業界独り言 VOL117 新世紀にあった開発の考え方

期待に満ちた21世紀に入ったのに、この閉塞感はなんなのだろうか。何を間違えて世紀を越えてしまったのだろうか。世の中に物は溢れているのに、開発すれど楽にならず厳しさだけが増していく。生産したものの価値が低いのに対価を高く要求してしまうことによるインフレーションだったのだろうか。最近では、給与を抑える形にした新しい形のデフレーションが進んでいるようだ。

ユーザーの価値観も多様化してきている。必要なこととそうでないことに対しての感覚は鋭くなっている。もらえる給与のなかでやりくりしていくのだからいたしかたないだろう。端末の競走が、キャリア同士の顧客不在の状況が続いている。わざわざ携帯でゲームをしたいという顧客に実際にこの機能を組み込むことで発生する費用はいくらで結果として通信費用を押し上げていますよとかハッキリと説明できるキャリアはどこにもない。

これは、どこかのキャリアが破綻するまで続くの死の行軍ともいえる。キャリアが死ぬまでには、多数の殉職者が出てしまうのは過去の戦争の歴史などを紐解いてみても明らかである。ましてやキャリアが破綻すれば、利用している顧客にそのまま跳ね返ってくるのは対岸の電力事情をみても明らかだ。キャリアが端末を販売するという構図そのものが間違っているのではないだろうか。

国内の携帯電話機の仕様や機能を紐解いてみてみると、これは外せないと鼻から決めているキャリアの仕様が多い。一度決めた仕様を営々と引き継いでいく体質だ。キャリアに買ってもらうのだから、キャリアの仕様の値踏みは出来ない。アンタッチャブルな世界である。アンタッチャブルな世界にも経営難の嵐が吹き荒れてきていて重い腰を動かしているキャリアも出てきた。

機能が高性能で、部品も高い電話機なのに買い叩かれる実情に合わせて価格差の補填をしているのはキャリアとメーカーとの結果なのだが、高性能が一面顧客ニーズにヒットしていないことの裏返しとも言える。実際に低速サービスのiMODEのユーザーは伸びているように見えるのだが、高速サービスの64kbpsを始めたキャリアはその利用率の低さが歴然としている。

周波数の利用効率を最大限にしようと考えてきた流れの中で始めたCDMA技術は、TDMAを技術的には凌駕してしまい世界的な形でCDMAの開発が進められている。技術立国という宗教に縛られたわが国では、CDMAのトップランナーのライセンス独占を良しとせずに同様の意見をもつ欧州の国を巻き込んで別規格の開発に狼煙をあげてしまった。

全員が生き延びる路はあるのだろうか。このまま国営の血が流れているキャリアが失血死をしてしまうと、日本の国全体が疾患にかかるだろう。もともと給与が高くないとプーイングの多いキャリアだが、国営キャリアの歴史の長い部門が挙げられない利益を少なくとも叩き出していることから、関連会社の身元引受人を積極的に推進せざるをえないのも実情だ。この会社が潰れると全国の通信ファミリが入院してしまう。

そんなことにならない為にはなにをすべきなのだろうか。日本でしか運営していない方式をこのまま推進していくことしか出来ないのであれば何も加えずそのまま進めるというのが最も実はお金のかからない道である。ワイドに広がることは無いにしても、このまま失血死を迎えることにはならない。しかし技術立国という宗教の中で戦い続ける方向を変えることが最も望まれることではないだろうか。

結局のところ欧州とつきあう限りの結論はワークシェアである。国がそうなのだから致し方ない。ワークシェアを基本としている人たちと自由競争に浮かれている日本とでは接点が異なるのだろう。ワークシェアの考え方に立つと合理性が発揮されて日本の中でシステムテストをするのは法律と人件費の面から撤退することになるのは致し方ない。

ソフトウェア改修が、契機となって世界全体が失速してしまった感があり、導火線になったのは日本なのではないだろうか。改修が前提となった物作りを受け入れるか、行き過ぎた競争を是正して簡単な端末に徹するかの二つに一つしかないのだろう。高機能電話の行き過ぎた間違った開発を世界中にさせた責任は、ライセンスを持ち出したQUAD社なのか、それとも・・・。

開発費用のバランスが崩れた、結果はパソコンと同じ末路になるのか。メーカーはBIOSを開発するだけになるのだろうか。キャリアがOSと施設とを提供して、アプリケーションは何処の電話機でも動作するというような形になるのだろうか。実は組込ソフトウェアという業界が技術立国として営々と引っ張ってきたRTOSに問題があるかも知れない。

ITRONの考え方は、単純で全てが正しいという前提で成立している。正しいモジュールが強固に結合された状態での動作がベースとなっている。完成度が低いモジュールが混入した場合を想定してはいないのだ。開発された時代の規模から考えても致し方ない。無論ダイナミックリンクという機能をとっているOSもある。悪評の高いパソコンのOSメーカーもそうだ。

ダイナミックリンクの名前の解決を安易に行っていることが一つの要因ともなっている。アプリケーションが必要なモジュールを抱え込んでいるためにインストールする段階で同様の新しいモジュールがあるのかどうかの検索をすることはない。この為に同じ名前の異なったバージョンのモジュールがハードディスクの肥しとなってしまい、ソフト同士の互換性が失われたりする事態となっている。

まともなダイナミックリンクをサポートしているOSメーカーもある。透徹した思想でながらく開発されてきたこのメーカーのOSは現在の携帯電話の改修騒動にはもってこいである。問題のあるモジュールだけダウンロードすれば解決するのだから。こうしたインフラともいえる部分に日本は感心を示してこなかった。このメーカーも最近では別のメーカーに買収されてしまったらしい。

OSを選ぶ理由がソースが公開されていないからとか、無料じゃないからとかいう考えられない説明がいままでは費やされてきた。OSのことを考えているからこそ費用をもらい、開発を続けているのに自前主義という言葉で代表される日本の製造メーカーが選んでしまった道の顛末ともいえる。自分達で動作を評価してチップ開発を続けてソースコードも提供しているメーカーの意気は買ってくれないものなのか。

ワークシェアの考え方に立ち、それぞれのメーカーが範囲のことなる部分についての開発を要望としてもっと委託していくような開発範囲のワークシェアをもっと進めていくことが必要なのではないだろうか。適切な開発を、適切なスキルの技術者が専門的に開発を進めていくことで効率がどれほど異なるのかは既に日本の端末メーカーの一部は実践してしっているのだが、そのメーカーは国内向けの日の丸端末しか作っていない。

自分達が開発した場合の対費用効果について、正しく把握する段階になっている。オーバーワークが論じられている日の丸CDMA開発だが、同様の開発を限られた少ない技術者で9時5時で開発している会社もおそまきながらもアナウンスをするようなところまできたようだ。実は、主戦場には、まだ間に合うようなのだが、この二年間の間にキャッチアップ出来るものらしい。

焦らないのが最大のポイントかも知れない。

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