業界独り言 VOL279 大阪、北京、サンディエゴ

ピンポンのようにめまぐるしく活動している会社の中で限られたリソースで行う仕事の今年の実情については、ちょっとイメージはしていたものの実際の現場ではなかなか大変である。解決するには、リソースの追加と開発アイテムの無駄の削除ということにもなり、解決するために更に忙しさを助長するというのも仕方が無いといえる。魔法使いを探しているわけではないのだが、ごく普通の感性の組み込みソフトウェアエンジニアとしてサンディエゴとお客様の間に立ち明るく解決にまい進してくれる前向きな人物を探しているだけなのだ。当然多岐にわたる携帯電話のソフトウェアの全てに対応可能なスーパーマンなどを求むるべくもないし、バリバリと開発管理を推進しているような現在の携帯端末メーカーのキーマンを引き抜くつもりもない。以前までは重要視されてきた3G開発でのプロトコル開発の経験や知識は最近ではあまり重要とはいえなくなってきた。多年の会社としての蓄積がブラックボックスとしての完成度を高めてきたこともあり、携帯電話開発の上での重要な事は、端末としての魅力となるソフトウエア開発全体になってきた。

端末のレファレンスデザインとして提供する内容自体が、プロトコルソフトウェア屋あるいはベースバンドチップセット屋といった集大成でかつ世界各地での相互接続性試験などをクリアしてきたというのも当たり前となっている。いまではその提供されるチップセットやソフトウェアを使って、そのまま作れるソリューション提供が求められているというようだ。端末メーカーが何をするのかといえば、端末の企画を策定してコストの合うデザインハウスを選択して、最終価格がクリアできるチップセットを選択する。無論チップセットの選択の条件には、それを使って作りうるアプリケーションの全貌が見えていて対応するベンダーでの開発が容易なことも視野に入っているだろう。昨今の中国市場に向けた開発においては、機能も価格も厳しい条件が課せられて開発主体となるデザインハウスやソフトウェアベンダーも勢い中国やインドといった地域のリソースを使わざるを得ないというのも実情といえるようだ。

国内向けの端末開発でさえ、そうした傾向は色濃くなってきておりお客様のオフィスを訪ねるとアジアの仲間達が一緒に働いている姿を目にするし、またそうした仲間が窓口となって実際の開発の多くが彼らの自国で行われているようでもあるらしい。国内のサポートとはいえ、関西地区のオフィスに詰めながら、コンタクトしているお客様とは彼らの日本語や私の英語やらを通しての相互理解を高めていくことになっている。大阪事務所の近くには、割とお奨めのインド料理店があり、ここのカレーは日本向けにカスタマイズされているとはいえ、サンディエゴの仲間のインド人達にも評判の良いお奨めの店である。高くもないしやはり大阪は食い倒れの町ということの表れでもあるようだ。今年になってから、ソフトウェアハウスとの直接的なサポートを要求されるような事態が増えてきたのもチップセットビジネスのサポート形態の変容が理由に挙げられるのだろう。とはいえ、ライセンスビジネスの観点からデザインハウスやソフトウェアハウスを対象にサポートをしていくということにはQuad社自身のビジネスモデルの変革が求められてもいる。

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業界独り言 VOL278 ビール工房の杜氏探し

ビール工房で杜氏探しとは、季節外れというか的外れというかおかしなものである。まあ、米国でのプロジェクトの名前がビールに因んでいるのだが、これから国産メーカーの端末としての仕込み醸造を始めるに当たり杜氏に相当する人が必要だというのが、国内キャリアの意向ということで既にミスマッチしているという状況にあるのかも知れない。ビールをおいしく仕上げるには材料だというのが米国の仲間の意見でありおいしい麦芽を準備しているのだという。日本では、きめ細かな泡立ちやのど越しの切れなどが望まれるというしビールのラベルにも留意が必要だというので、話があらぬ方向に向かっているという危惧もある。まあ最近では、ノンアルコールビールをコカコーラが出すような時代でもあるので、ビールとしての素性などにまで言及する人がいないのも事実からも知れない。出来上がってしまったものをASISで使うということが求められてしまうのかも知れない。

杜氏といえば、灘の生一本なども含めて関西地区にこそ居るような気がしているのだがいかがなものだろうか。幸い、酒都と呼ばれる地区にもお客様がいるし、関西にはユーザーが多いのも事実である。衣替えの季節を迎えて、夏の日差しの中で人の動きが始まっている。サンディエゴの青い空が好きですという人も居れば、メーカーの開発受託支援の中での経験を前向きに生かして源流での仕事がしたいからという人もいる。長年送り続けてきたラブコールが届いた人などには、サンディエゴからは以前の面接の際のコメントなどが再度メールで送られてきたり二も無くOKという連絡が入った。いろいろな背景があって面接OKにも関わらず周囲の状況の中で押し潰されてしまったというのが、もう四年も前の話でもあった。そんな状況も彼が続けてきた仕事を通じて後輩を育成して彼自身が巣立てる状況に変わったようである。

モデム開発という仕事がメインだった五年前とは、様相が異なってきた現在ではアプリケーション支援が主要なテーマになってきた。モデムは動いて当たり前という段階に入ってしまったチップベンダーが注力するのはそうした部分になってきている。といってもLinuxでbootを早くしようといったことでもないのだが、基本は安い端末を実現するためのソリューション追及という観点がチップベンダーとしての付加価値であると考えているのである。ビール醸造キットをリリースしてみたところで、そうした趣味の領域を楽しみつつメーカーとしての味付けにこだわろうということが少なくなってきたのは時代なのだろうか。自前で育成してきたUIをあっさりと切り捨てて、レディメードのものに切り替えてしまった会社もあるようだ。自前のUIの考え方をそうした醸造キットをベースに追求しようとしている真摯なメーカーなどのサポートをしていると気持ちが良いものである。

増え続けるカスタマーに対する答えや、仕事の方向性としては雛型となるソフトウェアキットの提供などもあるだろうし、着せ替えとなるような洋服となるアプリケーションなどを開発するベンダーも登場してくるようだ。アプリケーション間の管理的な動作などを規定するキャリア毎の詳細な仕様などに対応するフレームワークなどもパッケージとして開発提供あるいは流通する時代になりそうだ。通信キャリアによっては適用するアプリケーションを直接コンタクトして開発を進めるといった動きなども想定しているようだ。携帯バブルで溢れていた仕事の内容や質が問われる時代を迎えようとしている。端末メーカー以上に自身のビジネスモデルを模索しているのがいわゆるソフトウェアハウスのようだ。通信キャリア毎のノウハウや端末メーカーの違いなどを吸収する仕事を続けていくことで積み上げてきた蓄積をある意味で工数販売してきた流れからの脱却が求められている。

しかしソフトウェアのプロではあるものの端末ビジネスの表舞台に立ってこなかった歴史から、あくまでも下支えという仕事から自立するビジネスモデルは描きにくいのも事実だろう。開発してきたノウハウを表立ってIPとして出せないのは、過去のお客様との契約であり、仕様書などから得てきた仕事の流れからきたものだからだ。組込みという世界で共通フレームワークとしてソフトウェアが流通する段階にまで至るのだとすれば、一大革命ともいえるだろう。端末メーカーとしては特色あるデバイスなどに注力して差別化を果たしていくだろうし、アプリケーションベンダーが登場してFilemakerのような会社として独立していく時代になるのかも知れない。ソフトウェア技術者としての仕事という定義が最近では、ハイレベルの仕様書のみを書き起こす仕事となっているようだ。こうした仕事が消滅して、もしかすると企画会社により物づくりが達成するPC事業のようになってしまうのだろうか。

杜氏としての技術追求を指向しているような人たちにとっては、メーカーとしての物づくりの仕方の変革はあるいみで産業革命のような位置づけの中で付加価値を求められる流れから追い風になるのかもしれない。IT時代の杜氏としては、同時にいくつものアプリケーションベンダーや端末ベンダーとの調整に臨みつつ、国内を渡り歩きメールを交換を重ねて最終端末の確認をしにまた現場や西海岸での検証作業などを繰り返している。ハードウェアの設計作業自体も最近のお客様の状況では、リファレンスデザインの提供でお客様が完成度を高めていくという仕事のサイクルがビジネススタイルに合わないという状況になっている、いまではそのまま使える部品であり設計そのものを期待されているという風潮となっている。台湾や中国メーカーがODMとしてハードを開発して、日本メーカーでは特色あるキーパーツの開発に注力して、日本の企画会社が端末としてのアプリケーションセットを決めて纏め上げるというのが2006年危機という時代なのだろうか。

まずはやってみようという気風に満ちている関西の杜氏たちを探して、私達自身の仕事容量を増やしていこうというのが作戦なのである。物怖じしない気質の関西出身のエンジニアを収容できるようなインフラとして設けた大阪の事務所なのであるが、まだ一人しか見つかっていないのである。行き来しつつサポートするという仕事のスタイルを続けざるを得ないのだが、のぞみの移動時間も勿体無いというのも事実であり気概ある人材を発掘したいと思うこのごろでもある。口数の少ない人ではサポートは務まらないのでコミュニケーションをお客様との間と達成しつつ、端末作りの理解を果たした上で技術開発メンバーとのコミュニケーションで問題解決を果たしていくというビジネスには、実はもう日本人では当てはまらないということなのだろうか・・・。