業界独り言 VOL139 組込み機器とゲーム開発

デジタル機器の登場で、物が壊れなくなるかと思いきや以前以上に予期しない故障が発生するようになっている。アナログ機器と違い、とつぜん故障に遭遇するというのがデジタル機器の故障である。昨年導入された、我が家のDVDレコーダが、突然音声がデジタルノイズの発生器になってしまった。どこかの、バイアス回路でもおかしくなったか、あるいは使っちゃいけない部品でも使ったのかは不明だが。
 
我が家ではVHS以来、そのメーカー以外の録画装置は存在しなかったのだが、そろそろ別の血を導入しなければならないのだろうか。昨年発表された、このDVDレコーダは購買層を刺激する起爆剤になりうる価格や機能を宣言されていた。実際、数ヶ月あまり使って重宝してきたDVDレコーダが無くなることは極めて不便な状況を強いられる。もうVHSで録画などしたくなくなるのだ。答えはハードディスクレコーダの導入を含めたビデオレコーダシステムの二重化である。
 
確かに利用する側からみて、複雑なアプリケーションとしてのGUIがこうしたデジタルレコーダ機器に搭載されているように見えることである。DVD-Rでは、録画後に最終化というステップを踏まなければならない。この為にタイトルをインプットするのだが、PCでは簡単なことが不自由なUIで入力しなければならない。無論、逆にこれらの機器にIPアドレスを全て振り、webサーバー的に行わせることが出来ればUIも統一化されようが、その為にLモード端末にイーサネットを接続するのもぞっとしない。
 

携帯電話からの漢字入力のほうが、各家に1台は存在する使いやすいIT化端末なのである。ADSLやらFTTHやらのブロードバンドで接続しておけば良さそうなものだ。ただし前提は電話代が月額として定額にでもならないと利用できない。まだ携帯電話に無線lanは内蔵できないからだ。早晩できそうな状況ではあるのだが。通常の操作にデジタルなitな一面が覗かせた瞬間に使いにくくなってしまうのは組込み世界の難しさなのだろうか。蛍光表示管に4ビットマイコンで表示していた時代からの時代経過はあまりにも早すぎるのだろう。
 
まともな技術蓄積もないままに、各社の物作りが進展してしまい、組込みの作法もuiまでも一つのウィンドウシステムを構築するまでの研究を進めたある通信メーカーの研究成果は、通信キャリアに提示されて愛のモードが始まった。仕様書の源流にはそうした研究開発が控えていたのだった。仕様書に書かれていない部分は将来を見据えていた開発元メーカーには見えていたのだろうが、仕様書の作りこみに追われているメーカーとの差異は致し方ない。余りにも忙しく変遷してきたために出版社すら対応できないまま参考例もないままの開発が深化してしまったのである。
 
世の中のソフト開発のリソースの多くを引き受けてしまったと思われる携帯電話開発業界での投じた費用はバベルの塔の如き開発に費やされてしまったのかもしれない。各メーカーともに開発プロセスの改善を指向して、構造やモジュールの共通化を追求している。結果としての構造の追及などが目まぐるしく機能追加や競争が続く開発スケジュールの渦中では中々間に合わないのが実情かも知れない。組込み世界に規範となる教科書やバイブルでもあれば良いのだが・・・。
 
組込み世界では、世界をリードしているというのが日本の拠って立つところだったのだが、制御の世界からUIの世界に変る中で十分に機能しているのだろうか。お客様の誰しもが口にするuITRONが世の中の標準であるというのが実情だ。TRONの企みは、B-TRONの波及効果に恐れを抱いた米国の一部のメーカーが通商問題として握りつぶさせてしまった。この為に、お茶をゆっくりとすすることもなく砂時計に追いかけられる忙しい日々が始まってしまったのだ。ちなみにお茶とはB-TRONの待ってくださいという状態で出てくる湯のみである。
 
uITRONで開発することで、それまで沢山あった色々なRTOSが統合化されたというのが最大の成果である。これは疑う余地がない、ただしTRONの研究開発をしている東大の方々には、そうした産業界の認識は当時はなかったようだ。「似たようなものを作っても作り甲斐が無い・・・」というような認識だったらしい。しかし、RTOSのAPIは標準化されたものの、スパゲッティのコーディングから正しい構造に遷移したのかどうかは誰も検証も議論もされていない。匠の技として内包されてしまったのが理由であろうか。
 
色々な機能が盛り込まれているが為に、タスクとしての動作優先順位と実際の使い勝手からのバランスなどは難しいのが実情である。キーボードの入力を割り込み処理で行うような設計であっても、表示処理とのバランスが悪くて画面更新が追いつかないというようなものも存在したりする。システム設計のバランスとして能力を超える入力などについて規制を掛けたりするのがシステム設計としては必要なことなのだが・・・そうしたバイブルを手にしたことが無い人もいるのかもしれない。
 
そうした事が日常化している人たちにとってはuITRONが日常の言語なので、これらがサポートされていないとモジュールの流用化が出来ないというのが組み込み業界の御客様からのクレームとなる。マシンやソフトの限界にチャレンジしている人たちとして、まさにUIのみで不況下のお年玉から予算を捻出して吟味された選択されるような製品作りに向けて切磋琢磨している業界がある。ゲーム業界である。割り込み処理、ハード処理など幾つもの手法を認識してシステム的に捉えて最適な答えを導いた開発を続けているのが彼らの仕事である。
 
QUAD社などでは、最近ゲーム業界などをフォーカスしている。WindowsAPIを支援するという新たなビジネスユニットを作成してチップ以外にマイクロソフトのようなビジネス展開をしている。ゲーム業界の方が、テレフォニーAPIを利用して電話機のUIそのものを開発してもらっても構わないわけで、そうした取り組みをしている人からはuITRONといった言葉は聞こえてこないのである。実は彼らは自分達のソフトの作りこみの中でそうした事を掌握しているからなのである。iTRONが無いからといって、それでも並行処理のようなバランスの良さを見せることは彼らのお家芸なのである。彼らの言葉を借りると「ごまかし」だというのだが・・・。
 
システム設計のバランスなどを捉えているという観点では、ゲーム業界の方達の視点もある。また、数々の機能の盛り込みに苦慮されている組込み業界の方達の開発のサポートもしている。これらの双方とインタフェースをするような日常である。こうした中で次への方向性で何の手を打つのかという点でどちらが真実なのかを見定める必要がある。ある意味で、かつてのマッキントッシュのMultiFinderの世界とBeOSあるいはSystemXに移行するのかというような次元に近いのかもしれない。そう考えるとまだまだQUAD社で用意している仕組みにも不足があるようには思うのだ・・・。
 
そうしたソフトウェアの開発のみに課題が残っているという形にしてハードウェアやアナログの設計には問題が無いのかというのが気がかりである。先のDVDレコーダの故障などを見ていると、実はハード設計などへのリソース不足も課題ではないかと思えるのである。簡単なことの検証というものは難しいのかもしれない。ソフトのみが大変であると考えているのではないか、少し電機業界として考えてほしいような気がする。さて、どこのハードディスクレコーダを選択すべきかというのが私の悩みだ・・・。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です