業界独り言 VOL115 新技術の追っかけは好きですか 発行2001/7/26

じりじりと暑い日々が続いている。最近は、帽子を被り首筋の日焼けをガードしているのだが、リュックを背負っている、その姿には採集網が似合うと言われている。ゆりかもめの週に続いては、品川港南口でのトレーニングセミナーが二日続き、叉サンディエゴからは仲間達が支援に駆けつけてくれた。HDRのセミナーだった。

最近のQUAD社の製品展開は、必ずしも日本のキャリアのスケジュールにマッチしている訳ではないが着実に製品を出してきている。マイペースと映るかもしれない製品群によっては山ほどのお客様に対して広いホールを借りてのセミナーもあれば、こじんまりとしたセミナーを会社の会議室で行ったりもする。

規模に限らず出来る限り日本語でセミナーを実施したいというのが私達の思いではあるのだが、支援してくれる仲間は逆に日本語で説明している間に繰り出された、質問についてのキーワードのみが耳に引っかかり気になってしまったりもするようだ。しかし、この二年間の間にお客様のトレーニング対応力も随分進展したようだ。

ハードとソフトのトレーニングはそれぞれ一日を要し、初日は全員で打ち上げを催して、二日目、サンディエゴの面々はお土産観光に出掛けてしまったのもあり東京オフィスの面々で絵画館横の森のビアガーデンで祝った。ドタバタとした中で準備展示した展示会でのブルーテュースチップはベストデバイス賞を獲得し喜びを分かち合った。

仕事の合間を縫って資格を取得したりするのが、最近の業界の状況を反映しているのかも知れない。自分が出来ることのレベルを正しく認識していないと、外に出ていって通じるのは英会話能力しかなかったりする場合もあるかも知れない。会話力は最低限必要な能力だし、売りとなる専門分野と組込ソフトの力は必須だ。

残念ながら、QUAD社で伸びていくためには英語能力がなければトレーニングのビデオやテキストすら退屈あるいは苦痛以外の何者でもない。そうした戦いに敗れて去っていったものもいる。今は、逆にそうした事例が尾を引いて英語能力に目がいってしまい実際の専門分野の力などを見落としがちにもなったりしていたようだ。

合間を縫い、挑戦してくる候補者の面接をペーパーで選択して面接を通じて実施する中で自分達の必要とする人材を見つけることの難しさを改めて痛感している。若い技術者の中からは中々経験を通じて身に付けた能力が不足しているのは否めない反面、積極的に異なったテーマに挑戦しようという意欲は溢れているようだ。

技術中心ではない外資系の通信機メーカーでは、各人の役割が細かく分割され管理された形で仕事を進めていくらしく各人の能力の不足が全体の足を引っ張ることがないような仕組みでカバー出来ているようにも見える。先だってソフトウェア技術者として働いていると語っていたエンジニアは常時カーニハンのCを抱えていた。

経営の根幹を支えているのは、今やソフトウェアの品質であることは携帯業界に限った話ではないのだが。なぜか、バグが山ほどあるシステムソフトを文句もいわずに使っている人たちも携帯電話にバグがあると回収騒動を煽動したりするのは不思議だ。まあリセットしても電話帖が飛んだりするような問題かどうかにもよるが。

ソフトウェアの問題が発生して起こった費用が、そのまま会社の死命を制するほどでは無いにしてもソフトウェアの品質と開発費用の相関関係などは脈絡の無いものなのか、どこかのメーカーがこの先公開してくれると面白いかもしれない。品質の良いソフトが正しく評価できているのかどうかについては興味がある。

ソフトウェアハウスの工数集計や見積もりと実際に開発量の関係などについて計測するメトリックスの取得が開発プロセス改善の第一歩なのだが、そうしたデータを解析して次の開発に生かしていくというプロセスには非常な能力と経験が要求される。会社全体の取り組みとしての一体感やモチベーションがなければ進まない。

よく言われるのだが、うまく設計できてしまった商品でトラブルもなく動いてしまった場合には、その設計した人々についての会社の中での認識は希薄で、トラブルを起しても懸命に対応して解析して実は自分の間違いやバグであったものを直していくと周囲からはその取り組みに対して高い評価を与えたりするのも妙だ・・・。

スムーズに開発を進めていくために、色々な仕組みを作りこんだりしていく地道な作業は工場での生産ラインでの品質改善と同じ事なのではないか考える会社もあるようで生産技術のセクションでソフトウェアの品質改善に取り組んでいるところもあるようだ。そうした認識が、その会社の中で均質であれば良いのだが・・・。

「今までの「乱開発」を反省するとともに、新しい技術の勉強をして、自身の能力を高め、立てなおしに少しでも貢献して行きたいと思います」と社長の転身も無視して自己批判する前向きで献身的な技術者もいる。携帯業界の中での評価は株価で表わすことが一つの側面であるが、こうした技術者がいることも尺度の一つだろう。

外資系だと、ササーッといなくなったり、バッサリとレイオフされたりというのが常だが。早期退職勧告制度で自分自身を省みて新しい人生を支援するという日本のメーカーはやはりまだ違うと感じる。会社自身を再生させようとする気持ちが、まだそこに残っているように私には映るのだ。元の会社への欲目かも知れないのだが。

中々与えられた環境を変えられないのが日本の技術者の気持ちであり、自分の評価や仕事の環境には不満足な技術者は多いのも事実だ。実際に転職して外へ出て行くという段階にならないのは自分自身の能力への自信が無いことが多くを占めている。一つの会社社会に閉ざされているからだ。外に出た経験を持つとかわってくる。

といっても会社で外部に出て行くのは、外郭団体への出向を命ぜられたりするのは現場への肩たたき的な時期だったりもするのでそれは例としては相応しくなく、海外現場への展開などに従事したりして会社以外の技術者と接することが発生した場合に彼らは自分自身の技術の相対値を知り、自信を固める者も無くする者もいる。

私は今の会社に転籍するまでにもそうした自信なき者の一人であった。知己から誘われ自分自身の実績について履歴書を書き起こして初めて認識し、そうしたことを振り返る間もない生活の中に埋没していた自分自身を再発見した。自分自身の実績を書き起こしてみて客観的な形で自分を振り返ることは皆やってみるべきだろう。

最近の携帯業界の不振を嗅ぎ分けて積極的に横須賀エリアに求人展開をしたのですが・・・とあるヘッドハンティング会社に打診された。聞けば会社の人事でもよく使っている会社なので、積極的な人材を探しているのでお願いしますという事になった。知り合いのところにも求人案内は配布されたらしいので期待する事にした。

他のヘッドハンターが連れてくる案件が悉くピンぼけな印象の人材ばかりだったのだが積極的な戦略や認識をもっているヘッドハンターであることを期待しているのだが果てさてどうなることやら。自分の仕事の実情と自分の実力とを正しく認識している技術者で、我々の要求に合致すれば即採用と・・・いきたいところだが。

さあ来週は、新技術の追っかけでサンディエゴでのトレーニングだ。一人は夏休みを取得している。半年経過したT君は留守番だ。会社のホームページに掲載されて顔が売れているようだし、自分の専門範囲を着実に増やしてあくなき技術追求ということを開発支援技術者というこの技術集団の会社での仕事に見出しているようだ。

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