気が付くと大阪で一週間暮らしている。洗濯も溜まり二日分の着替えでは賄えず、急遽細君に送付してもらった。ホテルに洗濯機があるような米国スタイルの大型ホテルが日本に無いのは、なぜなのだろうか。スラックスを洗濯依頼すると1000円かかるのだが、普通のコインランドリーでもあれば400円もあれば、ほかの洗濯も含めてドライヤーまで掛けられるのであるが・・・。ユニクロ衣料だとすると洗うことよりも買い込んだほうが良いような気になってくる。エコロジー的に考えると泊まっている現在のホテル選択が間違っているということになる。米国の仲間といっしょに泊まる必要などを考えると、まあ難しいところである。
せっかく出来上がった新居にゆったりと出来ないのは、仕事柄仕方がないのだろうか。最近は、定時退社よろしく明るいうちに帰るように努めていたのだが・・・。開発渦中のお客様の忙しさと私たちの仕事の忙しさは若干違うのだと思う。私たちも忙しいのではあるが、調整の利く忙しさであり、お客様のサポートをしつつ帰宅してからも仕事が出来るのである。お客様とのタイムラグ、仲間とのタイムラグの二つをバランスよくこなしているつもりだ。梅雨明けの先月末から夏に突入してずっと大阪暮らしを続けている。仲間が大阪入りするのを受けて関西空港からの乗り換え手順を英語と英文URLで指示したりして現地ホテルでの合流をすべく東京を離れたのは先月末のことである。最新リリースが米国では出たこともあり、出荷準備を急いでいるお客様は夏休み前とはいえ土日返上してのポーティング作業が始まる週末でもあった。
南森町の一号線沿いにある大阪のオフィスは、この地区のお客様サポートには必須のインフラである。大阪事務所に詰めるエンジニアの数は、まだ多くはない。言い換えれば地域に根ざしたエンジニアのために興した事務所ともいえる。ともあれ事務所の開所以来、ワイドな展開においての各地域ごとの接続テストなどにはベストマッチしていて大阪地区でのテストにあっては解析データの転送などにADSL接続されたSOHOオフィスは便利に限りである。米国への近さという意味で言えば関西空港から乗り込んでくる仲間もいるので大阪はやはり便利である。デラックスなホテル生活と疲れを癒すマッサージなどを頼んでいると前の会社の大先輩を思いだす。干支が同じ先輩は、熱く未来を語るひとであった。バブル景気だったこともあるのかも知れないが、未来に期待をかけた製品開発に多くの後輩のモチベーションも高く引き込んでいった。
そんなことを思い返しながらも、世紀を超えてからの通信業界の変調ぶりはQuad社が元凶なのだろうか。悪者を一人置けば大同団結するのだろうから、それで気がすむのならよいだろう。問題は、顧客や社会のために何が提供できているのかどうかという点なのだろう。国際化により開国を迫られた通信事情には開発現場にも同様のことが始まった。今、大阪の事務所で仕事をしているのは各国の仲間でもある。関西弁を操る生粋の日本人もいるし、漢字と英文を混じってメールを書いてくるイギリス人もいる。インド人の仲間は、滞在期間の一週間の間に、二度ほど出かけた焼き鳥居酒屋の大吉でかかっている「島谷ひとみ」の新曲を口ずさんでしまうようなインド人だったりもする。文化を超えた地域に乗り込んできて技術の最先端で顧客と相対する・・・。そんな組み込み開発の国際化現場である。
今の会社のビジネスモデルは、技術開発の最先端を突き進むことで顧客との契約を全うしていく。世の中の技術開発の状況の最前線を押さえつつ技術の追求をしていく大変な状況をいかに効率よくまわしていく。こうしたことを矛盾と感じているのが日本人であり、個人生活を返上してまで邁進あるいは埋没していくという日本人の技術者の生活の元凶とはいったいなんだろう。日本人技術者の最大のインフラを支えているのは間違いなくマイクロソフトであり、ある意味で国際化を阻んでいるのもマイクロソフトだろう。どうしても日本人が使いたがる漢字や日本語が国際化を阻んでいるのは確かなことである。すべて自国のみで解決しようとしているならば、よいのだが世紀を越えた今それもかなわない事情がある。
まず身近に出来ることは日本語を使わないことであり、多くのマイクロソフトとMicrosoftの間で起こる問題を回避することである。朝礼の挨拶を英語で話すことを実践する指導者もいるようだし、日常のレポートを英語で提出することもよいことかもしれない。折角欧州にまで出かけて採取したログを提供してもデータが抱え込んでしまった日本語名称のフォルダパスが米国の仲間が使うMicrosoftは認識してくれないのである。フォルダ名に日本語を使うのは、こうした状況の技術者としてとるべき姿ではない。使えない漢字のコードまても認識しての上でならば話は、また違うのだが間違った漢字の使い方を漢字検定で学ぶことは出来ても、シフトJISコードの欠陥配置の文字などをルールアウトしてくれる道具はない。
次の問題はバッチファイルである。これにも日本語を使ってはいけない。意味不明の文字がのろいのごとくに現れて米国の仲間たちにとっては使えない動かないバッチファイルとして忌避されるのである。日本のメーカーの方が使われるバッチファイルで説明書代わりに使われる日本語の記述もやめるべきである。文字の問題はマイクロソフトとMicrosoftの間のことなので回避の仕方は容易ともいえる。言語仕様として使えるはずのC++のコメントスタイルも日本語では使うべきではない。なにが起こるのかは書くまでもない・・・。面倒くさいから基本的に日本語を使うことをやめてしまうのが第一である。
電子メールの文中に読みやすさを伝えたくて、全角の英語を書くひとがいる。スペースや傍点や括弧など記号などは日常茶飯事となっている。極論すれば、マイクロソフトからMicrosoftに移行しろということになるかもしれない。日本人のお客様と外資のサポートを徹底して行っている会社だからこそ突き当たる課題なのだが受け取ったメールが読めないのも日常茶飯事である。電子メールに添付されるデータのサイズの壁もあり圧縮ツールが利用される。圧縮ファイルとしては国内では一般的なLZH形式も国際的には中々市民権が得られていない。ZIPを使うべきである。マイクロソフトほどではないにしてもアドビにも課題はある。やはり日本語でオリジナル原稿を書くべきではないフォント埋め込みをしない状況ではPDFも読めない事態となる。国内でパソコンを買わずに英語仕様のマシンを購入して日本語環境の構築を苦しんでみるというのが国際化を学ぶことだろうか。
文化の間に横たわる国際化の壁を崩すのは大変である、こればかりはお客様あるいはサポートの双方が本心から解決を図りたいと思わなければいつまでも誤解が残ってしまうものである。相互理解に立脚する時差と電子メールのシステムは、あっというまに非効率な道具と誤解や気持ちのすれ違いの温床となってしまうのである。休むために働いている海の向こうの仲間たちと、夏休みも返上して開発納期を追及しているお客様の間の心のギャップなのかもしれない。開発納期を守っていくことの意味は、第三世代の開発の流れの中でだいぶ変わってきたようにも思えるのだが競争社会の仕組みゆえか、あるいは日本語利用での効率低下のなせる技なのかお客様の開発現場とのギャップは埋まらないのである。
ゆとりを目指して、形からはじめたアマチュア無線機作りだが、なかなかはかどらない。ESD対策も十分な半田付けステーションを買うこともできたしデジタルテスターも購入した。静電気防止の半田付け作業台に敷くゴムシートと帯電防止のブレスレットまでも用意した。準備は万全である。免許申請手続きもTSSに済ませてようやく総務省に申請が進んだらしい。ここにきて困った事態が発覚した、免許状が着てからは一ヶ月以内に試験電波の発射にこぎつけなければならないらしい。100W局固定局の申請をキットだけで申請しているので完成しなければ試験電波をだす機械は他にないのである。会社の仲間と時差越えの会話をHFで楽しみたいと思うのが私の目指す国際化である。