組み込み開発の時代の変遷が、大きく舵取りを始めている。ここ二年余りに国内の端末メーカーに提案をし続けてきたことがようやく地に足をついた形で始まろうとしている。端末開発という仕事の流れの中で 、開発の主体が企画をしているOEMメーカーから離れてソフトウェア開発を実業となす形態に移行しようというのは画期的な出来事であるかも知れない。端末メーカーが主体となって企画から開発を全て担っていた開発の流れが通用しなくなってしまったのは開発コストの増大と共に開発成果を生かしきれない開発規模の小ささが国内メーカーの弱い点でもあるからだ。完成度の議論や端末の格などという向きもあるかもしれないが、ノキアなどの開発規模の大きさは圧倒的なものであり、国内の大手キャリア のみに納めることで採算を確保しているという現状に未来はありえない。
海外端末の開発競争にさらされて撤退したり巻きなおし図ろうとしている日本の端末開発の実情は生産性の低さを示しているのか、結局自国の経済格差と技術力のバランス比率が崩れてきたということなのだろうか。組み込み開発の仕事が次々と減ってきているという話ももれ聞こえるのだが、まあ携帯電話の開発のことを指しているからかも知れない。そこそこの性能の端末と評する低価格な第三世代携帯が中国・韓国メーカーから登場してきたことが一つのきっかけだろうし、早晩そうしたメーカーも技術をキャッチアップしてくることが想定され自分たち存在理由を問われることになるからでもあるだろう。コンシューマー化を遂げたハードディスクレコーダーのようなプラットホームを適用さえすれば誰でも簡単に出来上がってしまうような状況に突入しそうな状況でもある。
チップセットビジネスに踏み出してCDMAを推進してきたQuad社でも、モデム機能から踏み出した形でアプリケーション中心の流れに踏み出してきた。アプリケーション志向に踏み出していくという流れは、転職するころから具申もしてきたし、実際に着メロなどをきっかけとしてDSP活用という形でのアプリケーション志向を技術開発の流れとなった。多くのベンチャーが音や映像の技術を提示しながら活躍の場を求めてQuad社の門戸を叩いてきた 時代には、頼りなげだった渉外担当もマルチメディアマーケティングのボスになっている。顧客先に提供する機能の多くも携帯電話として必須となってきたメディア再生・録画・グラフィックス・テレビ電話・・・など次々と広がりを見せている。ストックオプションを得て悠々自適のはずの仲間たちも技術に携わることで生きがいを感じているようだ。
シニアな仲間だけではなく、次々と若い仲間たちも入ってきている、しかし日本のメーカー達の元気のなさの状況の中でQuad社自身がよって立つ未来が描けるというのだろうかと疑問を呈される向きもある。前向きに捉えない、進もうとしない、戦略・知略を立てない、といったないないづくしを始めてしまうようであればベンチャーではなくなる。Quad社がベンチャーたりえているのは会社の気風のせいであろうか、会社の収益と投資のバランスが回っているからであろうか。次々と優秀な仲間の輪に加わってくる、グローバルな新たな仲間たちの瞳は輝きを放っている。輝きを失わずに、大きな輪を構成するような流れになっていく人材のリソースの成長が欠かせないものである。ベンチャーが続かない理由の一つには輝きを放っている世代のエンジニアが、次の世代のエンジニアを育成するモデルが形成出来ないからでもある。
人材育成にまで、手を掛けていくだけの所に至るのであれぱ 、会社の方向としては成長の余地があるといえるのであるが日々の仕事の積み重ねが大切なことはいうまでもない。携帯開発という大きな流れが、変わろうとしているのは要求される端末機能の高機能化と共に開発コストと開発期間の短縮が求められているからでもある。これは、単純に開発母体を国内から海外に移管すれば達成出来る物ではない。実際問題として、国内のメーカーにおいては海外事業場の運用に際してうまく制御できないでいるケースが多いようだ。会社風土が国際化という流れに組みしていないことも理由の一つだろう。アジアな仲間たちや自由を求めた合衆国的な仲間などさまざまな人たちで織り成す開発風景の中ではコミュニケーションも難しく、とても遠隔で制御出来るようなものではない。
さて幾つかのバターンがあるものの基本的にはキャリア仕様に合致するリファレンスパッケージを作り込み、OEMに対して提供しようというものが最近の風潮である。3rdParty主導のものもあれば、通信キャリア主導のものあるいは、チップベンダー主導のものなどさまざまである。まだ、これといって成功失敗といった結果が聞こえてきているわけではなく、みな努力して成果を出そうと競走しているのが実情である。リファレンスパッケージを作り込むことに肯定的な理由があるとすれば、通信キャリア独自仕様となる部分の作り込みを一箇所で行うことにより集約化というメリットが出ると言うものであり、通信キャリアにしてみれば自分たちの固有部分としての開発費用を一回の資本投下で回収したいという目的に適うからでもある。従来のように仕様を提示して各メーカーに作らせるというビジネスモデルでは達成できないものだった。
否定的な理由があるとすれば、現在のOEMが抱えているソフトウェア資産の活用という意味において新たなアーキテクチャに移行するためのコスト投下が不明であるという点である。したがってOEMからは、こうした開発手法にいての動きが生まれにくいということになる。従来黒子となって各メーカーの下支えをしてきたソフトウェアハウスは、ノウハウこそあれビジネスモデルゆえに情報共有が出来ずにいた流れがあり、自らが旗振りとなって通信キャリアから仕様を入手して物づくりをしようという流れを宣言している。こうした3rdパーティは自らの基本ソフトを持ち、インテグレーションとしてのビジネスモデルとライセンス回収というビジネスモデルの二つを通じて成立させようというのが目的である。OEMからの端末開発の流れが不透明になってきた昨今自らの進退を掛けてのビジネス発掘といえる。
新興のデザインハウスという流れもある、アジアな活力溢れる若い力を結集して、国内メーカーの指導の下で既に国内通信キャリア向けの端末開発もこなしてきた中国・韓国などの会社が経験をベースに主客転倒した形でビジネス提案をしてきているのである。とはいえ国内キャリアとのインタフェース構築には、まだ力不足ということもあり、国内の主要なソフトハウスと合弁でタッグを組み取り組もうという動きもある。チップメーカーであるQuad社のような立場において特定の通信キャリアの仕様に基づいたソフトウェア開発提供を行おうという流れには難しい点が幾つかある。中立を目指す流れの中で、標準逸脱した仕様の各キャリアの独自仕様に対応するようなコード提供のブランチをもつかどうかという点が一つであり、事業として八方美人的に全方向外交を続けている流れにおいて通信キャリアが自身のノウハウの流出を懸念するからでもある。
世の中の通信キャリアにおいては、自らが端末仕様を十分に定義するところまでは到達しないケースもありアズイズである程度動作するものを持ってこいというところもある。世界的にみて大きなキャリアも必ずしも統一仕様を実現できずにいたりする状況なども混迷を深めさせている。期待値と現実の狭間で資金繰り問題などがさらに影を落としてビジネスの胎動を分かりにくくしていたりもするようだ。世の中の変化に注意深く目を向けていないとメーカーの中でさえ機種別に身売りをはじめたりする状況も出てきて、新しい流れの中に身の丈をあわせて会社として変化していくことが求められてくる。国際競争の中で身の丈の調整や仕組みの改善あるいは革新などに取り組みつつ現実の仕事をこなしていくという挑戦的な仕事が最近の組み込み業界の中での携帯開発の現場である。
今年既に五名ほどの新しいメンバーを迎えつつ、既にサンディエゴでの長期研修に入ってもらっていたり、中国の仲間との合同トレーニングに参加したりと飛び回ってもらっている。新たなこうした携帯開発の現場の中にやりがいを求めて飛び込んできた輝く瞳をもつ仲間たちを迎えているのも、やはり輝くモチベーションで働くグローバルな仲間たちであり二ヶ月近いトレーニングを経て新たな力となって最前線に飛び込んできて欲しいものでもある。各地域の実情は異なるものの、サポートするテーマは同じでありながら見えてくるお客様の姿は異なって来ているのが実情ともいえる。レファレンスデザインに求められる要求は高まりをみせて、メーカーではそれを適用した上でのシステムエンジニアリングをサポートとして要請してくるようになってきている。
組み込みのものづくりをメーカーで体験しようという流れは、薄まり製品化という意味での演出家がメーカーの仕事になりつつある。若い技術者が向かう先にあるのは、実は国内メーカーではなくてアジアのデザインハウスなのか、あるいは国内のソフトハウスでのインテグレーションビジネスなのか。各メーカーがリソースを投入して開発に没頭するという仕事の仕方がなくなろうというのは致し方ないことなのだろうか。開発生産性を向上するという意味においての新たなUI開発技術論などに意識を傾注していただきたいと思うものの、硬直化したメーカーの意識ではレファレンスデザインも石橋を壊すごとき破壊検査を通じての組みなおしをしようという現場と、改善を求めるトップとの間には乖離があるようだ。最後通牒を出すのはむしろ、通信キャリアからのコストダウン要請でありビジネスモデルの提示なのかも知れない。
若い、仲間たちの輝く瞳に応えるべく自身の意識を高めていくためにも若い好奇心を高めることに腐心している。自らの挑戦が新たなビジネスモデルに向けてQuad社自身が胎動してきた流れを実践していくということがもっとも期待されているのが開発意識のナンバーポータビリティといえることかも知れない。どの通信キャリアのものづくりを担うとしても同様なコンセプトでレファレンスデザインとして呼応していくことが出来て、また各メーカーが差別化として実装したい工夫についてもコンサルティングとしてのシステムエンジニアとしての力を発揮していきたいというものでもある。開発現場の若い仲間が口ずさむ「もうすぐ30歳」というゆずの歌が表している発露に呼応していけるのは少しシニアなもうすぐ40歳という我々としての仲間だったりするのだが、そんな自分は50代に突入してしまっていたりする。ゆずのコンサートでもそんな流れに身を任せている自分に気が付いたりする。