業界独り言 VOL339 次世代の携帯電話に期待するものとは

世の中は、UIの新しい使い勝手や、システムオペレーションの姿をある意味で現状打破する形で紹介することになったiPhoneを大きく取り上げている。最近の携帯端末業界では、打倒iPhoneを旗印に掲げられなければ、何も進まないあるいは始らないといったことがまかり通るようになった。つまらない端末を作りこんでも結局とどのつまり時間と投資の無駄になる徒労に終わるということをトップの方たちが認識しはじめたからに他ならない。まともな意見だと思うし、ビジネスユースあるいはエンタープライズニーズといった言い方で呼ばれる仮想階層に向けての取り組みに、業界として市場性そのものに疑念がわいているのかも知れない。

PCの延長線上以上の期待値しか持てないプラットホームにおいて、各メーカーが差別化を果たすための仕組みを提供しうるのかという問いかけに回答が得られていないということでもあろう。もとより電源を切るためにスタートキーを押すという、坂村先生が特徴的に評する点などが根源なのかも知れない。携帯電話というシステム構築を果たしていくとプラットホームとは離れていわゆるBIOSの世界での機能網羅と自立が求められている点などが、もともと互いを補完しあえていない現実なども見えてくるようだ。そうした観点に立って北欧メーカーがOSメーカーを牛耳って自社専用環境としての追求をしていくのは帰結ということでもあるだろう。

バイナリーアプリケーション実行環境の開発の目的が何であったかといえば、よりリソースを要求しない形でのアプリケーション実現が当初のものだったし、開発していたチームが目指していたものがアプリ環境としての自立した開発を端末環境から独立させたいということでもあった。それらが相俟って良い結果を引き出したのは、PDCとCDMAの競争という意味での戦いでもあった。枯れたPDCと揺籃期のCDMAということでプロセッサに要求されるパワーの差異にはアプリに対しての余力という点で後手に回ってしまうという欠点でもあった。幸いにしてリソース遣いをベースとしてJavaサービスを採用せざるを得ない複合ブラットホームと単一プラットホームの構成を逆手にとってバイナリー実行環境として世に問う事になったのである。

第三世代の実現のキーワードとして語られることの多かったテレビ電話の実現がある意味でプラットホームの明確な目標でもあった。いかに効率よくリソースをアプリケーションに振り向けることが出来るのかという技術目標は、既に、シンプル化して実現したバイナリー実行環境の特徴でもありフォーカスされているアプリケーションに最大限のリソースを割り振ることが出来て、いわゆるシングルコアチップで3GPPのプロトコルスタックとテレビ電話のアプリケーションが実現されることになったのは歴史的にも正しさとして証明されてきている。といってもこうした歴史を紐解いているのは限られた先端技術者たちでしかないのだが・・・。そんな状況を嫌がるのは、権益を崩されることやユーザーに第二世代でのサービスを陳腐化したものとしてとらえてほしくない人たちということになる。

時間をかけて蓄積してきたモデムの技術は世界中をベースとした実証テストに基づいて構築されてきた。アーキテクチャのリファインは並行して行われてきて慎重を期しつつも、大胆にマイクロカーネル型の実装に移りさらにマルチコア化を果たしてさらに深化を続けている。スーパーバイザモードだけによるシステム構築は終わりを告げて、マルチドメインで動作するユーザーモードの複数アプリケーションを動作させる時代になっている。アーキテクチャーとしてみるとオンラインシステムの大型コンピュータのOS開発の歴史と同じだという人もいるようだ。空冷か、水冷かで戦ってきた大型コンピュータの歴史とは異なる点があるとすれば、Mips/Wといった形でのコア開発競争だろうし、同様な視点でのアプリのアーキテクチャも必要になるのだろう。

このまま行くと、同様な展開としてページングをベースとした仮想メモリの構成の実現も要求されるし、XIMとして歴史を戻るような構成も必要なことかも知れない。128KBのメモリーで小気味よく動いていたMacToolBoxのようなコンパクトなライブラリを追求するということも必要なことだろうし、実際にそうした整備を続けてLinuxの上にC++でライブラリを開発されていたり、バイナリー実行環境の上で同様にビジネスをしている人もいる。 現在の肥大化したアプリの最前線では1GビットのSDRAMをベースに設計されていたするのであり、はたしてUI設計ガイドラインの徹底的なボリシーや使い勝手の哲学も含めて統一化されているのかという点でみると複雑に機能連携は果たしているものの先が見えない状況で苦しんでいるようだ。

はたして本当にここまでのメモリーが必要とするようなアプリケーションになってしまうのか、本当に効率よく且つ安定なソフトウェアプロダクトを構築する方法はないのかという点についての視点ならびに研究は不十分な気がしている。ツールボックスを開発している人に言わせれば、そんなことは達成出来ていると怒られるかも知れないのだが、実際に商品化にまで至るトータルな設計事例としては無いようだ。建て増しを続けてきてようやくここまで到達した携帯ソフトの開発現場からすれば、垂涎の思いかも知れない果たし得ない現実から乖離した理想的な状況でもあるのかもしれない。いくつかの事例で携帯以外で達成されてきた技術をどのように昇華して実用化を果たすのかということに、答えとゴールが見えてきているような気がする。

いくつかの必要な技術については、持ち合わせているので、もう一ひねり、二ひねりといったことを数年かけて徐々に達成していきたいのである。

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