VOL87 仮想世界の中へ 発行2001/2/28米

サンディエゴでの朝食をオフィスでとりつつ、東京の自分のマシンを遠隔で起こす。この時間は、だれも居ない時間なので快適に東京への回線を占有できる。リモートでVirtual Network Computingというフリーソフトでアクセスしている。会社の私のマシンは、二台あり、今回持ってきているのはノートの方でWindows2000で動作している。おいてあるのはデスクトップでありやはり、Windows2000で動作している。

デスクトップのウインドウが私のノートの上に広がる。1280×1024のスクリーンサイズはノートからはみ出てしまう。仮想スクリーンの中にカーソルを持っていくと少し遅れた描画で仮想スクリーンの中にカーソルが現れる。デスクトップにあったVmwareと書かれたアイコンをクリックすると、少し遅れて画面が反応する。 開かれた新しい窓には、WindowsNTという文字が出てくる。

仮想端末の先には、仮想マシンがいて、WINDOWSNTを仮想的に動作させてある。このOSでないとアプリケーションが動作しないものがあるからだ。APIが変わってしまうことからNTで動作しているものが、そのままではWINDOWS2000では動作しないのだ。アプリケーションを大切にしたいのであればAPIを変更するべきではないと考えているのだが、完成度の低さなどから時折大胆に変えてしまうことをOSとアプリケーションの双方を牛耳っているMSは実践しているようだ。

サンディエゴに居ながらにして東京オフィスの環境が仮想的に利用できるのは良いことであり、四半世紀の暮らしの中で変わってきたなと思わせるものの一つでもある。マシンの性能向上により、過去の開発資産を活かして行く必要が生じるのが長寿の商品であるシステム商品のソフト開発である。開発当時の環境をキープしていくことが、その方法だったのだが、長寿を果たしてきたDECのマシンも買収のせいかどうかは抜きにしてVAXシリーズの終了を迎えた。

こうした対応でVAXのシミュレータ開発を実践したのが初芝での最後の仕掛り仕事であった。残念ながら路半ばにして転職してしまったが幸いにも優秀な仲間に恵まれたために仕掛仕事はしっかり完成して実用化に踏み出せたようだ。VAXの命令シミュレータとBSDのシステムコールのプロキシーの組み合わせでシステム的に動作するVAX4.2BSDの仮想環境がFreeBSDの上で動作している。APIを確認して合わせ込んで利用しているのが味噌である。BinaryのAPIで動作するアプリケーションを沢山導入してしまったのが、背景にはあるのだが・・・。

BinaryのAPIをベースにしたアプリケーション配信あるいは組み込みという世界が始まろうとしているのだが、ARMの世界をx86に見立てられるかどうか鍵なのかも知れない。x86を偉大に見せるには、IBM-PCの内容公開に基づくDOSでの世界革新があったからだが、携帯世界のそれはどうなのだろうか。確かに、各メーカーの混戦状況はBASICパソコンを思い起こす状況ではあるのだが・・・。

簡単なことなのに始められなかったのは、今の端末開発のビジネスモデルが、理由なのだろう。湯水のごとく人を投入できる時代は過ぎてしまい、投入しても投入しても収拾が付かなくなるほどに機能が高度化してしまったさまはバベルの塔に近い状況なのだろう。言葉を統一することにより解決をするのならば、政治的な背景など抜きにして始まってしまうような勢いが起こりつつあるようだ。

アプリケーションからみればAPIで抽象化してしまったハードウェアであれば、良いわけで仮想的な開発環境なども出てくるのだろう。すべてが仮想的なJavaに比べればAPIの規定だけでバイナリーな状況は取り組みやすいことも事実だ。バンドルするソフトの数で勝負したりする時代ではないと思うが予断は許さないかも知れない。しかし海外生活を謳歌するSharewareエンジニアが出てくるのは、楽しみなことでもある。

開発の方向が暴走していくのは構わないが実際の製品が暴走してしまうことはどうしようか。Windowsでも一年以上ダウンフリーのソフトを書ける会社もあるのだから、解決策はあるにしても検証する技術は難しそうだ。上流で縛りうるのかどうかCMMな世界も合わせて進めていかないとクリーンルーム手法などで作り込んでいくことも必要かも知れない。端末ソフト開発を改善できるCMMコンサルタントビジネスの株は上昇間違いなしかも知れない。

実際の機器で暴走させることなしに仮想的な開発環境で綿密に緻密にソフトウェアの動作をトレース管理できていくような仕組みが必要だとおもうし、そうした技術の可能性は既に実用域であると思う。8年くらいまえに三菱マイコンでの取り組みなどの時に見えていた未来が現実化してきた。現実化してきた仮想世界である。

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