Quad社には、色々な経歴の人たちが集まっている。顧客先からのエンジニアが特に多いし、また様々な経験を積まれているかたもいる。今年からジョイントしたK君は、国内端末メーカー二社の経験を持っていて最初の職種はCDMA端末設計のハードウェアのエンジニアであった。ソフトウェアエンジニアを志向したものの会社の人事処遇が適わず転職したのだという。しかし、二社目の会社でそうした要望を転職での希望を述べたのだが、ハードウェアエンジニアからのソフトウェアエンジニアとしての転身のステップとしてのシステムエンジニアとしての処遇となったらしい。3GPPを紐解き、仕様理解からの端末モデムシステムのアーキテクチャ開発などのシステム設計に従事してきたのだという。しかし、そうした処遇からの次の段階であるソフトウェアエンジニアへのステップには中々進めないでいたようだ。なぜこんなことを知っているのかといえば、彼の前の二つの会社を担当している弊社の営業マンが共通の人物だったからでもある。えてして部品メーカーの営業マンは、訪問している会社の人事情報などの動向などについては詳しく察知しているものであるからかも知れない。
転職後のK君が、Quad社に転職が決まるまでにも、またいろいろな経緯があった。彼がやって行きたいという仕事と彼自身が現在保有している技術のマッチングが合わない故にQuad社でのソフトウェア技術者として、即戦力として働いてほしいという要件とあわなかったからでもある。そんな彼がQuad社に転職してきたのは彼が保有している現在の標準化活動技術者としてのスキルが認められて、Quad社の日本での標準化活動のメンバーとしてサンディエゴからの逆指名があったからでもある。彼の足跡は、実際の標準化委員会の参加活動を通してQuad社のメンバーに認識評価されてきたということがきっかけである。Quad社という組織の中での標準化委員としての活動は、多くのOEMカスタマーを支えるチップセット開発のベースでもあり昨今のOEMメーカーが参加する委員会活動のアクティビティよりも積極的なものであるらしい。そんな彼が、Quad社に入ってデメリットもあったらしい何しろ途中入社などに手厚い待遇を示す国内メーカーでの転職経験をした彼にとっては住宅手当などの処遇がなくなってしまい実質の収入は下がってしまったというのだ。ともあれ半年毎に給与見直しを行っていくQuad社の仕組みがおそらく彼の仕事成果を収入に反映して良い成果を得ているのだろうと思うのだが・・・
個々の採用条件などがベースとなって構成される各人の給与額などは実際の所、いびつになっているケースもあるのだろうが、半年毎の成果見直しにより伸び悩むのか急速に改善していくのかは個人の資質であり仕事の成果によるものである。横並びの給与が当たり前のように考えてきた時代を生きてきた者としては、自己の仕事成果を見てくれた成果としての給与システムには満足できるだろう。そんなK君が、いま光っているのである。もとよりスタンダードエンジニアとして活躍をしている彼なのだが、今回は彼の最初の会社に対して3GPPのトレーニングをするという状況に陥っているのである。従来は、C2Kしか開発してこなかった会社が3GPPにも登場してくる背景には、通信キャリアからの特色ある端末への期待もあるし、Quad社の提供するプラットホームの精度やチップソフトウェアの横展開といった期待がOEMメーカーにはあるからだ。ある意味で、K君が元の仲間たちに対して恩返しをしているようにも映るのだが、互いのビジネスベースでの偶然でもある。転職することで義理を欠くといった気持ちが日本の技術者に強いのは、その実として自分自身が提供しているスキルが不十分だからと考える傾向があり、自分自身の成長を妨げているからと考えるような世界の風潮からいうと子供じみた感性ともいえる。互いのプロ技術を発揮して仕事を推進する場所が会社という舞台なのである。
最近出てきた、退職金を前払いする形で月給を増加させる制度を選択して働くエンジニアの感性と、いままでの方法で働くエンジニアの感性の違いなのかも知れない。今までの方法で先送りにした退職金を自身が覚醒したことに伴う転職といった行動の結果として退職金を半減するような罰則規定を設けてきた従来の会社というシステムに遭遇するのは不幸かもしれない。無論、家族の都合で田舎に引き込みますという大人の手法に徹して、結果として転職するひとなどの場合には罰則規定の抜け道となっていることもあるとも聞く。会社と大見得きって喧嘩するような子供じみた退職の仕方は良いとはいえないのかもしれないが、自分自身を偽らないという意味で自身の納得がいくものではある。システムとしての会社の仕組みが破綻しかかっているような組織のなかで、家族的な意識のなかでの義理立てをしていたとしても外側から解決策を提示したりするようなアクティビティを実践することで自分自身も旧来の仲間にも納得をさせることのほうがよほど良いことのはずである。K君の事例を見ていると、なんだか爽やかな気にさせてくれるのである。悩み無用とはいかないのかも知れないが、青春の一ページを飾ってほしいという気がするのは、私がまだまだ青い証左かも知れない。
Quad社の必要とするエンジニアには、技術に長けているだけでは勤まらない点があり、単なる引きこもりのようなタイプでは使い物にならない。要は、お客様が問題解決をして製品化が進められるようにするということが、ビジネスモデルの基本であるからだ。コミュニケーションをとるのが不得手な人では困るのである。それは英語で流暢に話せといっているのではない、結局お客様の問題を正しく理解して、自分のカテゴリーとしての技術力を通じて、最大限の効果をQuad社というエンジニア集団の力を発揮するようにネットワーキングを利用して相互啓発していける技術者を求めるのである。言い方を変えれば、そうした技術素養さえ持ち合わせていれば、いかようにでもキャッチアップ出来るのであり、一人でこもって開発をしているのがすきというような人材は不要なのである。技術開発成果を共有できないような資質の人の成果などは結局のところ無いものと同じなのであり、正しく結果を評価し周囲と協調しつつ進めていけるような人材であり、その仕組みを日本語の英語の双方で解決実践していける一を必要としているのでもある。例えば、色々な技術の開発をしていく流れの中で、ある突出した機能は標準の範囲外であったり、ある機能には、特殊な条件で問題があったりとか色々なことが進行していくなかでお客様の商品化を支えていくためにはコミュニケーション能力や交渉能力が必要となってくるのである。
さまざまな技術開発の蓄積されてきた業界としての歴史の流れの中で端末メーカーやコンテンツデザイナーが開発をしてきている状況を掌握した上で魅力ある商品を開発してもらっていくための気配りなどを考えると、もっともっと女性技術者にも登場して頑張ってもらいたいものでもあるのだ。きめ細やかな感性の中で、一つの一つの新しい技術が生きた形で実装され輝いていくのでもある。幅広い見地にたって考えてもらえるシニアなエンジニアに活躍してもらいたいという思いは募るばかりである。幸いに、関東・関西の拠点での拡充を会社としての大きな方針として、お客様貢献が出来るための体制作りを一番のテーマに据えられた現在では、実は一番忙しいのはそうした人材の発掘であり、面接を通じた確認作業でもある。実は、そうした感性で暮らし続けていくとお客様に対しての接し方の中でも同様な目利きが自分の中で走り始めてしまうというジレンマもある。お客様の状況変化の中で、K君のような不遇の状況に陥ってしまうことは、まま普通に起こることでもあり機会を利用して立場を替えて、より挑戦的な仕事の道を紹介したりもすることにもなる。
営業が嗅ぎつけてきた情報に基づいて戦略を練り、周到なテーマを提示することで、喚起を促すための情報を流すのは実はQuad社で初めて始めたことではないのだ。技術者として嗅ぎつけた情報を出来るだけ多くの人に知らせて将来に向けたテーマとしての肉付けなどにアイデアを出してくれる仲間作りをするという取り組みを転職する前に自己の活動として行ってきたのである。そうした活動が、組織としてのものとして根付く所まではいかなかったのは、自分自身の不徳のいたすところである。そうした気持ちを少なくとも理解しもらっていた旧来の仲間たちに綴っているのが、この独り言でもあるのだ。裏を返せば、Quad社がどうなろうと知ったことではなくて、自分自身が理解し達観し辿り着いた来るべき未来を確かめていきたいがためにQuad社に共生しているというのが正直なところである。人生そんなものだと思うのである。幸いにして、素直な社風を育てていけるビジネススキームが成立してきたQuad社という仕組みは、この六年間で私自身が六年前に抱いてきた来るべき姿になりつつある。そうしたエンジニアにとっての来るべき未来として思い描いてきたものを実現していくための仲間探しを、いまはしているのである。そんな妙味ある仕事は、なかなか見つからないと思うのだが、そんな稀有とも思える状況を気づいてくれる人もまた、稀有なのだろうかと思うとクラクラしてくるのだ。
これから起こる様々な挑戦的な技術開示に伴い、引き起こされるユーザーの期待に応えていくために新たなユーザーの挑戦を引き受けてくれる懐の深い伝道者たるプロの技術者を求めているのだ。日本・中国・米国を足しげく移動しつつ、メーカーやキャリアやベンダーと対等に将来に向けたシナリオを描きながらリードしていくための熱い仕事なのである。メーカーのエンジニアの思いを開発しているエンジニアに理解してもらうこと、技術の深みを深耕している仲間の思いをお客様に理解していただくこと、そうした中で次の時代に向けた施策についてお客様やキャリアの方たちと同じ思いに至った時の達成感が私たちの仕事の妙味そのものであると思うのである。一つのメーカーやベンダーに居るのでは味わえない舞台を提供してくれるQuad社という組織においての活動を、自らが考える来るべき状況に呼応できる体制にしていくことが、私の今年の大きな挑戦テーマの一つでもあるのだ。前の会社の先輩でもあるEさんもQuad社での新たな業界再編のビジネススキームに賛同してくれて、自らの活動をなげうつ形で今は参画してくれることになった。私自身も信じられないようなQuad社の吸引力とでもいうべきなのだろうか、そしてまたEさん自身が放つ輝く魅力で旧来の知己たちの会社の枠組みまでも踏み込んでの取り組みに汗を流している。
実は、時差の向こうで暮らしていることで現場の世界で深夜にようやく自己の世界を取り戻している仲間たちとのコミュニケーションの時間がシンクするという不思議な状況に遭遇しているのである。先週から急遽訪問してい米国時間での生活の私の午前は、深夜に思いをはせる知己たちの時間でもあるのだ。そんなメールやインターネットアクセスを感じながら、私自身が考えるメッセージを彼らに向けて返しているのでもある。いま、もとの時間軸に戻るべく太平洋の飛行機の上で、この原稿は書いているのだが、まだ日付変更線は越えていないはずなので11/15ということにしておこう。実際に到着する11/16には、新たな取り組みとして自分自身も納得している成果の一つのまったくQuad社にとっても新たな流れのお客様の端末開発の打ち上げが予定されている。その会場に呼びつけられてもいるわけで、またそうしたお客様の中にも同士として意識が合わせられる仲間が出来ていくだろう来るべき次の世界に思いを馳せるのである。極端な言い方をすれば、誰にでも端末を作っていただくことが出来るレベルの完成度を求められていて、メーカー間の格差などがほとんどないようなPCのような時代になったともいえる。その時代に求められるサポートの大変さを理解してもらえればこそ我々に求められること自体が、従前はメーカーが行ってきたことになっていることに気がつくだろう。