業界独り言 VOL360 輝く若い瞳の前で

前 々から話をしていた、若い学生の前で、これまでのエンジニアライフを語ってみたいというチャンスが訪れた。母校で教鞭をとっておられる先輩との話が実った 経過でもある。予算消化の観点から来年一月までに適用できなければならないというお役所的な事情もあったようなのだが、こちらも年越しのクリスマス休暇と お客様のサポートのピークなどから出来れば、出張明けの代休日程とを掛け合わせることで、ようやく一日を作り出せることになった。土曜帰国で日曜着という ケースについては、会社として代休取得が認められるのである。

さて、学校からの要請内容は、企業で働く人から有益な話をしてもらうということがコンセプトでの一クラスらしく実質的に30分ほどなのだという。エ ンジニアを目指して?高校ではなく高等専門学校に入学してきた?一年生に・・・・、どんな話があうのだろうか。この不況の現状でエンジニアとしての将来に ついて不安視してしまったりしているのではないか、あるいは高専卒としての就職自体に不安を感じているのかなどなど、悩みは尽きないのである。自分自身を ケースにおいてみた場合には実際の就職時期は超氷河期だったし、そんな中で様々な経験をしつつも好奇心ひとつで何とか楽しく暮らしてきたという自負があっ た。

はたして、いまどきの学生の意識が同様なものであるのかも不明なのだが、海外出張の直前に日程が固まり、帰りのフライトで内容でも組み立てようかと 安易に考えていた。ネタ自体は、この会社での10年ほどのグローバルでの活動や、まえの会社での23年ほどの様々な組み込みエンジニアとしての活動などい くらでもあるし、実際問題として業界独り言自身もそうした性格のコンテンツともいえて、バックナンバーも大分たまっている。インパクトを与えた形で話をす るというのなら、30分では足りるはずもないのだが。やさしい会話をする気もサラサラないのでまずは資料はすべて英語で書くことにした。

おそらく先生からは、やめてくれとか、居眠りを助長するようなことになるとか色々言われるのかもしれない。だが、もうそんな時代ではないのである。 英語で話すといっているのではないのだ、日本語で説明しようと考えているのだが、なにせ彼らが巣立っていく時代に日本語のみでエンジニアの仕事が賄える時 代では、とうていないことを明白なのである。少なくともそんなインパクトはもってもらいたいのである。今、たまたま在籍しているQuad社での仕事につい て語ってみたところで、その段階で先生との間のギャップも広がるだけなのだと思う。

さて、出張先でまずは、会社紹介ではないのだが、一応せっかくの出張なので会社のグッズコーナーで学生の人数分のお土産を手当した。40名はいない だろうと勝手に踏んで、ボールペンとシャープのセットを40セット、あとは先生へのお土産を買い求めた。いちおう人数確認をしようとメールを投げたのだ が、時は金曜、日本は土曜で先生からの返事を得ることが出来なかった。とりあえず、成田空港からお土産は先生宛てに宅急便送付して水曜の際に使うのでとい うことをメールで伝えた。帰国後に確認できたのは43名在籍で、1名休学中ということだった。

二つ不足してしまう。先生へのお土産を優先グッズとして何かの景品にすればよいというのがとりあえずの回答だった。あとはなにか、会社の中で Give a wayでも探すことにした。月曜、火曜の仕事をこなす中で、会長からはペン付きライトをゲットして、さらに使っていなかった会社ブランドのリュックとノー トケースを見つけてなんとか準備は完了した。説明するのは水曜の第二時限のクラスということで横浜からは東京湾アクアラインの高速バスで向かい、先生に向 こうのバスターミナルで拾ってもらうことにした。生意気な後輩とはいえ、一応は、学外からの講師という扱いのようだ。

さて、会社の対外説明用のパワーポイントと、自前のパワーポイントの二つを用意した。二〇一一年の先に巣立っていく学生達とは、現在の4G開発の先 に出てくる有用なエンジニアであるはずなので、その時代までに時代が変わってしまうことも十分に認識してもらうことが必要だし、その時々の技術を学んでい くことの刺激を楽しんでもらいたいからに他ならない。パワーポイント以外に持ち込んだものは、実は電卓であり、いまではiPodのアプリとして使うあるい は日常は使わなくなってしまったものという意味でiPod Touchも携えた。先生に伺い計算尺もお借りした。

私が一年生の頃に使ったのは計算尺であり、五年の時に使ったのはHPの電卓であり、いまは、iPodの世界あるいは、Excelの世界ということで もある。自分の紹介をしつつ組み込みエンジニアとしての仕事を楽しみが伝わるように話をしたつもりだったのだが、まあ若い学生の中で目を輝かせて聞いてく れたのは10名ほどだったようである。先生によれば、英語の説明がだめだとか、最初に会社の3G By何某の写真を見せなかったからだとか自分たちの現状との接点が見いだせなかったからという意見も拝聴した。たしかにそうかも知れない、そうした点につ いては改善をしてまた機会があれば取り組んでみたいし感謝している。

私自身は、この短いプレゼンテーションというか講義でとっても疲弊してしまったのである。なぜか理由はわからないが、若いエンジニアの卵とのタイマ ンを果たし結果なのかも知れないし、たまたま出張帰りでの時差疲れからなのかも知れない。学生達は、すくなくともこの私からのメッセージに対しての質問を いくつかはしてくれたし、レポート提出を必要とする形式のクラスだったらしく、ぜひ先生からアウトラインでも反応を伺いたいものだと思っている。次回の可 能性は、もう少し高学年のクラスに対して、講堂を使ってやりたいということらしく、またもう少し準備をしておきたいと思っている。

業界独り言 VOL359 肩に力で、空回り

米国で、いつもの一週間コースの出張があった。日曜フライト・土曜帰国で、日曜帰着のパターンである。時差と食事のギャップでバランスを崩しがちで、体調維持に関しては、気を配ることがとりわけ必要だ。アメリカンな連中と同様の食事をしてしまったら、過剰な果物採取となり、この点についてはとりわけ注意されたので、今回の出張では朝食のフルーツは一切摂らなかった。とはいえ、ヨーグルトに入っている果物くらいが辛うじて取り込まれたものとなる。

空転している感のある、日本国内向け端末開発の実情の中で、なんとか元気を出して頑張ってほしいという期待もあり、トラの子ともいえるキャリア・メーカーとの米国での会議なのだ。とりわけ開発ボリュームとの予算調整が念頭にあるのが最近の日本の開発事情で、ソリューションプロバイダーとしての Quad社として単純に改善解決策を提示しても取りつく島もないということになる。徐々に改善していくことしか出来ない状況では、衰退していく流れを止めることは出来ないのではないかという漠然とした不安がある。

世の中は、オープン化の声が強くなり、すでにロボット化計画の中での商品も登場してきたし、林檎農家からは、通信販売のキャンペーンが強く打ち出されていて電話に限らずPDAの範疇でもゲーム端末としての位置づけを強くして暇つぶしマシンとしての地位向上を宣伝している。クールなゲームが簡単に購入できるという仕組みは、ある意味でニンテンドーも達成していないモデルであり、危険な香りすらある。あくまでもCPRMやカートリッジでの仕組みに拘っている日本では相容れないということなのだろうか。

Quad社内でもロボット開発の匠たちが、多くの開発メーカーのサポート支援に乗り出している。いままでの携帯電話の開発メーカー支援とは大分趣を異にしているようだ。ARM7で始めた携帯電話の先進ソリューション提供・サポートビジネスも、ARM9でバイナリーの花が満開となり、ARM11との協調でオープン化に漕ぎつけた。いま、まさに鉄腕アトムがサソリと戦おうとしている状況になり違うフィールドが見えてきている。最前線でサポートをしているメンバーにとっては、新たな顧客の期待値や広がりを感じ取り始めている。

気軽に、Have a KitKatと言いながら、あらかじめ頂いていた課題を、それぞれの担当エンジニアチームに振り分けつつ確認準備するというのが最近のスタイルだ。私をキットカット小父さんとして認識しているのかも知れないが。とりわけ日本のオリジナルフレーバーの威力はすごいものである。ただ甘いだけのアメリカンなスイーツとは一線をひくのである。ときおり持ち込まれるひと箱のキットカットは、私と彼らの間の会話のきっかけであり接点でもある。今回の出張では、お汁粉キットカットと、ホワイトチョコキットカットでトランクがあふれかえっていた。

肩に力を入れずに進めようというコンセプトは重要で良いアイデアが出るのも事実であり、顧客を交えた濃いミーティングとフォローアップの中で再認識した課題は、Xmas休暇のあとに繋がるテーマとなり、年越しでの再開ということになった。年越しの間に進めなければならないテーマは別に片付けるものが山積している。クロックアップして対応できないお客様が悲鳴を上げつつも開発に邁進していただかなければならないのは、いたしかたなく。せめても時差のブロード対応でケアを抜けなく進めていく必要がある。

国内の携帯開発の仕組みに軋みが生じて、少しずつ変革しようとしているのが最近の動向であり、プラットホームとして選定してきた流れの見直しや、あるいはキャリア自身が課してきた仕様の見直しという流れになったのは必然ともいえる。面白いのは、キャリア内部での端末施策自身が衝突したり矛盾を生じてきていて、変革への呼び水にもなりかかっていることだろう。携帯の売り上げ自体は、良く分からない国策という名のもとに再構築を余儀なくされたのもよい契機だったといえるだろう。各メーカーが勝手に自前主義で構築するような時代は終焉を迎えた。

こうした仕組みにどっぷりと漬かってきたソフトウェア開発業界自体は、ある意味で将来認識が不足していたということも言えるだろうし、自らが主体となった開発というスタイルでなかったことが、自立を求められる時代には重い足かせとなってしまったようだ。メーカーが自らの自前主義の御旗のもとに作り上げてきた自社開発リソースとしての専業ソフトハウスの行方は、暗礁に乗り上げてしまっている。足切りとして取り扱われる限りには、実力が試される状況の中で本当の意味で良いサイクルが回り始めればよいのだと思う。

日本という国が世界中に売り込める付加価値について、日本のメーカーや技術者が再認識することが大切だと思う。どの国内メーカーも生き残りに必死な状況なのだが、国中の携帯の総生産を積み上げても世界の一翼に連ねる状況ではなく極端に高級化してしまった端末機能が世界の趨勢からは外れてしまってきている。むしろ尖がった機能の一つ一つをより楽しく見せるという意味においては、アプリケーション主体のプラットホームが成功を収めつつある。複数の機能を同時に動かしたいといったことに指向した流れで向かったものと相反する動きがそこにはありそうだ。

日本という国が持つ、インフラや文化でこそ、こうした新しいクールな環境やサービスを謳歌する一大テーマパークのように、することで観光立国も、サービス立国もオタク文化立国も含めて輸出すべきさまざまなコンテンツを抱えているのだが、楽しさを最大限に活用するという流れにならずに、無理をしてコテコテに合わせようという流れでは、かつての猿真似と呼ばれるような印象のものしか出来ないということに陥ってしまうだけだ。割り切りとバランスで尖がったクールな端末やサービスを提供していく、今までのサービスとの互換性などに縛られてしまう限りは世界遺産に登録することしか出来ないといえる。

日本の組み込み産業が空転することなく、新しい方向性に基づいた事業の流れに乗り、いろいろな取り組みが相互作用を果たして、結果として富国論につながるようなストーリーを政治が誘導していく必要があるのだと思う。日本がCDMAで敗れたのは、それ以前の国策の差なのだと思う。クラウドの流れを組み込みのサイドとしてどのように活用していくのか、光ファイバーで国中を結んでいる国情を活用したサービスと4Gへのつながりが考えられなければ、このまま日本の立ち位置は無くなってしまうだけなのだと思う。

業界独り言 VOL358 老師とのオフ会の二次会は延期

母校への寄付金払い込み手続きが完了するにいたった。承認をいただき、振込みを実施してい、さらに受領書を発行してもらい、これで確定申告には万全であり、世の中の不透明な不景気風の中で意味不明のメッセージを発信している政治に対して直接的に出来るだけ税金を払いたくないという気運にも合わせて、長年暖めてきたことが始めてみると意外に簡単に実現できた。無論、中学以来の身勝手な付き合いに付き合ってくださっている先輩のおかげであることはいうまでもない。

綺麗なテレビに刷新して、毎日とても綺麗なくっきりとしたスクリーンに地上デジタルの放送が、ハッキリしないニュースをつらつらと流している。すっきりした、溌剌としたニュースでも見たいものだが、綺麗なスクリーンから提供される悲しいあるいは、哀しいニュースの数々には、ますますガッカリしてしまうのである。思い違い殺人といった、ニュースの流れの源流が、ゆとり教育から派生してきたものではないと信じたいのだが、何か自分で手伝えることは無いものだろうかと考えてしまうのは歳の性だろうか。

昨日は、好きなシンガーのライブとオフ会を掛け合わせて、マイコン老師のD氏、同期のM氏と南青山のライブハウスで待ち合わせた。M氏の出向先は、実は自分の勤務先と目と鼻の先で交差点を挟んでの斜向かいの兄弟ビルでもある。以前から、そのことに気が付いていたので、彼に夕飯の誘いなども掛けたことがあったのだが、実のところ彼自身は、そのことが分かっていなかったようだった。以前に、東京の事務所に遊びにきてもらったことがあったのだが、今年からの出向生活では気がつかなかったようだった。 続きを読む