WCDMAあるいはUMTSという名前で開発されている通信システムは、規格が策定年月込みで次々と実装開発が進められてさらにその間に発生した変更要求(CR)の盛り込みとを合わせた形でようやっとベースとなる規格として扱うことになる。残念ながら、さらに規格の中でいくつかのオプション選択が可能となっていることや、規格の解釈相違などが現実にはありこうした問題点を切り分けつつ開発を進めることになる。自由な規格という性格が開発を難しくしているのは明らかであり、時限を切られた開発を進めていた日本などが暫定規格を採用通信キャリアが決めて進めることになったのはいたし方ないことでもある。また、通信規格とは別に通信キャリアが策定する仕様というものが別に存在するのでアプリケーションや検証といった目的の作りこみは、これらを解決して実現することになる。
国内の通信キャリアが、グローバルスタンダードとして採用したUMTS規格での第三世代は親会社となった欧州通信キャリアの意向なども加わりさらにGSMとの共存などの色合いが濃くなったのは納得のいく流れである。既にアプリケーションレベルで写真メールなどがGPRSベースで流行を始めたというのは日本発の技術という意味でいえば喜ばしいことだろう。国内でPDCをサービスしているにも関わらずGSMとの共存を追及していくことでPDCからのスムーズな撤退ということなども将来には考えているのかもしれない。通信コストの削減やグローバル化を目指しているという姿は、通信容量不足に追い込まれたトップキャリアの背景からの相違なのだろう。デュアルバンド実現という技術的な課題には、日本規格で既に実現しているPDCでのデュアルバンド化などの観点から無線的な技術解決については果たせているようだ。
赤いボディで既に市場に登場したGSM対応のUMTS携帯電話にはSIRを考慮した設計からなのかアンテナが口元についている実装となっている。当然SIRの危険性という面から見れば頭が温まるよりは舌や口が温まり饒舌になり通話時間を延ばすという期待もあるのかも知れない。二つの異なるバンドと通信規格の双方を実現するという目的には内実は大変な技術的な内容があるようだ。技術者の方や通信キャリアの評価する方たちはなぜか、使い方を不自然にアンテナを有効に使えるような形で配置したりしてデータ伝送の試験をしていたりするのは妙なものだ。それだけ性能評価などが難しいということもあるのかも知れないのだが・・・。性能評価を妨げているのは、無線性能評価を左右する無線区間の設計などがインフラベンダー毎に異なっていることも背景にある。各地域毎に分けられて異なる通信インフラメーカーの機器が納入されているのはUMTS規格を共通のより所にしているからということでもある。
地域ごとに・・・異なるという特性から実際の試験は、各地域での接続性試験を行わないと分からないのも事実である。こうした背景に照らして、最近国内での出張が増えているのが実情でもある。九州と大阪と都内と三拠点をベースにした試験が続いているのは、それぞれのメーカーとの試験確認が必要だからなのだが・・・。通信キャリアでも機器開発メーカーに対しての便宜を図る意味で、機器開発メーカーの地域にあるノードを重点的にバージョンアップなどを講じているのも事実である。無論機器メーカーの中には、自社で通信インフラの開発をしているメーカーもあり、こうしたメーカーでは自社内で十分な試験が出来るということもあるが、実際にはほかの通信インフラとの検証もあるので、それだけですむことにはならないが。じっくりと互いの機器開発の精度を上げていくことが出来るという意味では優位な状況にほかならない。
通信規格の解釈を巡ってはいろいろな問題がおきていて、無線規格の動作とデータ通信規格との間のギャップなどによる通信規格自体の矛盾などがあったりもしていたのが実情である。通信キャリアでは、通信規格を是としてこれに基づいて自社の通信仕様を書き上げていたりするので、そうした実装との間で仕様の相違あるいは矛盾が生じたりもするようだ。通信規格自体が改版途上なのだから致し方ないともいえる。しかしビジネスとして進めていく通信キャリアとしては、今後もこうした開発途上の通信規格自体の変更をある意味でトレースしていくことが必要となるだろう。また、端末開発をしていくメーカーとしては通信規格の多彩な状況のなかで、対応していくことが求められて、ますます検証作業の比率が高まっていくだろう。通信キャリアからの取り計らいで高くつく開発費用の一部を補填するという動きなどはこうした部分への費用増加を踏まえてのことかも知れない。
そんな中で、3G通信規格をうまく利用したデータサービスにはTV会議もあれば高速パケットサービスなどまで多彩でありUDIやPSを活用したものとなっている。テレビ電話機能ではUDIによる通信として透過モードを利用していて遅延が避けられるようになっている。これをさらに踏み込んで活用してデータサービスモードとしてISDNモードへの接続なども企画しているようだ。同期モードでISP側に用意されてきたインタフェースも最近では、ADSLなどの普及から日の目を見なくなっている観のある機材なので有効活用すればエコロジーの観点からも有用だろう。実際にPPPのフレームを3Gのシステムで搬送するには技術的なチャレンジといえるようだ。具体的な内容でいえば、同期非同期変換を端末に実装する必要があり、また端末で期待するエラーレートがISDNモードのそれとは合致しないのも致し方ない。いまどきの携帯電話開発のソフトウェア技術者がアプリケーション層として構築するには難しいテーマなのかもしれない。
さまざまなアプリケーションあるいはデータ通信機能を実装している通信機器メーカーとしては端末の完成度確認の目的で検証テストを進めていくのだが実際の試験での審判に相当する機器や方法については難しいのも実情である。ようやくUMTS規格を満たすエアーモニターが登場してきた為にこれを採用使用する通信キャリアなどの動きが出てきてもいる。Quad社では自身のシステムとして組み込んだログ機能などから起こっている事象を把握するためのプロフェッショナルチームが組織されて世界各地での接続テストに飛び回っている。彼らにしても、神のさばきではないが審判となる機材が登場してくるのはウェルカムなのである。一式で二千万円は超えると言われる高価な機器ではあるものの、前述の難しい状況のなかでエアフレームを精査して教えてくれるという機器の価値は押して導入すべきものといえる。決して高い買い物ではないだろう。
お客様のアプリケーションのデバッグで遭遇する問題切りわけといった観点でこうした高価なシステムが有用であることは否定しないものの、実際の開発の中から切り分けて問題点を発掘していくなかで疑問符が擡げてくるのである。アプリケーション層として実装された機能の確認に使うにはかみ合わないのではないかということだ。言い換えればシステム設計のレビューで解決が十分に図れる内容であるというのが実感である。確かに開発が急がれる中で検討も不十分に進めてきた事実があるのだろうが、コンサルティングとして協力を求められて問題解決にあたっていくなかで道具の進歩と共に稚拙になっていくエンジニアの感性のアンバランスに遭遇しているように思える。リアルタイムシステムとして構築していくという感性はアプリケーション層であろうとなかろうと必要なもののはずなのだが・・・。
問題点の切り分けをする道具立てとして2000万円のエアーモニターを利用することの意義は確かにあったと思うのだが、本質的な意味での設計段階での開発プロセス自身に問題があったのだと私は思う。結局見つかった問題点で弊社側問題の範囲では、ないと分かったもののお客様自身で設計された部分の切り分け手法などの基本的な能力などについて懐疑的な面が残りつつ時間の限られた中で仕事を進めるという意味では活躍してくれたのである。最終的にはお客様のコードを舐める様にレビューしつつ、ログで得られたデータを統計的に処理してグラフ化して解析するという当たり前のことを進めることでデバッグを進めるといった科学的な方法などが体系化されていないようだった。グラフ化して見せるという目的のツールで有用な道具には、Gnuplotが活躍するしこれに処理させるデータ前処理にはExcelが役に立つ。また、必要な機能として矩形のCOPY&PASTEが出来るエディタが必要になる。必要な道具という観点でいえば、こうした実務的な科学的デバッグ手法を教育するということなども有用なことだろう。
こうした技術を学びつつ設計に反映していくというシステムが、ソフトウェアあるいはシステムを開発していく組織の中に構成できるのかどうかで、その会社としての開発効率などが大きく改善される筈なのだが・・・。こうした分野をなんと呼んだら良いのかは不明だ。実務的デバッグ技法なのだろうか。さて、問題点がお客様サイドのベースにあることが判明する中で、追求の最後の詰めをお客様自身の手に委ねたのはいうまでもない。実は、パケットやUDIでのデータ通信の試験評価に必要なものとしては自由に使えるインターネット上のサーバーが有用なのである。実は自宅のこのサーバーが活躍しているのである。FTPでファイル転送のスループットを測定する為には高速な回線で接続されたサーバーが必要であり、自宅の光で接続されたこのサーバーの能力はブロードバンドを支えていく上の評価ツールとして活躍しているのである。インターネットの回線能力というものでボトルネックになることは殆どなさそうなのが事実でもあり、サーバー能力が取りざたされている状況から個人所有のサーバーが活躍するのだ。
384kbpsのスループット測定をしていて実際に380kbps近い値がマークされたりするのを見ていても、Quad社での実装の軽快さが判明したりするのが納得できたのは楽しいことでもあった。ARM7のプロセッサ実装の携帯端末が十分にこうした通信性能を叩きだせることで証明できたのである。しかし、そうした性能のベースとなっていることの意図したメモリ配置などがお客様自身の手で変更されて性能が低下して見えていたりしたこともあった。高速RAMに配置した意味のあるデータ領域の配置を意図どおりに配置しなおすだけで、お客様端末の性能が25%以上低下していたことが解消されたりもした。エンジニアの感性として、どこの空間が頻繁に利用されるのか・・・といったことが理解されていないのではないかということについては大きな疑問が残る。我々が設計検討を重ねて積み上げてきたプラットホームの性能というものをこともなげに、変更した上で「性能が出ていないので、解決に協力してほしい」という依頼に応えていくというビジネスサイクルこそは早急に是正しなければならないだろう。
開発技術セミナーといった当たり前のことを教えるといったことも視野にいれる必要があるのだろうか。いまだにICEのトレースマジックから逃れられないでいる技術者が多いようだ。しかし、逆に言えば稚拙なままに製品を開発してきた先輩である技術者達が自身の成功体験として、こうしたことを今は管理者として見ているから余計に悪化しているのかも知れない。「FULL-ICEでなければ、ブレークが掛けられません」などという意見がまかり通っているのはフラッシュな時代でのデバッグ技術を理解しているとは思えない。昔のEPROM時代の残照みるような思いである。JTAGから出来ることの理解としてアドレスブレークを使いつつ自身でオリジナルのコードに変更を加えてコンパイルしてデバッグコードにブレークを張ればよいことである。そんなイロハも教えなければいけない時代なのかも知れない。オシロスコープで遅延掃引をかけつつデータバスを追いかけたというような話を持ち出したくはないが、あまりにもソフトとハードのギャップを埋められない技術者が多すぎるような気がしてならない。・・・日本には