VOL47 災害とインフラ 発行2000/10/06

あるお客様が利用している部品を用いたさいの挙動に課題が出ているという連絡があり、この部品を担当営業がお客様から早速、預かってきた。弊社の評価テストボードにつないで、この部品の性能の影響を考えてほしいというのがお客様の要望である。他の部品に変えると問題がなくなるのだが、既に出荷間際であり、ソフトのみでの対応しかできないという日本らしい要求なのであった。

0.65ピッチの部品を預かり、週末に渡米する同僚に預けることに会社に行く途中からの国際電話で対応について議論した。当初部品へのプログラミングを必要するかと考えていたのだがデフォルトで信号が発生するということがわかり、部品と必要なパーツを持ち込むことに方針を決めた。部品が小型なのと特殊ピッチなこともあり、変換基板を秋葉原で購入していくことにした。

青山のオフィスに秋葉原経由でいくのはそれほど遠回りではない。銀座線の末広町から一本で青山1丁目には通じるからだ。細かいパーツをすべて常設しているサンディエゴのオフィスとは異なり、日本では必要な部品は、電気街やらPCショップで求めている。あるいはお客様から分けて頂くこともおおい。今週ある量販店が倒産した秋葉原ではあるが、その雰囲気は少し人出に映っているような感じがした。

しかし、細かいパーツショップが軒を連ねて一見さんの先生やら学生の部品購入やらメーカーの試作部品の手配とときおり交わされる量産発注のようなやりとりがこうした細かいパーツショップも支えている様子だ。携帯業界で必要な特殊ドライバなどもこうしたショップでは日常的に扱っているし、ほかに使い道のない2.5HDDの変換マウントなどはこうした電気街でしか手に入りそうもない。中古部品が軒を飾っているのはここいらだけだ。

必要な基板を見つけて、また消費電流計測用の低抵抗なども買い求めた。実験に必要なワニ口なども買い揃えた。電気街にくると目的をわすれてジャンク屋に足を伸ばしてしまいがちなのだ。電気部品のジャンクもだいぶ様子が変わってきていて組み込み世界の風景も大分市民権を得たような感触があった。組み込みチップのコンパイラがCD-Rに焼かれてビニール袋に入って数千円で売買されていたりする。店主と買い物客との間でソフト更新の方法について話しが交わされていたりする。

こうした風景を見ていると、まだまだ組み込み技術者の底辺は十分にあるようにも感じるのだが実際に求人の段には繋がってこないようだ。途中入社予定の方々も年末には新メンバーとして参画できそうだという話が電話で入ってきた。ステップバイステップで拡張していくことが健全なのだと思う。

オフィスに戻る途中で昼食のサンドイッチを買い求めた。丁度ランチタイムであり青山一丁目の地下街も売り子さんが声を掛けてくる。この商売も激戦区なのだろう。18階のフロアは弊社の移転でリニューアルしたので非常に綺麗に仕上がっていて新築の様子である。カフェテリアコーナーには自動販売機や電子レンジ、珈琲メーカーなどを設置してゆったりと食事がとれるようになった。ビルの南には、田町のスーパータワーなどが望める。

食事をしつつ、同僚と買ってきた戦利品について話をしていた。「変換基板をもっていくと連中は喜ぶだろう」とか「いや、俺の仕事をとったなといわれるぜ」とか色々な意見が出ていた。結果は楽しみだ。まあ三本つなぐだけなので大げさに基板をつけなくとも空中配線でも良いのだが。火曜日には成果が聞けるとおもう。

席に戻ると、部屋がゆっくりと揺れている。つけたばかりのブラインドがそろって揺れている。地震らしい。少し間を置いて、「サヨナラバス」のメロディーが聞こえてきた。自席でケータイが鳴っている。嫁さんからの電話である。境港で大地震が発生したそうだ。知己の先生がいらっしゃるところであり、一緒に旅行にもいった場所なので慌てて連絡をしてくれたのだった。先生の学校のホームページをアクセスすると無事レスポンスしてくるので、インターネットは大丈夫なようだった。yahooから検索して災害の掲示板を見ていると、かなりの大地震であるようだ。携帯や電話が通じないようだが、こうした電子メールは問題がなさそうだ。

被災時などの避難場所で指定されるのは学校などなので、こうした拠点をすべて専用の光ファイバーで結んでしまえばよいように思うのだが、ITの予算はそうしたことには使われないだろう。インフラだというのならば、ITの国道を設置してもらったほうがどんなにか良いかと考えるのだが。現在の電話会社を含めた数多くの利害が絡むからだとは思うが、無駄な投資よりも情報が通る国道を引いてもらったほうがどんなにかよいことか。

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