世の中は、皇孫誕生で少し盛り上がりをみせて、先日までのテロリズムの影響による物々しい警戒態勢から少し変貌を見せたのだろうか。六本木界隈で仕事をしている知己は、隣接する米国大使館での警備状況について変遷を語ってくれた。ピークではミラーを使って駐車している車の車体の下から確認するといったレベルで調べまわっていたようだ。セキュリティを維持するためには致し方ないだろう。アメリカ大使館の中からは、のんびりと肥えた牛蛙が出てきたりするそうなのだが・・・。
年末でクリスマス休暇を目前にして米国チームも休暇モードに続々と突入宣言している。先日送付したクリスマスカードの返事が届いたり、アニメーション付きの賑やかなWebメールが入ってくる。年末にかけてのソフトウェアリリースは、既にテストチームに引き継がれているために開発やサポートチームは次々と休みを取っている。当然キーマンはリリース前後の処置を行うために出てくるぞと予定を通知してくる。開発プロセスに則ったリリース作業は進行して日本のお客様にクリスマスプレゼントとして送付される。受け取りたくないプレゼントを前に不幸な冬休みを迎えてしまう人もいるかもしれない。
組み込み作業などをかっちりと行い問題点を絞り込み休みを終えて英気を養った米国開発チームや支援チームに適切な質問やデータを送付する態勢を支えているのは何有ろう電子メールなのである。残念ながらリリースするソフトウェアのボリュームやセキュリティの観点から全体のリリースについては電子メールで送れる状態ではないが、関連ドキュメント単位ではセキュリティ確保などを含めてWeb経由でダウンロードできるようになってきた。リリースするドキュメントやソースコードやオブジェクトはまだCDROMに焼ける範囲ではあるが、キャリアからせっつかれる中ではシッピングの時間すら貴重なのだ。
一番速く確実なのはサイズ制限を厭わなければEmailである。しかし、各社の電子メールの対応によっては送付先の方のメールボックスが溢れたりすることもよく起こる会社もあるようだ。電子メールで寄せられた質問への回答がこうした状況でリジェクトされると会社の生命線を決する事態にもなっているのが実情である。届いたメールを確実に受領するという至極簡単な目的を実現するための当たり前のことが中々達成できない会社にあっても躾を徹底する立場で会社を支えているIT管理者は重要なのである。
最近では、国内各社の実情を見ていると自社内での開発だけでなく共栄会社あるいは協力会社といった名前の下請けに開発を委託している例も多いのだが、ライセンス契約をしているために質問システムへのメール投稿自体がドメイン名で絞込みを行うことから直接担当者である下請けからの問い合わせができなかったりする。こうした不具合を解決する為に下請け会社の方に特別のアカウントを発行するという方法または、社内の担当窓口経由で全ての情報を管理するという方法などが取られる。件数が大掛かりになってくると後者では破綻してしまうケースもあるようだ。
以前の会社では、このような運用にあわせてメーリングリストを導入したことがある。これを使えば、誰が質問を投げても返答が全員に返されるというメリットがある。言い換えると誰かが倒れたりマシンがおかしくなってもバックアップされることになる。これは米国の会社との共同開発で導入したのだが運用の意図は正しかったと思っている。しかし現在逆の立場で多くの会社の方々からの質問を受ける側としては質問の投入対応をメールと連動したシステムである意味ではメーリングリスト的な運用をしているのだが、御客様で同様なシステムを実施している人はいないようだ。
最近では、サブドメインの統合などが流行りなのかメールアドレスの短縮化などが行われる会社が増えている。ドットが減るのはありがたいのだがルートドメインの変更などがむやみに行われると先ほど説明したような仕組みでは質問自体がリジェクトされたりしてしまうので問題となるだろう。会社が合併したりしてもメールアドレスまで変更されないのは賢明な選択だといえる。
最近では事業部の統廃合などから会社名としてのアドレス一元化というのが会社側としての選択なのかもしれない。しかしIT管理や業務に対しての運用レベルが全社で確実になされていれば良いのだが、とかく事業部単位で規模や予算に合わせて設備管理や運用しているという姿も見かける。長い冬休みに入ると、メールサーバーすらも止める会社が出てくる。休みの間に返った回答などが、何処にスプーリングされるのかというと最近では送達不能で返却されてしまう可能性もある。
しかし電子メールは以前に比べれば確実に届くようになってきたし添付ファイルのサイズ制限なども大分解除されてきた。ビッグなSMTPサーバーを立ち上げてあるいはDNSでの複数台数の並行運転で捌いていると思しき会社も多いようだ。メールアドレスを見ても会社は判っても事業部までは判らなかったりするし同姓同名なので数字が入っているような人もいる。以前の会社で事業部内でのサブドメインを集約するためにSENDMAIL.CFの定義で実現したがデータの追加や削除は大変だったように思い返している。
まあ、時間をかけて古いアドレスとの並存なども実現して半年以上は配送可能にしてきたので実害は無かったようだ。会社の併合などでドラスティックに変更するとしても過去の互換性を満たすべきと思うのは現場の常だが、会社側では自分で部署名変更をしておいて、あて先を訪ね当たりませんといった返却をするのが会社側の人事システムだったりもする。部書名を頻繁に変えている会社では固有の文化として致し方ないのかもしれないのだが。
昨日は、初芝電器の知人がオフィスまで訪ねてきてくれた。現在は企画部門で次世代の開発を司る研究所のナビゲートをしているようだ。彼とは入社が同期で、コンピュータメーカーへの研修出向も含めて三年あまりを一緒に過ごしてきたのだが、以降はいつも新規プロジェクトへの参画をして初芝電器の中でのソフトウェア中心の機器の立ち上げ黎明期を過ごされてきた。スタッフ部門への転身する最初は開発現業を憂いて社内教鞭の道を取られたりもした。ソフト開発を現場で立ち上げた経験を活かした人材教育に腐心していたのは記憶に新しい。
実は彼が研修所で育ててくれた意識ある、まともな感性の技術者の世代は優秀で、良い素材でも熱い内に打てという言葉が適時にはまる抜群の世代でもある。良い先生にめぐり合えたのだと思う。彼ともう一人の女性とで立ち上げた教育の方向は大きな成果を投げかけたといえる。しかし、「まともな感性を持った技術者であることが、その人や会社にとって良い事なのかどうか別問題なんや」と咆哮するさまを見ていると、きっとこうした吐露を出来ない状況にいるようだ。確かにこの時のまともな技術者の多くが会社を去っている。といっても素晴らしい成果を残されてきた上での事でもある。
中学の数学の先生をしている女性もいれば、大学に戻りネットワークを教えているものもいる。同業他社に転職してまだ悩んでいる者もいる。私の席の隣にも一人来ていて、今朝は、カスタマーとサンディエゴの技術者の三点を結んだ電話会議を主催してカスタマーの質問や課題についての支援をしていた。彼も一年既に、QUAD社で暮らしているのだが感性を育ててくれた元の会社への奉公も兼ねて昨晩は遅くまで元の会社の支援で孤軍奮闘していた様子だ。
こうした世代の育成に欠かせないアセンブラの教育を訴えてきた初芝電器の知人であった。しかし、後年クライアントである各事業部からの申し出で「時代はCだからアセンブラは教えんでええ」という要望に従わざるを得なかったのだ。アセンブラを知らない世代にとってC言語での速度や最適化という意味は理解し得ないのである。ブロック転送は構造体の複写あるいは、配列同士を等号で結び引数の中の要素変数をインクリメントするというのが今の世代の答えなのである。
昨晩、元の会社の支援にいっていた技術者は、そこの会社に先日行き特定のモジュールの最適化をして性能向上を50から4000%の結果をもたらす作業をしていた。サンディエゴのメンバーといっていた先週では彼はそうした作業の仲介役としてもとの会社のソフトウェア技術者への叱咤教育とも見える作業をしていた。昨日は一人で日本人のみで行ったこともあるらしくその時に指導を受けていた女性技術者から「この間来ていた米国の彼氏は、頭の中がアセンブラで出来ているんですねー・・・」と感嘆とも驚嘆とも思える感想を話してくれたらしい。この話を聞いた私は悲嘆に暮れた。