業界独り言 VOL315 めざめよ組み込みエンジニア

組み込みソフトウェアエンジニアというカテゴリーが最近はあるのだといい、国を挙げて育成支援しようという動きもあるらしい。体系だった形で産官学の一体化したフォーメーションで育てていくというのだが落としこむ先のメーカーには、そうした意図を受けるだけの器量があるのだろうか。組み込み技術者育成のテーマとしてロボコンなども最近ではETロボコンというらしい。どうも高専というカテゴリーがあいまいな実務向きの学校が手がけるテーマがそうした方向に展開されやすいのは致し方ないことだろうか。四半世紀の世の中の流れからみれば、マイコンが登場する以前にあったコンピュータ技術としての体系に向けて国産コンピュータの育成はIBMに追いつけ追い越せというものであった。奇しくもマイコンを開発したエンジニアが日本人だというのは誇るべきことだと思うし、そうしたDNAがもっと出てくるべきだと信じている。野望もつエンジニアというのは血液B型の典型なのかも知れないが、世界征服を可能だと信じて疑わないくらいの気持ちは何処かでもってほしいものでもある。

エンジニアとして取り組んでいる仕事の中で、なんらかの挑戦があって問題を解決していくためにアイデアを絞り出していくというサイクルを重ねて成長していくものだと思う。さまざまな困難な状況に陥るのは仕事としてごく自然なことだと思うし困難な状況が人間を育てるものだと思う。最近のOEMメーカーの苦境というもので、エンジニアが育っているのかというとどうも違うような気がしている。難しいテーマで苦労をしているのではなくて、手抜きをしてコストダウンをしろといわんばかりの要求が提示される恰も木村建設のようなクライアントからの要求で、経済設計をしろといわれて対応していくかのような仕事に手をつけたくはなし・・・。今までの仕事の流れにダウトを宣言して離職する人などは、自分の誇りをもって辞することを堂々と示したほうがよいだろう。とはいえ、日本的なメンタリティの中での仲間を裏切るような気持ちに苛まれたりもするのは良く分かる気がする。陰口を叩かれたくないという気持ちもあるのだろうげれど、そんなことよりも大切にしたいのは自分自身を裏切らないことではないだろうか。

私自身の経験からいえば、転職当時にかなりの陰口を叩かれたり、メールの受信拒否など色々なことがあった。ビジネスが始まれば毎年流入してくる人材や離れていく人材など六年も経過した今ではすっかりはるか昔の話に思えるくらいだ。そんなことに気を使うよりも、何がその仲間たちに貢献できるのかを考えたほうが良いということである。現在のQuad社の実情で言えば、実はすっかり日本法人を乗っ取ってしまうのではないかというほどある会社の卒業生の比率が高まっている。その会社から来た仲間が集まると、叶えられなかったテーマについての思いを共有しつつ視点を変えてどのように対応していけるのかという議論が始まってしまう。私自身の転機となった社内情報誌の発刊に繋がる事件のきっかけが今の社長であったりするし、その事件の当日の記念写真に納まっているメンバーがいつしか集まってきているのは不思議な偶然というか必然なのかも知れない。人と人の連鎖のような共有が新たな仕事に向けた情熱を生み出す源なのかもしれない。

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業界独り言 VOL314 組み込みソフトは何処に向かうのか

時代の流れからなのか、日経バイトが休刊となるのだそうだ。日経といえばさんざん購読予約の延長などのお願いばかりが目に付いていたのが、最近になり毎号単位で通常の書店での雑誌販売の形態もとるようになっていた。日経エレクトロニクスのカテゴリーとは離れて、マイコンに携わるカテゴリーのエンジニアの技術真髄を語るという目的で、米国のDDJなどと並ぶBYTEマガジンとの提携で始まったものである。実は母体でもあるBYTEマガジンは単なる初期のパソコン雑誌というだけでは無く、業界の中心人物たちの研究の発表の場としての色彩も持ち合わせていた。そんなBYTE誌の終了以降も日経バイトの存続は続いてきた。日経バイトの編集方針もいろいろと工夫を重ねてきたのだろう、組み込みソフトウェア業界も含めた技術交差点といった趣の発表の場であったりもしていたのだとおもう。そんな取り組みも含めて、突然の休刊のアナウンスには残念と思うのと共に現状の流れの中で納得するような雰囲気を知己たちのメーカーなどからも感じている。かつてのマイコン登場の頃の勢いは、プロセッサ誌の登場や、その終焉なども含めて時代は移り変わってきている。

組み込みソフトウェアの旗手たる挑戦的なエンジニアたちの活躍の場所はいったいどこになってしまうのだろうか。米国では、まだ組み込みソフトウェア業界に向けた雑誌が続いており、その意味では健全のようにも映るのだが国内でのバイト誌の休刊には考えさせられてしまう。中国のソフト技術者たちののあくなき追求の熱いスタンスを見ているものとしても、国内のソフト技術者たちの戸惑いには日本の枠組みの中で進めてきた開発の流れの変革が迫られているようだ。挑戦したいものの活躍の場所が中々与えられる状況になっていかないということには、成熟し始めた状況の中では致し方ないことなのだろうか。ようやく携帯がPCのような環境になってきたという見方は、早合点なのかもしれないけれど実際にプラットホーム共有を行うメーカー間での端末完成度の競争などが見えたりしている。同一のプラットホームを利用していても異なった端末の実現やオリジナリティを実現できるのはQuad社のカスタマーなどがもとより実践してきたことでもある。数年来UMTS開発をしている知己のOEMメーカーからフルセットのソフトウェアの提供を要求されたりもしてきた背景もある。

組み込みソフトウェアという分野をOEMメーカーの視点から共有できるのかという点については、知己たちと続けてきたオフ会などのワークからも難しいらしいことは感じ取れていた。Quad社の技術伝道者として各OEMメーカーの技術トップの方たちにプレゼンテーションをしたりすることを通じても国内キャリアから提示される仕様のトラッキングに疲弊している様子が窺い知れた。新たな挑戦をする余裕があるのかどうかというファイナンシャルから見た点と共に、開発リソースとしてのアロケーションが可能なのかどうかという現実面がある。しかし、また新たな通信キャリアの登場の中で対応してビジネス拡大をしたいというメーカーの思いは前述の苦境とは裏腹でもある。通信キャリアの戦国時代とも言えるMNPの時代に突入する中で端末メーカーとしての対応力が問われてもおり、端末メーカー自身も今後の通信キャリアの行く末を見据えながら出来る対応について吟味をしている。いくら投資をして端末が出来上がり、その上でその端末についてユーザーにとって魅力のあるものが出せるのかどうかが鍵である。通信キャリアの仕様に応えることだけで一杯いっぱいになってしまったのでは仕方の無い状況である。

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