VOL154 思い当たることは色々あるが 発行2002/4/4

システムが複雑化してくると、原因が中々見えなくなってくる。我が家でも光ファイバー導入に伴い、フレッツISDNのISDNルーターからONU接続のPPPoE対応のルーターに切り替えた。もともと家庭内LANはプライベートアドレスを付与して構築してきた。プロバイダの接続で 得られたGLOBALアドレスはNATで共有している。DNSはプロバイダの物を受け入れる。この為に各クライアントPCはDNSの設定はルーターのアドレスにしてあった。二月の開通と同時に切り替えも順調に推移してきた。

各階でのアクセスをローミングでスムーズに出来るように802.11bの無線LANに切り替えたのが以前のインフラ整備第二期の工事であった。この際にIPアドレスの範囲を定める計画を立てた。プライベートアドレスの範囲ではあるもののDHCPの対象範囲と固定設定の二つの範囲を設けて当時のISDNルーターの使用方法を変更して行っていた。光ファイバーが設置されてからは、第三期工事としてルータの更新が為された。同一の運用で始めた物の自宅ドメインという取り組みを考えていくと全ての設定はDHCPサーバーの設定で集中管理することにした。どの端末を固定アドレスにするのかも自在になった筈であった。

運用を始めて一ヶ月が経過していく中で細君のパソコンが不安定であることが判ってきたのだが、理由は釈然としなかった。すべて計画的に進めてきたはずでスムーズに稼働しない理由は、ハードならびにインフラから考えても不安定な要素は微塵も感じていなかった。同一環境で利用している自身の感覚からいっても細君の利用している電子メール環境について疑いが掛かったのである。かねてよりWindows98で購入したパソコンであったが不安定な理由はOSにあるものだろうとしてWindows2000への移行も終えていた。しかし・・・

怪しげな理由は、幾つかあり細君の使用しだした当時は、インターネットというまでもなくNIFTYServeである。AOLに触発されたNIFTY-Managerを導入して利用していたのだがもともとがWindows95時代に併せて開発されたものであり細君も以前のデスクトップではモデムで利用していたのだ。インフラ整備が進む中で、モデムからISDN-TAへの移行で接続が速くなったというのが細君の素直な感想だった。ISDN接続から無線LANベースに変えてもアクセス速度は変わらないので配線が電源になったのみである。

同様な不安定さがインフラ面から出た事があり、この点については自身も感じていた。二階においた無線アクセスポイントとの接続が出来なくなるという現象に遭遇していたからだ。そうした不安定要因を拭い去るために各階を有線LANで結ぶ工事を行い各階に無線アクセスポイントを置いたのである。移動しても利用可能なシステムが構築出来たのである。インターネットアクセス環境も光ファイバーに変更したし何の不安要素も無いはずなのである。自身の感覚も非常に安定になったと感じていたからである。

不安定さ加減については、あまり以前と変わらないとクレームを呈する細君からの意見については、では一体何が理由なのか疑り出すと、相違点から割り出していくとパソコンハードは抜きにして設定などから見直していくことにした。DHCPベースに切り替えた際に気になったのはDNSの設定である。自宅サーバーをドメイン登録した為にDNSの運用が二重系統になったからである。以前の設定はプロバイダのDNSをそのまま利用するのでルータをDNSサーバーにするIP設定としていたのだった。DHCPのフル活用という段になりDHCPサーバーからDNSについても指示割り付けするように修正した筈だったのだが、細君のパソコンは漏れていた。

自宅ドメイン運用に向けてレンタルサーバーからのスムーズな移行を考慮して二つ目のドメイン取得をしていた。techno-web.orgではなくてtechno-web.orgである。最近ではセカンダリDNSを無償で引き受けてくれるサービスサイトもあり、ここに依頼をした。DNSサーバーにしたのは旧型のPentium200MHzの大きなデスクトップであり96MBのRAMという状況だがLinuxである限りは、そこそこ動作しているのである。以前の会社でイントラネットでやった経験からも十分だと感じている。最新のLinuxではBINDと呼ばれるDNSソフトもこうしたSOHO環境をサポート出来るようになっていて外向きDNSと内向きDNSの二つを同時に動作してくれる。

これにより細君のパソコンからもTechno-web.Orgをアクセスして自宅サーバーのページがよめることを確認した。これでDNSが問題だったのかどうかは翌日には判定が下るはずである。DHCPサーバーはルーターで行っていてDNSの設定はDHCPクライアントには自宅DNSと外部委託先のセカンダリDNSとが登録してあったのだが、細君のPCが直接ルーターを参照していたのでルーターがキャッシュしていたアドレスがおかしかったのかとも思いルーターについてメーカのサイトをアクセスすると同様なバグと思しき改変履歴があったのでこれも併せてダウンロードして更新しておいた。

翌日になると、やはり芳しくないという結果報告だけを突きつけられて何だか会社でメーカー支援しているときの情報収集がうまく行っていないケースを思い出させてくれていた。差異について追求してみるとPCがもともとWindows2000用ではなかったことからメーカーサイトを調べるとBIOSの更新が必要という記述があった。これかも・・・とダウンロードしてWindows98で作成したBIOS更新用のシステムフロッピーでフラッシュ書き換えを行った。しかし、翌日になってもうまくいかないという評価報告を受けて万策尽きたと考えてクライアントソフトであるNIFTYManagerがWindows2000に十分対応出来ていないのでは考えた。

細君にとっては日常使ってきたソフトであり、彼女としては確固たる実績があるので別のPOP3ベースのメーラーへの切り替えは難色を示したし、彼女の考えはNIFTYManagerに問題があるのなら、もっとプロバイダーから連絡が来るはずだというのだ。お説ごもっともだが、今は切り分けもしたいので、適当なメーラーを入れることにした。まずOutLookは即却下という判断がなされた。昨今のウィルス騒動の渦中にいるからに他ならない。Quad社で扱っているユードラも案があったのだがフリーで使えるはずの版が何故か日本版としては無くなっていることが判明したので様子見の為に買うことはないので結局Almailにしたのである。

彼女の保有していたアドレス帳をNIFTYManagerから写してAL-mail環境にセットアップした。POP before SMTPでサービスしているNIFTYの最近のインターネット的使い方についての知識が不足していた為に受信ができるが送信出来ないという壁に当たり30分ほどロスしたものの検索解決をみた。アドレス帳の中身に気になる物があった。Fで始まる数字列である。これは所謂FAXサービスである。さすがにこのサービスはインターネット的使い方からは支援されていないようだった。となるとこの送付先についての取り扱い方の確認が必要だったが、FAXは、これからは使わない予定だから・・・という返事の節々にはなぜサービスが低下するのかという疑問符がちりばめられていた。

決定版と思われた環境をセットしていく中で、メール本文の編集をしているなかで文字抹消が出来ないことを指摘された。確かにAL-mailで文字抹消が出来ない。相性もしれないと組み込み編集機能から外部エディタであるNotePadに設定してもおかしい事に変わりはなかった。なんとキーボードがおかしい様子なのだ。余っていた外付けキーボードをつけてみるとほぼ解決したのだが、パソコンを再起動するときにぴーぴーと雑音で悲鳴をあげるのである。どうも何かのキーが壊れて連続押下状態になっているようだ。キーボードユニットを外すことで解決を漸くみたのである。

NIFTYManagerも、そのほかの設定も彼女の使いにくさや不安定という現象にとってはなんの問題も無かったのかもしれない。早速キーボードユニットの発注をメーカーに行うと納期回答からは私が米国出張している時に入荷するようすなので当面小さな適当なキーボードが必要とするようだった。ラップトップに大型の106キーボードを接続するのは不細工だし液晶画面から離れてしまうのは使いにくいものだし。USB接続の小形キーボードを探し出してきてこれが丁度キーボードを外した上に乗せることが出来る大きさだったのでこれを当面使う事にしたのである。

キーボードが壊れたのは久しぶりの経験でありハードは壊れる物ということを再度教えてくれた。以前キーボードには凄い経験がある。データベースへのマルチターミナルシステムを開発納入したことがあったのだが、この会社では夕方になると動かなくなるという端末があるというクレームを現地で受けていた。どうも話によるとその端末を誰か特定の人が使っているとと動かなくなるらしいということだった。現地で別件で様子見をしているとEnter-Keyを肩口まで振り上げた指を一気に振り下ろす打鍵スタイルの御仁がいたのである。彼は、もとライオンズの捕手だったらしい。「強く叩けば、データが速く入ると信じていたのだ」

おかしくなったキーボードを確認すると確かにキー入力がおかしいので、ケースを開けてみると内蔵のキー入力マイコンの足回りのはんだ付けの色が悪いのである。この強肩での強打によりキーボードに内蔵されたマイコンのはんだ付けが接触不良を起こしていたのである。はんだ付けをし直して適切な色のはんだ付け状態にすることで解決をみたのである。最近のチップセットの数多いピンが適切にはんだ付けされて品質を維持できるのかどうかという問いかけには、まだ少しそうした不良モードも残されているのでは思い返しもするのである。

当然、そこまでの打鍵操作をするようなお客様にとってはマイコン以外にも接点そのものが壊れてしまうということが想定されるので、その後ハード担当者は「壊れないキーボードを 見つけたよ、何故ってこのキーボードは静電式なので接点はもともと接触しないんだ」と意気揚々と導入したのだが、このキーボードもあえなく轟沈してしまった。理由は、キートップの下に貼り付けられた金属片の接着が剥がれてしまい金属片が落下してしまったからなのであった。

見つけてしまえばなんのこともない原因も想定されることが多すぎるというのが複雑化したシステムの上では大変な労力が必要となる。同様な事例が多数のお客様から報告されるか、多数の端末で発生するのか、必ず発生するのかといった問いかけ確認を通じてソフトかハードかの切り分けをしていくのだが、二人しかいない異なった環境のユーザーを支援するのが一番難しいのはいうまでもない。

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