日曜日の朝から前日移動の出張で国内を飛び回るのは今年の初めから続いている。今日は、博多の町に来ている、桜は葉桜になり始めている。昼前の飛行機の移動になるのは同行するサンディエゴの仲間のホテルのチェックアウトの都合でもある。彼らを引き連れて次の目的地に運び一緒に翌日から試験を始めるというのが私の仕事の一部でもある。国内メーカーで働いているとき以上に国内の出張も多いのは仕事が集中しているからでもある。大阪で今年宿泊した日数は一ヶ月近くになりそうだ。既に、大阪のホテルのドアボーイには顔が売れてしまっているので到着した段階で名前を呼ばれてしまう状態だ。まだ、博多での仕事は大阪ほどではなくてホテルでの過ごした日数も二週間あまりではある。まとまった休みを取れるのは来月だろうか。
大阪で過ごした中の多くは開発現場の中でのお客様支援だったり、実環境での試験走行だったりしていた。昼夜を問わず効率優先でタクシーで支払った金額なども、相当な額となっているだろう。毎月の給与で増えていくはずの預金残高の伸びが悪いのは自身の清算手続きが滞っているのが理由らしい。それでも住宅建設で必要な資金などが赤字にならぬよう追いかけて処理するのだが、出張先で手続きをしなければならないのは確かだ。十日までに処理をしないと給与日前には振り込まれないのは、いずこも同じだろう。都内でも同様な試験を続けているので大型ボックスタクシーに機材を積み込みPCを覗き込みながら日がな走り回っていることも貴重な経験といえる。試験チームがドライバーとの会話を必要とするために乗り込んできたので、実務を助手席などで続けつつ走るのはかなりタフな仕事といえる。
私の仕事の説明をするのは難しいかもしれないのだが、そんな背景を理解してくれようとする旧来の仲間が一人、ここ福岡に住んでいるのだ。彼は、場所が幾ら離れていてもすぐに打ち解けるある意味で合わせ鏡のような友人といえる。地域の商店会の専務理事を兼務されている同期のKは書店経営をしている。博多での作業が続く中で、彼のお店にお邪魔するのも三度目となった。あらかじめお土産の希望は、伺っていたので羽田空港で買い込んで乗り込んできたのである。日曜の前日出張はゆとりともいえるのだが、あいにくと手配しなければならない機材がいくつかあった。最近はついていないシリアル端子が必要なのでUSB接続型のものを二つと、最悪の場合に備える意味でのデバッグ用の電源である。端末をJTAGで接続する際にはバッテリーを外してアダプター装着するので安定化電源が必要なのでした。
当該の電源を実験室から持ち出していくには重過ぎるし軽いものを野外試験用に買いたいという話は出ていたのでしたが中々実際問題として、大阪での試験が始まると日本橋にいく余裕がなかったりして購入話は据え置かれていた。先日まではお客様から借用した電源を使いまわしていたのだがお客様の開発が一段落したこともあり、返却してしまっていたのである。今回は好機と捉えてはいたものと出張前の土曜日はあいにくとユズのコンサートで時間がとれず日曜の博多で買えないものかと思案していた。いわゆる部品情報が載っているCQハムラジオの広告を掲げるような店であれば九州でも買えそうなものなので、インターネットで検索した旧知の名前のお店に電話をして確認したところKENWOODの安定化電源が見つかったので予約してもらっていた。4Vで2Aが出来そうな実験電源ということだった。
予約した品番をさらにインターネットで確認すると36Vで3Aまで供給できる重量が7kgのツワモノでした。ちょっとぞっとするので軽量なものがないのかとさらに検索した結果スイッチング式の電源で2Aとれるものがサンハヤトのキットで見つかりこれをたずねるとありそうだということになりこれに急遽変えてもらっていた。問題は該当の店への道が不案内なのであることだった。松下のコンパス入り端末がこうした場合には活躍するのだが、今は東芝のBREW対応機種に変えてしまったので地図の使い勝手がちょっと悪くなってしまっていた。中州にあるキャナルシティからの歩いていけそうだという目算で動きだしあとは電話で聞きつつ直行することにした。
天神の三越が目印と言われても不案内な人間にはよくわからなかったりしたのだが・・・。とりあえずビックカメラを見つけ出したのでそこの裏という手順でたどり着いた。ビックカメラではUSBシリアルケーブルを二個買い求めることが出来たので両得だった。昔は無線機なども置いていたと思われるカホ無線は、パーツセンターのみとなっていて電材屋としての取り揃えはかなりのものと思われた。最近では、こうした組み立てキットなどの世界に足を踏み入れることもなくパソコンに入っていってしまうのかも知れず、オジサンのための店といえるのかも知れなかった。頼んでおいた電源は1kgほどのコンパクトなものであり我々の要求を満たすものとしては秀逸のものといえた。電話で最初は話しが通じなかったのは組み込み電源を考えての回答だったのかも知れなかった。
カホ無線から出てきてからは少し買い込んで手が荷物でふさがったこともありタクシーで友人の書店に向かった。最近アナログの郵政省メールで届いた手紙によれば、独り言の続きが読めない由と返信が届かない由とが書かれていたので同様な状況の方も、まだいるのかもしれない。いただいたお手紙にはメールで返信をして、新たに作ったアカウントとパスワードをお送りして個人用のアドレスなども書き記しておいた。前回持ち込んだ土産のベーグルとクリームチーズは好評だったらしいので今回は抜かりなく携えての万全な来福である。彼の細君は、我が家の両親に書店指導を受けた内弟子なのである意味でより親戚づきあいしている間柄でもある。先日の彼を綴ったメールの本文に辿り着き懐かしく思い返すことが出来たようで感謝された。彼と食事を近くのお奨めの四川料理でとりつつ肩の力を抜いて仕事にかかる準備が整った。
確かに、今の忙しさはリソース不足の裏返しということでもあるのだが、あいにくと予算不足ということではない。必要なリソースアサインに関しては日本オフィスの実情はきわめて前向きであり人的リソース不足の実情は、自分たちの人事採用活動の不足の裏返しに過ぎない。とはいえ、外資的とは決していえない前向きな会社での仕事に合致する人材を探すのは容易ではない。優秀な一匹狼のようなソフトウェア技術者が今の開発メーカーにはいるようには見えないし、ソフトハウスといった場所で仕事をしているのであれば高額の給与で引く手あまただろうから言葉の不自由な会社に自分の状況を入れるようなことはしないのだろう。今月から入社する新しいメンバーの彼にも肩の力を抜いてゆったりと仕事をしてもらいたものである。
博多の街で二日ほどを車での走行試験を続けつつも、車窓の風景から晩春を感じたり、土地柄の食事を目指してランチにはドライバーご推薦のとんこつラーメン屋にいったりと忙しいながらにもメリハリをつけて仕事をしていた。二日目が早めに終わり食事を仲間と済ませて早いけれども風呂を浴びていると風呂場で携帯がなった。昔の会社の同期の仲間Mであった。日曜に訪問した際に携帯でとった同期Kの写真をメールで送付しておいたのがきっかけで実は今日博多に来ているので食事を三人でどうかという内容だった。風呂を浴びているとはいえないので構わないといいつつもチェックインを済ませてから20分くらい後でロビーで落ち合うことにした。世の中の偶然を引き起こす意味においては携帯写真メールというものはすごい威力を発揮するようだ。
四十台後半の仲間たち三人で久々の会食というのは、また時間を越えた感覚がよみがえることもあり、今ではそれぞれが異なった人生を歩みつつも根っこのところでの技術者のスタートポイントの期間を同じ会社で一年間あまりの研修生活を送った戦友たちという意識が特有な雰囲気となっているのだろう。厳しい時代の中でさまざまな境遇を経て、ソフトウェア技術者あるいはSEあるいは電子回路技術者をしていた仲間が集ったころの意識にもどりつつ食事をしているような錯覚にとらわれるのである。みなそれぞれの難しい境遇をこえて語れる達人の境地がほとばしりつつ現在とのミスマッチをあげつらったりもしていた。組み込みでの世界を推進していくことの意識を若手に持たせるための方策はという点が一番の話題だったりもするのはいたしかたないことなのか。ちなみに同期のMは100万人のSEの著者でもある。
肩の力を抜きつつも、しっかりとした意識で仕事を信奉する精神で取り組んでいきたい思うこのごろである。次になにが面白いのか、自分は何が楽しいのかを考えながらの取捨選択がこれからの互いの人生の進め方になっていくようだ。こってりとした肉料理はあわない、野菜をベースにした今日の居酒屋のメニューはそんな中年世代の健康にもぴったりだったようだ。次のオフ会は、東京で和菓子屋の経営を営んでいる、やはり前の会社の同期を交えてお茶会にしようというのが今日のアクションアイテムとなった。みな、情報のお茶請けを持ち寄る必要があるのだ。