出することも期待しているのですが、いつもそうやって学校を訪問しようとすると既に夏休みに入っているのですね。今後に向けてという価値観で夏休み明けにでも学校を訪問するというオプションも考慮に値するようです。ぴっかぴかの技術屋の卵を学校からインターンで探し出すべきか、ヘッドハンターに懸賞金を付けて探し出すか、面白いテーマや仕事の話に反応してくるような人材を地道に探し出したいという思いに舞い戻りつつ気持ちのせめぎあいが続くようです。日本人をあきらめて日本に住むエンジニアを選択してみてはという声もあるのですが、まだまだ日本人に期待は持てるはず・・・。

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