VOL67 時差の中で 発行2000/12/19サンディエゴ

Enabling Companyを標榜するQuad社は世界中のメーカーのCDMAの物作りを支援している。例え素人の方がライセンシーとなって開発に苦労していたとして電子メールや電話などでのサポートを可能な限りしている。実際にサンディエゴまで飛び込んできたりしてもそれに対応する実直さがある。

あるメーカーが既にCDMAの実績を積まれていたのだが、新機能を有するモデルにまったく未経験の別事業部の方が開発に取り組まれることになった。当然端末事業部からは二名ほどの経験者の方がそのチームに派遣されて支援をしていくことになったのだが・・・。

実際の開発では、新しいチップセットに提供されたソフトウェアに、端末事業部の方が積み重ねてこられたソフトウェアのノウハウを施して動作をさせるように仕事が進められていた。新たな機能には新たな無線ユニットやDSPの機能も含めてサポートしているために盲目的に以前のモデルでのノウハウが活きるとは言いがたい面もあったのだが、開発主体の事業部の方の経験不足は否めなく暗礁に乗り上げてしまった。

サンディエゴとの間で飛び交う質問のやり取りだけを見ているとこの点ならば、端末事業部の方がフォローアップしてもらうことで解決するはずだと思うのだが経験不足の方が経験を積まれた方々の修正盛り込みをしていく上で問題が複雑になっていたようだった。予約をしないままにサンディエゴに向かったこのメーカーの方を支援するチームを設けて二日ほど取り組み彼らの修正点の不備などを明らかにしてうまく動作したとの朗報が届いた。

同様のソフトウェアを利用している別のメーカーからは苦も無く動作しているというので何かインプリメントの誤りであることは確かだったのだが・・・。詳細を理解して改造した方の内容を別のチームが引き継いだことが間違いの始まりだったようだ。しかし、そうして経験を積むことによりまた一つのチームが経験者として取り組むことが出来るようになった。

開発されたソース一式だけでも大変なボリュームではあるのだが、日本のUIのソフトは更に複雑怪奇な状態であり、プロトコルやコアな部分が提供されてもそれだけで十分とはいえないのかも知れない。しかし、コアな部分に触れずとも仕上げに回っている顧客もいればそうでない顧客もいる。いじり倒して出荷出来ないよりは短期日に仕上げて機会損失を増やさないことを目指したほうがよいと思うのだが・・・。

チップ事業以外の接点が、まだこれから立ち上がりそうな感触がこうした所にも見えてきた。 UIやアプリケーション用のチップセットにもビジネスを広げていく事になった。一般化するにはまだ二年程度は必要とみているが、この業界はチャンスにのれば常識の通じる世界ではない。I-MODEで常識破りをしたキャリアでは、すっかり最近は常識に固まった仕事に陥っているようすだ。

日本が寝静まる時間に起き上がって別の文化の中で日本や携帯でのこれからの仕事のあり方を考えていると、いろいろな議論が出来るようだ。日本からも多くのメーカーやベンチャーの技術者が集まる中で議論をしてみると新たな方向性にも日本で考えていたとき以上に確立してきたものとして捉えられそうな感触が出てきた。一発逆転を考えているケイ佐藤のそうした姿は、QUAD社の中にあってもベンチャーの姿をより濃く映しているように感じる。

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