業界独り言 VOL306 呼びかけが届く日

3Gの本格的な離陸を前に、携帯電話業界の様相は当初の期待とは裏腹にがらっと変わってしまっているようだ。国際的に通用する価格帯で実用的な機能に絞った形での端末作りをしたメーカーの端末の登場などは、従来のキャリア競争の果てに陥った華美な高機能端末の開発といった今までの流れとは本質的に違う動きといえる。高い通信料金に裏打ちされたビジネスモデルが破綻しはじめていることの象徴といえるのかも知れない。それでも高機能商品が無くなることはないだろう、ただし開発費用の負担や端末価格としての期待値については厳しいハードルが課せられる状況になってきている。そういった状況から、発展期にあったイケイケドンドンといった風潮が薄まり、着実な物づくりとして保守的な志向に変わったりする傾向があるのかもしれない。とはいえ、取り巻く状況と開発の流れがマッチしているのかどうかは別問題である。

あまたある機能を網羅しようとして書き起こす仕様書の完成度追求と、その機能をハードウェア・ソフトウェアの上に実装実現していくということの難しさを少しでも軽くしようという動きが昨今の端末プラットホームの流行になるのだろう。旧来のRTOSに積み上げてきた流れや、オープンソース思想を拠りどころにしたLinuxや、PDAの先にある形態としての携帯を目指した専用のOSなどが、そうしたプラットホームの主役となってきている。そうしてかつて各OEMメーカーが腐心して来た、細かい端末プロトコルとモデム機能の微細な仕上げとしての改修を進めてきていた部分は薄まり大味な仕上げの端末が今後の実態となってくるのだろう。導入したプラットホームという物自体も通信プロトコルと端末機能のAPIを一貫して開発出来ているメーカーはなく、通信キャリア自身が大盤振る舞いをしてチップベンダーに委託しつつ自らがAPIセットをさらに定義しようという意気込みが出るくらいなのである。

そうなると通信端末メーカーのエンジニアとして求められる部分も大きく変わりつつあるというのが実情として映ってくる。知り合いのダウンロード機能を売りにするベンチャーなども、高機能路線の中でのある意味でターミネーターとして期待されているオンライン書き換え機能を訴えて、新規リーグの創設を提起している。そうした新たな息吹と自身の閉塞感を感じた技術者の素直な流動が始まっているのは象徴的なことといえる。ただ此処でオンライン書き換え機能自体はomaなどで規定されてきている動きがあり基本的な機能はどのベンダーのオンライン書き換え技術を採用しても利用が出来る。一つのベンダーで占有されたくないという欧州の感性と、日本の通信キャリアの思いには開きがある。オンライン書き換え機能は、メジャーな技術となってきたものの新たな取り組みもあったそうだ。実際、今年は世界初の挑戦も実現したそうで、いわゆるプッシュサービスによる書き換えが実際になされたそうだ。お客様にとっても驚きの書き換えサービスとなったのだろう。

OEMメーカーとしての端末開発を仕上げビジネスに繋げるという仕事をしてきた流れは、揃ってきた技術群やプラットホームあるいは通信キャリアの決断というもの契機にして端末メーカーとしての妙味は大分技術的には志向が変わってきている状況である。Quad社などが進めているオールインワン構想などもある意味で、似た取り組みとはいえるものの一モデルで複数の機種展開が出来るような視点を技術の機軸に持ち込んだ上での実装が商用化の中で進められている。CPU高速化の中でXMLベースUI構築技術が開花したのは、かつてスクリプトベースで端末開発を進めていた過去のデジャブとも感じられる。時代が許容するだけ進化したというべきだろうか、あるいは足踏みをしていたからだろうか。スクリプトはWAPやJavaに変容していきインターネットの進化結果を引き入れてXMLで表現可能な時代になった。目的であるソフトウェア開発の簡易化に因んだカテゴリーを分けた書き分けの時代になろうとしている。

プラットホームとしての開発の流れに変わり行く中で、まだモデムプロトコルの影を引きずる部分もあるだろう、欧州展開では相変わらず根強いGSM/GPRSの世界があり、UMTSとして3GPPが追加されてきた流れだ。GCFの仕事のながれの経験を踏んできた経験者は貴重であり、それがWCDMAとしても同様に適用されていくのが始まっている。プロトコルをシステムとして捉えて切り分けを進める仕事から、アプリケーションに踏み込んでいく時代である。Release99から新たに換わり行く流れで多くの技術を吸収するチャンスでもある。ギブ&テイクとしてのスキルや経験を持ったエンジニアにとってはキャッチアップも含めて絶好の機会である。私など広範な経験こそあれ、深くプロトコルに傾注することもなく生きてきたソフトウェア技術者の人生であったが、最初のQuad社での手厚いお客様へのサポートを仲間と進める中でサポートしていく上に必要な知識や自己としての技術を確立していくことが出来たのである。もとより通信最前線で働いているエンジニアの方に臆する点などなかろうものだと私は思うのである。

Quad社で展開が始まった、新たなRTOSの入れ替えを契機とするアーキテクチャの大変更ともいえる動きを如何に巧みに解決しつつ発展に移行しようとしている。この新しい流れの意味についても今ならOJTとして切り込み伝道者として広めていくというストーリーとなる。携帯電話専用に設計されたはずのOS環境で解決がなされていない問題にまで踏み込みワンコアアーキテクチャでシステム的に環境的にも優れたソリューションを提供しようという時期において、幅広い範囲で夢を描ける確かな眼を持ったエンジニアを集めようとしている。ある人たちにとっては高い税金を払わされているという印象が強いQuad社かもしれないが、先進の技術をパテントとして提供しつ得られた対価としての費用を技術投資に真摯に投入しているのも事実である。自分たちの税金で払ったというマイナスの想いでとらえるよりも、対価を要求するスタンスこそ求められる時代なのではと問い返したい。

そんなQuad社を含めたプラットホームベンダーに転進する動きが出てきたのか、Quad社の株価動向などもプラス志向となってきているようだ。国内通信キャリア全てに適用端末が登場してくるなかで、バイナリー開発自身も特定キャリア向けということだけではなくなってきている。とはいえダウンロードまで駆使するような、運用になるのかどうかは別問題である。アプリケーションとしてXMLアプリを技術採用された通信キャリアなどではダウンロードは別系統で実施したりしているので、多様なオプションが生まれるということでもあろう。XMLアプリケーション技術が実用化されたことを正しく理解されるかどうかはOEMメーカーの感性しだいとも言えるのだが、国内OEMメーカーに対しての技術伝道セミナーも開催される運びとなった。日経エレのインタビューで答えた内容に比べればスケジュールは早まっているとも言える。ここでも伝道者としての新たな展開が始まろうとしている。

伝道者としての責任は重いのは事実であり、「24時間体制で残業時間の規定もなく働くのですか・・」という問いかけもあったりする。確かに年俸制の、この会社にあって残業時間という定義はない。お客様の製品開発を支えていく上で、ASAPに対応してくださいという悲痛なサポート要請は確かにあります。ただし、われわれが提供する24時間サポートとは世界中の仲間と一緒に果たすという意味でのサポートです。個人が24時間意味も無く働くということではありません。メールで詳細を説明しお客様に必要な発生データの取得をお願いしてサンディエゴや欧州で再現できるようにするということが求められ、そのことを達成するために必要なワークにあっては自分の判断で積極的に顧客訪問したり現場に飛んでいくということになります。権限を任された範囲でベストを尽くしていくということでもあります。同様にマイペースで仕事をするということも必要なことで、場所を問わずに自宅や出先からでも仕事は出来る環境です。そんな中で私も、大阪から北京に飛んだり、成田で仕事をしたりというのが日常でもあります。心地よい疲れはマイペースで仕事に取り組んでいるからでしょう。こんな呼びかけがようやく届きそうな今日この頃です。

業界独り言 VOL305 新時代の到来

米国同時テロのあの日から、四年が経過した。そんな非日常の中で暮らしているという認識もないままに過ごしていた当時は暮らしていた。翌日からの米国での仕事を前に、準備として追い込みの作業を進めていた矢先での、あの事件との遭遇であった。戦争開戦といった疑問符が頭の中で駆け回ったのは徹夜体制でしていた仕事の次の展開として徹夜明けで向かうはずの成田空港への必要性が失われたことを自己再確認して深夜帰宅のタクシーの中だったように思い返す。あれから四年が経過して国際情勢としては更に混沌とした状況の中にいる。そんな中でも経済活動としてのアクティビティは秩序の枠の中で進められていて国策同士のぶつかり合いの中で中国にまで出張して日本メーカーのサポートをする時代を迎えている。

国民に聞いてみようという掛け声一つで解散となった選挙が行われ想定以上の結果となったのは新時代の到来といえるのかも知れない。多数決で決めるという論理が組めないほどに破綻した国会で明確な政策を打ち出せないできた与党からの転進にはふさわしい幕開けかも知れない。無論、この政局が安定していると考えるのは早計で、毎回サイコロの目のように結果が変わる時代になったのかも知れない。戦争の反対は平和ではなくて、秩序ある状況だという。戦争が手段だと考えれば、対抗する手段は外交交渉であろう。外交交渉にいたるまでの民意作りというよりも国民世論形成までも国策として刷り込みを徹底的に果たしている隣国などは、その行為も含めて積極的な外交交渉を戦時下のような面持ちで進めているといえる。

日本の平和ボケした状況で自らの国の歴史もまともに学ぶことも出来ない状況を正すことすら、出来ないのは歪曲した歴史のみを教えている隣国からの横槍に同調するようにすでに刷り込まれてしまった人たちで国が左右されるように構成されているからのようだ。ある意味で今回の選挙結果が新たな秩序を求めたのだとすれば、平和ボケした政党を選択できない状況になったのは致し方ないかも知れない。日々の経済を活動させていくために政治が動いていくが故に、隣国との経済関係と歴史問題を打ち出す政治としての建前との矛盾に遭遇してしまうのだ。まあ経済の関係がないにも関わらず拉致などの政治的な関係でのみ修復が図られる側面においては戦闘能力を含めた自立できない自国の現状の中で何の解決策も打ち出せない事情でもある。

米国の政治の影ふみのみをしていても仕方がない。3Gの開発戦争が終結して3.5Gや4Gに戦いの場は移っているというのが携帯業界の実情だろう、すでに国内の状況は戦いの矢尽き刀折れといった状況がメーカーには見え隠れしている。4Gこそ規格を自国の利益にまわせる様に実践実装を行い先陣を切り進んでいるというのが国内の先進キャリアの状況でもある。しかし、世界のバランスの中で果たして3Gすらまともに確立させないままに2Gを引っ張ろうとしている欧州の実情には、ユーロ圏での国情の改善が図られないままに、コスト高となる新方式に移行することをまだ国民レベルで認識していない状況が本来の遅れの理由なのだろう。3Gとしてのアプリケーションの面白さを使いこなそうとするのはむしろ東アジア圏なのかも知れない。

少なくとも従来の日本にはそうした勢いがあったし、バブルとはいえ文化的な先進性はアジア諸国に対して羨まれるものであったのは間違いない。憧れの日本の情けない実情は、国際競争力を失い自分たちの今までの状況を維持することすらままならない事態に遭遇してコスト見合いまで合理化を迫られる中でイケイケドンドンの状況からのギアチェンジに戸惑っている。国内メーカーや国内キャリアに元気になってもらうのは、Quad社のビジネスにおいても一蓮托生の必要かくべからざることである。あまねく技術を提供していくことこそが、Quad社の目指しているものであるからだ。技術の受け取り手であるメーカーのビジネスモデルに矛盾や採算性が問われている状況に対してもソリューションを提供しなければならないのは最近の一番の課題でもある。

ある意味で今までは防御を張っているようなライセンスビジネスからの発想だったところから踏み出してOEMメーカー自身の生産性を高めていくために力を注いでいくことが求められ始めているという時代の変革を一昨年辺りから真剣に考え取り組んできた成果がそろそろQuad社にも出てくる状況になってきた。これから、OEMメーカーに福音をもたらすことが出来るかどうかが問われている最大の期待であり課題であるだろう。メーカーの開発の痛みをよく理解するためには、メーカーと同じだけの端末を仕上げるということの取り組みをするという方向性もあるだろうし、そうしたアクティビティを共有技術としてのビジネスモデルを描く3rdパーティと協調路線を結ぶということもあるだろう。有識者である元気をなくした会社から元気な気持ちを活かせない技術者を受け入れるという方策もある。

開発という課題が段々なくなってしまうというのは、製品あるいは分野が成熟した証拠でもあるだろう。たとえば無線LANの技術などはコスト力も含めて日本が手がける部分などなくなってしまい企画することぐらいしかなくなってしまっているようだ。おかげで大変安価なユニットやアクセスポイントが手に入るようになっているのはありがたいことでもある。携帯電話の開発現場においても同様で標準化されたベースバンドLSIやアプリケーション環境を使い始めるとことのほか開発する項目がなくなってしまっているという現実に直面し始めているというのが最近のメーカーでの状況でもある。無論メーカーとして取り組むべきテーマが無くなったわけではなく、共有技術として解決されてしまった分野を手がけていた技術者の仕事が失われているという見方も出来るのかも知れない。

エンジニアの将来はいかようにでも会社としての経営の方向性の中で活用していくことは出来るのだが、明確な将来の方向性を示すことなく経営活動としての設計開発のサイクルが無為に過ごされたり開発成果を出せないままに破棄してしまったりということが続くと、技術者としての仕事への興味も意欲も失せてしまうということになる。そんな状況も相まって閉塞感が漂っているのが最近の携帯電話業界には多いようである。仲良く他社と協業しているという姿がギコチナイのは、当然だともいえるだろう。共同開発をしてきたメーカー同士ということでも現場の技術者にとっては辛い仕事になっているようだ。技術提携という流れで、独自の部分をどうやって作りこんでいくかという点が、特に頭を悩ませるのだろう。

プラットフォームとしての枠組みを各通信キャリアごとに提供することが求められている。そして各OEMメーカーが従来培ってきたそうしたノウハウをOEMメーカー自身が組み込み拡張していくことはコストが許さなくなっている。OEMメーカーは、完成度の高いプラットホームを求めてより矛盾が広がっていく状況にある。ノウハウを持つエンジニアこそチップメーカーサイドでの仕事に移動すべきだといえるのである。無論プラットホームベンダーも自社製品のみでそうした要求に応えられる物づくりをしようと画策しているのだから、好機といえるのである。こうした技術をキャッチアップしてしまった場合には、また別の技術を開発していくことになり、そうした前向きに幅を広げていくことも求められるのは技術者としての仕事として当然だろう。

あまり自分自身の仕事の枠組みを殻に閉じこもるようにすべきではない。人生一生勉強が続くものであり、特に技術者のライフワークはとくにそうだろう。プロトコルエンジニアからマルチメディアのエンジニアに転進したりするのもごく普通のことである。リアルタイム処理や、コンパイラの開発や、RTOSの開発、ICEの開発、端末設計から、システム商品の開発あるいはSDKの開発や講習会でのカスタマー教育など多面に亘るソフトウェアエンジニアの仕事を次々と変わって実践していくということなどは、各自の技術者人生の中で必ず遭遇することだと思うのである。それぞれの課題やテーマの中で自身が必要とするスキルを身につけ、それを用いて解決をしていくといういことが回せるのがソフトウェアのエンジニアというものだと言えるのである。

マクロやミクロの両方の視点をもち、現在の答えと将来の取り組みへの手がかりを考えながら日々の仕事をしていくということになる。アプリケーションを開発していくという上では、必ずしも同一の方法論で統一すべきではないという点に到達するのは、VBなどで開発している最近のシステムアプリケーション事情からも導出されるべき事由である。携帯電話のアプリケーションをJavaで書くべきなのかどうかという点なども興味深いテーマではあるものの、幾つかの背景から、そうはならずにWebで進められているXMLアプリケーションに注目が集まっている実情でもある。ようやくこうした成果が登場してくる時代になり、来年の端末開発では必須の機能やメソッドとなってしまうようだ。これが、携帯電話開発競争の新たな武器といえるのかも知れない。

白物電話機を開発することで、異なったUIを持つ違ったターゲットの電話機を構築していくことが出来れば、開発力の向上に向けた大きなステップになるはずだ。そうした状況で考えれば、メーカーとして拡張すべきサービス部分の開発を手がけたり、多様なユーザーに向けたユースケースでの実装評価を始めたりそうした研究実践を始めるのは、もう明日のテーマとなっている。そうした状況をキャッチアップしてもらうこともQuad社の伝道者としての仕事といえる。アプリケーションそのものの開発のあり方を問い直すような状況を提案するのは、画期的な効率改善を必要とする国内メーカーに向けた、テーマとして捉えて来月にはそうした技術説明会などが始まる予定だ。

今年のUI構築技術としてのXML応用技術は、昨年などはOEMメーカーが実践してきたWidget化を追いかけてきた状況からいえば、追い抜いてしまった印象がある。停滞している国内OEMメーカーの状況などからいえば、致し方ないことも知れないが、Quad社としてはOEMメーカーが成果を出してもらうことでビジネスモデルが回るのである。OEMメーカーの成果に繋がることを研究率先推進していくのは、社是ともいえる。そうした目的に、研究投資を積極的に進めていくという健全なサイクルを進めているので、ライセンス費用を有効に活用しているとも言えるのである。システム化技術としてのマイクロカーネル化も、ワンチップ化での3rdパーティOSの実装などを真面目に取り組んでいる結果ともいえる。地道に開発研究してきた成果を伝道していくことの喜びを分かち合いたいものである。

業界独り言 VOL304 新たなる挑戦

今日は、防災の日のはずである。新聞の紙面では祭礼でパニックを起こさせた無手勝流の新しいテロ手法が報じられていた。防災とは異なるかもしれないが、最近の天災続きの状況で猛威を振るったハリケーン・カトリーナやら日本での地震など身近に起こっていると感じている。米国籍の会社仲間が東京から、週に三日は大阪に移動して顧客サポートをしている。先端技術を選択されているお客様の支援のためである。年末商戦をターゲットにした厳しい条件ではあったが、技術的にも商品的にも問題を解決し、最後の詰めをしているようだ。そんな彼は月末には夏休みを取得して実家であるノースキャロライナに帰国するのだという。ちょうど米国での研修が指示されている状況でもあり実家帰国がロハで達成できるという状況は、彼の最近の成果も含めて当然だとも感じている。そんな彼の実家は実はハリケーン・カトリーナの猛威の影響を受けたようだ。何事もないと良いのだが・・・。

仙台で最近起こった地震なども、Quad社では特に仙台地区での展開もないのでと思っていたら、最近のQuad社が買収発表を行ったブロードバンドワイヤレスネットワークベンチャーの日本代表が米国からのドラスティックな動きの中で「まさかQuad社で技術説明会をすることになるとは考えてもいませんでした」という前説をしつつの説明会が急遽企画され昨日ホットな中で行われた。技術的な感性からいえば、かなり感覚も近い技術として同類だなという思いを持った。無論Quad社でも同種の技術開発を競合として進めていた経緯もあったらしくそうした社内コンペティターとの技術融合を通して一体化した中でよりよい技術として仕上げていくという流れに繋がるのだろう。仙台では、既にワイヤレスブロードバンドサービス実証実験が行われているのでもあった。説明会のプレゼンをみつつ地震のことを思い出していた。

説明会を受講して新たなQuad社としてのビジネス展開などに思いを巡らしつつ一路新幹線で関西入りをした。あいにくと新大阪止まりの「700系のぞみ」ではあったものの、先頭座席のコンセントがないタイプだった。このところ確率では九戦三敗といった感じである。まあ最近切り替えた軽量パソコンは駆動時間が長いということもあり気にならないかなということでもあったが、コンセントが無いタイプの先頭座席はテーブルが短く最悪なのである。明確にビジネスのぞみといった名称で車両を分けて欲しいものである。お客様が増えてくる状況に対応していく為にはサポート力の強化も大きなテーマであり来年度の取り組みの一つには大阪事務所のエンジニア増員や事務所拡張なども取り上げている。長年取り組みをしてきた採用のアクティビティではあるものの目だった成果も最近では続かなくなってきた。幾つか自信を持って紹介した人材の採用プロセスが最終段階で失敗したりもしているので、少し慎重になっている自分がいる。

プロジェクトXよろしくの熱血ストーリーなどは、最近の携帯電話開発の世界では中々聞こえてこないようだ。そんな熱い血潮を支えるほどのリソースも滾る情熱をもつ若者たちもいないのだろうか。前者はともかく、後者はいてほしいと思うのだが、モチベーションを高く保ちつつ生き続けるような仕組みもないままにカツカツのリソースで忙殺され疲弊しながらともかく仕事をしているらしい。採算が合わないからと、一方的に開発リソースを一極集中して始めた開発すらも制御しきれずに頓挫したりしている状況が聞こえてくるのは決まって3GPPの人たちからである。大規模な市場が待っていると期待されて、ようやく普遍的な位置づけに切り替わってきた時代のはずなのに・・・。税金として取り立てるようなQuad社のライセンス料金が立ちはだかっているからだという人もいるのだが果たしてそうなのだろうか。いろいろな工夫をして開発コストを抑制して鎬を削っているメーカーもいるのだが、やはりグローバル開発に立ちはだかっているのは日本の鎖国事情が手伝っているようだ。

開発費用を浮かそうとして適用するのは、最近では次のような手法であるようだ。出来合いのレファレンスデザインを導入する。選択のキーワードはハードウェアコストであるらしく、開発費用の観点でのコストについては二の次であるらしい。開発に関しての関心事項は、ブラックボックスを避けたいという心でありオープンでないものについては導入したがらないのである。そんな風潮を受けてLinuxが流行っているような気もするのだが、もともとTRONは無料の上で公開もしてきたはずなのに何かおかしいと思うのだが・・・。坂村先生も納得はされていないのが最近の端末開発事情ではないだろうか。レファレンスデザインで提供されるソフトウェアを更に自らの会社流に修正を指示して懸命にカスタマイズさせていく風景もよく見かける。そうしないと国内のキャリアの仕様やら、自社の歴史に裏打ちされたUIが作りこめないとか、過去との互換性が取れないからとかいろいろな意見が出ているからのようだ。短期日に要領よく作り上げるというゴールや達成するためのストーリーを決めている割には、レファレンスデザインを叩き壊して作り直させている感じさえ受けるのである。

安く作り上げるということは、言い換えれば、国際標準であるノキア端末の仕様と同等に仕上げることだという説もある。国内のキャリアに向けて今まで各メーカーが鎬を削ってきた状況の製品グレードと比較すれば折り合わないという事実もあるのかもしれない。そうした国内での経験値をグローバルなスタンスでの開発に生かせるようなメーカーとしてのアクションをとり始めているところもあるようで、これは新たなる挑戦ということになるだろう。ドコモ向け端末やら、KDDIの端末にも韓国製や中国開発の端末が登場してくる時代を迎えようとしている。グローバルな規格の中で国際的に通じる企画の商品として端末が登場してくるのであれば、欧州市場にも切り崩していけるのだろうがuiの感性をカバーするのは大変そうだ。UIをXML化して対応力を強化する技術についても年内には商品としての登場が期待できそうであり、次の展開としてのプリセット利用やらビジネスアプリなどに向けた展開なども興味深い状況が待ち受けている。

ワイヤレスブロードバンド技術を適用した携帯との共用チップセットなども、視野に入ってくるしQuad社のカバー範囲の広がりとともにサポートする人材の更なる拡大が求められているのも事実だろう。自立したエンジニアで、自己の世界を確立したうえで好奇心旺盛に新技術などの裾野の広がりをケアしつつ伸びていきたいという前向きなエンジニアが必要である。ある意味でメーカーで行うべきテーマが絞り込まれてしまうゆえにメーカーとしての仕事と技術リーダーとしてのQuad社側でのサポートの仕事という範囲を考えると魅力的だと思うのである。しかし、外資というハードルが高いと見られるのか、あるいは不安だと思われるのかが鍵となるのか、求人活動の成果には繋がらないのはメンタリティが前向きなエンジニアで会社の状況が閉塞的な中に留まっているような人はいないということなのだろう。国内だけで開発が終わる時代は終焉を告げていて、自社開発するにしてもアジアな協力会社を得なければ採算も技術者も取り合わない状況である。

携帯電話のみならず、ビジネス端末の開発に向けてもQuad社のソリューションを使いこなしてバイナリー環境やLinuxなどを使いこなしてXMLでUIを作りこなしていく時代に入るのだとすればエンジニアの数も取り組みも刷新していく必要があるだろう。受動型のサポートではなくて積極的な前向きなサポートをしていくために十月からの新しい年度の流れでは新たなる挑戦が求められているのだとおもう。前向きでいろいろなことに取り組んで生きたいというエンジニアこそQuad社のようなアクティビティの中で実質を伴った提案志向のコンサルティングをしていくのが楽しいやりがいある仕事だと思うのだが。そうした楽しさを伝道していくことが当面の私の課題でもあり、前向きなアクティビティに賛同していただく周囲のサードパーティの方たちへの仲間作りなどの作業が重要なテーマである。新幹線で関西に移動しつつ、有望な印象があったかつてのお客様のエンジニアと面談をしてそうした楽しさを伝えていくことや、実務としてアジアな渦中で開発を推進されているお客様のミーティングに向かって翌朝から関西空港がフライトしたりしている。

熱い思いが感じられない流れの中で淡々と開発が進められている印象のあるレファレンスデザインを用いたグローバルな開発スタイルなども、実はレファレンスデザインの強力な力の結果を表していることなのかも知れない。レファレンスデザインを使いつぶして全精力をかけて取り組んでいける余裕のあるメーカーなどは数えるほどしかない。そこまで行けないメーカーでは国内先進メーカーのプラットホームを受け入れて妙味もない自社仕様へのカスタマイズのみに忙殺されているのは矛盾を感じていることだろう。また全精力をかけてプラットホームを使いつぶしていくような仕事の仕方をしているメーカーがなぜか成功しないのも不思議なものである。ある意味で少し引いた印象のレファレンスデザインの使い方のほうが効率よく開発が進むというような印象もある。レファレンスデザインの完成度を上げる仕事をレファレンスデザインメーカーにジョイントして進めることも、閉塞感のある国内の状況を改善する手立てだと私は認識している。

大阪地区の下町である南森町にあった関西地区のサポート拠点も、ベンチャーとしてのQuad社の仕事の広がりを支えていくには手狭になり、来年までには大阪駅前までに移転拡張する計画である。そんな状況の中で期待されるサポート体制のイメージはハッキリと私の頭には浮かんでいるし、実際にそうした形になるだろうと思う。そんな状況を思い浮かべつつ北京の街で仲間と中華料理に舌鼓を打っている自分がいる。六年前にQuad社にジョイントしようと決めたときにイメージした将来の絵と、出来上がったことにギャップは多少はあるものの概ねの方向性に間違いはなかったと理解している。そして、今あらたなイメージの中で自分が取り組んでいくべき方向性やお客様への貢献度や対象となる範囲の広がりなどを考えるとおそらく日本事務所の体制は、もっともっと拡張していくべきだろう。顧客への貢献実績を着実に上げていくために意識高い仲間を募って生きたいと思っている。