3GPPの準備が俄かにスピードを上げてきた。最新技術を搭載したという基地局システムのソフトウェアが、その最新技術のバグ取りが進んだというのが、どうも理由らしい。リソース管理に問題が出ていた基地局システムが、急に完成度向上するのは信じられない点もあるのだが。完成度の高い基地局ベンダーとそうでない基地局ベンダーのソフトあるいはハードの完成度の差は、通信キャリアにとっては選定対象にもならないらしい。
やはり世の中は政治力なのか。とはいえ完成度が低いと思われていた海外ベンダーの完成度が急に高まったのは、腐っても鯛というべきなのか。トップを維持していくための努力は怠っていなかったということなのかも知れない。交換機時代のゆるぎない成果が、選定理由の実績といった政治力のバックグラウンドでもあったのだろう。第三世代への挑戦が彼ら自身も無線システム方式実現の上の技術力追求の手を緩めなかったのだとすれば開発プロセスとしての健全さがそこにはあるようだ。
基地局開発のシステム構成論としてもsmalltalk的な考え方を持ち込んだのであろうか。まさかガベージコレクションをしているとも思えないのだがメモリーリークするよりはという選択肢なのかもしれない。以前ある通信メーカーのWCDMA基地局開発に従事していた仲間がQuad社の支援チームに転職したりもしていたのだが、この例はクラシックな方法論でトランザクションベースのデバッグで、やはりリソース開放には苦労していたようでもあった。こうした現場での問題点がうまく次の開発に向けた技術検討に回されているのだとすればプロセス改善の良い事例といえるのかも知れない。とかく、現場からは非難されることが多いプロセス改善ではあるが、革新を掘り起こすのもプロセス改善なのかも知れない。
国内の第三世代向けの無線基地局ビジネスは、すでに狭い国土でもあるがゆえに受注などの段階は終えてしまったらしい。端末と違って入れ替えなどは保守以外にはありえないのだから、今後の永続的な維持が出来るような設計に基づいて行われてきたはずだ。以前に保守用ツールとして国産の代表パソコンを選択してその特殊なアドレス空間をトリッキーに利用した道具などを作ったりしてきたのだが、その当時はDOS/Vに席捲されるなどとは思いも及ばなかった。まさかメモリー空間の128kbにマッピングしたツールなんて・・・。最新と思って採用した方法がいつまでも続くとは限らない。開発した成果を引っ提げてやはり広大な中国市場に出ていくようだ。
3GPP端末開発も、ほぼメーカーの塗り分けが終わっているようだ。今の段階ではPDC/PHSで最後にするという会社が確定した段階らしい。こうしたメーカーではRF技術者やプロトコル技術者などは上層部が関連すると認識する無線LANなどの新規事業に移管されているようだ。また端末機器のUIに根ざしていた技術者はOOPな開発方法論などを活かして使い勝手の良い品質の高いソフト開発が要請されるNAVIなどの分野にマッピングされていくだろう。工場は携帯のOEM生産の受託に切り替わりつつ延命できるようだ。カメラ端末で3G端末としてベストセラーを続けているメーカーなどにとっては朗報となったらしい。
先進の工法で量産工程を支えているハードとソフトウェアの開発現場は趣を異にする。様々なオブジェクト志向の開発方法を駆使されているメーカーもあるし、仕様書ベースで開発を 進めて最終工程で悲鳴を上げているような事例もある。たとえば開発環境でのコンパイラーの問題点がC++に見受けられてもCの範疇で問題が無いと提供を受けるコードベースの会社と異なる環境になるなどの理由で中々バージョンを切り替えられないものだ。お客様の支援作業の中でこうした点についての質問をされてくると、そのお客様の開発方法論などが見えてくる場合もある。しかし、そうした言語ツールを複数駆使されてビルドされる方などは質問もしてこないで対応されている事例もある。
新たなi-MODEシリーズが打ち出した高邁なアプリケーションプロセッサ構想は、市場の最終ユーザーニーズの流行であるカメラ機能に持っていかれてしまった。スピードの差といった物は慣れてしまえば新鮮でもなんでもないのだろう。やがてアプリケーションとしての差異が表面化して、実際問題として不景気を押してでも買い換えるというほどのニーズを喚起してはいないようだ。関西に出張で来ていると、風景としてビジネスマン風の方達の中で少しくたびれた背広を着てコンビニのホットドッグをぱくつく姿。あるいは意外な売れ行きを見せているオーベントーの事実などに直面する。
出張だからといって、おおらかに弁当代が出ていた時代は終わってしまったようだ。いつもの昼食で65円のマクドや牛丼を食べている人たちは同様な価格観の弁当なりを食べているようだ。帰りの新幹線の風景といえば缶ビールの酒場状態に陥っているのは以前からなのだが。酒量やおつまみなどがチープになってきた事実はある。実際問題JRの取り扱っているおつまみの柿ピーなどが米国産などに切り替わっているのもそうしたことの現われではないだろうか。
携帯電話という新しいインフラを使うことを必要とするも、それによりもたらされるサービスの価値と費用とを考えるとバランスを逸脱した端末や新たなサービスには消費者は心動かされていないようだ。一部のオタクな経済観念の無い若者を対象にすれば、買い替え需要としてはあるだろう。売れないから価格を下げるという戦略での一時凌ぎを出来る状況ではなくなっているはずだ。あふれ返ったユーザーを抱える通信キャリアでは企業として延命するために周波数拡大策として第三世代に移行を画策しているのだが果たして・・・。
今のままで身の丈にあった形にシュリンクダウンするという策を講じない代償は、同一のものを通信キャリア毎輸出していくことになるのだが、国内で受け入れられないものが国外に輸出できるのだろうか。このままで良いのだろうか考えも及ばせないままに仕事を進めている、撤退しない3GPP開発の主体者は次のような幾つかに分かれつつある。国内仕様は、現在のお付き合い上致し方なく、これ以上の拡張も国際化も望めないが開発は維持しよう。出来れば開発は中止したい。国際仕様に準じていくためには、開発が進んでいると思しきメーカーのチップとソフトを利用してリソース出血を食い止めたい・・・。
関西はまけへんでぇーと元気なお客様との立ち回りをしていくには、支援リソースの拡大が求められている。物の分かった、そして英語に苦痛を感じないという技術者が、そこには必要になる。世の中の状況からは、会社として撤退して自己覚醒したエンジニアを探すという選択と負のスパイラルの渦中にいるなかの自己覚醒しかかった技術者を探すという選択の二つになっている。昭和の世代の技術者には、仁義をベースにする技術者が多く、社会責任としての自己というものを考えないやくざな任侠道に軸足を置いているようだ。平成の技術者は自己覚醒にいたっていない。
今、まったく別の技術の開発の必要性を感じ始めている。開発プロセスが健全な会社にいるのならば、この業界で誰もが気づくテーマのはずだ。この技術開発が引き起こすのはゲートウェイビジネスの終焉でありIPビジネスの謳歌でもある。お客様にとってのサービスという観点でこそ日本が果たせる役割は十二分にある。残念ながら、このテーマは現状のビジネスに漬かっている通信キャリアからは抹殺されようとしているのかも知れない。あるいは蚊帳の外にされている。そんな落ち着いた目や耳を持ちたいとは思わないのだろうか。もう道路工事はやめよう。どこかの与党とどこかの通信キャリアには共通点が見られる。
新たな技術を阻むのは、狭量な感覚の会社のトップなのだろうか。意識の高い元気な技術者を活用できない会社ならば、ベンチャーキャピタルから資金を得て独立するという選択肢もある。そこまで自己確立できた技術者ならば、迷わずそうするだろう。会社としての世間との様々な果たせぬ義理などでがんじがらめになっていて、身動きできなくなっているのだろう。通信機器メーカーとして果たすべきテーマで未解決なテーマは、数多くありそうした点を追求したい技術者とそうした点を突かれてしまうのを忌避して抹殺しようとしている場合もあるようだ。お上のご威光で良好な歴史を作られてきた会社では、致し方ないのだろうか。
今日も、元気な関西の会社との立ちまわりである。幸いにして開発は順調で、今後の拡大も指針も明確だ。しかし、意識を同じくする仲間を探そうにも、背中の唐獅子牡丹を見せてくれるかつての仲間達が到達する迷路の先が行き止まりなのか出口なのかは不明確なままに今日もジェットニンジンが付けられて空をも飛ばさせられているようすだ。各自の人生であるのに、もっと自分の人生を大切にしたいと思わないのだろうか。社会責任としての自己あるいは会社の存在意義を見出せているのならば何も言わないのだが。
さあ、行かなくっちゃ