世の中のメーカーには嫌われるQuad社でのアプリケーションエンジニアという説明の難しい仕事をしている。パテントとテクノロジーのバランスを取りながら経済を回していくというQuad社独自のビジネスモデルは裏返せば第三世代携帯という流れの底流であり、奔流でもあるのだろう。この流れに抗うように、欧州や国内のメーカーがGSMに拘ってきたのにはGSMとして構築してきたビジネスモデルを崩したくないというのが本音なのだろう。GPRSやEDGEという形で少しでもGSM陣営のままでビジネスを運営したいというのはライセンス優位性などを欧州に位置づけてきたGSM戦略のしたたかな理由だからでもある。3Gの本格的な胎動に期待しているのは、誰あろうQuad社自身であることは、ライセンスビジネスからも明白である。3Gの普及によりデータ通信速度の水道哲学が達成できるほどの効率よいシステムが構築出来るのかという期待も含めて自身に課しているというところでもある。
まともにメールもままならないようなGPRS環境でなく安定なデータ通信環境に移行する目的でも3Gに期待するのは、サポート渦中のアプリケーションエンジニアならではのことなのだろうか。六年前の自分を思い起こして見れば64kbpsのPHSカードを適用していた。そうしたカードをフルに稼動しながら、1XやUMTSのサポートをしてきた。都内中をタクシーや借り上げたレンタカーによる試験車に乗り込みテストエンジニアと運転手との通訳支援をしつつ、実際の自分の通常の支援作業であるところの問い合わせ応対やらソースコードの解析などを移動する車両から行っていたりもした。そうした結果としてUMTSの赤い通信カードが開発完了してPHSからの卒業を迎えることが出来た。いまや新幹線での移動も含めて開発サポートのインフラとしてはUMTSカードは必需品であるといえる、とはいえ仲間たちの中では1Xチームの1xEVDOカードの方がメジャーでもある。たまたまUMTS開発を支援をしてきた故の状況はレアーこの上ないということなのかもしれない。
PHSからUMTSに変わったからといってスムーズにどこでも通信できるわけでもない。ある意味で真のUMTSといえる通信キャリアのネットワークゆえに根幹のネットワークの問題もあるし、三つの異なるインフラベンダーでの仕様相違なども複雑に絡まっている。リライアブルなネットワーク構築に関してはモバイル故に完璧とはいかないので、移動先からの運用方法の一つにはVNCやらリモートデスクトップやらが必要となる。ビルドやJavaベースのデスクトップをネットワーク利用していく上では回線が確保されている端末からのアクセスをするしかないというのも実情である。手元で行うのはメール操作やファイル編集といった類となる。とはいえ振動する状況で思考をしつつ、問い合わせに対して電話をかけたり、メールで回答をしていくというのは修行僧のような感覚になってきてしまう。場所を選ばずどこでも仕事をしているという状況の中でも最悪の環境は、ある意味で終焉を迎えたといえる。こうしたプロジェクトを通して国内各地区でのテスト走行の結果はプロトコルスタックに蓄積反映されたからでもある。