業界独り言 VOL290 プラットホームの行く末には

昨年の冒頭に内心考えていた、年内の独り言の300号達成という目論見は達成できなかった。残念だが、確かに最近低下してきた最近のアクティビティは寄る年波のせいだとは考えたくは無いのだが・・・。Quad社の私がある意味で精神的に疲れたりしているようでは、本当に大変な仕事に邁進されている知己たちからの毒殺でもありそうな状況である。まあ冗談は抜きにしても、最近ようやく噂の端末開発を終えようとしている仲間たちを囲んだ新年会でも企画してはいかがでしょうと労わるメールが届いたので、早速賛同者を募る旨のスレッドを掲示板に立てたのだが、果たして何人集まることやら。

プラットホームという言葉が最近の3Gを取り巻く環境では、通信キャリアも端末メーカーもチップセットベンダーも皆が口を揃えているのだが、興味深いことが最近起こった。Quad社においてチップセット評価用の端末を製造していることは、ご紹介したかも知れないのだが最近のプラットホーム展開の中で特に指名されているわけでもない。一つの実装例として、ここまでの機能がありますと紹介するあるいは機能確認をフィールドで行うための端末ですということで通信キャリア向けに提供しているレンガとも呼ばれるような無骨な大きさの端末であった。実際にメーカーが物づくりをしていくうえで、ある意味で実装サイズからも参考になるようなものでは決して無かったのだ。

いま、とあるメーカーが中国のデザインハウスで設計した端末は、リファレンスデザインを踏襲しつつも、そのコンパクトな形状ゆえか、そぎ落とした機能美というべきなのか3Gのテレビ電話としての機能を搭載した上で基本を抑えた挑戦をある意味で行なった成果でもある。この端末が、通信キャリアなどで評判が良いのである。実際にみてみるとQVGAサイズと映る液晶のサイズも実際の解像度はQCIFでありQuad社のリファレンス端末同様なのである。しかし現物として出来上がりでいえば満足のいく仕上がりである。無論、大味な仕上がりだという声もあるだろうが、完璧に仕上げることにとられていて品質過剰として、実際の商機を逸するような正気の沙汰とは思えないような状況よりは遥かによいと思うのだが。

ざらついた仕上がりという感触について、おそらく国内のメーカーでは耐えられないということなのかも知れない。機能は前よりも高く、完成度は高く、納期は限られた範囲で仕上げて欲しい・・・。そんな状況の中で、慣れてきたプラットホームからの切り替えを迫られて物づくりを進めていくことになり、以前以上の結果を求められているのは無理難題ということかも知れない。携帯電話の開発効率を高めるべく進められるはずのプラットホーム切り替えでありながら、足枷のごとく捉えられているということではないにしても、協業という形で分業してでも仕上げていくということになるのだろうか。エンドユーザーからは見えない、開発方法論の差異などは、ある意味で機能追及が停滞しているというふうに映りもするだろう。

ある通信キャリアがLinuxを採用すれば、自社も追従すべきかと考える通信キャリアも居るだろうし、「オープンソースが望ましい」というフレーズだけを取り上げて開発方法論の切り替えを求めてくるような短絡的な意見まで出てくる次第である。国内の通信キャリアからWindowsでやって欲しいと言われないのはVirusなどで懲りた経緯なのかどうかは不明であるが、モデムもクローズでアプリもクローズでは開発に収拾が付かなくなるということなのだろうか。携帯電話と事情は違うものの、政府のオープンソース路線に引きずられて単なるWindowsのライセンス料金などの問題のみにフォーカスして、あたかも安いシステムが構築できるということでシステム構築しようとしてきた流れの中で現実のアプリ開発が停滞している事実もあるようだ。

結局のところ、windowsベースで構築してきたアプリをJAVAやLinuxで置き換えていくことの本質としてアプリ開発が利用してきたWindowsAPIの代替案がないことのようだ。オープンソースで成功してきたという事例があるとすれば、自らがクリエイティブにアプリすらも開発していくというスタンスの仕事かもしれず、最近のCGベースの映画製作などがそうした事例になるのかもしれない。となりの芝生ばかり見ていても仕方がないのだが、携帯電話で最近起きているプラットホーム切り替えの選択をしたメーカー同士が結託いや協業するというのも、従来のプラットホームで構築してきたライブラリ整備をするために要した開発コストの共有いや分担が目的なのかも知れない。協業しているという会社にしてみても、多様な可能性の追求をしているのも実情のようだが、ふっきれた開発を出来るのかどうかはリーダーの資質と自由裁量を許す社風なのかどうかによるものかも知れない。

開発がある程度見えてくると、社内の競争相手との弁論合戦に移るらしく自分の論陣を張るための資料要求などが出てくるのも致し方なたところだろうか。欧州向けということで他社チップセットを選択してみたところで、かならずしもスムーズに開発が出来るのかどうか別問題らしい。ある意味でWCDMAのOEMメーカーから嫌われ者の烙印を押されている観のあるQuad社のワンチップソリューションを選択して評価するメーカーなどの場合には、ローエンド向けとしての位置づけで評価するということでしか、始められないというのが実情なのだろう。結果としてミドルクラスの端末機能が出来てしまったりすると、その会社の中での暗雲が立ち込めたりするのは日本メーカーならではの政治的な風土などがあるからなのだろうか。両天秤に掛けるという裁量があるのならば想定されたケースの一つだと思うのだが・・・。

正月明けとはいえ、新年度に向けて各メーカーや通信キャリアが新たな展開に向けて色々な要望が出てきているのは、勢いのあることでよいことだろう。ようやく世の中にはLinuxやSymbianの端末がメジャーリリースを始めていて、これから続く世の中のベースとなるのかどうか興味深いところでもある。知己の会社のSymbian端末が欧州モデルとしてリリースされたという記事があり、昔携わっていた同僚に確認すると永い開発期間を経ての成果だといい、自助努力で販売するしかないのだという。開発期間の短縮の先鋒として登場してきた携帯電話専用のOSを利用しても時間が掛かってしまう現実には、なにかビジネスモデルがどこかで間違っているのではないかと思ってしまう。チップメーカーが、そうしたOSの組み込みまでをサポートしたとしても実際の物づくりの過程で必要となることには移植組み込みだけでは済まされない事情があるようだ。

かつては、プラットホームの移植や評価を星の数ほどしているのではないかと知己には冗談をいっていたのだが、実際にそうした全方位外交をしていたようなOEMメーカーも、少しずつ実際の端末を着地リリースさせつつということが求められていて膨らんだ仕様の実装解決に苦労を続けている。現在のモノリシックな構成ではなく、OS9やQNXのような動的な真のモジュール化を達成できる構造などを目指していくというのが流れの一つだろうし、これまでのソフトウェアアーキテクチャーとのシームレスな移行を提案できるような仕組みが無ければ、知己たちの期待するプラットホームとはなりえないのだろう。国内トップのキャリアもマイクロカーネル仕様であることを要求仕様に打ち出す状況なども含めてプラットホームベンダーにとってはチャンスあるいは転機の年となるのだろう。多くのユーザーや実装アプリを抱えている現在からの移行や、より魅力的なアプリ開発に向けての新技術提供が期待される新年となりそうだ。

新年早々に、中国のお客様のサポートに訪れてみたものの、半日のミーティングの後は、何故か西欧人ばかりが客となっているタイ料理レストランでお客様と夕食をとることのみになった。帰国のフライトが早かったので、折角ホテルで用意されたフルコースのアメリカンブレックファストも食べることが出来ずに空港のラウンジでカップヌードルを啜るという残念な経過となった。駅前の立ち食いそばやで食事をとっているような状況を解決して、もう少しゆったりと、しかし確実にテンポよく開発を進めていくための支援をしていけるように今年はしていきたいと思うのである。四回も北京を訪ねてサポートをしているのに、いまだ、天安門広場も故宮も見たことがないのである。UMTSのみならずCDMA2000もサポート対象としてプラットホーム依存部分の仕事を中核にすえるという自身の体制変更もあり、今年は相当に変化のある年になりそうである。知己たちとの新年オフ会なども楽しみにしつつ頑張っていきたいと思う。

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