業界独り言 VOL152 彼岸のなかで

先日の通夜の席上で出逢った仲間から、「独り言が前半しか送付されていないのですが、もしかしてwebには後半が書き綴ってあるのですか、であればアカウントをください」と言われた。もしかすると読まれていないのかしら、どうも説明が不十分だったようだ。彼が、そう思っているのならぱ、多くの人が同様なのかもしれなかった。長いメールで送るよりも導入部を書いて、後半はwebでというのがパケット代を気にする人も含めて良いのではないか考えての方針なのである。

彼岸明けの昨日、ほぼ横浜地区は何処も満開の桜となったようだ。ぼた餅と桜もちあるいは花見酒と線香の煙とが共存している季節で期末を迎えることになってしまった。桜祭りで著名なある町では、例年よりも2週間も早い桜前線には対応が出来ないとテレビで紹介していた。先週の金曜日には新入社員も迎えることのないままに二度目の青山墓地での場所とりをしていたのは某商社の期末に疲れた一年生らしかった。桜の下の花見ランチも2年目となった。

土曜日、都内での散歩の帰りがけには京浜急行で日ノ出町で降りた。大岡川沿いは例年桜祭りの提灯が架かるのであるが例年にないこうした事態に何処の町内会も対応が間に合わない様子である。これでは、どこぞの官庁と一緒なのである。人が要望するでもなく自発的に軒を連ねるのは的屋さん達である。いわゆるベンチャーというべきであろうか。自宅まではほどなく花見がてら大岡川沿いに歩くことにした。川沿いの桜は既に満開となっていた。月見と花見に興じる一団が川沿いの屋台で興じていた。

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業界独り言 VOL151 M嬢からの緊急メール

今春の暖かさは、例年にはないものがある。春分の日だというのに、既に桜前線が通過となっている。春二番の風が嵐の様に吹いているので蕾までもが飛んでしまいそうな勢いである。三月が期末であるメーカーにとっては、開発の追い込みが生産出荷という段階で大詰めとなっている。システム機器の場合には、ようやく構成品が揃い工場で組み上げとなるからである。実際の機器はお客様の納期から逆算されて手配が為されていて機器費用の利子支払いなどにも厳しいのが最近の状況でもあるからだ。無線機器の応用システム開発に携わる知己であるM嬢から悲鳴のメールが届いたのである。「WindowsNTのシステムでDataBaseへのアクセスが毎回出来たり出来なかったり・・」

Quad社という仕事の枠には、Windowsをシステム商品として納入するような仕事の範疇からは、ちょっと離れてしまっている。五年前にはプロセス改善活動に繋がるような草の根ネットワークを構築したりして初期のWebDBシステムの実験などをしていたこともあった。Quad社に転籍してからは、会社内での電子メールとML(メーリングリスト)ならびにイントラネットのサーバーシステムなどとの連携で6000人あまりの社員が情報共有をして開発や生産、そして支援活動をしている。通信プロトコルの標準化活動をしている人は世界中の地域に根ざしたローカルな委員会活動や世界各地で開催される標準化委員会に出席して作業をしている。

新機種のチップが開発されるロードマップが提示されると、付随する複数のMLが立ち上がってくる。メーリングリストは会社のサーバーで運用されているのでフラットに参加が出来る。参加するのには、イントラネットで、そのMLをphで検索してMLの内容を確認して「・・・のチップコア開発に関しての討議グループ」などと書いてあるのを確認して、自分がそのMLに参加する目的を主張する書き込みをしてリスト管理者に参加要望を送る。ここまでは全てWebで行なわれる。リスト管理者からの参加許可はメールで返却されてくる。許可されれば以降メールが次々と送られてくる。MajordomoなどのMLツールから次々と送られてくるようになる。

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業界独り言 VOL150 桜の花咲くなかで

無線LANの活用は一般化してきた。例えば自宅においては、無線LANのクライアント二台に対してアクセスポイント三台という状況ではある。近々プリンタ接続をネット化しようと考えているのでバランスが取れるかもしれない。先般の周囲環境との干渉問題はアクセスポイントの増設とローミング対応とでクリアしたのだが既に無線LANのカードとしては一式交換する羽目に陥っている。光ファイバーが到着して現在では端末からのアクセスでは実際の処FTTHを使いこなせてはいない。ホームサーバーの実現で外部からのアクセスには当分応えて行けそうである。FTTHの速度を端末で実感するためには802.11aへの切り替えが必要だが。

802.11である無線LANの標準化活動に参加してきた過去の経験でいえば無線LANの課題はやはり干渉問題であり、裏返すと周波数帯域の問題でもあった。何色で塗り分けられるかという課題で通信業界では良く取り上げられる古典的な話題ではあるのだが無線LANの席上で課題となったのは隣接ビルからの輻射あるいは隣接ビルを反射してくる階下あるいは階上のシステムとの混信である。2次元の話題から三次元に移り結局の解決策はビルのシールドの技術になった。大成建設が保有するという新技術の適用やら輻射しにくいガラスの話だとかである。

たかだか15組位しかないバンドをホッピングして逃げ回るのが現在の802.11bの無線LANなのだが直接拡散してパワーコントロールするようなCDMAのような使い方とは似て非なる物である。これから離陸してくるであろうHDRとの親和性は高いのだが、本質的に同時には利用させるのかどうかという点で簡単になるか複雑化するのかという事に繋がっている。無線LANの開発時点で危惧していたコストは既に解決を見ていて、消費電力の点は解決の目処もないようだ。消費電力に対して留意して設計された同様な仕組みであるブルーテュースとの差は、明白である。無線区間での相互干渉については課題となって浮上してきた。

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業界独り言 VOL149 シンプルな携帯へ

缶コーヒーを飲むと、TV携帯電話がもらえるという大盤振る舞いのメーカーもある。キャリアとして特殊なエンコーダを用いて現在のネットワークで使える簡単な動画クリップメールを実装している端末も出てきた。MPEG4のデコーダLSIのみをおごって搭載して動画クリップサービスを始めたキャリアもある。こうして次世代と現在とが戦いあっている。ユーザーからみると何がしたいのかによって自由に端末を選択できるという時代になったのかもしれない。怪しげなバーで彼女を口説くためには暗いところで使えるCCDカメラの搭載などへの競争も始まろうとしている。

戦いの場は、どこに軸足を置いているのかと言えばアプリケーションであることに疑いはない。自分として欲しくなるような携帯とは、自分の分身としてアシスタントをしてくれるようなものである。電話の相手に応じて取り次いでくれたりスケジュール調整などに応じてくれる物であった。過去形で書いたのは、そうした端末を開発しようと掲げたことがあったからだ。かりにコードネームをエスパーと呼ぼう。Enhanced Special PErsonal Radioの略である。このエスパーでは、端末相互のピアツーピアのリンクを提供しベースとなるのは中間コードとなるスクリプト言語であった。

一種のスタックマシンとしての振る舞いを持つこのスクリプト言語はポストスクリプトなどの言語の延長に位置づけられスタックオリエントな形でデータ処理が出来るのが特徴であった。サービスが受けられる範囲は認証で許認可された範囲でのみ動作が出来、データの操作・参照などが、その認証されたクラスに従って許可される。スクリプト自体は、インターネットからダウンロードしても良いし誰かが開発した範囲でグループで共有するのも構わないのである。携帯がインターネットのインターフェースであるという限りにおいては、サービスの実現方法の中心としての位置づけは今ではより大きくなっている。

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業界独り言 VOL148 携帯電話を安くするために

携帯電話業界が、不振に陥っている。売れない理由を求めて高機能化に拍車がかかる。高機能化を達成していくと指数関数的に開発費用が増大していく。端末コストが高いと通信キャリアからセットメーカーにクレームがいく。チップメーカーにはライセンス費用やチップコストが高いと追及がくる。端末価格のコストダウンは標準化した部品の使用により大量発注して購買努力で下げるのが通例であるという。しかし、これは数量が捌ける時代での方法論であって現在の携帯電話の開発の実状を現しているとは言えない。

すっきりとした2番手キャリアを目指しているグループでは、なぜかすっきりとしない八方美人的な展開を進めている。端末企画を決めていくというスタンスにおいてメリハリの効かない戦略だと感じる。業界標準を指向しては失敗してきた歴史から反省し自己学習していくというスキームが会社としての無いのだろうか。個性ある端末開発には、各端末メーカーの自主性に併せていくということが望ましいと思うのだが・・・。メーカーにとっては、現在の通信キャリアはお客様なのである。買ってくれる物とは、通信キャリアが売れると思った物だけになる。いきおい、面白い端末で挑戦してくるメーカーは少ない。

ポケベル戦争からPHSに移り、エリア競争の果てに携帯に戦場は移った。ショートメッセージで幕開けた戦いは、古いプロトコルであるDTMFの鳴動時間を気にするような通信手順でデジタルなメッセージを飛ばして旧来のサーバーを制御してショートメッセージを捌いているのであった。アナログ時代に確立したPagerへの入力手段であるDTMFの信頼性は高く評価されてか、あるいは改版のコスト高を嫌ってか従来通りの利用を未だに続けているのである。昔の女子高生が覚えていた漢字入力のダイヤリングは現在では携帯のソフトが取って代わっている。

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業界独り言 VOL147 携帯開発の先へ

各社の開発が、量産に推移すると我々サポートの手がかからなくなってくる。最終商用製品出荷への駆け込み修正を実施しているお客様やら、次期機種のサンプル納入を進めているお客様など多様ではあるが・・・。一機種の開発費用は、20億円程度かかってしまうというのが、一部のお客様の声である。この費用の大半はソフト開発に費やされていると考えている。ソフト開発というと合致しない部分もあるだろう。なにせ買い入れソフトも多岐に渡り製品としてまとめあげる責任は全てメーカーにあるからだ。

開発費用として計上してきたこうした原資は、ベストセラー機の利益から捻出されたり、将来への投資として払われてきたのだろう。コンシューマーにとってCDMAであることは、音質や回線品質としての差異は、今となっては見えないのだから単に買える電話機か、使える電話機なのかという事になる。こうした視点で見れば、見せてくれる機能やサービスエリアの差異はキーファクタになる。カメラを積み、動画をカバーしてもメールに添付して使える玩具を二万円で配ることでは逆にPDA業界からクレームが来てしまうだろうし、差分としての電話代の高さを示すことにほかならない。

ビジネスモデルが破綻しているという視点に立てないのは、それでも流出していくユーザーに対して明確な差別化フィーチャーが打ち出せないからだろう。チャネルの破綻しているキャリアにとってのWCDMAとフィーチャーリッチに進む上でPDCのコンテンツと戦いを繰り広げているキャリア。欧州展開への前哨戦として位置づけてようやく腰をあげるも、PDCとの共存を迫られて価格とサービスエリアの点から二の足を踏んでいるキャリアなど色々背景が異なっている。破綻したビジネスモデルという点で見れば無意味な開発競争を続けていくことは開発投資という不良債権の増大でしかない。

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業界独り言 VOL146 無が攻めてくる

懐かしい知人達と、夕食を囲んだ。ひとときの楽しい時間を共有しつつ次代への思いを馳せていた。業界で言われている携帯不況にも関わらず、それでも通信機メーカーにおいては他の分野ではなく、やはり携帯開発に期待を賭けて、それに追われている様子だ。仲間たちの部下を次々と飲み込んでいった開発の大きな流れの様には、果てしない物語ではないが、無が攻めてきているような気がする。スクリーンの墨流しで作成したという漆黒の闇の広がりという映画のシーンが思い浮かぶ。ひょうきんなロックバイターなど達との楽しい果てしない世界が、夢を見ることを失った子供たちにより、無に帰するのは悲しい。夢見る技術者が居ればこそなのだが。開発プロセスの見直しが騒がれてからも五年以上経過してCMMなどの用語も根付いてきたと思われる。渦中の携帯電話の開発は、あふれかえった機能盛り込みで収拾をつけるのが精一杯という会社もあれば、個別の問題毎に解決の目処を待ながらも次の開発をしているという会社もある。後者と前者の相違は技術者のリソースなどにも現れているようだ。プラットホームというものを開発していくという方針を体現している会社では、機能別に担当が動くことはなく機種をまとめるリーダーと機能を開発していく担当により作られていく部品群を纏めていく部隊とで動いているようだ。

手をこまねいているという印象の会社もある。機種をチーム制で担当している会社だ。チームとして一体感を持った開発で鉢巻きをして開発している挙国一致体制ともいえる。といっても最後に残るのはソフトウェアであり部品の評価などは既に終わっているので今更ハード担当のメンバーとして進めるべき事由もないのだが、緊急に向けてのリザーブなのだ。部品の評価をソフトウェアの開発完了まで先送りにしているケースも見られるが部品評価という判断と、システム評価という段階とは明らかに異なるはずだ。部品の問題などは早期に評価完了させないと量産という課題をクリア出来ない。

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