業界独り言 VOL201 常識を問われる?

いまさらながらの様に、GSMがやって来るという表現が正しいのだろうか。世界中何処でもつかえるIMT2000の理想とは裏腹に3GPPの不調不発は政治のごり押しのようなところがある。無論3GPPだけがIMT2000ではないのだが。世の中をアジアとヨーロッパに限ればGSMの発展は目覚しいものがあり最近ではIMT2000の端末は、GSM機能を持たなければ通用しないという状況になりつつある。もとよりIS95とGSMだけで良いという意見もあったのだが、そうした時代背景を映す端末が出始めてきた。端末構成の内実は、まちまちであり既にGSMチップを開発していたメーカーがIMT2000機能を追加したケースもあるし別々のチップを搭載していくというケースもある。

サブミクロンの進展がチップコストと規模を広げ低電圧化と高性能化という両輪を回してはいるものの、システムLSIとしての完成度を高めていく方策には中々王道が見つからないようだ。Quad社でもGSM機能の搭載をアナウンスしていて、恰もソフト無線機のような実装を実現している。そんな背景の中で世の中は二つの組み合わせを示唆するようになってきた。GSM+IMT2000という構成をどちらのIMT2000で実現するのかということになっていくようだ。これからの延びていく市場に委ねられあるいは偏向していくのは致し方ないので中国次第ともいえる。

最近の情勢ではドコモすらもGSMをターゲットにしているらしいのだが、果たしてその組み合わせ技にはまさかPDCも入っているのだろうか?・・・。GSMはある意味でTDMAの極致を目指したシステムであり、その実装はタイミングにセンシティブである。厳しい条件を課したPAの立ち上がり特性などのRAMPなどでも難しいようだ。CDMAでは帯域拡散をしていることから周波数的には同時送信を果たしているので立ち上がり特性などの細かい所までは要求度合いが明らかに異なる。ある意味でCDMAの方式は物作りを緩やかな制限の範囲で出来るように演算量を高めて対応しているといった面持ちがある。

さて、厳然として安価に普及しているGSM携帯電話機は、かつて日本メーカーも一時期までは頑張っていた牙城でもあった。最近また中国で盛り返しているというメーカーもあると聞くのだが実情は知らない。CDMAでこそ知られているQuad社ではソフト無線機を実践していてAMPSなどの実装も果たしてきていたのだがGSMについても深く開発してきた経緯がある。日の目を見ることになったGSM機能の紹介などを日本メーカーにプレゼンしても、GSMの相互接続性試験などの点や実装の難しさなどの自分達の経験からか笑止に付されてきた。

そんな背景のあるQuad社のGSM機能は、GPRSまでを網羅した普通のスペックとしてWCDMAチップ系列に先ずは搭載される運びになった。無論続いて出てくるのはCDMA2000チップ系列にも対応したもので、こちらは最近紹介されたばかりだ。ある意味で最新のGSM機能の実装事例ということが出来るのかもしれない。既に各社基地局ベンダーとの相互接続性テストを自社試験端末で実践して、顧客先の端末実装例でも相互接続性テストが始まっているのが実情だ。計画どおりに進んでいるこうしたチップ開発の成果を訝る人たちもいるようだが、内実は堅実健全な開発といえる。

複数のプロトコルを束ねる呼処理マネージャの開発やユーザーインタフェースからの形などが段々とオブジェクト指向的になっていくのは必定でもある。第四世代と言われる無線機の登場までには、世界中の携帯電話のプロトコルが一つに搭載されうるようなものになる。無論グローバル規格でないPDCは含まれていないしPHSも入っては居ないので若干過大広告の嫌いもある。国内でPDCを運営しているキャリアは、この先が不透明になってきていもいるのだが、無くなることは考えられない。少なくともドコモやJ-Phoneの現在の稼ぎ頭なのだから。KDDIはPDCの廃止に踏み切っている。中には、CDMA2000を第三世代とは呼ばないという格式ばった人たちもいるだろうが。

さて、チップ屋からみると世の中の動きとしてのそんな+GSM時代を迎えてといってもアプリケーションの面から見ればGPRSベースでパケットサービスやメールが出来るようになるだろうし大差はないともいえる。既にVodaphoneでは写メールサービス相当のものを始めたようだし海外進出で顰蹙を買っているI-MODEもサービスとしてはボチボチ始まってきたらしい。GSM経験のあるメーカーと無いメーカーとでは、やはり勘所が違っているようだ。GSM処理での割り込み周期の厳しさについて経験されたメーカーではシステムエンジニアが分析した実装に工夫が為されているようだ。

たとえチップやソフト提供を受けるにせよ、システムを理解した上で、必要な性能条件を明確にした上で周辺機能などのドライバー設計などをしていくことは必要なはずなのだが、こうした感性がまったく無い会社もあるようだ。やはり急がしさにかまけていて蔑ろな仕事の仕方なのだろうか。テーマを明確に提示すれば優秀な日本の技術者達を駆使して開発すれば簡単なことだと思うのだが、一番の課題は問題認識に欠落しているという点と開発というテーマでのリーダーシップが不足していることなのだろうか。残念ながらそのような教育パッケージはチップやソフトには付属していないのだ。

出来て当たり前と思われるような2.5世代の機能実装を軽んじる無かれ、+GSMの時代に入る中で技術者への要求内容が、また高まるともいえる。開発プロセスが明確な会社であれば適切なフィードバックで柔軟に開発体制も変えて対応していけるはずだから気にすることはないのだが・・・。メーカーで仕事をされる協力会社の方々からのメーカー技術者へのフィードバックで、その会社を盛り上げていければ、きっと協力会社自身も評価されるに違いないと思うのだが、いかがなものか。「こんな仕様ではまともに動きませんよ」と突き返すくらいの気概をもって当たる必要がありそうだ。

携帯組み込み業界で食べていく上で必要なスキルを明確にした資格制度でも定義したほうが良いのかもしれないが生憎と組み込み世界の中では実質的に通用するとも思えない。片山御大なとの宴席で話そう物ならば、「そりゃ常識問題だろ」と喝破されてしまいそうである。世の中がマニュアル人間を輩出する時代となってしまい、なかなか基礎を追いかけて納得するタイプの仕事の仕方が評定されていない時代ゆえの資格制度ともいえるのだが。しかし実際の製品開発をしていくシステムエンジニアの方達の知っているべき常識を列挙していくことなどで世の中の仕組みと同期せざるを得ないのかも知れない。知人の方がUMLとして常識を集大成したいといっていた昨年末を思い出す。

少なくとも常識をベースに考える力を持っていなければ、日本語というハンディキャップを背負ったまま開発を続けていく必要のある日本の組み込み業界という特殊事情には、世界と伍していくという昔の活力は見られないようだ。組み込み業界から実装技術の軽視という世の中の風潮自体が原因となって結果として衰退化しているように見えるのは違うだろうか。「衰退化とよぶよりは幼稚化だよ」という片山御大の声が聞こえてきそうな宴席なども師走の予定には朱書きされている時期でもありこの一年の業界を多彩な角度で反省し意見を言い合うだけでも価値のあるものといえるが、何か手を打っていくことがないといけないのも事実で我々が常識としていること位は形にしておく必要があるのだろう。

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