高速クロックで動作するのはマイコンだけではない。世の中の開発サイクルが速くなるにつれて、サポートの期待値もどんどん高まっているのである。クロックの合わないお客様との間では、ビートが生じるか、もっとひどければ同期しないということになる。周回遅れといった事態で二世代遅れた単位でしかチップを更新できないという状況にもなるのだろう。チップセットが高機能になればなるほど、そのためのサポートすべき範囲が広がってしまうのでいわゆるマッハの壁ということにもなってくるのだと思う。
マッハの壁を突き崩すためには諸説があり、共通プラットホーム化という掛声が聞こえてくる。こうした中にビジネスモデルも含めてレディメードのWindowsMobileが良しという考え方もあるし、通信キャリアとしての差別化あるいは従前との互換性が問題だということで進まないケースもある。これ事態が、マッハの壁ということなのかも知れない。すでに、Androidも登場してきたのでLinuxベースで開発されてきた取り組みにも風穴があくことになるのかも知れない。プラットホームを開発していくというからには、その中でも風穴をあけていく位の勢いがないとやっていけないのが実情といえる。
ベンチャー気質で、こうした取り組みがオープンソースコミュニティと相互扶助で確立するのかどうかは未だ未知数ではある。Javaの世界が従来のC言語による高級言語達成による効率化の次に、オブジェクト指向言語としての特性などからさらなる効率改善ということになるのであれば、目指すところといえるだろう。開発方法論も、その取り組みに対してのモチベーションも含めてクロックの高い感性で臨むことが必要条件となってきていて、開発サポートということに対しての問題意識も現場実情を察知する感度も含めて高い資質が望まれている。
サイクル遅れで同期しているかの誤解をもったりしているようでは、同期外れという認識を自身が早期に持つことが必要なのだが、なかなか管理者の立場だと不幸になるのは、いたしかたないことなのだろうか。開発サポートという資質は、幅広く適切な理解を持つことが必要なシステムエンジニアになっていくことが求められていて、とくにお客様との間に立つ者はその能力が研ぎ澄まされる必要がある。この仕事を最初からこなせるようなエンジニアを外部から求めることは不可能に等しい愚行だといえるのだが、管理者にその意識がない限りは続けて不幸のクロックドロップしたようなサイクルで回してしまうことになりさらなる不幸を呼んでしまう。
では具体的な施策があるのかといえば狭い範囲をベースにまずは、開発サイクルをきっちりと持つことが必要であり、専門技術者としての経験を積むことが必要だといえる。お客様との間に立つ担当者というものをすべて各専門チームのリーダークラスに適応させるということがもとより解決策に近いのかもしれない。実際問題、結果としてそのような人選になってているケースを実践してみると、リーダーの仕事にプラスアルファで対応できそうな感触を持つし、お客様に沿った感性をさらに高めていくことが出来るという側面もある。技術バカということではなく全体最適も含めたシステマティックな理解を深めていくことが求められるからだ。
とかくコミュニケーション能力が問われると思われがちだが、言語能力のみでクロックの低い人は最先端の状況においては合致しないエンジニアといえる。大学で英語を学んできても実践と結びつかないので使えないという人が多くの場合であり、少なくとも大学受験を制してきた人たちならばあとは実践で耳を鍛えることぐらいで解決していくのだが・・・。国内の開発現場のエンジニアでも好奇心あるいは向上心の薄い人たちでは結局のところ職責が上がる頃には自分自身の範疇を狭めてしまうケースが多いように見える。
開発に対しての飢餓感がないというのが、日本の組み込みソフト現場のベースなのか、そしてそれはゆとり教育がもたらした弊害なのかも知れない。平和ボケした生活を続けることで正面切って戦闘が出来ないのでは結局のところ、その平和すら維持できずに危機感をもったアジアの仲間たちが追い抜いて行ってしまっている実情になってしまったということを肯定するしかないのかもしれない。外資の先端ベンチャーで仕事をしていると、より鮮明にその差分が見えてしまう。自分たちのスキルセットとお客様のスキルセットあるいは、その競争相手となる他のお客様との差分も見えてしまう。ただし同様に自分たちの仲間とほかの地域とのパフォーマンスの差分についての認識は見えないものなのだろうか。
結局のところ、そうした感性のクロック能力について見極めることが必要なのだが、いままでのこの会社での経験からも見極めるのはとても難しく知己であったとしても、しばらく仕事を一緒にしてこない限りは過去の理解をベースに考えるべきではないと思うようになっている。縮こまった日本の組み込み状況の中で、伸ばしていこうというための活動は、それ自体がクロック高く動作していくことが必要なのだが、重しのようにのしかかってくるクロックの低い人たちとの仕事をどのように解決していくのかは、私自身まだ暗中模索である。