業界独り言 VOL306 呼びかけが届く日

3Gの本格的な離陸を前に、携帯電話業界の様相は当初の期待とは裏腹にがらっと変わってしまっているようだ。国際的に通用する価格帯で実用的な機能に絞った形での端末作りをしたメーカーの端末の登場などは、従来のキャリア競争の果てに陥った華美な高機能端末の開発といった今までの流れとは本質的に違う動きといえる。高い通信料金に裏打ちされたビジネスモデルが破綻しはじめていることの象徴といえるのかも知れない。それでも高機能商品が無くなることはないだろう、ただし開発費用の負担や端末価格としての期待値については厳しいハードルが課せられる状況になってきている。そういった状況から、発展期にあったイケイケドンドンといった風潮が薄まり、着実な物づくりとして保守的な志向に変わったりする傾向があるのかもしれない。とはいえ、取り巻く状況と開発の流れがマッチしているのかどうかは別問題である。

あまたある機能を網羅しようとして書き起こす仕様書の完成度追求と、その機能をハードウェア・ソフトウェアの上に実装実現していくということの難しさを少しでも軽くしようという動きが昨今の端末プラットホームの流行になるのだろう。旧来のRTOSに積み上げてきた流れや、オープンソース思想を拠りどころにしたLinuxや、PDAの先にある形態としての携帯を目指した専用のOSなどが、そうしたプラットホームの主役となってきている。そうしてかつて各OEMメーカーが腐心して来た、細かい端末プロトコルとモデム機能の微細な仕上げとしての改修を進めてきていた部分は薄まり大味な仕上げの端末が今後の実態となってくるのだろう。導入したプラットホームという物自体も通信プロトコルと端末機能のAPIを一貫して開発出来ているメーカーはなく、通信キャリア自身が大盤振る舞いをしてチップベンダーに委託しつつ自らがAPIセットをさらに定義しようという意気込みが出るくらいなのである。

そうなると通信端末メーカーのエンジニアとして求められる部分も大きく変わりつつあるというのが実情として映ってくる。知り合いのダウンロード機能を売りにするベンチャーなども、高機能路線の中でのある意味でターミネーターとして期待されているオンライン書き換え機能を訴えて、新規リーグの創設を提起している。そうした新たな息吹と自身の閉塞感を感じた技術者の素直な流動が始まっているのは象徴的なことといえる。ただ此処でオンライン書き換え機能自体はomaなどで規定されてきている動きがあり基本的な機能はどのベンダーのオンライン書き換え技術を採用しても利用が出来る。一つのベンダーで占有されたくないという欧州の感性と、日本の通信キャリアの思いには開きがある。オンライン書き換え機能は、メジャーな技術となってきたものの新たな取り組みもあったそうだ。実際、今年は世界初の挑戦も実現したそうで、いわゆるプッシュサービスによる書き換えが実際になされたそうだ。お客様にとっても驚きの書き換えサービスとなったのだろう。

OEMメーカーとしての端末開発を仕上げビジネスに繋げるという仕事をしてきた流れは、揃ってきた技術群やプラットホームあるいは通信キャリアの決断というもの契機にして端末メーカーとしての妙味は大分技術的には志向が変わってきている状況である。Quad社などが進めているオールインワン構想などもある意味で、似た取り組みとはいえるものの一モデルで複数の機種展開が出来るような視点を技術の機軸に持ち込んだ上での実装が商用化の中で進められている。CPU高速化の中でXMLベースUI構築技術が開花したのは、かつてスクリプトベースで端末開発を進めていた過去のデジャブとも感じられる。時代が許容するだけ進化したというべきだろうか、あるいは足踏みをしていたからだろうか。スクリプトはWAPやJavaに変容していきインターネットの進化結果を引き入れてXMLで表現可能な時代になった。目的であるソフトウェア開発の簡易化に因んだカテゴリーを分けた書き分けの時代になろうとしている。

プラットホームとしての開発の流れに変わり行く中で、まだモデムプロトコルの影を引きずる部分もあるだろう、欧州展開では相変わらず根強いGSM/GPRSの世界があり、UMTSとして3GPPが追加されてきた流れだ。GCFの仕事のながれの経験を踏んできた経験者は貴重であり、それがWCDMAとしても同様に適用されていくのが始まっている。プロトコルをシステムとして捉えて切り分けを進める仕事から、アプリケーションに踏み込んでいく時代である。Release99から新たに換わり行く流れで多くの技術を吸収するチャンスでもある。ギブ&テイクとしてのスキルや経験を持ったエンジニアにとってはキャッチアップも含めて絶好の機会である。私など広範な経験こそあれ、深くプロトコルに傾注することもなく生きてきたソフトウェア技術者の人生であったが、最初のQuad社での手厚いお客様へのサポートを仲間と進める中でサポートしていく上に必要な知識や自己としての技術を確立していくことが出来たのである。もとより通信最前線で働いているエンジニアの方に臆する点などなかろうものだと私は思うのである。

Quad社で展開が始まった、新たなRTOSの入れ替えを契機とするアーキテクチャの大変更ともいえる動きを如何に巧みに解決しつつ発展に移行しようとしている。この新しい流れの意味についても今ならOJTとして切り込み伝道者として広めていくというストーリーとなる。携帯電話専用に設計されたはずのOS環境で解決がなされていない問題にまで踏み込みワンコアアーキテクチャでシステム的に環境的にも優れたソリューションを提供しようという時期において、幅広い範囲で夢を描ける確かな眼を持ったエンジニアを集めようとしている。ある人たちにとっては高い税金を払わされているという印象が強いQuad社かもしれないが、先進の技術をパテントとして提供しつ得られた対価としての費用を技術投資に真摯に投入しているのも事実である。自分たちの税金で払ったというマイナスの想いでとらえるよりも、対価を要求するスタンスこそ求められる時代なのではと問い返したい。

そんなQuad社を含めたプラットホームベンダーに転進する動きが出てきたのか、Quad社の株価動向などもプラス志向となってきているようだ。国内通信キャリア全てに適用端末が登場してくるなかで、バイナリー開発自身も特定キャリア向けということだけではなくなってきている。とはいえダウンロードまで駆使するような、運用になるのかどうかは別問題である。アプリケーションとしてXMLアプリを技術採用された通信キャリアなどではダウンロードは別系統で実施したりしているので、多様なオプションが生まれるということでもあろう。XMLアプリケーション技術が実用化されたことを正しく理解されるかどうかはOEMメーカーの感性しだいとも言えるのだが、国内OEMメーカーに対しての技術伝道セミナーも開催される運びとなった。日経エレのインタビューで答えた内容に比べればスケジュールは早まっているとも言える。ここでも伝道者としての新たな展開が始まろうとしている。

伝道者としての責任は重いのは事実であり、「24時間体制で残業時間の規定もなく働くのですか・・」という問いかけもあったりする。確かに年俸制の、この会社にあって残業時間という定義はない。お客様の製品開発を支えていく上で、ASAPに対応してくださいという悲痛なサポート要請は確かにあります。ただし、われわれが提供する24時間サポートとは世界中の仲間と一緒に果たすという意味でのサポートです。個人が24時間意味も無く働くということではありません。メールで詳細を説明しお客様に必要な発生データの取得をお願いしてサンディエゴや欧州で再現できるようにするということが求められ、そのことを達成するために必要なワークにあっては自分の判断で積極的に顧客訪問したり現場に飛んでいくということになります。権限を任された範囲でベストを尽くしていくということでもあります。同様にマイペースで仕事をするということも必要なことで、場所を問わずに自宅や出先からでも仕事は出来る環境です。そんな中で私も、大阪から北京に飛んだり、成田で仕事をしたりというのが日常でもあります。心地よい疲れはマイペースで仕事に取り組んでいるからでしょう。こんな呼びかけがようやく届きそうな今日この頃です。

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