業界独り言 VOL317 難しいことは言わないが

新たなメンバーを数人迎えて、トレーニングやサポートの日々が始まっている。無論、新たなお客様に対してのトレーニングをするということも最近は多く行っているので、実は、そうしたお客様へのトレーニングをしている席上に出席しながら、実はNewcomerのトレーニングも兼ねていたりもするのである。そうした実情を参加されているメーカーの方も知ってか知らずか、といってど素人のメンバーではないので経験値に基づいたフォローが出たり話題も提供出来るので、参加していただいている事は相互にとってメリットがあることでもある。海外渡航の経験も長い人もいれば、数週間海外留学したことがあるといった人もいる。サンディエゴが彼らにとっては、なじみの深いところでもないので俄かに単身出張してもらいはなからレンタカーで運転してくださいといっても温度差はある。

国内のお客様に技術サービスを提供し、その貢献によって商売をしているQuad社のビジネスモデルでは単に時間売りをしている訳ではなく製品にチップが採用されてようやく回収が出来るシステムでもある。無論、ライセンス収入を得ている部署もあるのだが、これは次期の技術開発投資に向けられているのであってチップビジネス部門では、そうして開発されてきた技術成果を投入して開発したチップセットと、そのソフトウェア資産ならびに技術サポートの提供を通してビジネスに繋いでいるのである。端末開発を弊社チップセットでやっていただくというからには、ワンショットの契約フィーが課せられてこれにより無償供与されるチップセット(サンプル数)や、技術トレーニングそしてサポートが受けられるようになる。同時期に多くのお客様に技術提供をしながら、技術完成度をさらに高めて効率よくサポートをしていこうというモデルでもある。

当然、こうしたサポートするエンジニアの資質は、私たちの理解としてはソフトウェアエンジニアとしての常識を持った普通の技術レベルの人材を求めている。しかし、なかなか求人用件を掲げてみても期待値に適う人材に出会うことが少ないのはなぜなのだろうか。また、数少ないメガネに適う人材が見つかっても、気持ちとして自立してすっと話が決まるまでには紆余曲折がある。不景気な、この時代に転職するということ自体がリスクだと考える人が多いのは事実なのかも知れない。お客様の開発エンジニアと対峙して、技術の語り部でありホームドクターでありといった仕事をこなしていくのには開発をベースとした仕事にフォーカスしていた感性では向き合えないのかもしれない。ある意味そうした仕事を卒業した上でのシニアの感性が求められている。

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業界独り言 VOL316 太陽と北風

どたばたとする中で、2005年が終わり新年を迎えた。開発規模の可愛い端末がアジアを舞台に開発が出来たことは大きな成果だったといえるだろう。一年前に、雛形の試作機が出来上がっていたとはいえ小型のFOMA端末が同様な設計を踏襲しつつもグローバル仕様のクワッドバンド搭載で出来たのには大きな流れの予兆としても後世に残ることでもあるだろう。無論、そんな開発の過程で生み出されてきた想定外の事象などは、傍から見ればとんでもなく映ることかもしれない。理想を掲げてひた走るクワッド社の路線に異を唱えることはないものの、成果を示さないと乗ってこないのには業界の元気の無さが原因でもある。そんな対極に居たエンジニアのK君が年を越えてメンバーとなった、口説くのに要した時間を無駄とは思わないものの今後の時間を大切にしていきたいと感じている。

ひたすら真面目に取り組んできた、そうしたエンジニアのK君ゆえにクワッド社のソリューションを使って手抜きとは言わないまでも自らの取り組んできたことが、容易に実現しうる世界を目の当たりにしても冷静に分析をしているようだ。自らの経験に基づいてきたメーカーの設計にとっては、チップセットベンダーの提供するプラットホームの特性などの仔細な部分で想定外となる部分もあるだろうし、互いの常識が通用しない部分などが起こることも致し方ない。そうした衝突を経て妥協と回避策を処理した上で想定外となるような仕上がりの端末として登場してきているのでもある。問題は、企画した端末が企画した価格で企画した時期に出来上がるのかどうかということが一番重要であり、そうした流れの中で成果を出しうるチップセットソリューションであれば素直に受け入れて評価することでもあろう。

最良のソリューションは自らが作り出すプラットホームであるのかも知れない。といって各端末メーカーが自由に開発するほどの余裕もリソースもテクノロジーも無いということもあるだろう。高邁な思想に基づいて、何かの傘の下でプラットホーム開発を進めているメーカーもあるかも知れない。長い未来を見据えた上での戦略でもあるのかも知れない。シリコンの上に画を描いて仕上げて試験をして性能を出せる状況にまで仕上げていくというサイクルを真剣に取り組んでいけるのであればいつかは成果も出るだろう。昨今のコミックと一緒でいくら良い作品を仕上げても印刷所の能力をどのようにして押さえるのかどうかで冊数が決まってしまうという状況などにも似ているのかも知れない。半導体業界の中で試作をしたりする余裕などはさらさらないのだろうし、一枚のシリコンの中にすら分譲地を用意して異なったマスクを引き受けるという状況なども現実となっている。

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