業界独り言 VOL193 知人の輪

久しぶりに知人達と食事をした。発端は、会社のアワード受領による報奨金だった。アメリカ人の慣習なのかどうかはわからないのだがQuad社での報奨金は、現金ではなく友人達とのパーティ補助金という形の運用なのである。友人達とのパーティを通じてさらに次のステップへのサイクルヘ上手く転用していこうということらしい。ともあれアワードの賞状が届いていたのだが記載にはNonCashと書かれていたので気にはしていなかったのだが別便でメールで額と処置について通知が届いた。どうも140ドル相当額までの費用を精算するというやり方らしいのだ。経理担当に確認をして17000円ほどの補助金として友人とのパーティをすればよいらしい。

こうして、独り言でメールを届けている幾人かの仲間と食事でもしようと考えていたのだが、来週にでもと予定していたスケジュールが週末には覆されてしまう事態が発覚して一週間はべったりとお客様さきに伺うことになり、急な展開ではあるが当日のアナウンスを幾人かに送ることになった。ポイントはその日に届いたメールの方である。独り言のアドレスの私にメールを送付してきた人は、少なくとも当日なにかゆとりがある方に相違はないと思われたからでもある。半導体商社の知人のNさんと、通信機メーカーの購買担当の方、携帯メーカーで支援技術などを中心に活躍されているNさんなどから返事が届いたので綱島の気さくな洋食屋さんで開催する旨の通知をした。

組織変更などで最近は「アドレスが変わりました」とか「メールサーバー更新のため週末ダウンします」とか色々な状況があるようで金曜の夕刻の通知にはひとしきり心配もあったのだが、補助金分配の目処も含めて暫く話も出来ていなかった知人達との夕食を楽しみにすることができた。気さくな洋食屋さんについては、アメリカ人は、ただ飯が好きな民族なのかも知れないが、そうした事はお客様を招いた際に用意するゲストランチの風景にも見られる。テストサイトを訪問するアジアのお客様は多い、自分達の開発した電話機を持ち込み確認テストをしていくのだ。そうした訪問を支えるのは、各国の支援技術者とアメリカの支援チームならびに問題毎の開発担当の技術者達である。

 

携帯電話の基盤技術開発を支えているのは、間違いなくアジアン技術者達といえる。Quad社での開発風景をみていてもそうしたことは明らかである。残念ながら日本の技術者は皆無に近いのだが・・・。テストサイトを訪れるお客様の多くは、中国や韓国のメーカーである。日本のメーカーの技術者と比較すると失礼だが言語上の差異が大きすぎるからなのか彼らは巧みに英語を操る。無論そうした国々でも働いている技術者達は、アジアンなベトナムやインドあるいはパキスタンといった多くの人種の方々が働いている。共通語として英語が浮かび上がってくるのは致し方ないことなのだろう。無論の日本のメーカーの方達もやってくる。

ゲストランチでお取りするのは、サンドイッチの場合には、宗教上の扱いとなるベジタリアンや肉の種類の制限などから中身は何だ聞きまわる風景もある。インド料理あるいはメキシカンの場合はもうすこし明確に彼らがなれているようだ。しかしチャイナ、日本料理となると好きな奴もいれば、恐る恐るというてあいもある。いずれの場合にも「山ほど頼んだな」という印象のランチが、お客様が食べ終わるころには次々と回りの技術者が食べに立ち寄っていくのである。それでも残ったものは、ブレークコーナーに持ち込まれてやはり仲間が食べていくのである。

残すという文化と、残したものを利用していくという文化の双方が、この風景には見える。こんな雰囲気からも、知人同士の少し気張った食事費用の補助(いわゆる会社もち)というシステムは彼らの気質にミートしているのかも知れない。無論、肩肘はらない仲間同士の食事を会社がもってくれるというのだから食事での話も気楽だし、お付き合いの食事での会社もちとは気分も違うというものだ。日本のメーカーでいえば事業部長賞といったようなものなのだろうか。総務が社内のモチベーション向上などに繰り出す方法と同じだが一つの賞金で周りから祝福されるという使い方としてはみんなが美味しい使い方なのかもしれない。

日本の会社でこうした報奨金というと、提案やらパテント取得などがあるが図書券といった小額だったり、会社関連の特許でなければ最後までは出さないといった風潮からか、あまり最近は流行っていないようにみえる。私も前職の会社で申請した特許報奨金が毎年送金されてくるのだが、その事業が続いているという目安にはなる。額は、事業の売上利益からの割合が決まっているらしくあまり私の場合には大きくは無い。まあ毎年カラープリンタを更新できる程度のものだ。特許一件申請してパテントになると3000ドルの報奨金が出るという会社もあるようだ、記入された特許が金属のレリーフになりパテントウォールを飾っていくという仕組みも中村さんの目からみれば他愛ないものかも知れないが結構家族的な雰囲気を醸し出してもいるように見える。

今、お客様の製品追い込みで大阪に詰めているのだが、会議室を一つお借りして事務所代わりにしている。大きな建造物のようなお客様の端末開発というなかで私達に出来ることは限られてはいるものの、相変わらず聴診器をあてて内科の先生のようだ。心臓の音や脈拍に相当するログ出力を取り出して問題分析をしてナローイングしていく。結局役に立つのは、ソースコードとログの突合せとレビューだったりする。かつて、片山御大がいみじくも言われていた「世の中で一番役に立つツールとはgrepだ」という名セリフを思い出しつつ、最近視力の衰えから大きな液晶ディスプレイに拡大表示して作業している自分がしている作業がまさにそうしたものだなと思い返している。ソフトウェア技術者の年齢限界は30歳だと言われていたことからみれば、五割増しまでいってしまい、16進数表記の30H歳にも後少しだなと思い返している。

そんなおり御大からメールが届いた。独り言を編集して御大のページのコラムに載せたいというのだが、少し内容を加筆しないと指定した号だけでは意味不明な人も多いだろう。世の中が徹底的に減速しているように見えるなかで、自らギアをトップに入れている会社に伺っていると、出入りしている協力会社の人たちの顔も暗くはないように見えるのは不思議だ。業界が狭いためにどこかで見かけた顔の技術者たちも気がつくと大阪の会社に出入りしたりしているようだ。一段落つきそうな大阪の週末の花金だが誰か知人と夕食でもたべようか、ただし会社もちではないのだが・・・。御大は台湾にいるようだし、誰か居ないかな・・・。

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